更新 ( 公開)
ちば愛犬動物フラワー学園所属。北里大学獣医畜産学部卒業 / 現在は専門学校に勤務しつつ、地域の動物病院にて勤務医として従事。

人気の犬種であるトイ・プードル。現在飼っている人も多いのではないでしょうか。「愛犬にはいつまでも健康で長生きしてほしい」と願う飼い主にとっては、トイ・プードルの平均寿命がどのくらいなのか、気になるところかもしれません。この記事では、トイ・プードルの平均寿命、老化のサイン、かかりやすい病気や健康維持のために気を付けたいことなどについて、獣医師の平田繭子先生に解説していただきました。
目次
- トイ・プードルの平均寿命は約15歳
- トイ・プードルの老化に見られるサインと対処法
- トイ・プードルがかかりやすい病気や症状、対処法は?
- トイ・プードルに多い死因は?
- トイ・プードルの体調や健康維持のために気を付けたいことは?
- トイ・プードルの食事で気を付けたいポイントは?
- おすすめの商品紹介
- まとめ
トイ・プードルの平均寿命は約15歳
トイ・プードルはかわいいだけでなく、超小型犬で日本の住宅事情にマッチしており、学習能力も高いなどの理由から、日本ではペットとして絶大な人気を誇る犬種です。
そんなトイ・プードルの平均寿命は15~16歳ほどです。一般社団法人ペットフード協会が行った2015年の調査によると、犬の平均寿命は14.85歳のため、トイ・プードルは比較的寿命の長い犬種と言えます。
以前は12~14歳が平均寿命とされていましたが、ペットフードの質の向上やペットに対する医療技術の発達、飼育環境の改善などによって、寿命が延びたと考えられています。
なお、トイ・プードルは7歳頃から老化が始まり、10歳頃は人間で言うと50代後半にあたると考えられます。
ティーカップ・プードルやタイニー・プードルの平均寿命は短いの?
正式な犬種ではありませんが、トイ・プードルよりさらに小さいティーカップ・プードルやタイニー・プードルがいます。小さい分、寿命が短くなるわけではなく、トイ・プードルと変わりません。犬全体で見たとき、体が大きな犬より小さい犬の方が平均寿命が長い傾向にあります。
【参考】犬全体14.62歳 超小型犬15.07歳 小型犬14.29歳 中・大型犬13.86歳
(一般社団法人ペットフード協会「令和5年(2023年)全国犬猫飼育実態調査」より)
トイ・プードルを迎えるなら保護犬も検討を
もし、これからトイ・プードルをお迎えしようと考えているなら、保護犬を検討してみませんか? カインズでは、完全審査制の保護犬・保護猫マッチングサイト「しっぽの出逢い」を運営しています。飼い主を募集しているトイ・プードルに逢えるかも!
トイ・プードルにはレッド、ホワイト、ブラウンなどさまざまな毛色があります。トイ・プードルの基本情報や、毛色による特徴や気になるポイント、ユニークなカットデザインが話題のトイ・プードルなどについて、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

shared-detail.post-related
トイ・プードルの性格や特徴は?飼い方のコツや迎える際の費用、寿命などについて解説【獣医師監修】

shared-detail.post-related
プードルにはどんな種類がある?サイズや毛色、飼い方のコツなどそれぞれの特徴を解説【獣医師監修】

shared-detail.post-related
トイ・プードルのしつけはいつから?始める時期としつけのコツ、問題行動への対処法を解説【獣医師監修】

shared-detail.post-related
トイ・プードルのレッドとは?毛色の特徴や退色の原因などを紹介

shared-detail.post-related
白(ホワイト)トイ・プードルは温厚で育てやすい?気になる特徴や飼うコツを紹介

shared-detail.post-related
世界から注目される個性派トイプードル・ちろる。愛犬のために生み出した唯一無二のカットデザイン
トイ・プードルの老化に見られるサインと対処法
トイ・プードルの老化のサインにはどのようなものがあるのか、どう対処したらよいかを知っておきましょう。
運動量の減少、体重の減少または増加
高齢になると、犬は筋肉量が落ちて以前ほど活発に動かなくなることがあります。散歩や遊びに対する興味が薄れることも。
短い散歩や軽い遊びを日常に取り入れて、高齢犬に無理のない範囲で体を動かせるようにしましょう。体調や運動量、持病などを考慮してドッグフードを見直すことも大切です。運動量が減ったのに食事の量が以前のままだと太ってしまい、肥満による病気を発症することもあります。動物病院で定期的な検診を受けて、食事管理や体重管理を行っていきましょう。
関節疾患
犬は加齢によって、関節炎や変形性関節症などの関節疾患を発症しやすくなります。歩行や階段の上り下り、トイレなどが困難になる、活動性が低下し、寝ている時間が増える、走り方に異常が見られるなどの症状が起こります。
関節疾患の場合は、体重過多や肥満が体の負担になります。愛犬が関節疾患になった場合は、体重管理をしっかり行うことで負担を軽減してあげましょう。
食欲の減少や好みの変化
高齢犬は食欲が減少したり、食べ物の好みが変わったりすることもあります。単に食欲がないのか、何かの病気なのかを判断する必要があります。歯周病が理由のこともあるため、愛犬の口周りにも気を配りたいものです。
シニア犬用のドッグフードに徐々に移行するのも一つの方法です。かかりつけの獣医師に相談しながら、食事の見直しをしていきましょう。
歯周病
犬も人間同様、加齢によって歯周病にかかる子が増えていきます。歯磨き習慣のないシニア犬は、ほとんどの場合歯周病にかかっているといわれます。歯周病にかかると歯茎が腫れる、歯がグラグラするなどの症状が表れるほか、内臓の病気が引き起こされることもあります。前項で説明したように、歯周病が進行すると、歯がぐらついたり痛みを感じたりして食欲が落ちることもあります。
歯周病が心配なときは、愛犬の口の中をチェックし、目立つ汚れや歯茎の炎症、口臭の有無を確認しましょう。歯周病対策には、歯磨きシートや歯ブラシを使った毎日の歯磨きが効果的です。
睡眠時間が増える
犬は年齢を重ねるにつれて、より多くの時間を眠って過ごすようになっていきます。昼間でも頻繁に眠っていたり、声をかけても眠っていたりするのが一つのサインです。
睡眠時間が長くなってきた場合は、床ずれ予防のマットやクッションを用意しましょう。体温調節能力が低下するため、エアコンなど室内環境が整った場所で眠れるようにします。声をかけてもよく眠っている場合は耳が遠くなっているほか、別の病気の可能性も考えられるため、動物病院で相談することをおすすめします。
視覚や聴覚の低下
視覚能力や聴覚能力が低下すると、物にぶつかったり壁伝いに歩くようになったり、名前を呼んでも反応しなくなったりします。
目が見えづらくなったら、家具の角をコーナーガードで覆ったり、家の中の段差を減らしたりして移動しやすく、ケガをしないように屋内の環境を整えます。散歩は明るい時間帯を選びましょう。耳が聞こえづらくなったら、視覚的な合図や香りを使って誘導する、アイコンタクトでコミュニケーションを取るなどの工夫をしましょう。
白内障
白内障になると目の中の水晶体が白く濁り、視力が低下します。症状が進行すると失明する可能性もあります。
老齢性の白内障は防ぐことができません。もし、愛犬が白内障になったら、物にぶつかったりつまずいたりしないよう、部屋はきちんと片付けるようにしましょう。前項で解説したとおり、とがった角などがあればコーナーガードで覆っておくと安心です。
犬の白内障は、白く濁った水晶体を除去して人工レンズを入れる手術で回復可能なこともあります。しかし、症状が進行している場合は視力回復の見込みがない場合もあり、手術ができる動物病院も限られています。
毛質や毛並み、毛量減少など毛の変化
フワフワとした毛並みのトイ・プードルも、高齢になるにつれて毛質や毛量が変化することも。毛色が白っぽくなる、艶がなくなる、毛量が減って薄くなる、細くなるなどの変化があります。加齢による変化と思っていたら、別の病気が隠れている場合もあるため、気になることがあったら動物病院で相談してみましょう。
年齢にあったドッグフードに替えたり、ブラッシングやマッサージなどで血行を促進したりして、健康な皮膚や被毛を維持していきましょう。定期的なシャンプーで清潔な皮膚を保つことも大切ですが、洗いすぎは逆効果。皮膚の状態をよく観察しながらケアすることが大切です。
トイ・プードルがかかりやすい病気や症状、対処法は?
トイ・プードルには、いくつかのかかりやすい病気があります。症状や予防法について知っておきましょう。
外耳炎
トイ・プードルは垂れ耳で耳の中にも毛が生えているため、耳の中に細菌が繁殖しやすい傾向にあります。小まめに耳をチェックし、垢が非常に多かったり、臭いがしたりするなどの異常があれば、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。
膝蓋骨脱臼
後ろ脚の膝の皿がずれ、脱臼する病気です。脚を触られることや散歩を嫌がったり、後ろ脚を不自然に上げたまま歩いたりするときは、膝蓋骨脱臼の可能性があります。肥満によって後ろ脚に負担がかかりやすくなるため、体重を増やさないこと、肥満に気を付けることが大切です。
レッグペルテス(大腿骨頭壊死)
股関節を形成する大腿骨頭という部分が壊死を起こし、関節炎や骨折を起こす病気です。犬ではオスやメスに関係なく発症する疾患とされ、発症するのは成長期がほとんどで、発症の原因もはっきりとは分かっていません。発症した場合は高い確率で手術が必要になります。
水頭症
脳脊髄液の流れが滞ったり、産生量が増えたりすることで、脳が圧迫されて起こる病気です。姿勢の異常・失明・歩行異常・グルグル同じところを歩きまわるなどの神経症状が表れることがあります。早期発見・早期治療が大切なので、前述の神経症状や動きづらくしているなどの行動異常が見られた場合はすぐに動物病院を受診するようにしましょう。
進行性網膜萎縮症
網膜が徐々に薄くなり、次第に犬が光を感知できなくなる病気です。初期は暗い場所での視力が低下し、徐々に明るい場所でも物が見えなくなり、失明に至ります。地面の匂いをかぎながら歩いたり、物にぶつかったりする、不安そうな様子が見られるなどの症状があります。遺伝性疾患と考えられており、発症したら失明を避けることはできません。進行を遅らせる補助的な治療として、ビタミンEの投与があります。
流涙症
涙の過剰分泌や、涙の排水が何らかの原因でうまくいかないため、目の周りが常に涙で濡れてしまう病気です。涙が原因で目の周りが赤茶色に変色したり(涙やけ)、皮膚が炎症を起こしたりすることもあります。原因は、アレルギー性結膜炎や逆さまつ毛、鼻涙管閉塞などさまざまです。原因を取り除く治療をします。
てんかん
てんかんは、脳の異常な興奮と過度の放電が原因で、体のけいれんや意識障害などの症状を起こす病気です。脳腫瘍など脳の異常が原因で起こる「症候性てんかん」と、原因不明で起こる「特発性てんかん」があります。特発性てんかんは遺伝的な要因が強く疑われています。
症候性てんかんは、原因となる病気の治療を行いながら、抗てんかん薬を用いて発作の頻度を減らします。特発性てんかんの完治は難しいとされています。
僧帽弁閉鎖不全
心臓の四つある内腔のうち、左側にある左心房と左心室間にある僧帽弁が年齢とともに変性し、弁がうまく閉じなくなる病気です。これが進行すると、全身の血液循環がうまくいかなくなる事に加え、肺のうっ血により咳が出たり呼吸が苦しくなる症状が見られます。最初は症状が軽いためオーナーは気付かず、ワクチン時の聴診により発見される事が多いです。症状が進み薬が必要なステージになったら一生涯の内服薬投与が必要になります。
トイ・プードルに多い死因は?
トイ・プードルだけに特有の死因が突出しているわけではありません。「動物病院カルテデータをもとにした日本の犬と猫の寿命と死亡原因分析」を見ると、泌尿器系や循環器系の疾患、肝胆膵系の疾患などがトイ・プードルの死亡原因として多く見られています。
日本アニマル倶楽部(現SBIプリズム少額短期保険)の発表によると、トイ・プードルだけに限らず、老齢期の犬(11~20歳)の三大死因は、悪性腫瘍(ガン)、循環器疾患、腎・泌尿器疾患となっています。トイ・プードルも一般的な老犬と同様、心臓や腎臓の病気を発症する可能性はあるものの、ほかの犬種と比較すると悪性腫瘍による死因が少ないと言われており、小型犬の中でも比較的長寿な犬種として知られています。
適切なケアと健康管理を行うことで、より健康的に長生きできる可能性が高いため、日頃からの予防と早期の対応を心がけると良いでしょう。
トイ・プードルの体調や健康維持のために気を付けたいことは?
トイ・プードルの健康を長く維持するには、他の犬種同様、適度な運動と適切な食事、十分な睡眠が非常に大切です。愛犬を長生きさせるために、普段のお世話を見直すところから始めてみましょう。また、トイ・プードルの健康を損なう、次のような行動や生活習慣がないか気を付けてみてください。
トイ・プードルの健康を損なう行動や習慣
肥満や痩せ過ぎ
トイ・プードルを含む動物全般にとって、肥満や痩せ過ぎは万病のもとです。適切な食事量は犬の年齢やライフステージによっても異なりますが、まずは体格に合った量の食事を与えているかを確認しましょう。また、食事の内容にも気を配りましょう。添加物が多いフードはできるだけ食べさせず、健康的で栄養バランスの取れた食事を与えてください。
運動不足
運動不足もストレスの蓄積や肥満につながり、病気を招く原因になります。散歩や室内での遊びによって、毎日十分な運動量を確保できるようにしてあげましょう。
タバコや芳香剤などの匂い
見逃されがちなのが、飼い主の喫煙や芳香剤・柔軟剤などの香りの問題です。犬の嗅覚は人間の数千倍~1億倍ほど優れているため、私たちがわずかに感じる程度の匂いであっても、犬にとっては大きなストレスになっている可能性があります。
トイ・プードルが気を付けたい前足の骨折
トイ・プードルは、前足を骨折しやすい犬種です。ソファーから床に飛び降りたり、抱っこから落下したりして骨折してしまうことがあります。おねだりや甘えで飛び跳ねることがありますが、頻繁なジャンプで骨が硬化して骨折を誘発するため、注意が必要です。家の中の段差にはスロープを付け、抱っこの際は飛び降りないように気を付けるなど、日常生活での予防が大切です。
骨折すると足を地面に付けられなかったり、触られることを嫌がったりするようになります。治療はギプスやプレートで固定する手術を行います。
トイ・プードルの食事で気を付けたいポイントは?
トイ・プードルに与える食事は、できるだけ添加物の少ないものを選ぶようにしてください。子犬の頃は成長期用、大人になれば成犬用、年を取ったらシニア用といったように、愛犬の年齢に適した栄養を含むドッグフードを与えるのもおすすめです。
炭水化物の取り過ぎは肥満を招きます。市販のフードは原材料を確認する、手作りご飯を与えるときは炭水化物の量をしっかり計算するなどして、炭水化物の摂取過多にならないように気を付けましょう。
食事の与え方
食事を与える回数は、基本的にはドッグフードのパッケージの記載に従いましょう。ただし、トイ・プードルのような超小型犬の子犬は、一度にたくさんの量を食べることができません。栄養不足を防ぐため、食事と食事の間隔が空き過ぎないように注意してください。
生後5~6か月の成長期のトイ・プードルは、多くのエネルギーを必要とします。この時期は、1日分を4~5回に分けて食事を与えましょう。急成長期を過ぎたら、1日2~3回を目安に調整して与えるようにしてください。
シニア期のトイ・プードルには、食が細くなる子も少なくありません。そんなときは一度に与える量を減らし、食事の回数を増やす方法がおすすめです。
適切な食事量
トイ・プードルの理想体重は3kg前後とされています。基準より体重が重く肉付きがいい場合は、肥満の可能性があります。
超小型犬のトイ・プードルは体格が小さいため、太ると背骨や脚の関節に大きな負担がかかります。肥満は心臓肥大や糖尿病、多臓器不全の原因にもなるため、予防が非常に大切です。前述のとおり、特に炭水化物の取り過ぎには要注意です。
なお、一日に必要なカロリー数はDER(一日当たりのエネルギー要求量)といい、RER(安静時エネルギー要求量)にライフステージや肥満度などを考慮した係数を掛ける事によって割り出せます。
例えば、3キロの成犬トイ・プードルのRERは160カロリーになります。ここに避妊去勢手術をしていない、かつ標準体型であるという条件から導き出される1.8を掛けて、160×1.8=288カロリーがDER(一日当たりのエネルギー要求量)となるのです。
おすすめの商品紹介
カインズオンラインショップでは、愛犬との暮らしを支えるさまざまな商品を取り扱っています。老齢期のトイ・プードルに適したドッグフードやペットステップをご購入いただけます。
※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。
※上記商品は獣医師の監修外です。
まとめ
トイ・プードルの平均寿命は15~16歳と比較的長寿ですが、肥満や痩せ過ぎ、運動不足は病気を招く原因になります。愛犬の様子を日頃からよく見て、おかしいと思ったら早めに動物病院を受診することも大切です。
食事の与え方や生活習慣に気を配り、大切な家族の一員が元気で長生きできるようにしてあげましょう。