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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
私たち人間は眠っているとき寝言を言っていることがありますが、同様に犬も眠っているときに寝言を言うこともあります。また、寝ているときによくわからない行動をしたり、いびきをかくこともあります。そんな様子に思わず笑ってしまう飼い主も多いのではないでしょうか。今回は、chicoどうぶつ診療所の所長である林美彩先生に教えていただいた、犬の睡眠の特徴や考えられる寝言の理由、病気などの不調の可能性があるのかについて解説していきます。
目次
- そもそも犬はどれぐらい寝るの?犬の平均睡眠時間は?
- 犬も人間と同じように夢をみるの?
- 犬が寝言を言う理由は?
- 眠っている間に犬が見せる行動は?
- 犬の寝言の種類といびきとの違いは?
- 犬が寝言を言うとき、何か病気の可能性は?
- 犬が寝言を言っているとき、飼い主はどうすればいい?
- 犬に快適な睡眠を取らせるための対策は?
そもそも犬はどれぐらい寝るの?犬の平均睡眠時間は?
一般的に犬は一日の半分くらいは寝ている生き物で、平均的には12〜14時間を睡眠に充てています。この時間は成犬の睡眠時間で、子犬やシニア犬の場合はより睡眠時間が長くなります。
子犬の場合は1日18~19時間を睡眠時間に充てており、眠りもより深いと言われています。また、シニア犬も子犬とほぼ同じくらい睡眠時間を取ると言われ、成犬よりも疲労回復に時間がかかるため、より長く睡眠を取る傾向があります。
ほかにも、小型犬や中型犬に比べると大型犬の方が睡眠時間が長い傾向にあります。これも体が大きいとよりエネルギーを消費し、疲労回復に時間がかかるためと言われています。
犬も人間と同じように夢をみるの?
犬が夢を見ているのかどうかは、現在の科学では立証されておらず詳細はわかっていません。人間の場合は寝ている間に脳の中で映像を見たというのが、夢を見た状態になります。しかし、犬の場合は犬が言葉をしゃべることができず、科学的に立証することは難しいのです。現状では犬も夢を見ている可能性があるということしか言えません。
人間の場合、MRI(磁気共鳴画像装置)を使用して夢を見ているのかを計測します。脳のどの部分が活発に活動しているかを読みとることで、夢を見ているかを実験する方法があります。
しかし、犬の場合は犬用のMRIは存在するものの、検査の際は全身麻酔をかけて使用します。そのため脳の働きが普段眠っている時とは異なっているため、夢を見ている状況を判断しにくいのです。いつか科学の進歩とともに、犬が夢を見ていることを立証できる方法が見つかる日もくるかもしれません。
犬は基本的に眠りが浅い
睡眠について考える際に、レム睡眠とノンレム睡眠という言葉を聞いたことがあるかもしれません。レム睡眠というのは体は眠っているものの脳は起きている状態で、いわゆる眠りの浅い状態です。一方でノンレム睡眠は脳も体も眠っている状態で深い眠りの状態を指します。人間の場合ノンレム睡眠の時は夢を見ずぐっすり眠っている状態です。
人間はレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返す生き物です。一方で犬はオオカミと同じように野生時代は狩りをして過ごしていました。そのため外敵が近づいてくることを敏感にキャッチしなければならず、ほとんどが浅い眠りのレム睡眠の状態であると言われています。
しかし、ノンレム睡眠がないというわけではなく、じっくり頭を使った後や体を動かした後の睡眠時はノンレム睡眠になっていることもあります。
犬が寝言を言う理由は?
頭の中で感情を整理しているため
前述にように人間はその日に起こったことや感情、記憶などを眠っている間に脳内で整理すると言われています。犬も同様で、その日の出来事を眠っている間に整理している可能性があります。あくまでも仮設ですが、犬にとっては刺激のある楽しい一日だったと捉えていいのかもしれません。
脳の疲れを回復させているため
犬の寝言はしっかりと休息をとっているサインともいえます。犬も人と同じように、日中に様々なことを考えたり、運動で体を動かしたりして、たくさんのエネルギーを使っています。そして適度な疲労を感じることによって、ぐっすり眠ることができるのです。眠ることは体の疲れを取ると同時に脳の疲れを取る作業でもあります。つまり、寝言も脳の疲れを取るためのひとつの作業といってもいいでしょう。
レム睡眠の時間が長いため
前述のように犬はレム睡眠が長い動物です。レム睡眠の状態になると、夢を見ると言われています。つまり、体は眠っているが脳は起きているという状態です。実際に夢を見ているのかどうか科学的な立証できていませんが、人間と同じであれば夢を見ている状態と言えます。
そして、レム睡眠が長いので夢を見る時間も人間より長くなることが考えられます。そのため、寝言を言う頻度も多くなることも考えられます。このように、犬の睡眠における習性も寝言と関係しているとも考えられます。
眠っている間に犬が見せる行動は?
犬は眠っている間に、さまざまな行動を見せることがあります。例えば、人間のように寝言を言ったりいびきをかいたりすることもあります。ほかにも、さまざまな動きを見せています。例えばしっぽを振ったり、目や耳を動かしたり、足をばたつかせたりする行為です。また小刻みに動くといった行動が見られる時もあります。
<眠っている間に犬が見せる行動>
・寝言(遠吠え、高い声で鳴くなど)
・しっぽを振る
・目や耳を動かす
・足をばたつかせる(走るような仕草など)
・小刻みに動く・痙攣する
・寝ぼける
など
睡眠時の不思議な行動の原因とは
このような行動をとる理由は現状において解明されていないので、正確なことはわかりません。しかし、これらの行動が起きている時は、レム睡眠の時であることが多いと言われています。人間の場合は眠っている間に脳内で記憶や感情を整理する作業が行われていると言われています。そのため、犬も同様に眠りながらその日の楽しい記憶を頭の中で整理しているのかもしれません。そして、それが夢となって表れていると考えられています。
注意が必要な場合も
小刻みに体が震えている場合は、部屋が寒く体温調節ができていない可能性があります。また、発熱で寒気を感じている場合もあるので注意が必要です。震えが長く続く場合や痙攣に近い震えをしている場合は、早めに獣医師へ相談しましょう。
犬の寝言の種類といびきとの違いは?
犬の寝言には多数の種類があります。遠吠えやいつもと同じように吠える場合もあれば、高い声で吠える場合もあります。また、どこかさびしそうな鳴き声を寝言で発することもあります。聞こえようによっては甘えているように聞こえたり、何かに耐えていたりするように聞こえることもあります。唸るような声もあれば、いびきのように聞こえるといった様子もあります。
いびきと寝言のちがい
いびきと寝言は似ているようで異なります。長さやトーンに変化があり、体をうごかしている場合は寝言です。一方同じ感覚で呼吸をするたびに口や鼻から音が聞こえるのがいびきです。とくにブルドッグやパグといった短頭種と呼ばれる犬は、鼻の特徴からいびきが出やすい傾向にあります。また、肥満気味の犬でもいびきをかきやすくなります。
自分の愛犬がいびきをかいているのか、それとも寝言を言っているのか、睡眠中の様子を観察してみましょう。
犬が寝言を言うとき、何か病気の可能性は?
遠吠えや吠えなどの寝言なら特段心配はありません。しかし、犬の寝言のなかでも苦しそうな声の場合は呼吸器系や脳の病気などの可能性があります。眠っている間に苦しそうな声や興奮しているような場合は、苦しい・辛いといったサインを送っている可能性があるので、長引く場合などは早めに動物病院へ連れていきましょう。
いびきにも注意が必要
つらそうな声を出している以外の寝言は特に心配は必要ありませんが、寝言ではなくいびきの場合は病気の疑いがあるかもしれません。いびきの場合は肥満や先天性の病気による呼吸の病気や、気管虚脱などの病気の可能性も考えられます。
気管虚脱とは、何らかの原因により気管が弱くなり、通り道が狭くなってしまう病気です。いびきのほかにも呼吸困難や咳、よだれなどが見られるようになります。ほかにも、心臓肥大によって周囲の気管を圧迫することでいびきが出ることや、鼻腔内のポリープや腫瘍によって気道が狭くなることで発症するいびきもあります。痰が絡んだような咳や鼻血などの症状がないか注意してみましょう。
急にいびきをかき出した場合などは何らかの病気になっている可能性もあるので、早めに動物病院へ相談するようにしましょう。
犬が寝言を言っているとき、飼い主はどうすればいい?
犬が寝言を言っている場合、飼い主としてどのような行動をすればいいのでしょうか。
起こさずにそのまま見守る
犬が寝言を言っている場合、特段何かを心配する必要はありません。寝ている途中で無理に起こすことによって、逆に愛犬の快適な睡眠を阻害してしまう可能性もあります。唸ったり、苦しそうだったりという様子が見られない寝言の場合は、犬がストレス発散できている証拠です。無理矢理何かするのはやめて、そっと見守ってあげることが最善です。
動画を撮影して獣医師に相談する
寝言や吠え方に異常がある場合や、その状態が続く場合は獣医師に相談することも検討しましょう。動物病院に行く際には、その状況を正確に伝えることが大切です。とくに動物病院に連れてきている段階では、犬は起きている事の方がほとんどです。
なので、診察する前にまずは眠っている時の様子を動画で撮影しておきましょう。その時にどんな寝言を言っているのか、体の動きなどの変化もわかるように撮影しましょう。こうした状況がいつから続いているのか、前後における環境の変化についても説明することが大切です。口頭で伝えることが難しい場合は、ノートやメモにまとめておくと、より正確に相談することができます。また、獣医師が病状を判断する際の重要な資料にもなります。
とくに不自然な寝言が長く続いている場合は、病気やケガが潜んでいる場合があります。ケガや痛みが続くことによって、眠りが浅くなっている可能性もあるので、心配な場合は早目に相談するようにしましょう。
寝言やいびきの他にこんな行動には要注意
寝言やいびき以外に、注意すべき行動のひとつとしてあげられるのが、呼吸が止まったり、激しい動きを見せたりする場合です。また、ちょっとした動きがだんだん激しさを増しているような状況も注意が必要です。このような行動が長時間続いている場合や、一日で何度も繰り返している場合は、呼吸器や脳における疾患の可能性も考えられます。
震えにも要注意
寒さによる体温異常ではなく、小刻みに震えが繰り返している場合は、痙攣発作の可能性があります。てんかんや脳神経系の疾患は、痙攣を起こす場合がありますが、寝ているときに起きることもあります。またてんかんの場合は脳の一部分のみが興奮状態となり、そこに関係する体の部分だけが痙攣する場合もあります。異常な震えが見られる場合も、早急に獣医師に相談しましょう。
犬に快適な睡眠を取らせるための対策は?
犬も快適な睡眠環境を得ることができると、体がリラックスします。そのためには日頃から良質な睡眠を取らせることが大切です。睡眠の質を高めるためには、日中の活動をアクティブにすることです。適度な運動でストレスの発散や適度に疲労感を与えてあげましょう。
また、バランスのいい食生活で腸内環境の正常に保つことも大切です。食生活は睡眠にも関係してきます。こうした対策は犬の年齢を問わず重要です。シニア犬(老犬)だからといって一日中寝かせるのではなく、体調に合わせた運動や遊びで体を使いストレスを発散させ、食事も大切にしてあげましょう。快適な睡眠は、犬全般の健康維持と長生きにも繋がります。
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。