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ふくふく動物病院院長。得意分野は皮膚病。飼い主とペットの笑顔につながる診療がモットー。キャバリアと5匹の保護ねこ、わんぱくなロップイヤーと一緒に暮らしている。
犬は昼も夜もすやすやと眠る生き物です。安らかな寝顔に癒やされつつ、「1日に何時間寝ているのだろう?」と疑問に思った方もいるでしょう。なかには、愛犬があまりにも眠ってばかりいて、心配になってしまった経験がある人もいるかもしれません。ただ眠っているのかそれとも具合が悪いのか、判断の基準はどこなのでしょうか。そこで今回は、アイビー・ペットライティング代表の平松育子先生に教えてもらった、犬の寝る時間が長い理由や平均の睡眠時間、寝相やいびきから何がわかるのかについて解説していきます。
目次
- 一般的な犬の睡眠時間は12〜14時間ほど
- 【年齢別】犬の睡眠時間
- 【犬種別】犬の睡眠時間
- 犬の睡眠時間が長い理由とは?
- 犬に快適な睡眠を取らせる方法は?
- 睡眠中の寝相から犬の気持ちがわかる!?
- 犬の睡眠時間が長い場合は病気の可能性もあるの?
- 犬の睡眠時間が短いときは?
- 睡眠不足が犬の健康状態に与える影響
- 犬が睡眠中にいびきをしていたら?
- 犬のいびきを解消するための方法
- 犬の睡眠障害を解消するために病院に行くべき?
- まとめ
一般的な犬の睡眠時間は12〜14時間ほど
犬は人間と比べると睡眠時間が長い傾向にあり、1日12〜14時間ほど眠ると言われています。ただし、この数値はあくまで目安です。犬の1日あたりの睡眠時間は年齢や犬種、飼育環境、性格などによって変わってくるため、個体差が生まれやすくなっています。
【年齢別】犬の睡眠時間
犬も人間のように、子犬期、成犬期、シニア犬とライフステージが進むごとに睡眠時間が変わります。
子犬の睡眠時間
1歳ごろまでの子犬期はとくに長い睡眠時間が必要で、1日平均18~19時間ほど寝て過ごすこともあります。子犬の場合は起きている間にいろんなことを学習するので、たくさんのエネルギーを消費します。そのため、体力を回復するためにより長い睡眠時間が必要です。
成犬の睡眠時間
1歳~7歳ごろ(大型犬は5歳ごろまで)になると、犬の睡眠時間は1日あたり平均12~14時間ほどに短縮します。人間よりも2~3時間多く眠っていることになりますが、これも体を休めるために必要な時間です。散歩や運動によって発散したエネルギーを蓄えるためには、これくらいの時間が必要と言われています。
シニア犬の睡眠時間
7歳(大型犬は5歳)を迎えてシニア犬になると、1日平均18~19時間ほど眠ります。睡眠時間が増える原因は、外部刺激が鈍くなり、体力も衰えるためです。疲労から十分回復するために、長い休息時間を求めるようになります。そのためシニア犬のなかには、ほとんど1日中横になっている犬もいます。シニア犬でこのような状態になっている場合は、健康に異常がなければゆっくり眠らせてあげましょう。
【犬種別】犬の睡眠時間
小型犬、中型犬、大型犬に分けて、睡眠時間の目安を紹介します。
小型犬の睡眠時間
一般的に小型犬は、1日10〜15時間ほど眠ります。犬種ごとに小型犬の睡眠時間を見てみると、チワワは10~12時間、ポメラニアンは12〜13時間程度、ミニチュア・ダックスフンドや柴犬は11〜15時間程度とややバラつきがあります。日本でも人気のトイ・プードルは、1日14時間程度と比較的長めです。
中型犬の睡眠時間
中型犬の睡眠時間も、小型犬と同じく10〜15時間ほどです。中型犬で人気のあるフレンチ・ブルドッグやコーギーの睡眠時間は、1日平均12〜15時間となっています。
大型犬の睡眠時間
大型犬は活動量が多いため小型犬や中型犬と比較すると睡眠時間が長めで、1日に20時間ほど眠る子もいます。犬種ごとに大型犬の睡眠時間を見てみると、シベリアン・ハスキーやボーダー・コリーは12時間ほどとやや短めで、セント・バーナードやマスティフは16時間ほどです。ゴールデン・レトリーバーは18〜20時間ほどと、大型犬のなかで見ても長めに眠る傾向にあります。
犬の睡眠時間が長い理由とは?
犬の睡眠時間が長いのはちゃんとした理由があります。まずはその理由をしっかりと把握してみましょう。
野生時代の名残
犬の睡眠時間が多い理由は野生時代に生活していた頃の名残であると言われています。犬の祖先といえばオオカミです。オオカミは狩りをして生活をする生き物で、獲物を捕まえるために自分たちの身が見えにくい夜中に活動していました。夜中に活動するため、昼間はできるだけ体力を温存するために寝て過ごしており、その名残が今も残っていると言われています。犬は人間との共存により夜行性ではなくなりましたが、今も睡眠の習性は残っているようです。
レム睡眠の割合が大きいため
犬も人間と同じように、浅い眠りの「レム睡眠」と深い眠りの「ノンレム睡眠」を繰り返しています。人間と違うのは、犬のレム睡眠とノンレム睡眠は小刻みに繰り返されることです。この睡眠パターンは「多相性睡眠」と呼ばれていて、1回あたりの睡眠時間も非常に短くなります。反対に、まとまった時間眠る睡眠パターンを「単相性睡眠」と呼びます。人間も生まれたばかりの赤ちゃんは多相性睡眠ですが、成長とともに単相性睡眠に移行するようです。
犬の詳細な睡眠パターンはまだ研究段階ですが、野生の名残によりほとんどがレム睡眠だと言われています。オーストラリアの研究では、夜8時間の間に「睡眠16分・覚醒5分」という21分周期が平均23回繰り返されたという実験結果が出たようです。この睡眠パターンも野生の名残で、外敵や獲物が来たときにすぐ行動できる状態にするためのものと言われています。
一方で犬にとってのノンレム睡眠は、その日の学習や経験を整理する効果があります。そのため、犬がトレーニングでいろんなことを学んだり、体をよく動かしたりしているときは、ノンレム睡眠になっている合図かもしれません。
犬に快適な睡眠を取らせる方法は?
犬に十分な睡眠を取ってもらうためには、飼い主が快適な睡眠環境を作ってあげることが大切です。
安心して眠れる寝床の確保
犬にとって心地よい寝床をセッティングすることで、リラックスして眠りやすくなります。快適な睡眠には快適な環境も必要不可欠なので気を配ってあげましょう。
犬は硬い床に寝ると床ずれのリスクがあります。そのため、犬のサークルやケージのなかには、犬用ベッドやクッション、バスタオルなど柔らかいものを寝床として用意しましょう。
また、犬と飼い主が一緒のベッドや布団で寝るのも問題ありません。しかし、犬の睡眠時間は人間よりも長いため、別の場所で寝るためのトレーニングも必要です。犬専用の柔らかい寝床を用意して、快適な睡眠環境を整えてあげてください。
寝床とトイレの距離を離す
犬は寝床を清潔に保つ習性があり、排泄物の近くで寝るのを嫌がる生き物です。寝床とトイレを近くにおいていると、寝床やトイレのトレーニングが難航するリスクもあるため、配置には注意しましょう。トイレトレーはケージから離れた場所に設置したり、広いケージへと買い替えたりといった対策をしてみてください。
犬にとって快適な温度と湿度にする
犬が快適に過ごせる室温は22℃、湿度は60%位が目安と言われているのでエアコンなどを上手に使い設定してみてください。
適度な運動をさせる
質の良い睡眠は適度な疲労感が必要です。適度な運動をすることで、疲労感を体に与えてあげましょう。
睡眠中の寝相から犬の気持ちがわかる!?
うつ伏せや横向き、仰向けなど、犬にもさまざまな寝相が見られます。これらの寝相も、犬の睡眠状態を表すサインなので合わせて確認しましょう。
丸くなって眠っている場合
犬の一般的な寝相として知られている姿勢で、野生の犬やオオカミにも見られます。足と尻尾を抱え込むようにして寝ることで、小さく丸くなる姿勢を作ります。これにより、外敵から身を守ることができると同時に周囲から注目されにくく、お腹を保護することもできるので犬にとって一番安全な体勢と言えます。また、体の熱を逃さないようにする時も、体を丸くして眠ります。
仰向け・横向きの場合
仰向けは犬がおへそを出して眠っている状態で「へそ天」とも呼ばれます。この状態で眠っている場合は犬が安心している状態です。急所であるお腹を見せるほど、飼い主を信頼しこの環境は安全であることを確信しているからこその寝相といえます。同じようにリラックスしている事を表す寝相が横向きです。この場合も快適な環境で快適な場所で過ごしていることを表しています。
うつ伏せ
うつ伏せで寝ている状態は、警戒している気持ちを表します。この時はあごを何かにちょこんと乗せた状態になっており、何かあった時にすぐ起き上がることができる体勢を取っています。また、お腹を冷やさないように保護する意味もあります。ちなみにうつ伏せで足をピンと伸ばしている場合は、警戒しながらも少しリラックスしている状態を表します。
犬の睡眠時間が長い場合は病気の可能性もあるの?
基本的に犬の睡眠時間が長いのは、習性によるものが大きいですが、病気が原因の可能性もあります。そのサインを見逃さないようにしましょう。
犬の睡眠時間が極端に長い場合に疑われるのは、ホルモン(内分泌系)や中枢神経系などの疾患です。中枢神経系の病気ではナルコレプシーがあり、興奮時や喜んでいる時など感情を出したときに突然睡魔に襲われてしまう病気です。この病気は根本的な治療法がなく、中枢神経に作用する薬を与えることで治療を目指します。
甲状腺機能低下症
ホルモンの疾患で代表的なのが甲状腺機能低下症と呼ばれる病気です。これは甲状腺ホルモンの分泌が減少することで、体のあらゆる機能が鈍くなってしまうという病気です。具体的には動作の鈍りや皮膚色素の沈着や脱毛、低体温で暖かい場所でも寒がるといった症状が見られます。甲状腺機能低下症はどのような犬種でも発症します。また、これらの病気になると、重度になるにつれ眠っている時間が長くなる傾向にあります。
犬の睡眠時間が短いときは?
愛犬の睡眠時間が過度に短い場合は、睡眠不足になっているかもしれません。ここでは犬が睡眠不足になる原因と、体への影響を紹介します。
犬が睡眠不足になる原因
今まで普通に生活を送れていたのに、犬が急に睡眠不足になった場合は何かしら原因が隠れています。嘔吐や下痢などの消化器症状、咳を始めとした呼吸器疾患などの病気や老化などから睡眠不足になることも考えられますが、原因のひとつとしてストレスも有力です。どのようなストレスの種類があるのでしょうか。
運動不足や飼い主さんとの関係が原因の場合
睡眠不足の原因に大きく関係しているのがストレスです。そのひとつとして運動不足が考えられます。散歩の量が足りないなど、十分に体を動かすことができずにいると、ストレスがたまってしまい睡眠不足となり、何度も目が覚めてしまうということも考えられます。
また、飼い主さんに構ってもらえないこともストレスにつながります。遊ぶ時間やしつけの時間などを確保し、一緒に犬と触れ合うことを心がけて下さい。ほかにも、犬を飼い主さんの家に迎え入れた際、環境に適応できず眠れなくなるということも考えられます。このような場合も、不安を軽減させてあげるように丁寧に寄り添ってあげることが大切です。
周辺環境が原因の場合
音や光など周辺環境によって睡眠不足を誘発している場合もあります。例えば、家の近所で工事をしている場合や集合住宅で新しい隣人が引っ越してきた場合などは、音に関する環境が変わります。ほかにも部屋の電気がつけっぱなしなど、明るすぎることが原因で上手く眠ることができなくなっている可能性もあります。人間と同じく、犬も少し暗い場所の方がゆっくり眠ることができるので配慮してあげましょう。
とくに神経質な犬の場合はこうした環境変化に敏感になっている可能性があるので、自分の犬がどういった環境を好むのか観察しつつ、適切な環境を整えてあげることが必要です。
睡眠不足が犬の健康状態に与える影響
睡眠不足は人と同じように犬の健康状態にも悪影響を及ぼします。どのような影響があるかご紹介します。愛犬の健康を保つためにも参考にしてみてください。
犬の性格が変化する可能性がある
犬が睡眠不足となることでストレスが溜まり、攻撃的になったり飼い主さんの言うことを聞かなくなったりする可能性があります。急に怒りっぽくなったり、反抗的な態度を取ったりするようになったら注意しましょう。
ほかにも、無駄に吠えるようになる、ゴミ箱を漁る、部屋の観葉植物を倒したりするなど、落ち着きのない行動出た場合は注意しましょう。このような行動が見られる背景には、睡眠不足が大きく関係している可能性があります。
食欲や免疫力も落ちてくるだけでなく、寿命に影響することも
睡眠不足で食事量が落ちてきたり、睡眠不足で免疫力が落ちてきたりすることも考えられます。この状態が続くと他の病気にかかる可能性も高くなるので該当する場合は動物病院へ早めの相談を心がけましょう。
場合によっては、寿命に影響することもあります。睡眠不足は心身ともに大きな影響を及ぼします。とくに外部からの不快な刺激や環境は、犬の睡眠を大きく及ぼします。それが引き金となり、下痢や嘔吐などの体調不良につながることも考えられます。小さな体調不良が大きな健康上のトラブルに繋がっていくこともあるので、十分注意しなければなりません。
犬が睡眠中にいびきをしていたら?
犬も眠りながらいびきをかくことがあります。いびきは基本的に犬がリラックスしているサインですが、病気の症状である可能性もあるため注意が必要です。ここでは、犬のいびきについて解説していきます。
犬がいびきをする原因
いびきは寝ている間にのどや気管が狭くなり、空気が振動することで生じるものです。犬がいびきをかいているのは、リラックスしている状態を表していますが、そのほかにもいくつか理由があります。
肥満によるもの
太り過ぎの場合はのどの周辺に脂肪がついている場合があります。そのため喉が狭くなってしまい、いびきが出てしまいます。健康診断などで肥満が発覚した場合は食生活や生活習慣を見直す必要があります。
犬のいびきを解消するための方法
いびきを解消するにはその原因に応じた対策を取る必要があります。肥満の場合であれば食事制限や運動を行うことによって、ダイエットをする必要があります。
呼吸器が苦しいことでいびきが出てしまう場合は、マッサージをしてあげることが効果的です。気道をまっすぐにさせて呼吸がしやすいように枕などを用意してあげるといいでしょう。病気によるいびきの場合にはその病気に対しての治療を行うことでいびきが軽減するケースもあります。
犬の睡眠障害を解消するために病院に行くべき?
いびきの変化や睡眠不足が継続するなど睡眠障害で悩んでいる場合は動物病院へ連れて行くことも検討しましょう。獣医師に病状を伝える際は睡眠時間の変動をしっかり伝えてください。変化が見られるようになった時期や、一日の平均睡眠時間を把握することが大切です。
可能であれば呼吸状態やいびきの状態がわかる動画などを撮影しておくといいでしょう。また、生活環境や食生活などいびきが見られるようになってから変更した点を説明することも、診断の判断材料となります。問診の際はしっかり伝えておきましょう。
まとめ
犬は野生だった頃の名残で浅い睡眠を繰り返すため、睡眠時間は1日の半分以上を占めます。ただし、睡眠時間が過度に長かったり短かったりする場合、病気につながる可能性もあります。犬の健康を守るためにも、安心して眠りにつけるような睡眠環境を用意してあげましょう。
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