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博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。evergreen pet clinic ebisu行動診療科担当。日本獣医行動研究会研修医。藤田医科大学客員講師。
長く美しい毛並みと人懐っこい性格が人気のアメリカン・コッカー・スパニエル(アメコカ)。可愛らしい外見だけでなく、俊敏でタフな性質も持ち合わせており、散歩や屋外での活動も大好きです。犬を飼う際には、そうした犬種の性格や特性に合わせて飼育環境を整え、コミュニケーションをとることが大切です。そこで今回は、アメリカン・コッカー・スパニエルの性格の特徴や、しつけの仕方、飼育する上での注意点などを解説します。
目次
- アメリカン・コッカー・スパニエルの歴史やルーツは?
- アメリカン・コッカー・スパニエルの体高・体重は?
- アメリカン・コッカー・スパニエルの平均寿命は?
- アメリカン・コッカー・スパニエルの毛色の種類や特徴は?
- アメリカン・コッカー・スパニエルの性格の特徴は?オスとメスで違いはある?
- アメリカン・コッカー・スパニエルを飼うのに向いている人は?
- アメリカン・コッカー・スパニエルの外見や吠え声の特徴は?
- アメリカン・コッカー・スパニエルがかかりやすい病気と、その予防法は?
- アメリカン・コッカー・スパニエルの食事で気をつけることは?
- アメリカン・コッカー・スパニエルの日常のお手入れで気をつけることは?
- アメリカン・コッカー・スパニエルのしつけの仕方と注意点は?
- アメリカン・コッカー・スパニエルを散歩させる際に気を付けることは?
- アメリカン・コッカー・スパニエルにおすすめの遊びやトレーニングは?
- アメリカン・コッカー・スパニエルを飼う際の注意点は?
アメリカン・コッカー・スパニエルの歴史やルーツは?
アメリカン・コッカー・スパニエルは、イギリス原産のコッカー・スパニエルが、移民とともにアメリカに渡ったのがルーツとされています。イギリスのコッカー・スパニエルが鳥類の一種であるヤマシギの猟に利用されていたのに対し、アメリカではヤマシギより一回り小さいウズラが狩りの対象とされました。獲物の大きさに合わせてコッカー・スパニエルの体も小さく改良され、1945年にアメリカン・コッカー・スパニエルとして新たな犬種に登録されました。
アメリカン・コッカー・スパニエルの体高・体重は?
中型犬に分類されるアメリカン・コッカー・スパニエル。平均的な体高と体重を確認しておきましょう。
体高
平均的な体高は、オスは約38cm、メスは約35cmです。
体重
平均的な体重は、オスは約11~13.5kg、メスは約9~11kgです。
アメリカン・コッカー・スパニエルの平均寿命は?
アメリカン・コッカー・スパニエルの平均寿命はおよそ12~15歳。他の中型犬と比べると、比較的、長生きする犬種といえます。なお、犬の平均寿命には個体差があり、飼育環境などによっても変わってきます。
アメリカン・コッカー・スパニエルの毛色の種類や特徴は?
長く美しい被毛が印象的なアメリカン・コッカー・スパニエル。ここからは、毛色の種類や毛質など被毛の特徴をご紹介します。
【主な毛色】
アメリカン・コッカー・スパニエルの毛色は単色、2色で構成されるパーティー・カラー、3色のトライカラーなど、さまざまなバリエーションがあります。
ブラック・バラエティー
「ジェット・ブラック(純黒)」と呼ばれる黒の単色。目の上や頬、胸など部分的にタン(黄褐色)が入ったブラックも含まれます。
アスコブ・バラエティー(ブラック以外の単色)
ブラック以外の単色には、「バフ」と呼ばれる明るいクリーム色や暗いレッドなど様々な種類があります。それらをまとめて「アスコブ・バラエティー」と総称します。
パーティー・カラー
ブラック&ホワイト、レッド&ホワイト、ブラウン&ホワイトなど明確に区別できる2色以上の毛色で構成されるのがパーティー・カラーです。なお、2色のうち1色はホワイトと規定されています。
トライカラー
ブラック・ホワイト・タンの3色で構成された毛色。背中から脚までは基本色となるブラック、胸にホワイト、目の上や頬、四肢にタンのポイントが入るのが一般的です。
出典:一般社団法人 ジャパンケネルクラブ,アメリカン・コッカー・スパニエル-AMERICAN COCKER SPANIEL,2019/2/27
https://www.jkc.or.jp/archives/world_dogs/2050
【被毛の特徴】
アメリカン・コッカー・スパニエルはダブルコート(上毛と下毛の二層構造)の長毛種で、毛質にはストレートと巻き毛の2種類があり、一本一本の毛は柔らかく絡まりやすいのが特徴です。カットをしないと伸びた毛が毛玉になりやすく、冬場は静電気も毛玉の原因になります。また、皮脂分泌による油汚れが目立ちやすいため、サロンカットの際にはしっかりとシャンプーをしてもらいましょう。
抜け毛の量が多い
太くて硬い上毛は換毛期による生え変わりはなく、一年を通して自然に抜け落ちます。一方、下毛は換毛期になるとごっそりと抜け落ちるため、抜け毛の量は他の犬種と比べて多いといえます。ブラッシングを怠ると抜け毛同士が絡まり、ほぐすのがとても手間になってしまいます。
【カットスタイル】
アメリカン・コッカー・スパニエルの代表的なカットスタイルをご紹介します。
スタンダードカット
足元まで伸びる長い被毛を活かしたカットで、艶を帯びたストレートの長毛の美しさを際立たせた仕上がりになります。ドッグショーなどに出場するアメリカン・コッカー・スパニエルの定番カットです。このスタイルを維持するには、毎日の念入りなブラッシングが欠かせません。
サマーカット
全身をバリカンで短くカットしたスタイル。お手入れが楽なので、ブラッシングがこまめにできない場合におすすめです。全身ではなく、おなか周りと足の被毛を短くするスタイルも汚れを防止するのに適しています。
トップノット
前頭部から頭頂部にかけての長い被毛をお団子のように結ぶスタイル。リボンや飾りなどをつけてアレンジでき、可愛さも抜群です。目に被毛が入りにくくなるので、目の疾患の予防にもつながります。
アメリカン・コッカー・スパニエルの性格の特徴は?オスとメスで違いはある?
それでは、アメリカン・コッカー・スパニエルの性格の特徴を見ていきましょう。
穏やか
性格は穏やかで明朗な犬が多く、号令を覚えるのが得意で、訓練性能も高いといえます。
スタミナがある
アメリカン・コッカー・スパニエルは、もともとウズラの狩りで猟師のサポートをするために飼育されていたことから、見た目の可愛さからは想像できないほどの俊敏さやスタミナが生まれつき備わっています。
怖がりな一面もある
アメリカの研究では、飼い主への攻撃性と見知らぬ人に対して怖がる傾向が、ほかの人気の犬種に比べてやや高いことがわかっています。愛犬の性格をしっかりと理解し、適切なケアをすることで信頼関係を高めることが大切です。
オスとメスで性格に違いはある?
オスはメスに比べて遊び心があり、活発で自発的な行動が見られます。去勢していないオスの場合は、相手の犬に対して強気になったり、縄張りを主張したり、気が散りやすい面もあります。
一方、メスはオスよりしつけや訓練が簡単で、飼い主との精神的なつながりが強い傾向があります。ただ、要求が強くなりすぎることもあるので、日頃のしつけでしっかりとコントロールしましょう。
出典:Serpell,J.A.& Duffy,D.L.,Dog Breeds and Their Behavior,Chapter 2,2015
アメリカン・コッカー・スパニエルを飼うのに向いている人は?
アメリカン・コッカー・スパニエルには、人によって飼育の向き・不向きはあるのでしょうか?
アメリカン・コッカー・スパニエルは初心者向きの犬?
明るい性格に加え、小型で落ち着きもあるため、初心者でも比較的扱いやすい犬種です。一方、見た目にこだわりたい場合は、毎日の長時間のブラッシング、月2回程度のトリミングサロンでのシャンプーやカットが必要になるため、手間と時間と費用がかかる犬種ともいえます。毎日の被毛のケアを行える時間的な余裕があるとよいでしょう。
アメリカン・コッカー・スパニエルを飼うのに向いている人は?
運動欲求が高く、活発な若い時期には屋外での活動を好むため、たっぷりとした運動量を確保でき、愛犬と一緒に出かけるのが好きな人には向いているでしょう。毛量の豊かさゆえ、アクティブな活動をすると汚れがつきやすいという特徴もあります。日々のケアや絡みやすい被毛のお手入れを苦に感じず、楽しんでできる人におすすめです。
アメリカン・コッカー・スパニエルの外見や吠え声の特徴は?
アメリカン・コッカー・スパニエルの外見や吠え声には、どのような特徴があるのでしょうか?
外見
猟犬の中では最も小型の部類で、短めの鼻と丸い頭部が特徴的です。小型ながらも骨格と筋肉の均整が取れており、特に前半身が大きく筋肉質です。真っ直ぐな前脚の上に肩があり、程よい角度で腰部に向かってわずかに傾斜しています。
吠え声
吠えるときは、大型犬のような太い大きな声を出します。一日中家の中で過ごしていると欲求不満になり、過剰に吠える傾向があるので、ストレスを溜めないようにすることが大切です。
アメリカン・コッカー・スパニエルがかかりやすい病気と、その予防法は?
愛犬と長く一緒に過ごすため、病気の予防には気を配りたいものです。アメリカン・コッカー・スパニエルがかかりやすい病気とその予防法について知っておきましょう。
結膜炎
結膜炎は、まぶたの内側の結膜と呼ばれる組織が炎症を起こす眼疾患です。感染性と非感染性の2種類があります。アメリカン・コッカー・スパニエルの場合は、目の上の長い毛が目に入りやすいため、角膜の損傷から細菌などが繁殖しやすくなり結膜炎にかかりやすいといえます。被毛が目を傷つけないようにカットするなどの配慮が必要です。眼の充血や目やに、かゆみなどの症状が見られたら動物病院を受診しましょう。
チェリーアイ
正式名を「第三眼瞼腺(だいさんがんけんせん)脱出」といい、目頭にある第三眼瞼(瞬膜)が飛び出してしまう病気です。眼の周りの皮膚のたるみによって起こる疾患で、遺伝的な要因によるものが多く、予防は難しいものの、手術によって元に戻すことができます。腫れて飛び出た部分がこすれてしまうことで、犬が眼を気にして前足でかいたり、涙がたくさん出たりして結膜炎を併発することもあるため注意が必要です。
緑内障/白内障
白内障は、眼の中の水晶体が白く濁ってしまう眼疾患で、視力が低下し、悪化すると失明に至る恐れもあります。緑内障は、眼圧が高まることで眼が充血したり、瞳孔が変色したりする疾患です。アメリカン・コッカー・スパニエルは白内障や緑内障になりやすいため、予防もかねて日頃から眼の様子をよく観察してあげましょう。眼が白くなっていたり、飛び出ていたりする様子が見られたら、早めに動物病院に受診することをおすすめします。
膝蓋骨脱臼
膝蓋骨脱臼は、膝の皿の骨を支える靭帯がずれることで痛みが生じる疾患で、アメリカン・コッカー・スパニエルの場合、成長期に骨や靭帯、筋肉の形成に異常が生じることで発症します。歩くときに、足を地面につけないように引き上げてスキップのような動作をしたり、ひきずったりすることがあります。肥満や過度の運動や衝撃による膝関節への負担が症状を悪化させることもあるので注意が必要です。
外耳炎
アメリカン・コッカー・スパニエルは垂れ耳のため、耳の中の空気が循環しづらく、マラセチア菌などが異常に増えることで、外耳道の腫れやかゆみを伴う外耳炎になりやすい犬種です。毎日、耳道の見た目とにおいをチェックし、異常がないかを確認することが予防につながります。かゆそうに後ろ足で耳の後ろを掻こうとしていたり、頭を振ったりする動作が多く見られるようになったら、早めに病院を受診しましょう。
中耳炎/内耳炎
中耳炎や内耳炎の主な原因は、外耳炎を適切に治療できずに悪化したことによります。細菌や真菌(カビ)の繁殖、耳ダニなどの寄生虫など外的な要因だけでなく、アトピー性皮膚炎やアレルギー体質、中耳の腫瘍なども原因になります。耳を清潔に保ち、外耳炎から波及する炎症を防ぐことが予防につながります。発症してしまった場合は、動物病院で内服と外用薬で治療します。
脂漏性皮膚炎
アメリカン・コッカー・スパニエルは、遺伝性の脂漏症を起こしやすい犬種です。脂漏症は表皮の新陳代謝が過剰になり、正常時より極端に多く上皮が剥がれたり皮脂が分泌されたりして、皮膚がベタベタとした見た目になる症状です。過剰な皮脂分泌のために独特の臭いも発生します。シャンプーなども含め、動物病院で治療します。
拡張型心筋症
拡張型心筋症は心臓の筋肉が薄く伸びて収縮力が低下することによって、血液の循環不全を起こす疾患です。遺伝性の要因が考えられていますが、はっきりとした原因はわかっていません。アメリカン・コッカー・スパニエルの場合、タウリンとL-カルニチン不足といった栄養性の原因も疑われています。
アメリカン・コッカー・スパニエルの食事で気をつけることは?
健康な体を維持するためにも、日々の食事選びはとても重要です。アメリカン・コッカー・スパニエルの食事では、どのような点に気をつけるべきなのでしょうか?
フードの選び方
アメリカン・コッカー・スパニエルはもともと猟犬で運動活性が高いため、運動量が落ちると太りやすい犬種です。肥満を予防する意味で、低脂肪・低カロリーのドッグフードを選ぶとよいでしょう。
かかりやすい疾患の予防という観点で見ると、拡張型心筋症の懸念があるため、血液の流れを良くするDHAやEPAといったオメガ3系オイルがおすすめです。炎症性の疾患を予防するには、消化に負担がかからず免疫力を高めることのできる良質な肉や、魚由来の高たんぱく質で新鮮な素材が含まれたものを与えるとよいでしょう。
食べさせ方
もともとの肥満になりやすい体質に加え、避妊・去勢をしていると代謝が落ちてさらに体に脂肪がつきやすくなります。1日に必要な食事量を守り、1日2回以上の食事が理想的です。可能な限り1回に大量の食事を与えるのは避けてください。小分けにして頻繁に食事をあげることで、より多くのカロリーを消費します。
※スヌード着用時の例
また、アメリカン・コッカー・スパニエルの垂れ耳や長い被毛は食事の邪魔になったり、フードが付着して汚れやすいため、食事をするときには犬用のスヌードを着用することをおすすめします。スヌードは、散歩のときの汚れ対策にも効果を発揮してくれます。
アメリカン・コッカー・スパニエルの日常のお手入れで気をつけることは?
アメリカン・コッカー・スパニエルの美しい毛並みをキープしたり、病気を予防するには毎日のケアが欠かせません。日々のお手入れのポイントを押さえておきましょう。
美しい毛並みをキープするためのブラッシング
アメリカン・コッカー・スパニエルは、毛量が非常に多く長いため、毛並みを綺麗に整えるには、できれば2日に1回程度はブラッシングをし、1か月に一度はドッグサロンに連れて行く必要があります。脂漏気味の犬は月に2回程度のシャンプーを自宅で行ってあげるようにしましょう。
耳のトラブルを予防するために垂れた耳を清潔に保つ
垂れた大きな耳は耳道で雑菌が繁殖しやすく、外耳炎などのリスクを抱えています。毎日欠かさずチェックをし、見えている範囲を優しく拭いて清潔に保つ必要があります。硬くなってこびりついてしまった耳垢を落とそうと力を入れて耳を擦ったり、綿棒を使ったりすると、耳の表面を傷つけてしまうことがあるので、難しい場合は動物病院で処置してもらいましょう。
皮脂分泌が活発なのでシャンプーをする
アメリカン・コッカー・スパニエルは、表皮から分泌される皮脂量が多い犬種です。皮脂はべたつきや悪臭の原因になるたけでなく、放置すると皮膚炎になってしまうこともあります。月に2回はシャンプーをして、皮膚を清潔に保ちましょう。ただし、シャンプーを毎日してしまうと油分を取り去りすぎて、かえって皮脂の分泌を増やしてしまうこともあるので、シャンプーのし過ぎには注意が必要です。すすぎ残しは皮膚炎の原因になるのでぬるめのお湯(37~38℃)で十分に洗い流してください。
月1回はトリミングにいく
一般的なアメリカン・コッカー・スパニエルは、カットしないでいると足元まで長い毛に覆われてしまいます。ショーなどに出る場合は例外ですが、室内犬として飼育しやすくするためには、月に1回程度トリミングに通い、全身の毛を短くカットすることをおすすめします。
スキンシップとしてお手入れに時間をかけてあげる
悩みの種になりやすい毛玉は、絡まってしまうとほぐすのが大変で、毛玉の下にある表皮の通気性が下がって皮膚炎の原因にもなります。毛玉になるのを防ぐため、柔らかくて量の多い下毛を毎日ブラッシングするとよいでしょう。嫌がらせないように、楽しい雰囲気を作ったり、おやつなどのご褒美を用意したりして、スキンシップの一環として行う意識が大切です。ブラッシングは被毛の状態を保つだけでなく、表面の異常にいち早く気づくことができるという利点もあります。コミュニケーションと異常のチェックの両方を兼ねてブラッシングしてあげてください。
毎日歯磨きをする
犬は歯ブラシを使った口腔ケアをしないと、短期間に歯石ができるといわれています。歯石が大きくなると、歯肉や歯周ポケットを圧迫して歯周病の元になります。歯磨きは毎日するようにしましょう。
アメリカン・コッカー・スパニエルのしつけの仕方と注意点は?
お手入れに加えて、アメリカン・コッカー・スパニエルを飼うときに欠かせないのがしつけです。適切な時期、適切な方法でしつけをすることで、愛犬の問題行動を防ぎましょう。
しつけを始める時期
しつけは愛犬を家に迎えたらすぐに始めましょう。特にトイレトレーニングは重要。トイレの場所は、最初にうまく誘導することができればすぐに覚えてくれます。また、興奮して走り回ったり、攻撃的になってしまったりすることがあるので、号令を使っておとなしくさせる練習もすぐに始めましょう。号令は、「お座り」と「伏せ」が効果的です。
社会化期のしつけの仕方
生後3~4か月までを社会化期と呼びます。見知らぬ人や犬、物や音などに対して怖がりすぎず柔軟に対応できるようになる時期です。この時期に、犬が成長後に出会うかもしれない状況や場所に慣らしておきましょう。目新しい物や見知らぬ人と接する機会をつくることで、社会化期が終わっても、新しい刺激を受け入れやすくなります。
若齢期のしつけの仕方
社会化期を過ぎ、1歳くらいまでの若齢期には、体がぐんぐんと成長し体力がつき、強すぎる甘噛みや家具の破壊も目立ってきます。飼い主の手や持ち物を噛んだときは毅然とした態度で「ダメ」と伝え、おもちゃなどの噛んでも良い物を与えて対処することで悪化を防ぎましょう。活動的な時期のため、散歩で飼い主を引っ張ったり、人に飛びついたりする問題行動も起こりやすくなります。号令を使っておとなしくさせる訓練に力を入れましょう。
性別の違いによるしつけの違いはある?
オスはメスより遊びが好きで活動的です。号令練習なども遊びの一環として取り入れるとすぐに上達するでしょう。一方で、メスより注意散漫になりやすく、ほかの犬がくると興奮してしまうため、初期の練習は自宅でしたほうが安心です。5分程度しか集中力が続かないので、練習の合間に遊びを入れて、飽きさせない工夫をするとよいでしょう。
メスは、オスに比べてしつけや訓練が簡単とされていますが、避妊することで屋外での号令に従いにくくなり、吠えたり興奮したりする可能性が高まります。落ち着いて散歩できるように、お座りや伏せといった号令を練習しておきましょう。
アメリカン・コッカー・スパニエルが起こしやすい問題行動
運動不足になると、過剰な吠えや飼い主への攻撃行動などが起こりやすいといえます。十分な運動量を確保して活動欲求を満たして、屋内で落ち着いて過ごせるようにしてあげましょう。飼い主が体罰などをすると極度に不安を感じ、身を守ろうとして攻撃的になることもあります。敏感な犬の場合も、飼い主の体罰や不快な反応がかえって問題行動を悪化させることになるので、犬の反応を見ながらしつけ方を決めていくことが必要です。また、とても食いしん坊な犬種なので、食事への執着が高い傾向があります。
アメリカン・コッカー・スパニエルをしつけするときの注意点
とても頭が良く訓練性能が高いため、号令を使って別の行動に誘導することができれば、穏やかに問題行動を止めさせることができます。一貫しない号令の出し方は混乱を招くことにもなるため、号令は家庭内で統一するようにしましょう。
アメリカン・コッカー・スパニエルを散歩させる際に気を付けることは?
活動的な性質のアメリカン・コッカー・スパニエルにとって、日々の散歩は運動欲求を満たす上で重要な役割を果たします。アメリカン・コッカー・スパニエルの散歩の方法や注意点を見ていきましょう。
散歩の時間、頻度
運動不足になると肥満になりやすい体質なので、肥満予防のためにも散歩は毎日欠かさずに行きましょう。1日2回、30分から1時間程度の散歩がおすすめです。特に、若齢期から成犬期はゆっくり歩く散歩では運動欲求を解消するには物足りないこともあるので、飼い主が小走りになる程度のスピードの散歩も、毎回の行程に取り入れましょう。
定期的にドッグランで思う存分動き回せる
朝晩2回の散歩だけでは運動欲求が解消されない場合、帰宅後に家の中で走り回ったり、興奮して吠え続けたりする行動が見られることがあります。その場合は、定期的にドッグランに連れて行くなどして、自由に思う存分動き回らせてあげましょう。
暑さに弱いので夏は散歩の時間帯に注意
毛量が多いため、夏の暑さが苦手です。夏場は朝夕の涼しい時間帯を選んで散歩に連れて行くことで、散歩が短時間にならず運動量をしっかりと確保することができます。
散歩後のお手入れ方法
足先の毛量が多いため、散歩中に汚れを足にたくさん着けてしまいがちです。そのため、帰宅後は丁寧に足を拭いて、ブラッシングしておきましょう。足裏と足回りの毛はすぐに伸びてしまうので、ホームケアとしてバリカンで短くしておくと汚れを落としやすいのでおすすめです。
アメリカン・コッカー・スパニエルにおすすめの遊びやトレーニングは?
狩猟犬として飼育されていたことから、獲物を追い詰めたいという願望は依然として強い犬種です。「獲物を追いかけたい」という欲求を満たすにはボール投げ(フライボール、フェッチ)など、「獲物を探し出したい」という欲求を満たすにはおやつ探し(ノーズワーク)などが向いています。
そのほか、屋外で活発な活動をさせるにはフリスビーがおすすめ。追いかけること、全速で走ることなど、この犬種の持ち味が十分に生かせる遊びです。また、とても頭が良いので飼い主との共同作業も楽しめるでしょう。
アメリカン・コッカー・スパニエルを飼う際の注意点は?
最後に、アメリカン・コッカー・スパニエルを飼うときの注意点を確認しておきましょう。
家族と一緒に過ごせる時間を多くとってあげる
飼い主との関わりに安心をおぼえる性質があります。一緒に楽しく過ごす時間があると信頼感が養われ、飼い主への攻撃性などの問題行動の予防にもつながります。
太りやすいので十分な運動と適正量の食事を与える
食いしん坊で食べる欲求が強い犬種なので、食事の与えすぎには注意し、食べたら十分な運動をさせて太らないように気をつけましょう。
熱中症に配慮して室温管理を行う
毛量が多く、暑さに弱いため、夏は熱中症になるリスクが高まります。屋内ではエアコンを使って室内の温度管理をしっかりと行い、暑さから愛犬を守ってあげましょう。お水もいつでも飲めるように常備してあげると良いです。
膝に配慮して滑りにくい床を用意する
膝蓋骨脱臼の起こりやすい犬種です。生まれつき脱臼しやすいうえに、床材が滑りやすいと膝への負担が大きくなりリスクが高まります。滑りにくい床材や敷物を選ぶなど対策を講じましょう。加えて、足裏の被毛はこまめに自宅でカットすると、肉球がちゃんと床をつかまえるようになるので滑り止めになります。
様々な疾患にかかりやすい
目や耳の病気、膝蓋骨脱臼、皮膚炎、拡張型心筋症など遺伝的にかかりやすい疾患がたくさんあります。疾患と予防法について事前に知識をつけておき、予防的なケアを実施するようにしましょう。
好奇心旺盛なので入って欲しくない場所には仕切りを設置する
活動的で高い好奇心を持ち合わせているので、一度でも立ち入ったことがある場所にはいつでも入ろうとします。犬を入れない、近づけないと決めた場所には立ち入れないよう仕切りなどを設置しましょう。
穏やかな性格で初心者でも扱いやすいアメリカン・コッカー・スパニエルですが、美しい毛並みを維持するには毎日のケアが欠かせず、愛犬のお世話に時間をかけられる人に向いています。皮膚炎や耳の病気になることも多い犬種なので、ブラッシングや日々の健康チェックは欠かせません。もらい受ける前には、その個体の健康状態や性質を良く知り、飼い主さんのライフスタイルに合うかどうかを十分に検討しましょう。
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。