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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
愛犬にはできるだけ長く生きてもらいたいというのは、どんな飼い主にも共通する願いでしょう。一方、犬種によって平均寿命には差があるというデータがあり、年齢に伴う体の変化の仕方やかかりやすい病気にも少しずつ違いがあるといわれています。今回は、chicoどうぶつ診療所の獣医師・林美彩先生に教えていただいた、日本人にはなじみ深い犬種の柴犬について、平均寿命や長生きの秘訣、かかりやすい病気やその予防方法などについて詳しく解説していきます。
目次
- 柴犬の特徴は?
- 柴犬の平均寿命は何歳?
- 柴犬の年齢による心と体の変化は?
- 柴犬を長生きさせる秘訣は?
- 柴犬の食事に関して気をつけるポイントは?
- 柴犬がかかりやすい病気とその予防法は?
- 柴犬の老化のサインは?
- 柴犬がシニア犬になったときのケアは?
柴犬の特徴は?
日本犬として昔から親しまれている柴犬。その平均体高は40cm、平均体重は9~12kg。小型犬に分類されますが、中型犬と認識されるほどの大きさの体つきをしている子が多いです。もともと猟犬や番犬としての役割を担っていた柴犬は、賢く勇敢な性格が特徴で、飼い主に対してとても忠実です。実は、柴犬のなかにもさらに種類があり、縄文柴、山陰柴、美濃柴、信州柴などに分かれます。また、最近流行の「豆柴」は犬種名ではなく、小さい柴犬どうしを交配させて繁殖した柴犬のことを指します。
柴犬の平均寿命は何歳?
柴犬の平均寿命は12~15歳といわれていて、オスとメスでは特に寿命に差はないとされています。アニコム損害保険株式会社が行った犬種別の寿命に関する調査によると、柴犬の平均寿命は、イタリアン・グレーハウンド、ミニチュア・ダックスフンド、トイ・プードルに次ぐ、第4位。他の犬種と比べても、比較的、長寿の犬種といえそうです。ギネス記録に認定されている最高齢は、なんと26歳8か月だといいます。
柴犬の年齢による心と体の変化は?
比較的長寿の犬種である柴犬ですが、年齢とともにどのような体の変化が起きるのでしょうか? 年齢別に詳しくみていきましょう。
子犬期(〜7か月ごろ)
柴犬は賢く勇敢な性格の反面、頑固なところもあるため、子犬期に社会化期をしっかりと経験させることが重要です。社会化期とは、他の犬や猫、人間といった動物に対して友好的な関係を築き、社会になじんでいくのに大事な時期のこと。この時期に、生活で直面するさまざまな刺激に慣らしておく必要があります。トレーニングやしつけなどをするのにも最適なタイミングです。
青年期(〜3歳ごろ)
体ができあがり、個性も出やすくなる時期です。しっかりとした体づくりをすることがケガの防止につながるので、適切な食事と適度な運動を心がけましょう。
壮年期(〜7歳ごろ)
柴犬は肥満になりやすい犬種のため、壮年期にはしっかりと運動させることがポイントになります。加齢に伴って運動量が減ってしまう場合には、カロリーオーバーにならないよう食事を調節することも大切です。
シニア期(8歳ごろ〜)
運動量が減ったり、好奇心の衰えなどの変化が見られる時期です。散歩に行きたがらなくなる犬もいますので、肥満にならないよう運動と食事のバランスを整えてあげることが重要です。柴犬は認知症やぼけなど、シニア犬特有の症状が起こりやすい犬種でもあるので、知育トイで脳神経を刺激したり、サプリメントなどを取り入れたりするのもおすすめです。
柴犬を長生きさせる秘訣は?
愛犬に少しでも長生きしてもらうために、飼い主はどんなことができるのでしょうか。
被毛や皮膚を清潔に保つ
柴犬は被毛が外側の硬い上毛と柔らかい下毛の二重構造になっているダブルコートの犬種で、抜け毛が多いという特徴があります。体を清潔に保つためには、毎日のブラッシングと、定期的なシャンプーを行うのがおすすめです。
口内環境のケア
歯周病の予防という点でも、口腔内ケアは非常に重要です。歯に溜まった汚れは3~5日程度で歯垢・歯石に変化してしまうため、毎食後、歯磨きすることをおすすめします。難しい場合には、サプリメントや歯磨きガム、縄状のおもちゃなどを取り入れるとよいでしょう。
運動(散歩)を行う
ストレス発散や肥満予防のためにも、散歩は健康維持の鍵になります。柴犬の場合、1日に1~2回、30分程度散歩をするようにするとよいでしょう。
適切な体重管理
見た目と触れた状態から犬の体型を段階的に評価するボディコンディションスコア(BCS)を使い、日々の変化を管理するのがおすすめです。ご自身で判断できない場合は、獣医師にアドバイスをもらいながら、運動量と食事量のバランスに気を配りましょう。
定期的に健康診断を行う
若いうちは年1回、シニア期に入ってきたら半年に1回のペースで健康診断を受けるのが理想です。
ケガを防ぐために生活環境を整える
誤飲誤食のおそれがあるものは置かないようにする、高低差がある場所はなるべくフラットにするなど、日常生活にひそむリスクを減らしていくことが大切です。
避妊や去勢手術の検討
避妊や去勢には、メリットもあればデメリットもあります。乳腺腫瘍や子宮蓄膿(ちくのう)症のリスクを減らすには避妊手術、前立腺疾患やアポクリン腺癌(がん)のリスクを減らすには去勢手術が有効ですが、避妊や去勢のあとはホルモンバランスが崩れるため、肥満になりやすくなります。それに付随してさまざまな生活習慣病を招くリスクもあります。両者を考慮したうえでの判断が必要です。
スキンシップをとる
ひとくくりに柴犬といっても、性格には個人差があります。構ってほしい、構われるのは好きじゃない、などさまざまです。ただ、体を触ることに慣れさせておくことは、病院に連れて行くときだけでなく、診察をスムーズに行うためにも大切なことなので、小さいころから体、手足先、口など全身を触られても嫌がらない・怖がらないようにトレーニングしておくことは重要です。
ストレスケアを行う
ストレスケアとして、一般的に有効なのは運動です。しかし、愛犬が何に対してストレスを抱きやすいのかは飼い主が最もよく把握できるところなので、愛犬をしっかりと観察し、対処する必要があるでしょう。
信頼できる獣医を見つける
獣医師を選ぶうえで大事なのは、飼い主と獣医師との相性です。しっかりと話を聞いてくれるか、話しやすいかどうかを1つの基準にするとよいでしょう。その他、院内の検査設備なども把握しておくこともおすすめします。
柴犬の食事に関して気をつけるポイントは?
肥満防止には、運動量と食事量のバランスが重要です。散歩の時間がいつもより短かったときはフードの量を少し減らすなど、その日の運動量に応じて食事量を加減します。栄養面では炭水化物の摂りすぎにも注意しましょう。フードを買うときは、食べ物の酸化や味が落ちるのを防ぐために、大袋ではなく1か月以内に使いきれるサイズを選ぶのがおすすめです。原材料の質や添加物の有無、保証成分値のバランスなども見るとよいでしょう。
また、日頃から色々なものを食べられるようにしておくことで、病気を患って特定のものしか食べられなくなった場合や、災害時の食餌問題にも対応しやすくなります。
柴犬がかかりやすい病気とその予防法は?
飼い主が愛犬のかかりやすい病気について知り、できるだけ予防してあげられるといいですね。以下に7つの病気についてまとめたので参考にしてください。
アレルギー性皮膚炎
食べ物だけでなく、ノミ、ハウスダストなどが原因で起こる皮膚炎で、比較的若い年齢(5歳くらいまで)に多い疾患です。免疫性疾患のため、アレルゲンの排除のほか、腸内環境を整えることも重要です。
緑内障
目の中の眼房水(がんぼうすい)の排泄障害によって、眼球圧が高くなることで視神経の障害が起こる疾患です。角膜の傷からブドウ膜炎を引き起こし、そこから緑内障を併発することもあるため、角膜を傷つけないよう、生活環境のなかで眼を傷つけてしまう原因を取り除くことが予防につながります。
認知症
柴犬に多く見られる疾患です。老齢に伴うものですが、神経の流れを整えるようなサプリメントを取り入れることで、症状のケアを行えることがあります。知育トイなどを使って脳を活性化させること、マッサージを取り入れることも予防につながります。
白内障
水晶体のタンパク質が濁ることで起こる眼疾患です。10歳以下で見られる若齢性のものは遺伝が関連していることが多いので予防法がありませんが、老齢性の場合には進行をゆっくりするためにサプリメントや点眼を用いることがあります。抗酸化作用のある食べ物の摂取も予防につながると考えられます。
外耳炎
アレルギーが原因の場合もあれば、湿度が影響する場合もあります。湿度が影響する場合には、お部屋の湿度管理や、定期的な耳掃除を行うことが重要です。
アトピー性皮膚炎
遺伝的に皮膚バリアの機能が弱く、生活環境にアレルギーを持っていることなどがきっかけとなって発症することが多いとされています。遺伝的素因の場合には予防は難しいですが、アレルギーの一種であることを考えると、腸内環境を整えて免疫を整えてあげることが、症状のケアにつながると考えられます。
膝蓋骨脱臼
膝にある膝蓋骨(しつがいこつ)が内側、もしくは外側に外れてしまう状態のことで、柴犬の場合は内方脱臼の方が多い傾向にあります。生活環境で関節に負荷がかからないよう、カーペットや滑り止めマットを使って滑らないようにしたり、過度な運動(ジャンプや、飛び跳ねるような動きなど)を避けたりすることが予防につながります。
柴犬の老化のサインは?
飼い主が愛犬の老化のサインにいち早く気づいて動物病院を受診すれば、病気の早期発見につながることもあります。
耳が遠くなる
人間と同じように、老化現象の1つとして聴力の衰えが挙げられます。ただし、老化とは関係なく、耳垢が原因の場合や、内耳炎・外耳炎などを発症しているケースもあるので、心配なときは獣医師の診察を受けるとよいでしょう。
目が悪くなる
視力低下し、目が見えにくくなるといった症状も老化現象のひとつ。白内障、緑内障などの眼疾患が根底にある場合もあるので判断には注意が必要です。
食事を食べているのに痩せていく
老化に伴って消化吸収能力が低下することで、しっかり食べていても痩せてしまうことがあります。
腰の位置が下がる
下半身の筋力低下や、関節の可動域が狭くなることで、腰の位置が低くなることがあります。
歩行が難しくなる
後肢の関節の可動域が狭くなることや筋力の低下などが原因として考えられます。散歩を嫌がる、階段を上らなくなるといった行動も見られます。
柴犬がシニア犬になったときのケアは?
ご紹介してきたように、シニア期に近づくにつれ、犬の体にはさまざまなサインが現れます。こうした老化現象は歳を重ねることで自然と起こることなので、完全に防ぐことは難しいのが現実です。しかし、少しでも健康に長生きしてもらうためには、日頃から、適度な運動、適切な食事、良質な睡眠をとらせて、ストレスをかけないような生活を送らせてあげることが大切です。