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NPO CANBE NPOつなっぐ 日本動物病院協会理事 子どもの動物福祉教育、小児病棟犬セラピー、被虐待児童へ付添犬の派遣などに注力。保護犬猫問題にも取り組む
大きな体に垂れ耳が愛らしいラブラドール・レトリーバー。聡明で穏やかな性格で、盲導犬や警察犬としても活躍しています。愛犬と長く連れ添うためにも、ラブラドール・レトリーバーの寿命がどれくらいなのかは気になるところではないでしょうか。この記事では、ラブラドール・レトリーバーを健康に長生きさせる秘訣やかかりやすい病気などについて、家庭動物診療施設・獣徳会で獣医師を務める吉田尚子先生監修のもと、詳しく解説していきます。
目次
- ラブラドール・レトリーバーの平均寿命、最高寿命は何歳?
- 人間でいうと何歳?ラブラドール・レトリーバーの年齢換算表
- ラブラドール・レトリーバーがかかりやすい病気やその予防法は?
- ラブラドール・レトリーバーを長生きさせる秘訣は?
- ラブラドール・レトリーバーの適切な運動量とは?
- ラブラドール・レトリーバーの食事に関して気をつけるポイントは?
- ラブラドール・レトリーバーの老化のサインは?
- ラブラドール・レトリーバーがシニア期に入ったときのケアは?
ラブラドール・レトリーバーの平均寿命、最高寿命は何歳?
ラブラドール・レトリーバーの平均寿命は12歳程度と言われています。大型犬の寿命としては比較的長めと言えますが、小型犬と比べると短い寿命です。これは、大型犬の遺伝子や体型からくる疾患などが多いことも関係していると考えられます。家庭動物診療施設・獣徳会で最も長生きだったラブラドール・レトリーバーは15歳5か月。なお、ギネス記録に登録されている最長寿は、なんと27歳。平均寿命を大きく上回る驚きの記録です。
被毛の種類によって寿命に差はある?
ラブラドール・レトリーバーは、被毛の色によって平均寿命に若干の違いがあるとの報告があります。全体の平均寿命が12歳であるのに対し、チョコレート色の被毛を持つ犬は平均寿命10.7歳で、他の毛色のラブラドール・レトリーバーに比べてやや短命とされています。ただし、個体差の可能性もあり、一概に言うことはできません。
オスとメスで寿命に差はある?
去勢や避妊手術を行った犬のほうが、手術をしなかった犬と比べて長生きだったというイギリスの研究結果があります。性差というより、適期の避妊手術を含めたライフステージごとの適切な飼育管理が長生きにつながると考えられます。
人間でいうと何歳?ラブラドール・レトリーバーの年齢換算表
ラブラドール・レトリーバーの各年齢を、人間の年齢に換算すると以下の表のとおりになります。
ラブラドール・レトリーバー | 人間 |
3ヶ月 | 4歳 |
6ヶ月 | 7歳半 |
9ヶ月 | 11歳 |
1歳 | 15歳 |
2歳 | 23歳半 |
3歳 | 28歳 |
4歳 | 33歳 |
5歳 | 40歳 |
6歳 | 47歳 |
7歳 | 54歳 |
8歳 | 61歳 |
9歳 | 68歳 |
10歳 | 75歳 |
11歳 | 82歳 |
12歳 | 89歳 |
13歳 | 96歳 |
14歳 | 103歳 |
ラブラドール・レトリーバーの年齢を人間の年齢に換算した場合、4歳くらいまでは4~5歳ずつ歳をとっていきますが、それ以降は加齢スピードが上がります。6〜7歳くらいからはシニア期に入ると考えていいでしょう。
ラブラドール・レトリーバーがかかりやすい病気やその予防法は?
長生きのためには、病気の予防をしっかりと行ってあげることが大切です。ラブラドール・レトリーバーがかかりやすい病気と、その症状や予防法について見ていきましょう。
悪性リンパ腫
リンパ節、脾臓(ひぞう)、肝臓など、さまざまな部位に発生する悪性腫瘍です。発生した場所で大きくなり、転移することもあります。症状や種類によってさまざまな化学療法がありますが、治療しないと進行が速く、命を落とすこともある病気です。首まわりや顎下など、触ることができる部分のリンパ節が同時に複数腫れる場合はこの病気の恐れがあります。日頃からスキンシップをして犬と触れ合うことで、早期発見につなげることができます。
肥満細胞腫
肥満細胞と呼ばれる細胞にできるガンです。肥満細胞がもつヒスタミンという物質が、さまざまな炎症を引き起こします(なお、肥満細胞は、太ってしまう肥満とは関係ありません)。皮膚上にできることが多く、皮膚ガンとしては最もよく見られるものです。悪性度の高いものは転移しやすく、命を落とす危険も高いと言えます。
なお、見た目だけで肥満細胞腫と判断することは困難です。有効な予防法もないため、日頃からスキンシップを取り、できものなどがあれば早めに動物病院を受診し、早期発見・早期治療することが重要です。外科切除と抗がん剤、放射線などを組み合わせて治療します。
血管肉腫
主に脾臓にみられる悪性腫瘍で、大型犬に多い疾患です。見た目にはわかりませんが、破裂しやすく、お腹の中で大量出血することで急な貧血になり、数時間のうちに死亡することもあります。早期発見で転移がなければ、外科手術で治療できます。
シニア期に入ったら、レントゲンやエコー検査を受け、早期発見することが予防法として最も有効です。急に元気がなくなった、呼吸が荒い、歯茎や歯肉の色が白い、といった症状が見られたら、貧血のサインかもしれません。早めに動物病院を受診しましょう。
骨肉腫
骨に発生する悪性腫瘍です。転移率が高く、発見時にすでに肺転移を伴う場合もあります。痛みが強く、四肢に発症した場合は、再発予防や緩和のために断脚手術を行うことも。予防法は特にないため、定期健診などでの早期発見を心がけましょう。また、歩き方に違和感を感じたら、早めに動物病院を受診することが大切です。
誤飲
病気ではありませんが、子犬期のラブラドール・レトリーバーは、食欲も好奇心も旺盛なため、誤飲による事故が多発します。誤飲してしまった場合、すぐに来院すれば吐かせる処置などを行いますが、気づかずに胃を超えてしまうと手術が必要になることもあります。串など尖ったものを飲み込んでしまった場合も、吐かせることができないため手術になることが多いです。予防のためには、誤飲させない飼育環境の整備が重要となります。最近はウレタンマスクの誤飲が多いので十分気をつけましょう。
胃拡張・捻転症候群
胃の中のガスによって胃が拡張し、さらに捻転を起こすことで悪化します。緊急性が高く、迅速に対応しないとショックを起こし死亡することもあります。食器を高くして食事を与えたり、食後に運動させないようにしたりすることが予防につながります。
股関節形成不全
成長期に起こる疾患で、股関節の成長がうまくいかず、関節と大腿骨の先端がかみ合わないことで、痛みや歩行の異常が現れます。足を引きずっていたり、歩行の異常が見られる場合は動物病院を受診し、治療を行うことが大切です。また、体重管理を適切に行うことで、症状の緩和が期待できます。
糖尿病
血糖値を調節する唯一のホルモンであるインスリンの作用不足によって引き起こされます。食事から消化吸収された糖が細胞内に取り込まれず、血液にとどまって高血糖となる病気で、悪化すると命にもかかわります。多飲多尿といった症状のほか、進行すると体重減少や皮膚疾患、白内障なども併発します。病気のサインや体重・食欲の変化を見逃さず、定期健診で血糖値のチェックを欠かさないことが予防として重要です。
甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンが正常に分泌できなくなり、このホルモンの機能が阻まれる疾患です。症状としては、体重の増加(食欲増加を伴わないことが多い)、皮膚が脂っぽい、湿疹や脱毛などが代表的です。また、代謝が鈍くなることで、なんとなく元気がなくなったり、寒がったりすることもあります。
こうした症状が見られたら放置せず、動物病院を受診して早期治療を行いましょう。シニア期からは、定期健診やワクチン接種時に聴診してもらうことで、脈が遅いことをきっかけに見つかることもあります。
前十字じん帯断裂
膝部分の上下の骨(大腿骨と脛骨)をつなぐ靭帯の一部が切れたり、損傷したりするケガのことです。交通事故のほか、ダッシュや激しい動き、膝への負担、老化なども原因になります。適切な体重管理、床を滑らないよう加工するなどの工夫が予防につながります。
ラブラドール・レトリーバーを長生きさせる秘訣は?
ラブラドール・レトリーバーを長生きさせるための秘訣は以下のようなものがあります。愛犬とできるだけ長く一緒にいるために飼い主として気をつけるようにしましょう。
子犬のうちから健康管理・トレーニングをする
ラブラドール・レトリーバーは大型犬ゆえに体が大きく力も強くなるので、適切な管理をするためにも、飼い主との信頼関係構築のためにも、トレーニングが必須です。特に、散歩時の誤飲やほかの犬に対する接し方には注意が必要なので、トレーニングを通して訓練させましょう。
特に食事は健康管理をする上で重要です。フードを与えるときは早食い防止の器を活用したり、食後の散歩は控えるなどタイミングを工夫したりして、胃拡張や消化不良を防ぐなど、かかりやすい病気の予防にも気を配ることが大切です。
また、食欲旺盛で、避妊手術後はよけいに食欲が強くなるので体重管理には注意しましょう。体重管理をすることで、関節炎の予防や足のケガなどもしづらくなります。
被毛のこまめなお手入れ
ラブラドール・レトリーバーは毛がよく抜け落ちる犬種です。皮膚病の予防や小さなできものの早期発見のためにも、ブラッシングやシャンプーを定期的に行いましょう。頻度は被毛や皮膚の状態によって変わりますが、2~3週間に1度が目安となります。
定期的な健康診断
ワクチン接種時に簡単なチェックを受けたり、定期的な健康診断を受けましょう。また、できれば3歳までに1度しっかりと全身の健康状態を記録し、健康な状態のデータを記録しておくことをおすすめします。何か症状が出たときに、正常値と比較することで異常かどうかの判断がしやすくなるためです。
適切な時期の去勢・避妊手術
適切な時期に去勢・避妊手術を行うことで、ガンを含む一般的な病気の予防となり、結果的に長生きへと結びついていきます。また、発情期に見られる問題行動などの抑制も期待できるでしょう。
ラブラドール・レトリーバーの適切な運動量とは?
体が大きくスタミナもあるラブラドール・レトリーバーにとって運動は非常に大切です。ラブラドール・レトリーバーの健康維持に必要な運動について詳しく見てみましょう。
散歩の頻度と散歩時間の目安
年齢や疾患の有無などによっても異なりますが、平均的には1回30分~1時間程度、できれば1日2回以上の散歩が理想的です。
ただし、毎日同じ時間にこだわる必要はありません。同じにするとかえって、雨などで散歩に行けない場合に、犬がストレスを感じてしまうこともあります。回数や散歩時間、散歩に行く時間帯に多少の変化をつけてもよいでしょう。
ドッグランなどでの運動
運動は、適度な筋肉をつけることによる代謝アップに貢献します。散歩の他にも、定期的にドッグランなどに連れて行き、思い切り走り回らせてストレスを発散させてあげましょう。
水が好きな場合は、ドッグプールや、安全性が確保されている川やビーチに連れて行くことで、楽しく運動できるよい機会になります(川に連れて行く場合は、レプトスピラ病のワクチンが入った8種~10種の混合ワクチンを接種してからにしましょう)。
基本的にどんな場所、どんな場面であっても、大好きな飼い主が一緒に楽しめれば愛犬のストレス発散になります。ただし、ドッグランの場合、きちんとマナーが守れるようなしつけができてからでないと、誤飲やケガ、他の犬とのトラブルを招くこともあるので気をつけましょう。
知育玩具などを使った室内での遊び
雨などで外に出て運動できない場合は、嗅覚を使った遊びや、室内でトリーツボールを転がす遊びなどをさせることで、脳の刺激にもなり、心地よい疲労感とストレス発散が期待できます。運動だけでなく、認知症の予防にも効果的です。
ラブラドール・レトリーバーの食事に関して気をつけるポイントは?
ラブラドール・レトリーバーは食欲旺盛なため、食事に関しては日頃から注意を払う必要があります。気をつけるべきポイントをいくつか見ていきましょう。
適切な1日の食事量を守る
年齢、体重、避妊治療の有無、通常の運動量、暮らし方などから、必要カロリーを動物病院で計算してもらい、それに応じたフードの量を与えるのが理想的です。場合によっては、早食い防止フードや知育玩具などを取り入れたり、食事の回数を増やしたりする工夫も効果的。必要カロリーを絶対視するのではなく、犬の様子や体重変動によって、適宜調整してあげましょう。
カロリーオーバーしないようにフードを工夫する
食欲旺盛なラドール・レトリーバーは、求められるままに与えてしまうとカロリーを摂りすぎてしまうことがあります。その場合、繊維質の多いものなどでかさましし、満腹感を得られるようにするなどの工夫をするとよいでしょう。ドッグフードは、疾患やライフステージに応じたものを選ぶのがおすすめです。
おやつを与えすぎない
食欲旺盛なので、食事とは別におやつを与える必要はありません。トレーニングのご褒美として与える場合は、1日の必要量をおやつ分、食事分と分けておくことで、与えすぎを防げます。留守番させるときには、知育玩具に入れたおやつや、長持ちするガムなどを与えてもよいでしょう。
高カロリーで添加物の多いものを与えない
基本的に高カロリーで吸収のよいものは、疾患管理を目的とする場合を除いて、普段の食事では与えないようにしましょう。添加物の多いものも健康に悪影響を及ぼすリスクがあるため避けてください。
低アレルゲンのものを与える
子犬期や成長期に低アレルゲン、タンパク質を一定のものにして与えると、アレルギー反応が起こりづらくなり、異常が起こったときにもアレルゲンを限定しやすくなります。
お腹に良いフードを与える
ラブラドール・レトリーバーは、お腹が緩くなりやすいという話をよく耳にする犬種です。お腹の調子を崩しやすい犬の場合、プロバイオティクスを応用した、乳酸菌配合のトリーツなども有効です。
ラブラドール・レトリーバーの老化のサインは?
ラブラドール・レトリーバーがシニア期に入って老化してくると次のようなサインが見られます。
- 呼んでも反応が鈍くなる
- 歩幅が狭くなる
- 睡眠時間が増える
- トイレの回数が増える
- すぐに息切れする
- 物にぶつかる
- 散歩の時間が短くなる(すぐ帰りたがる、段差を嫌がるなど)
- ドアの開く位置を間違える
- 目や被毛の一部が白くなる
- イボができる
- 気温の変化に適応しづらくなる
- 甘えるようになるなど性格が変化する
何歳からシニア期になる?
飼育環境や生活パターンなどによって違いはありますが、6~7歳頃にはシニア期に入り、体にも変化が見られやすくなります。
ラブラドール・レトリーバーがシニア期に入ったときのケアは?
ラブラドール・レトリーバーがシニア期に入ったら、適度な運動に加え、知育玩具などを活用して脳を刺激してあげることが大切です。また、声かけや短い号令でのやりとり、ご褒美などは、ストレスや不安を軽減させるオキシトシン効果が期待できます。飼い主との触れ合いを通して、QOLや飼い主との信頼関係を向上させましょう。
なお、シニア犬になったから急に何かをするというよりは、早い段階で愛犬の元気な状態を把握し、異常があったらすぐに気づけるようにしておくことが何より重要です。