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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
犬にも必要だと言われているワクチン。さまざまな種類があり、どれを接種するべきか迷う飼い主も多いと思います。今回は、獣医師の林美彩先生に教えていただいた、ワクチンの種類や必要なワクチンの見極め方、ワクチン接種のスケジュールなどを解説していきます。
目次
- そもそも犬のワクチンは何のために必要なの?
- 犬がワクチンを接種することによって予防できる病気は?
- 犬のワクチンの種類は?
- 犬のワクチンの選び方は?
- 犬のワクチンの値段は?
- 犬のワクチンを接種するのに最適な時期は?
- 犬のワクチン接種で動物病院に行く時の注意点は?
- 犬のワクチン接種で副作用はあるの?
- 犬のワクチン接種をする前後に、普段の生活で注意すべきことは?
そもそも犬のワクチンは何のために必要なの?
人間は生まれた時に母親から病気に対する抗体を引き継ぎますが、2カ月程度でその効果は消えてしまいます。犬も同じで、授乳の際に母親から抗体を引き継ぎますが、成長と共に抗体が消えてしまうのです。犬には感染力が強く重症化する病気も多いため、さまざまな病気に対抗するためにワクチンが必要となります。
犬がワクチンを接種することによって予防できる病気は?
犬がワクチンを接種することで予防できる病気はさまざまです。ワクチンで予防できる代表的な病気をご紹介します。
狂犬病
性格が激変し、興奮・凶暴性をもつ「狂躁型」と、頭や首周辺の筋肉に麻痺が生じ、脱水や削痩、全身麻痺を起こす「沈鬱型(麻痺型)」の2パターンがあります。狂躁型は発症後3日~3週間程度、通常1週間ほどで死亡。沈鬱型は、ほとんどの場合1週間以内に死亡するといわれています。致死率は、ほぼ100%です。
ジステンパー
急性期には発熱、食欲不振、発咳、下痢、嘔吐、胃腸炎などの症状が見られます。亜急性期には、よだれや振頭、癲癇様症状などが見られ、チックやハードパットといった特徴的な症状が見られます。
伝染性肝炎
アデノウイルス1型感染症とも言います。肝臓に炎症を起こし、軽度の場合には発熱や鼻汁、食欲不振などが見られます。重症の場合は、発熱後に肝機能の低下、肝性脳症、沈鬱、昏睡、痙攣などの神経症状、粘膜に点状出血、下痢嘔吐などの消化器症状などの症状が見られます。
アデノウイルス2型感染症
ケンネルコフ(伝染性の呼吸器疾患)の原因となる病原体のひとつで、乾いた発咳を特徴とする上部気道炎のほか、発熱、食欲不振、くしゃみ、鼻水などが見られます。
パルボウイルス感染症
食欲の消失、発熱、下痢や嘔吐などの消化器症状が見られます。症状が悪化すると、毒素性ショックや敗血症で死に至る場合もあります。3~8週齢の犬では、心筋炎を起こす場合もあり、妊娠犬では流産や新生仔突然死の原因にもなります。
コロナウイルス感染症
食欲不振や下痢、嘔吐などの消化器症状が見られます。発熱は見られません。
パラインフルエンザ
パラインフルエンザ単独感染では臨床症状はあまり見られませんが、他の呼吸器系感染症を併発することで、ケンネルコフを引き起こします。
レプトスピラ感染症
人獣共通感染症で、人間も感染します。黄疸出血型、腎炎型に分けられ、黄疸出血型では発熱、食欲廃絶、下痢、嘔吐、貧血が見られます。重症化すると、腎臓障害や肝臓不全に陥り、黄疸が発生します。
腎炎の場合、発熱、元気食欲消失、口腔粘膜や歯茎・結膜の充血、出血性胃腸炎、腎炎、血便などが見られます。尿閉や悪臭性排尿も見られ、重度の口内炎を引き起こし、最終的に尿毒症につながります。
犬のワクチンの種類は?
ワクチンには、全ての動物に接種させるべきと考えられている「コアワクチン」と、感染リスクを避けるために必要に応じて打つ「ノンコアワクチン」があります。犬のコアワクチンは、犬ジステンパー、犬パルボウイルス感染症、犬伝染性肝炎、狂犬病です。日本では、生後91日を過ぎた犬に狂犬病ワクチンを接種させ、その後、年1度定期接種させる義務があります。
また、ワクチンには2種混合~11種混合ワクチンもありますが、ワクチンに含まれるウイルスの種類が多ければ多いほど犬の体への負担は大きくなります。
犬のワクチンの選び方は?
犬にとって必要なワクチンの種類は、住んでいる地域によって変わります。地域によって流行している感染症や起きやすい病気が違うためです。どのワクチンを接種すればいいのか、かかりつけの動物病院に相談してみましょう。
犬のワクチンの値段は?
ワクチンの値段は病院によって異なりますが、大まかな目安として2種混合で3000~5000円程度、7種以上では7000~10000円程度になります。
犬のワクチンを接種するのに最適な時期は?
犬のワクチンデビューは生後8週間頃。その後、生後12週間で2回目、生後16週間で3回目を接種し、定期接種が必要なワクチンは3回目の接種から1年後以降に行います。犬の身体に負担がかからないよう、間隔をあけて接種しましょう。
犬のワクチン接種で動物病院に行く時の注意点は?
犬の体調が悪い日は避け、なるべく午前中に接種するのが望ましいです。午前中に接種しておけば、万が一体調に異変が生じても午後の診察時間に行くことができます。犬の異変に気付けるよう、午後は家族の誰かが犬と一緒に過ごせる日を選びましょう。病院嫌いの犬の場合は、ご褒美を用意しておくとトラウマになりにくいかもしれません。
犬のワクチン接種で副作用はあるの?
犬がワクチンを接種してアレルギー反応を起こすのは、1万頭に1頭の確率だと言われています。代表的なアレルギー反応として、顔の周囲がかゆくなったり腫れたりする「ムーンフェイス」があります。また、アナフィラキシーショックなどにも注意が必要です。
そのほか、接種後に時間が経過してから見られる症状として、下痢や嘔吐、接種した部位に疼痛が起きることもあります。
犬のワクチン接種をする前後に、普段の生活で注意すべきことは?
接種前も接種後も、興奮させすぎず安静に過ごせるようにしてあげましょう。興奮して血圧や体温が上がると、ワクチンの吸収が早くなり、アレルギー反応の引き金にもなりかねません。
・運動(接種前、接種後)…接種前、接種後ともに少し控えめにしておきましょう。
・食事(接種前、接種後)…病院で興奮してしまう子の場合は、食事後1~2時間ほどあけてからワクチン接種したほうが良いかもしれません。
・睡眠について(接種前、接種後)…普段通りで問題ありません。
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