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アメリカ獣医行動学会会員、ペットの行動コンサルテーション Heart Healing for Pets 代表。問題行動の治療を専門とし臨床に携わる。
縄状の被毛が特徴的で、まるでモップが歩いているようにも見えるプーリー。そんなユーモラスで可愛らしい姿に魅せられる愛犬家も多いでしょう。ほんわかした見かけと違って、運動が得意というギャップも良いですよね。この記事では、プーリーの性格や体格の特徴、気をつけるべき病気などをペットの行動コンサルテーション Heart Healing for Pets代表で獣医師の石井香絵先生監修のもと、詳しく解説していきます。
目次
- プーリーってどんな犬種?
- プーリーの平均的な体高・体重は?
- プーリーの平均寿命は?
- プーリーの被毛のタイプや毛色の種類は?
- プーリーの外見や吠え声の特徴は?
- プーリーはどんな性格?オスとメスで性格の違いはあるの?
- プーリーを飼うのに向いている人は?
- プーリーを飼う上で気をつけるべきことは?
- プーリーのしつけを始める時期は?
- プーリーの食事の注意点は?
- プーリーがかかりやすい病気は?
- プーリーを散歩させる際に気をつけるべきことは?
- プーリーにおすすめの遊びは?
- プーリーの日常のお手入れで気をつけることは?
プーリーってどんな犬種?
プーリーのルーツはチベタン・スパニエルと言われており、原産国のハンガリーでは1000年以上も前から牧畜犬として親しまれてきました。群れから外れた羊をまとめたり、狼などの外敵から家畜を守ったりと、人々の生活において活躍してきた犬種です。
ちなみに、プーリーに似た見た目の犬種でコモンドールがいますが、プーリーと同じくハンガリー原産で、牧畜犬として仕事をしています。また、ベルガマスコ・シェパード・ドッグもモップのような毛質を持つ牧羊犬で、イタリアが原産の犬種です。
プーリーの平均的な体高・体重は?
プーリーの平均体重は、オスが約 13~15kg メス約10~13kgです。平均体高は、オスで39~45cm、メスは36~42cm程度と言われています。
プーリーの平均寿命は?
プーリーの平均寿命は12~16歳と考えられています。これは中型犬の平均的な寿命と言えるでしょう。
プーリーの被毛のタイプや毛色の種類は?
プーリーの最大の特徴である被毛のタイプや毛色の種類について、詳しく見ていきましょう。
被毛の特徴
コーデッドヘア
モップのような被毛はコーデッドヘアと呼ばれていて、長く密生しています。自然にもつれて縄のように垂れ下がり、地面に届いて足を覆い隠すまで伸びるのが特徴です。子犬の頃はカールしていますが、生後9か月頃なると伸びてモップのような見た目になるでしょう。
ダブルコート
汚れや水をはじくことができるトップコートと、密でやわらかいアンダーコートの二重構造です。被毛の巻き具合には個体差があり、太いもの、細いものがあります。ただし、どちらも寒い環境での作業に耐えられるようになっているのがポイントです。また、家畜を襲う外敵から身を守る効果も備えています。
毛色の種類
代表的な毛色は、ブラック、フォーン、パールホワイト、シルバーなどです。
プーリーの外見や吠え声の特徴は?
独特な被毛の他にも、プーリーはさまざまな特徴を持っています。プーリーの外見や吠え声の特徴について詳しく見ていきましょう。
外見
モップまたはドレッドヘアのように見えるユニークな被毛が、プーリーの1番の特徴でしょう。また、被毛の下は屈強な引き締まった体格をしています。耳は垂れており、尻尾は中くらいの長さで背中の上で巻いているでしょう。足はそれほど長くないですが、意外にも運動能力が高く足が速い犬種です。
吠え声
中型犬にしては甲高く、よく通る声色をしています。
プーリーはどんな性格?オスとメスで性格の違いはあるの?
プーリーは好奇心旺盛で、活発な犬種です。学習能力と訓練能力も高いためハンガリーなどでは警察犬としても活躍しているほど。元気で明るい性格ですが、寂しがり屋の甘えん坊な一面も持っていて、ひとりぼっちにされるのが苦手です。
プーリーのオスとメスで性格の違いはあるの?
オスの方がメスと比べると、警戒心や縄張り意識が高い傾向が見られます。
プーリーを飼うのに向いている人は?
プーリーを飼うのに向いている人の特徴は以下の通りです。プーリーを迎え入れることを検討している方は、参考にしてみてくださいね。
毎日の被毛のお手入れに十分な時間が割ける人
チャームポイントでもある被毛は汚れやすく、お手入れが大変です。毎日の被毛のお手入れに十分な時間をかけることができる方が望ましいでしょう。
体力に自信がある人
活発なプーリーの運動欲求を満たすことができる方に向いています。
温度・湿度・通気性が考慮された飼育環境を用意できる人
ダブルコートの被毛を持つプーリーのために、温度や湿度を管理し、通気性の良い飼育環境を用意できる方が好ましいでしょう。
プーリーは初心者向きの犬?
毎日しっかり運動や遊びを提供する必要があること、また被毛のお手入れが大変なことから、飼いやすい犬種とは言えません。
プーリーを迎え入れるにはブリーダーから
プーリーは珍しい犬種のため、ペットショップで出会うことはなかなか難しいでしょう。そのため、ブリーダーを介して譲り受けるのがおすすめです。ブリーダーから譲り受けるメリットとして、犬舎を見学することで、子犬の育った環境を知ることができるでしょう。また、母犬や兄弟犬と適切なコミュニケーションをとって育った子犬は、問題行動が少なく安定した気質を持つ傾向にあります。プーリーはお手入れの仕方も他の犬種とは異なるため、プーリーのことを熟知しているブリーダーにあらかじめアドバイスをもらえると理想的ですね。
プーリーを飼う上で気をつけるべきことは?
プーリーが安全で快適に過ごせるよう、飼い主が日頃から気をつけるべきことを詳しく見ていきましょう。
十分な散歩の時間を確保する
運動能力が高く、活発な犬種なため、毎日しっかり運動と遊びをさせてあげる必要があります。
通気性が良く、冷房設備の整った住環境を用意する
暑さに弱いプーリーが快適に過ごせるよう、夏場は終日エアコンをつけておく必要があります。また、風通しの良い住環境を整えてあげることも大切です。
フローリングには絨毯などを敷く
他の犬種に比べて、被毛の汚れを室内に持ち込んでしまう可能性が高いです。また、膝や股関節が弱い犬もいるため、床を滑りにくくする工夫をしましょう。フローリングには、洗いやすいカーペットやすべりにくいラグなどを敷いておくことをおすすめします。
専門家に日頃のお手入れ方法を教えてもらう
プーリーの特徴的な被毛と皮膚を清潔に保つことは、とても難しいです。プーリーの被毛のお手入れについては、専門家の手を借りるといいでしょう。プーリーのトリミングができる経験豊かなサロンを事前に調べておくことをおすすめします。
プーリーのしつけを始める時期は?
プーリーはしつけがしやすく、他の犬や子供とも良い関係を築ける気質を持っている犬種です。プーリーのしつけのポイントについて見ていきましょう。
しつけを始める時期
社会化、しつけ、トレーニングは、早ければ早いほど良いです。統一したルールを家族で決め、家に迎え入れたその日から開始しましょう。プーリーはとても頭のいい犬種ですが、その賢さを上手に活かすには、しつけとトレーニングが必須です。早めにしつけを行い、社会性を身に着けさせることで最良の家庭犬になるでしょう。
しつけの際に気をつけるべきポイント
遊び好きで好奇心いっぱいなので、遊びの中にトレーニングを混ぜて行うといいでしょう。また、プーリーは、記憶力が良く、飼い主の感情などを敏感に察知できる犬種です。飼い主の機嫌で態度を変えることがないよう、常に同じルールで接してあげることが大切です。
プーリーの食事の注意点は?
年齢に合わせた食事と新鮮な水を提供してあげましょう。ドッグフードの量は、パッケージに体重別に記された、フードの1日の摂取量を参考にしてくださいね。こまめにボディーコンディション(太っているか痩せているか)を見ながら分量を調整しましょう。フードは1日1回ではなく、1日2~3回と分けて与えると良いでしょう。特に、アジリティやフライボールなどの激しい運動をよく行なっている場合は、良質なタンパク質が多く含まれたフードがおすすめです。
プーリーがかかりやすい病気は?
プーリーにはかかりやすい病気がいくつかあります。日頃から健康チェックを欠かさず行い、異変に気づいたらすぐに動物病院を受診しましょう。
皮膚疾患
被毛が厚く、密なため細菌性の皮膚疾患になりやすいです。かゆみや赤みがないか、身体をかいていないかなど日頃からチェックしましょう。特に皮膚や被毛が濡れた場合は、毛の根本までしっかり乾かし蒸れないようにしてください。また、散歩から帰ってきた後は被毛に付着したゴミやホコリを取り、被毛のお手入れも定期的に行ってあげましょう。
進行性網膜萎縮
遺伝性疾患のひとつで、光や映像を感じ取る網膜が委縮、変性してしまい、失明してしまう病気です。はじめは暗がりで見えづらくなり、悪化すると明るいところでもよく見えない状態になってしまいます。遺伝的疾患のため確実な予防法はありませんが、網膜の酸化する進行を遅らせることができる病気です。その場合、抗酸化作用のあるビタミンEやアスタキサンチンが含まれるサプリメントを使います。
膝蓋骨脱臼
膝関節の筋肉や靭帯の形成異常により、後ろ足の膝の皿が本来ある位置から外れてしまう状態のことです。予防はなかなか難しいですが、定期的な健康診断などで脱臼の有無を病院で確認してもらいましょう。また、二足で飛び跳ねるなど膝に負担がかかる動作は、できるだけさせないようにしたいですね。また、家庭内では足がすべらないような床にするなどの工夫が必要です。
股関節形成不全
骨の変形や関節のゆるみなど、形態的な異常で起こる病気で、遺伝的な要因が大きく関わっています。症状としては、モンローウォークと言われる腰を振って歩くしぐさや横座り、運動をすることを拒むようになったなどが見られたら要注意です。いつもと動きが異なるようなら、整形外科の検査を受診してください。
プーリーを散歩させる際に気をつけるべきことは?
活発で運動好きなプーリーを散歩させる際に気をつけるべきことを見ていきましょう。
散歩の時間と頻度
毎日1日1~2回、それぞれ30分以上の散歩をしてください。
散歩の際に気をつけるべきこと
十分な散歩時間の確保
毎日の散歩は必須です。ただし、濡れた被毛のお手入れが大変なので、雨の日の散歩はできるだけ控えた方が良いでしょう。散歩に出かけられないときは、屋内で知育玩具を使って遊ばせたり、トリックを教えたり、ノーズワークをしてストレスを発散させてください。
散歩後の被毛のお手入れ
散歩の後は想像以上に被毛が汚れます。目で見える大きなゴミは手で取り除き、毛がもつれないように手でドレッドを分けてあげましょう。汚れている足先は、タオルで拭いてあげてください。
暑さ対策
暑さが苦手な犬種のため、夏は散歩に出かける時間帯や長さを考慮しなければなりません。
プーリーにおすすめの遊びは?
プーリーには、肉体もマインドもバランスよく使える遊びが向いています。プーリーにおすすめの遊びをそれぞれ見ていきましょう。
ドッグラン
ドッグランで定期的に自由に走り回らせるのがおすすめです。ただし、屋外で遊ばせる場合、地面が土や砂であると被毛が汚れてしまうので注意が必要です。
アジリティ
足が速く物覚えも早いため、アジリティ、フライボールなど活発に楽しく遊べる競技を飼い主と一緒に行うのもおすすめです。
ボール遊び
広い公園があれば、ロングリードをつけてボール遊びをさせるのも良いでしょう。
プーリーの日常のお手入れで気をつけることは?
プーリーの日常のお手入れにはちょっとしたコツが必要です。日常のお手入れで気をつけるべきことを、詳しく見ていきましょう。
被毛のお手入れの頻度や方法
プーリーの被毛は、お手入れをせずに放置しているとオーバーコートとアンダーコートが絡み合い、フェルト状に固まってしまいます。生後5か月齢前まではブラシが使えますが、成犬になりドレッドヘアになった後は、ブラッシングで被毛をお手入れするのは難しくなるでしょう。そのため、毎日手で割いて、1本1本縄状になるようにしてあげてください。排泄臓器の周りの被毛は、特に清潔に保つ必要があります。
シャンプーの頻度や方法
プーリーのシャンプーはなかなか手間がかかります。可能であればプーリーのシャンプーについて熟知したサロンで、1〜2か月に1回、定期的に行うことをおすすめします。シャンプーする場合、ブラシは使えないため、束になった被毛をもみ洗いします。ドライする時には、タオルドライをメインに、束状を維持したまま乾かすためとても時間がかかるでしょう。お手入れが大変で手に負えない場合は、思い切ってプードルのようなカットをしてしまうこともひとつのアイデアです。