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戦隊モノの武器みたいな掃除グッズが、面倒を“やみつき”に変える

スタッフ

清水 政良

清水 政良

カインズ ライフスタイル事業部 オフィス・家庭用品部。店舗勤務ののち、教育訓練部の商品知識強化グループを経て、バイヤーとして商品開発に従事。エンジニアである父親譲りの“モノ作り”のセンスと発想力を武器に、プライベートブランド商品の開発・改良を手がけている。

カインズのヒットメーカーが開発した「掃除グッズ」

ヒット商品を連発し、カインズ内でも一目置かれている若手開発者がいる。口癖は「世の中にないものを作りたい、みんなの“当たり前”を変えたい」。バイヤーに就任して以来、もっぱら洗濯・掃除用品の開発を担当している清水政良(オフィス・家庭用品部)だ。「究極的には、掃除用品がひとつもいらない環境を作りたい」と、なんとも珍妙なことも言う。

そんな彼の代表作のひとつに『スプレーハンディブラシ』という商品がある。片手にスッポリ収まるグリップとトリガー、先端に備えられた噴射口――水鉄砲をモチーフにしたデザイン・機構の、ポンプ式掃除グッズだ。

『スプレーハンディブラシ』は2015年度のグッドデザイン賞を獲得

『スプレーハンディブラシ』は2015年度のグッドデザイン賞を獲得

掃除を快適にするための工夫だけでなく、“戦隊モノに出てくる武器”をヒントにするなど、掃除を楽しむための遊び心をプラス。さらには、価格を下げるための大胆な商品設計など、多くのユーザメリットを叶えるために、持ち前のアイデアをこれでもかと詰め込んでいる。

調理やDIYなどと違って“見せる場”や“褒められる機会”が少ないながら、心身の健康のために重要な「掃除」という家事に、清水はどのようにスポットライトを当てようとしているのか? 『スプレーハンディブラシ』開発のウラ側とともに、清水が描く「掃除の未来図」を聞いてきた。

窓のサッシや玄関には最適な掃除グッズがなかった

清水の発想術は、いたってシンプル。日常生活のなかでストレスや困りごとがあったときに、それを解決できるアイテムがないかどうかを考え、なければ「ゼロから作れないか」、あるなら「それをブラッシュアップできないか」と思いを巡らせる。

『スプレーハンディブラシ』のアイデアも、年末の大掃除が近づいた折、先輩バイヤーとのちょっとした会話から生まれていた。

「窓のサッシの掃除って、雑巾の端をムリヤリ突っ込んだり、ほうきの先っぽを駆使したりしてやっていることが多いと思うんですけど、面倒くさいうえにあんまりキレイにならないですよね。“みんな面倒だと思っているのに、それを解消できる掃除グッズがない”っていう話になったんです」

商品開発が始まった当時、清水はまだアシスタントバイヤーだった

商品開発が始まった当時、清水はまだアシスタントバイヤーだった

ほかにも「タイルの目地が掃除しづらい」や「玄関って汚れやすいけど水をまきづらい」、「水を使って掃除をするときにバケツを運ぶのが面倒」といった、掃除にまつわるいろいろなストレスが頭に浮かんだ。

そして、それらをどうにかして解消できないかと考えているうちに、複合的な解決策として『スプレーハンディブラシ』の素案にたどりついた。

「掃除道具を掃除する」のは本末転倒

『スプレーハンディブラシ』の最大のウリはアタッチメントだ。

ペットボトルにブラシを付けられる商品はほかにもあったが、用途によって付け替えられる複数のアタッチメントを取り揃えたものはなかった。発売してからも、さまざまな居住環境・使用環境をイメージして、使い勝手の異なるブラシをラインナップに追加していった。

「戦隊モノに出てくる武器じゃないですけど、この付け替え作業って、男の人にとっては手間どころかテンションが上がる要素なんです(笑)。実際、アタッチメント機能は男性ウケのほうが良いんですよね」

先端に付けられるアタッチメントは、現時点で全6種類

先端に付けられるアタッチメントは、2022年3月時点で全5種類

商品に半永久的なブラッシュアップの可能性を与えながら、ユーザーの遊び心も刺激するこの機能は、グッドデザイン賞の審査委員からも高く評価された。

発売後のブラッシュアップは、アタッチメントの追加だけではない。ファーストモデルは、水が直線的に出るだけの噴射口だったが、霧状に拡散させられる噴射口にワンタッチで切り替えられるようアレンジした。

ほかにも、真っ直ぐだったホースをジャバラ状にし、先端に重りをつけることで、どんな角度でも使えるようにマイナーチェンジ。連射したときに、PETボトルの内側にホースが張り付かないように、先端に小さな突起まで付けた。

水を吸い上げるためのホースだけでも、3つのアイデアが盛り込まれている

水を吸い上げるためのホースだけでも、3つのアイデアが盛り込まれている

そもそもPETボトルをタンク代わりに使ったのも、エコにこだわったからではない。タンクのパーツにかかるコストを削減することで、そのぶん価格を下げられているのだ。さらには、PETボトルは汚れたら捨てられるので、「掃除道具を掃除する」という本末転倒な作業も不要にしている。

そこまで複雑な機構の商品ではないが、ちょっとしたところに、清水のアイデアとコダワリがたくさん散りばめられた『スプレーハンディブラシ』。だが本人は、これらの工夫について、ユーザーに知ってもらいたいとは思っていないと言う。

「むしろ、工夫に気づかれないまま淡々と使ってもらえるのが、ボクにとっての理想です。他社の類似商品を使ったときに“あれっ?”って違和感を覚えてくれたら、してやったりですね」

掃除用品がいらなくなる世界

いいことづくめにも感じる『スプレーハンディブラシ』だが、開発した側からすると、見直すべき点もまだまだある。

「正直、意匠という意味でのデザイン性は、もっと高められると思っています。あとは、いま主流のPETボトルのサイズって、発売当時にはなかったんですよ。そのPETボトルをハメちゃうと、置いたときの安定性が低い。現在のトレンドや環境に合わせたリデザインに、いままさに取り組んでいるところです」

「商品開発は仕事であり、好きなことでもあるので“やらせてもらっている”感覚」

「商品開発は仕事であり、好きなことでもあるので“やらせてもらっている”感覚」

世の中にないものを作りたい、みんなの“当たり前”を変えたい──インタビュー中に、何度もその言葉を口にした清水。そんな彼が、これから作りたいと考えているのは、いったいどんな商品なのだろうか?

究極的には、掃除用品がなくても済む環境があればいい。たとえば“隙間のないサッシ”が開発されたら、この『スプレーハンディブラシ』はお役御免なんです。リフォームや家電も扱っているカインズなら、その領域のアイデア商品を作れる可能性もある。いつか“掃除しなくていい家”を作りたいですね」

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