湿気取りには重曹がおすすめ! 除湿剤の作り方や再利用術をご紹介
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みなさん、こんにちは。
100文字で済むことを2,000文字で伝えるタイプの物書き、岸田奈美です。
いつもアクシデントに見舞われます。
今年3月末、緊急事態宣言が発令し、自宅という薄暗い穴ぐらにこもっていた時期。いることも、いらんことも、外で喋り散らかして生きていたわたしは、順調にストレスをため込んでおり。人がいない早朝、ぶつぶつと独り言をまき散らしながら、近所を練り歩くのが唯一のエンターテイメントになっていた。
わたしが住んでいる家から10分ほど歩けば、そこは見違えるような高級住宅街。ある日、高そうな家々の軒先を見てみると「ご自由にどうぞ」という張り紙があるのに気がついた。
わたしの遺伝子には「もらえるもんならなんでももらう」という関西に脈々と伝わる教えが刻まれているので(関西はそんなところではない)、フラフラと吸い寄せられるように近づくと。
張り紙の下には、まだきれいな家具や食器やおもちゃや本が盛大に積まれていた。高級住宅街なので、全般的に品物のクオリティも高い。一体なんなんだとびっくりしたが、どうやらヒマを持て余したセレブたちが一斉に大掃除をして、その結果追いやられた不用品たちらしい。
ラッキー!と心の中で高らかに叫び、わたしは、ずっとほしかったラタン製のバスケットをひとつ、ありがたく持ち帰らせていただいた。
毎日散歩に出かけて少しずつ、いろんなものをリスのように集めていたのですが、そのなかでも群を抜いて魅力的だった掘り出し物がこちら。
野菜の苗である。
しかも、なんの野菜か書いていない。謎の苗。
セレブの家からおすそわけされた野菜であれば、白トリュフ、高麗人参、栗マロンかぼちゃに成長する可能性もある。ワクワクが止まらない。
気がつけばわたしは、期待に胸をふくらませ、謎の苗を胸に抱いて持ち帰っていた。
衝動性と行動力はあるが、計画性と教養がない、それが岸田奈美という人間だ。
つまりなにが起きたかと言うと、ものすごく大雑把に、「どないかなるやろ」の精神で苗を育ててしまっていた。
100円ショップの薄暗い場所に売っていた植木鉢と、土1パック分を入れたら、ぜんぜん土が足りずにびっくりした。目測を誤りすぎ。
むかし父が「今日はプールするぞ!」とベランダでビニールプールを広げてくれたはいいが、水をバケツで運ぶのが早々に嫌になったらしく、「これでしまいや!」と堂々投げ出された、水深2cmくらいしかない悲しいプールを思い出した。
仕方なく、100円ショップで土2パックを買い足した。
2週間くらいしたら、なんだかツルみたいなものが生えてきたので、あわててアサガオ用の支柱も買い足した。100円だからか、わたしが不器用だからか、どうにも見た目が心もとない。
これもわたしの衝動性がまずい方向に働いた結果だが、「どうせ毎日水をやるならもっとたくさんの種類を育てた方が良いだろう」と思いたち、ししとうとオクラとレタスの種を買ってまいてみたら、一体どこでなにが芽吹いたのかわからなくなってしまった。
プランターの中が、現代社会を彷彿とさせるカオスと化していた。
6月になっても、謎の野菜の苗は、謎のまま育っていった。花なども咲いていなかったので、調べたくても、一体どんな検索ワードを入力すれば答えにたどり着くのか、わからなかった。
アサガオの支柱の高さなどあっと言うまに越えたツルが、まるで手を伸ばして助けを求めるように、わたしの部屋へと伸びていた。
このままでは、あかん。
知識もなく軽率に生命を迎え入れてしまったことを後悔すると同時に、責任感と使命感がわきあがってきた。死なばもろとも。この子たちを、どうにかせねば。
頼った先は、そう、おなじみのカインズさんである。
PR担当・奥さんに頼むと「野菜とガーデニングに詳しい三銃士を連れてきたよ!」と、美味しんぼを彷彿とさせる立ち回りで、カインズさんが誇る専門家に声をかけてくださった。2人だったので、二銃士だけど。
しかし時は大外出自粛時代。店舗に出向き、教えを乞うことはできない。
そこで!
なんと!
PCとカメラを使って、リモートで家庭菜園を教えてもらうことになったのだ! ちなみにこれはカインズでも初めての試みとのこと。
ベランダとプランターとわたしをリアルタイムで写しながら進行した。部屋とワイシャツとわたしみたいに、新時代の新しい定番となってほしい。