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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
たてがみを彷彿とさせる豊かな被毛が特徴のペキニーズ。飼い主に忠実な性質を持ち、飼いやすい犬種として人気を集めています。そんなペキニーズのルーツや特徴、性格、飼うときの注意点などについて獣医師でchicoどうぶつ診療所の所長である林美彩先生に聞きました。
目次
- ペキニーズのルーツや歴史は?
- ペキニーズの平均的な体高・体重は?
- ペキニーズの平均寿命はどれくらい?
- ペキニーズの毛色の種類は?
- ペキニーズの性格の特徴は?オスとメスで違いはある?
- ペキニーズは初心者向きの犬?
- ペキニーズを飼うのに向いている人の特徴
- ペキニーズの外見や吠え声の特徴は?
- ペキニーズがかかりやすい病気とその症状とは?
- ペキニーズの食事で気をつけることは?
- ペキニーズの日常のお手入れで気をつけることは?
- ペキニーズのしつけはどうすればいい?
- ペキニーズの散歩の頻度や時間、注意点は?
- ペキニーズにおすすめの遊び方やトレーニング方法
- ペキニーズを飼う際の注意点
ペキニーズのルーツや歴史は?
ペキニーズの原産国は中国。首都である「北京(ペキン)」にちなんで「ペキニーズ」と呼ばれるようになったと言われています。
ペキニーズは秦の始皇帝の時代からの歴史を持つとも言われていますが、近年のDNAの研究によって、実際にとても古い犬種であることが明らかになりました。パグやシー・ズー、チンなどの犬も、元をたどればペキニーズがルーツになっているのだとか。そんなペキニーズは、チベンタンスパニエルから派生した犬種。仏教やラマ教の教えに出てくる獅子犬をイメージして改良され、現在の姿になりました。
ペキニーズの平均的な体高・体重は?
ここからはペキニーズの平均的な体高や体重がどれくらいかを見ていきましょう。
体高
ペキニーズは小型犬に属している犬種です。平均的な体高は20㎝前後です。
体重
個体差はありますが、平均的な体重は3~6kg程度で、メスの方がオスよりもやや大きめです。また、オスはメスと比べてがっちりとした体型をしているため、ボリュームを感じるかもしれません。
ペキニーズの平均寿命はどれくらい?
寿命は12~15年と言われています。日本で飼われている犬の平均寿命が約14年のため、他の犬種と比べても平均的な寿命と言えるでしょう。犬種特有の先天性の病気を持つことも少ないので、飼い方次第ではさらに寿命が延びる可能性があります。
ペキニーズの毛色の種類は?
ペキニーズは毛色の種類が豊富な犬種です。それぞれの毛色の特徴をまとめました。
ホワイト
日本で一番ポピュラーなカラーです。真っ白い被毛のため、汚れが目立ちやすい傾向にあります。
フォーン
フォーンとは、黒っぽさを感じる茶色の毛色のこと。口周りや耳、尻尾など、黒毛の入り方は個体によってさまざまです。
ブラック
黒一色のカラーです。ホワイトとのバイカラーである「ブラック&ホワイト」や、体の一部にのみホワイトが入る「ブラック&ホワイトマーキング」といった種類もあります。
レッド
フォーンよりも赤みが強い、赤褐色のカラーです。
クリーム
ふんわりとした淡黄色。個体によって、部分的に黄褐色が濃い子や白っぽい子がいます。
ペキニーズの被毛の特徴
ペキニーズの毛質は硬い長毛です。まっすぐ長く生えたダブルコートで、アンダーとオーバーの2層構造となっています。
抜け毛の多さに注意
なお、ペキニーズは他の犬種と比べて特に抜け毛が多い犬種です。換毛期が年に2回あり、冬から春にかけては冬用のアンダーコートが抜け、夏から秋にかけては夏用アンダーコートが抜けて冬用のアンダーコートに生え変わります。アンダーコート自体の量も多いため、必然的に抜け毛の量が多くなるのです。
ペキニーズの性格の特徴は?オスとメスで違いはある?
飼いやすい性格とされているペキニーズですが、どのような性格をしているのでしょうか。よく挙げられる特徴は次の通りです。
落ち着いていて、利口
小柄な犬種ですが、勇敢で利口な性格を持ちます。どんな時も落ち着いて行動できるうえ、自立心が強く、プライドも高いと言われています。
飼い主に忠実
飼い主に対してはとても忠実なペキニーズ。トレーニングを行えば、飼い主の要求にしっかりと答えることができます。
オスとメスによる性格の違い
ペキニーズはオスのほうが甘えん坊な傾向にあります。一方、メスは猫のような自由気ままな性格と言われています。
ペキニーズは初心者向きの犬?
ペキニーズは利口で飼い主に忠実なため、性格的には初心者でも飼いやすい犬種と言えるかもしれません。ただし、抜け毛が多いためこまめなブラッシングと掃除が欠かせない、短頭種のため暑さ対策が必須、太りやすい体質のため体重管理が必要など、お世話する面でやや難しい部分もあります。
ペキニーズの運動量はそれほど多くはありませんが、散歩に行かなくてよいというわけではありません。飼いたい場合は、散歩の時間がある程度確保できるかを考慮すると同時に、毎日のブラッシングと掃除、暑さ対策、体重管理が適切にできるかをよく考えましょう。
ペキニーズを飼うのに向いている人の特徴
ペキニーズは活発な犬種という訳ではないので、室内飼いに向いています。落ち着いた静かな室内環境を整えている人であれば、ペキニーズも安心して暮らすことができるでしょう。また、お手入れに時間がかかるのが特徴です。お手入れの時間をしっかりと確保できる人が向いていると言えるでしょう。
ペキニーズの外見や吠え声の特徴は?
ペキニーズの外見や吠え声にはどのような特徴があるのでしょうか?
外見
ペキニーズの最大の特徴は、ライオンのたてがみのように豊かな被毛です。顔立ちには凹凸がなく、太くて短い足とがっちりした骨格を持ち、全体的なフォルムはまるでティッシュペーパーの箱のように四角く見えます。
吠え声
ペキニーズは、他の犬種に比べるとあまり吠えない犬と言われています。ただし、育て方や環境によっては吠え癖がついてしまうこともあるため注意しましょう。
ペキニーズがかかりやすい病気とその症状とは?
ペキニーズにもかかりやすい病気があります。それぞれの症状と予防法をチェックしておきましょう。
眼瞼内反症
瞼が内反し、眼球内に入り込むことで、眼球を刺激し炎症を引き起こす病気です。手術が基本的な治療法です。
結膜炎
まつ毛やまぶたの異常や異物混入、アレルギー、感染症などで起こりやすい病気です。眼瞼内反や異所性睫毛などがないかを病院で確認してもらうほか、普段から散歩後に目に異物が入っていないかをチェックしておきましょう。また、アレルギーや感染症が疑われる場合には、早めに動物病院を受診するようにしてください。
気管虚脱
気管軟骨の変形によって気管がつぶれ、ガーガーといった呼吸音が聞こえやすくなる、咳き込みやすくなるなどの症状が出る病気です。
加齢に伴う軟骨変化のほか、肥満による気管の圧迫によっても起こります。ペキニーズは太りやすい犬種のため、予防のためにも体重管理に取り組みましょう。
外耳炎
短頭種は体に熱がこもりやすいうえ、ペキニーズの場合は長毛・垂れ耳で外耳の通気性が悪いこともあって、外耳に炎症を起こすことがあります。こまめに耳の状態を確かめることで早期発見できるため、毎日の耳チェックの習慣を欠かさないようにしましょう。また、高温多湿の環境を避けることも外耳炎の予防につながります。
熱中症
ペキニーズは短頭種で体の熱を逃がすことが難しいため、熱中症リスクも高い犬種と言えます。高温多湿の環境を避けることが重要です。
短頭種気道症候群
軟口蓋過長症や外鼻腔狭窄、気管低形成、咽頭虚脱などが単独、もしくは複数で起こる短頭種特有の病気です。この病気が原因で生活が難しくなってしまう場合には、外科手術を行います。予防のためには、高温多湿を避けた環境作りも重要です。
鼻腔狭窄
短頭種気道症候群に含まれる病気で、鼻腔が狭くなることで鼻が鳴りやすくなる、鼻水が出る、呼吸が荒くなるなどの症状が見られます。症状が重い場合には、鼻腔を広げる手術を行います。
椎間板ヘルニア
短足で頭部が重たいために、頚部や足腰の負担が大きくなりやすいペキニーズ。骨格上、椎間板だけでなく、頚椎や腰椎のヘルニアも起こりやすい傾向にあります。体重管理のほか、床が滑らないようにするなど生活環境の見直しを行いましょう。
また、高いところに飛び乗る、飛び降りるといった動作も椎間板ヘルニアには良くありません。予防のためにステップなどを用意しましょう。
皮膚病
被毛が密集しているため、痒みや赤身、湿疹、脱毛などの症状が見られやすくなります。こまめなブラッシングのほか、シャンプーを行う、外用薬や内服薬を使うことも有効です。
ペキニーズの食事で気をつけることは?
肥満になりやすい犬種のため、動物性タンパク質が豊富で脂質が少ないフードを与えるのがおすすめです。
また、早食いは万病のもとのため、早食いさせない工夫をしましょう。そのため、粒の大きさはしっかり噛んで食べられる程度のものがベストです。どうしても丸飲みしてしまう場合には、窒息しないようなサイズのものを選ぶようにしてください。
ペキニーズの日常のお手入れで気をつけることは?
皮膚病にかかりやすいペキニーズを飼うには、日々のお世話の中でさまざまな配慮が欠かせません。お世話のポイントを学んでおきましょう。
毎日ブラッシングをするのが理想
ダブルコートのため、ブラッシングは必須です。できれば毎日ブラッシングをしましょう。
抜け毛対策を行う
抜け毛が多い犬種のため、生活環境のこまめな掃除が必須です。洋服を着せるのもひとつの方法ですが、被毛が毛玉になりやすいので、ブラッシングはしっかり行ってください。
食後に顔を拭いてあげる
短頭種は顔のヒダに食べかすなどが詰まりやすいため、食後は濡れたタオルで優しくふき取ります。その後、乾いたタオルやティッシュなどで水分をしっかり吸い取るケアを行ってあげましょう。
ペキニーズのしつけはどうすればいい?
ペキニーズのしつけはどのように行えば良いでしょうか。以下のポイントを意識してしつけに取り組んでみてください。
しつけを始める時期
家に迎えてから、できる限り早く行うようにしましょう。子犬の学習速度は早いので、目にしたものや経験したことをすぐに吸収することができます。
子犬期のしつけの仕方
叱るしつけではなく、褒めるしつけを中心に良い行動の頻度を高めるしつけに取り組んでいきましょう。
社会化期のしつけの仕方
生後3〜12週のいわゆる「社会化期」には恐怖心が芽生えていないので、人間の社会に慣れさせることができます。ただし、自我が出てきますので、根気よくトレーニングに取り組みましょう。
ペキニーズが起こしやすい問題行動とは?
噛み癖がついてしまうことがあるので、小さい頃から噛んでいいものと悪いものを教えるのが良いでしょう。ペキニーズは利口で飼い主に忠実な犬種ですが、頑固な面もあります。トレーニングを行うこと自体が難しい場合もあるので、そういう時はドッグトレーナーの方や獣医師に相談するようにしましょう。
オス・メスによるしつけの違いがあるかどうか
特に性別差はないとされています。ただし、メスは猫のような気ままな性格をしているため、少し難しいと感じるかもしれません。投げ出さず、根気よくトレーニングを行うことが重要です。
ペキニーズの散歩の頻度や時間、注意点は?
ペキニーズを散歩させるときは、次のようなポイントを意識してみましょう。
散歩の時間、頻度
ペキニーズは他犬種と比較して多くの運動量を必要とする犬種ではありませんが、運動が嫌いなわけではなく、散歩に行かなくてよいというわけではありません。肥満対策や足腰の強化のために、1回30分程度の散歩は必要です。
なお、自宅で遊ぶ際は、足腰に負担がかからないような遊び方や知育トイなどを用いた遊び方がおすすめです。
散歩時の注意点
忠誠心が強いため、飼い主を守ろうとして他の犬に吠えたり、飛びついたりしてしまうと可能性も考えられます。まだトレーニングができておらず攻撃的な行動が見られる場合は、散歩時間をずらす、コースを変更するなどして、他の犬との接触を極力避けるようにしましょう。
散歩後のお手入れ
長毛のため、散歩の際にさまざまなものが毛に付着しやすい傾向にあります。ブラッシングをして異物を取り除くほか、足先を綺麗に拭いた後、しっかり乾かしてあげましょう。
ペキニーズにおすすめの遊び方やトレーニング方法
ペキニーズは社交的な性格なので外出やレジャーに向いていますが、長時間の運動はあまり得意ではありません。毎日の散歩や軽めのドッグラン、ドッグカフェなどで運動をさせるのが良いでしょう。また、足腰に負担のないように知育トイなどを用いるのもおすすめです。
ペキニーズを飼う際の注意点
ペキニーズを飼う際には以下のようなポイントに注意しましょう。
暑さに弱いので熱中症対策を忘れずに
ペキニーズは暑さに弱いので夏に散歩をさせる際は熱中症にならないように注意してください。早朝や夜など、涼しい時間帯に散歩をさせるようにしましょう。
室内の温度管理を徹底する
皮膚病や熱中症になりやすいペキニーズにとって高温多湿の環境は天敵です。呼吸状態やお体のほてり具合を見ながら、室温調整をすると良いかもしれません。夏はエアコンや扇風機を使いながら、冬はストーブやヒーターを上手に使って快適な室温に調整をしてあげてください。
滑りにくい床材を選ぶ
足腰に負担がかからないよう、フローリングではなく滑り止めになりそうなマットなどを敷くと良いでしょう。
運動不足にさせない
肥満による弊害を防ぐために、適度な運動をさせることを心がけてください。
第2稿:2021年11月19日更新
初稿:2020年8月16日公開
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。