更新 ( 公開)
かどのペットクリニック院長。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、特にこれらの分野は院内の診療の中でも力を入れている。
短い足とコロンとしたフォルムが可愛らしいウェルシュ・コーギー・ペンブローク。「ロイヤルドッグ」とも呼ばれ、古くから英国王室で愛されてきた犬種です。その性格は、とても好奇心旺盛で天真爛漫。今回は、ウェルシュ・コーギー・ペンブロークのルーツや性格、しつけのコツ、飼う際の注意点などについて、かどのペットクリニック院長で獣医師の葛野莉奈先生にご紹介していただきます。
目次
- ウェルシュ・コーギー・ペンブロークの歴史やルーツは?
- ウェルシュ・コーギー・ペンブロークの体高、体重は?
- ウェルシュ・コーギー・ペンブロークの平均寿命は?
- ウェルシュ・コーギー・ペンブロークの被毛の特徴や毛色の種類は?
- ウェルシュ・コーギー・ペンブロークの外見や吠え声の特徴は?
- ウェルシュ・コーギー・ペンブロークはどんな性格?
- ウェルシュ・コーギー・ペンブロークを飼うのに向いている人は?
- ウェルシュ・コーギー・ペンブロークを飼う上で気をつけることは?
- ウェルシュ・コーギー・ペンブロークのしつけを始める時期やおすすめのしつけ方法は?
- ウェルシュ・コーギー・ペンブロークの食事の注意点は?
- ウェルシュ・コーギー・ペンブロークにおすすめの遊びは?
- ウェルシュ・コーギー・ペンブロークを散歩させる際に気をつけることは?
- ウェルシュ・コーギー・ペンブロークがかかりやすい病気やアレルギーは?
- ウェルシュ・コーギー・ペンブロークの日常のお手入れで気をつけることは?
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークの歴史やルーツは?
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークは、初代イングランド王・ヘンリー2世の時代から今のイギリス王室に至るまで長く愛されてきた犬種です。もともとは牧羊犬・牧畜犬として活躍してきた歴史があります。
「コーギー」と一括りにされがちですが、実はウェルシュ・コーギー・ペンブロークと、ウェルシュ・コーギー・カーディガンの2種類があり、ペンブロークの方が比較的新しい犬種と言われています。ペンブロークとカーディガンは、外見的に似ている点が多いですが、ペンブロークは尾を短く切られていることが特徴的でした。しかし、動物愛護的な観点から断尾を禁じる国が増え、最近では尾の長いペンブロークも多く見られるようになっています。
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークの体高、体重は?
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークの平均的な体高や体重はどれくらいか見ていきましょう。
体高
個体差はあるものの健康な成犬の場合、オス・メスともに約25~30cm。中型犬に分類されるため、成長スピードの早い小型犬に比べると、成長はやや緩やかです。成犬になるまでに約1年かかると言われています。
体重
オスは約10~12kg、メスは約9~11kgまで成長します。体高・体長の成長がストップした後にも、筋肉などが緩やかに成長し続ける個体も珍しくありません。
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークの平均寿命は?
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークの寿命は、約13歳と言われています。個体差もありますが、中型犬に該当するため小型犬と比べるとやや短いのが特徴です。
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークの被毛の特徴や毛色の種類は?
ここからは、ウェルシュ・コーギー・ペンブロークの被毛の特徴や毛色の種類を見ていきましょう。
被毛の特徴
ダブルコートと呼ばれる二重構造で、しっかりした固めの毛から成るオーバーコートと、柔らかめの毛から成るアンダーコートから成ります。抜け毛の量も1年を通して比較的多いといえるでしょう。
毛色の種類
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークの毛色にはどんな種類があるのかご紹介します。
レッド
明るい茶色がメインになる毛色です。白い毛が部分的に加わると、レッド&ホワイトなどと呼ばれる場合もあります。
セーブル
レッドによく似ていますが、毛先が黒くなっているのが特徴です。
フォーン
レッドよりも明るい茶色の毛が生えている種類です。
ブラック&タン
タンと呼ばれる眉毛が特徴的な毛色です。黒がメインの色になり、茶色のタンがある種類がブラック&タンと呼ばれます。
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークの外見や吠え声の特徴は?
胴長で足が短く、ふっくらとした肉付きの良い体形が特徴です。体格は中型犬の中でも大きめなので、吠え声も大きく太く聞こえる場合が多いでしょう。
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークはどんな性格?
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークには、下記のような性格の特徴があります。
好奇心旺盛
好奇心が旺盛で、活発な犬が多いです。ただし、好奇心が行き過ぎていたずらをしてしまったり、物を噛んで壊してしまったりするなど、怪我や事故につながる行動も。子犬のうちから、しっかりとしつけをすることが大切です。
天真爛漫
とてもパワフルで元気な性格。物怖じしないため、接する相手によっては他の犬や人とトラブルになってしまう可能性もあります。興奮してしまったら制御する習慣をつけ、愛犬の行動パターンや性格を把握してトラブルを回避する意識が飼い主に求められます。
社交的
人間のことが好きで、社交的な犬も多いです。しかし、これには個体差があり繊細な犬もいます。愛犬の性格を知って、適切な接し方をしてあげましょう。
飼い主に忠実
牧羊犬として人間とともに長く生活してきた犬種なので、飼い主がブレずにきちんと接することで強い信頼関係を築くことができます。
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークのオスとメスの性格の違いは?
個体差はありますが、オスのほうが体力があり、勇敢に相手に向かっていく傾向があります。体力を持て余さないよう、散歩や室内トレーニングなどで発散させてあげるように工夫しましょう。
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークを飼うのに向いている人は?
好奇心旺盛で物怖じもしないため、興奮すると吠えたり噛みついたりといった問題行動をとる可能性が高いです。興奮やストレスが問題行動につながらないように、日頃からしっかりと体力の発散に付き合ってあげられる人だと向いています。
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークは初心者向き?
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークは、体が大きめで力もあるため注意が必要。初心者でも、愛犬に対して「ダメなことはダメ」と、しっかりとしつけられる人は上手に付き合えるでしょう。
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークを飼う上で気をつけることは?
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークを飼うなら、下記の点に気をつけましょう。
肥満予防
胴が長く脚が短い体型、そしてふくよかな肉付きで愛らしいウェルシュ・コーギー・ペンブロークですが、腰への負担が大きく、椎間板ヘルニアになりやすい犬種でもあります。予防策として、肥満にならない生活習慣をつくることが大切です。
無駄吠え
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークは、吠える声も大きめです。近隣トラブルに発展する可能性もあるため、無駄吠えはしないようしつけましょう。
噛み癖
どんな犬種にも言えますが、犬が興奮すると吠えたり噛んだりという問題行動につながります。特にウェルシュ・コーギー・ペンブロークは噛む力が強く、万が一人や犬を噛んでしまったときに大きな怪我やトラブルに発展します。なるべく興奮させないように制御する、もし興奮しても噛まないように日ごろからしつける必要があります。
甘噛み
甘噛みならば大きな怪我につながる可能性は低いですが、興奮したときにもいつも通り力加減ができるとは限りません。甘噛みは大丈夫と思わずに、噛むこと自体が良くないと教えましょう。
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークのしつけを始める時期やおすすめのしつけ方法は?
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークのしつけを始める時期や、おすすめのしつけ方法をご紹介します。
しつけを始める時期
愛らしい容姿に厳しく叱ることを躊躇してしまうかもしれませんが、できるだけ子犬のうちから「してはいけないこと」だけでも徹底してしつけ始めることをおすすめします。
おすすめのしつけ方法
褒めるしつけももちろん有効ですが、知的かつ力が強い犬種なので、幼いうちから厳しくしつける習慣をつける必要があるでしょう。力が強くなる前にしつけておくことで将来的に大きなトラブルにつながりにくくなります。
また、興奮しやすい性格でもあるので、飼い主が大声でしかりつけるのは余計に興奮させてしまい逆効果になります。いけないことをしたら無視をする、低い声で静かに叱るなどの工夫が必要です。
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークの食事の注意点は?
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークにごはんを与える際は、以下のことに気をつけましょう。
与えすぎに注意
ドッグフードを与えすぎないようにしましょう。食欲旺盛な犬種なので、与えれば与えただけ食べてしまうことが多いです。与える食事量は、ドッグフードのパッケージ裏などに記載されている通りにしましょう。
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークにおすすめの遊びは?
元気いっぱいのウェルシュ・コーギー・ペンブロークが喜ぶ遊びをご紹介します。
フライングディスク(フリスビー)
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークにとって、とても興味深いスポーツと言えるでしょう。ただし、頻繁なジャンプやダッシュは腰に負担をかけてしまう恐れもあります。愛犬の体型や体調によっては避けたほうがいい場合もあるので、心配な場合はまずかかりつけの動物病院で確認してみてくださいね。
ロープの引っ張り合いっこ
飼い主と一緒に楽しめるうえ、信頼関係を築くことにも効果的。楽しむだけではなく、同時にしつけを行ってもいいでしょう。例えば、ロープを完全に離させるために「離して」「ちょうだい」などのコマンドを与え、離してくれたらきちんと褒めるのを繰り返すことで、犬が自分のペースで遊ぶだけでなく飼い主の指示を聞くトレーニングにもなります。
ドッグラン
社会化のためにも、子犬のうちからたくさんの犬や人と触れ合うことはとても大切です。狂犬病ワクチンや予防接種などがすべて終わったら、人や犬の少ないドッグランから試しに連れて行くことをおすすめします。初めから混んでいるドッグランに行くと、犬が興奮してトラブルに発展する他、犬にとってマイナスの経験になり、その後他の犬を怖がるようになってしまうケースもあります。犬を連れて行く前に、飼い主だけで下見に行けるとより安心です。
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークを散歩させる際に気をつけることは?
体力のある犬種なので、散歩は1日2回程度、30分から1時間ほど必要です。ただし、体型に追っては長時間歩くことで椎間板ヘルニアになりやすくなったり、関節に負担がかかったりする恐れも。愛犬にとって運動不足を十分に解消でき、かつ体への負担が少ない、程よい頻度・時間・距離を見つけましょう。
また、脚が短くふくよかな体型が多いウェルシュ・コーギー・ペンブロークは、熱中症になりやすい犬種でもあります。夏場は散歩時間を短くするなどの工夫が必要です。
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークがかかりやすい病気やアレルギーは?
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークが特に気をつけたい病気やアレルギーを見ていきましょう。
椎間板ヘルニア
椎間板と呼ばれる軟骨部分の変性によって脊髄が圧迫され、痛みや麻痺を起こします。症状の程度によって、外科的、内科的な治療が必要になります。ウェルシュ・コーギー・ペンブロークは、胴長で足が短い体型から発症しやすいと言えるでしょう。
股関節形成不全
生まれつき股関節が変形していることで、歩いたり座ったりするときに違和感や痛みを感じる疾患です。歩き方から気づくことが多いですが、確定のためにはレントゲン検査などでの評価が必要。愛犬を見ていて不安に思ったら、まずは犬が歩いている様子を動画に撮り、動物病院を受診しましょう。
変性性脊髄症
神経の変性が起こることで、四肢の麻痺、進行レベルによっては呼吸機能まで麻痺してしまい最悪の場合は死に至ります。ウェルシュ・コーギー・ペンブロークの場合、最終的にこの疾患にかかる犬は多いと言われています。
白内障
目の水晶体が白濁し、視力の低下が起こります。診断には特殊な機械が必要な場合もあるので、眼科に強い動物病院を受診、紹介してもらうのがおすすめです。
水晶体脱臼
水晶体を支える、ひも状の構造が断裂して外れてしまう状態です。原因は先天的なものから、外傷、白内障や緑内障との併発などさまざまです。わかりやすい症状が出ない場合も多いですが、ブドウ膜炎と呼ばれる眼球内の炎症などが併発する場合もあるので注意が必要です。
皮膚疾患
ふくよかな体型をしている犬は、皮膚同士が擦れたりシワになって蒸れることで炎症を起こす場合もあります。皮膚がデリケートな犬の場合は、特に気をつけましょう。
尿路結石
膀胱または尿道に結石ができる病気で、排尿時の痛みや排尿困難につながる場合があります。動物病院で結石の成分を調べることで、療法食などの対処が変わってきます。結石が大きいものだと、外科的な治療で摘出する必要があります。
進行性網膜萎縮症
目の網膜が変性し、最終的には失明する可能性の高い病気。遺伝的に起こる可能性もあります。遺伝子検査で、疾患を起こす可能性のある遺伝子を持っているかどうかなどがわかる場合もあるので、不安な場合は検査を受けましょう。
皮膚無力症(エーレルス・ダンロー症候群)
皮膚が象の皮のように伸びてしまい、もろくなる病気です。コラーゲン形成の異常など、皮膚構造の先天的な異常が原因とされています。
皮膚筋炎
皮膚や筋、そして周囲の血管などに炎症を起こす疾患です。炎症の原因は、過剰な免疫によるものと言われています。
肥満
食べることが大好きな犬種なので、肥満になりがち。肥満になってしまうと、関節を痛めたり椎間板ヘルニアになったりする健康面のリスクも増えます。食事量を調節したり、ドッグフード以外のものは与えないなどの管理が必要です。
熱中症
地面と胴が近く、ふくよかな体型が多い犬種なので、夏場に散歩する時間帯や室内の設定温度などによっては熱中症に陥ってしまう可能性が高いです。散歩は涼しく日の照っていない時間にするなどの配慮をしてあげましょう。
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークの日常のお手入れで気をつけることは?
皮膚疾患になることも多い犬種です。愛犬の体質に合ったシャンプーを選び、その子にとっての適切な頻度を探してあげましょう。べたつきを感じたら洗う、フケが見られるようになってきたら洗う、などのルールを決めても良いかもしれません。頻度に迷う場合は、かかりつけの動物病院やトリマーなどの専門家にアドバイスをもらいましょう。
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。