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かどのペットクリニック院長。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、特にこれらの分野は院内の診療の中でも力を入れている。
盲導犬や介助犬として活躍しているラブラドール・レトリーバー。穏やかで人懐こい性格のため、大型犬のなかでも比較的飼いやすい犬種です。今回は、ラブラドール・レトリーバーの歴史や性格、しつけのコツ、飼う際に注意すること、かかりやすい病気などをかどのペットクリニック院長で獣医師の葛野莉奈先生にご紹介していただきます。
目次
- ラブラドール・レトリーバーの歴史やルーツは?
- ラブラドール・レトリーバーの体高、体重は?
- ラブラドール・レトリーバーの平均寿命は?
- ラブラドール・レトリーバーの被毛の特徴や毛色の種類は?
- ラブラドール・レトリーバーの外見や吠え声の特徴は?
- ラブラドール・レトリーバーはどんな性格?
- ラブラドール・レトリーバーを飼うのに向いている人は?
- ラブラドール・レトリーバーを飼う上で気をつけることは?
- ラブラドール・レトリーバーのしつけを始める時期やおすすめのしつけ方法は?
- ラブラドール・レトリーバーの食事の注意点は?
- ラブラドール・レトリーバーにおすすめの遊びは?
- ラブラドール・レトリーバーを散歩させる際に気をつけることは?
- ラブラドール・レトリーバーがかかりやすい病気は?
- ラブラドール・レトリーバーの日常のお手入れで気をつけることは?
ラブラドール・レトリーバーの歴史やルーツは?
ラブラドール・レトリーバーは、もともとカナダの地方で漁師たちと生活していました。その後、イギリス人が自国へと連れ帰り、猟犬として発展します。優れた知能と体力をもつことから、警察犬や警護犬、介助犬など、私たちの生活の中の様々な分野で活躍しています。
ラブラドール・レトリーバーの体高、体重は?
ラブラドール・レトリーバーの平均的な体高と体重を見ていきましょう。
体高
個体差はありますが、平均的な体高はオスで約57cm、メスで約55cmです。
体重
平均的な体重は、オスは27〜34kg程度で、メスはそれよりも小さい25〜30kg程度です。
ラブラドール・レトリーバーの平均寿命は?
大型犬のため、平均寿命は少し短く、12~13歳と言われています。
ラブラドール・レトリーバーの被毛の特徴や毛色の種類は?
ここからは、ラブラドール・レトリーバーの被毛の特徴と毛色の種類を見ていきましょう。
被毛の特徴
しっかりした毛質のオーバーコートと柔らかい毛質のアンダーコートの2重構造となるダブルコートと呼ばれる被毛のタイプです。毛の長さは短く、毛周期があるため年間を通じて一定量抜けます。
毛色の種類
ラブラドール・レトリーバーの毛色は3種類あります。それぞれ見ていきましょう。
ブラック
黒一色の毛色です。
イエロー
薄いクリーム色の毛色で、1番多く見られます。
チョコレート
その名の通り、チョコレート色のような濃い茶色の毛色のことを指します。
ラブラドール・レトリーバーの外見や吠え声の特徴は?
ラブラドール・レトリーバーは、筋肉質でがっしりした体形の大型犬です。そのため、吠え声は太く大きい子が多いです。
ラブラドール・レトリーバーはどんな性格?
人間のサポート役として活躍することが多いラブラドール・レトリーバー。性格には以下のような特徴があります。
人懐こい
とてもフレンドリーな性格である反面、人が好きすぎて興奮してしまう子もいます。人懐こいことはよいことですが、大型犬のため注意が必要です。嬉しくて飛びついた結果けがをさせてしまうということも起こり得るので、感情のセーブの仕方をしつけましょう。
穏やか
盲導犬としても活躍していることからわかるように、基本的には穏やかな性格をしています。
やさしい
やさしい性格で、自分の行動が人間に喜んでもらえるととても嬉しくなります。
落ち着きがある
大型犬のため落ち着いている子が多いです。ただし、好きなものや苦手なものなど、スイッチが入ってしまった場合は、興奮してけがをさせてしまうこともあります。しつけでしっかりとカバーしましょう。
機敏
体力があり、運動能力も高いです。性格は穏やかですが、走るのは早く機敏な一面もあります。
聡明
とても知能が高く、自分で考えて行動することのできる犬種です。そのため、頑固さが垣間見える瞬間もありますが、適切なしつけを行うことで問題行動は避けられます。
警戒心が強い
高い知能ゆえ危険を察知する能力が高く、警戒心が強い子も多いです。夏場の雷など、得体のしれないものに恐怖を感じる場合もあります。
ラブラドール・レトリーバーのオスとメスの性格の違いは?
メスにも活発な子はいますが、オスのほうが体格が大きく体力もあるため、いたずらや興奮したときの行動はダイナミックです。
ラブラドール・レトリーバーを飼うのに向いている人は?
体力があるため、一緒に運動を楽しみたい方や、しつけにしっかり時間をかけられる方は向いているかもしれません。やさしい性格なので、お子さんのいるご家庭で少しずつ家族になる過程を楽しめる可能性もあります。
ラブラドール・レトリーバーは初心者向き?
大型犬のためしっかり向き合う体力は求められますが、おおらかで友好的な性格なので、初心者でも比較的飼いやすいでしょう。
ラブラドール・レトリーバーを飼う上で気をつけることは?
実際にラブラドール・レトリーバーを飼う際は、以下のことに気をつけましょう。
噛み癖
ラブラドール・レトリーバーは、発散や遊びの一環として物を噛みます。興奮の度合いによっては、人を咬む、咬んでおもちゃにすることで、けがをさせてしまうこともあります。このような場合は、しっかり叱ってしつけましょう。また、おもちゃや家電製品などを噛んで自身がけがをしてしまうこともあるので、管理には気をつけてください。
適度なストレス発散
人とのコミュニケーションや運動不足により、家具やおもちゃを噛んで破壊することがあります。日頃からストレスを発散させる習慣をつけてあげましょう。
ラブラドール・レトリーバーのしつけを始める時期やおすすめのしつけ方法は?
ここからは、ラブラドール・レトリーバーのしつけを始めるのにおすすめの時期や、しておいたほうが良いしつけをご紹介します。
しつけを始める時期
ラブラドール・レトリーバーは、とても知能の高い犬種です。体格が大きくなるのも早く、噛むことや吠えることが遊びでは済まされないレベルに達するのも早いです。できるだけ小さいうちから、いけないことはいけないということを、きちんとしつけましょう。
おすすめのしつけ方法
知能の高い子たちであるため、ほめることを優先するしつけ方法で充分学んでくれる可能性は高いです。一方、危険につながる行為の場合は、後々の大問題を防ぐため厳しく接することをおすすめします。無駄吠えをやめさせる、甘噛みをさせないなど、日頃のしつけから習慣づけてあげましょう。
ラブラドール・レトリーバーの食事の注意点は?
ラブラドール・レトリーバーに食事を与える際の注意点を見ていきましょう。
肥満にならないように食事量に注意
肥満になると関節などに負担がかかり、運動器の疾患になる場合があります。栄養失調は気を付けなければいけませんが、過度にご飯を与えすぎることもよくありません。その子に合ったご飯を適量与えましょう。
早食い防止の工夫をする
食べるときに空気を吸い込むと胃拡張胃捻転を起こす可能性があるため、早食い防止の器などを使用しましょう。
ラブラドール・レトリーバーにおすすめの遊びは?
知能が高く、運動が好きなラブラドール・レトリーバーは、以下のような遊びがおすすめです。一緒に楽しんで絆を深めましょう。
フライングディスク(フリスビー)
体を動かすことだけでなく、人も好きなので、一緒に楽しめるフライングディスクは向いています。やり方がわかれば、きっと飼い主と愛犬で楽しみを共有できると思います。
ドッグサーフィン
水を怖がらないケースが比較的多いため、ドッグサーフィンも楽しんでくれる可能性が高いです。少しずつ教えて水に慣らしてあげましょう。
アジリティ
ラブラドール・レトリーバーは、身体能力・体力・知力が高いです。飼い主との信頼関係がしっかりと築けている場合、コミュニケーション手段の一つとして一緒に楽しむことができるでしょう。
ノーズワーク
ノーズワークは、犬本来の嗅覚の特性を生かした知育遊びです。遊び方を覚えると、頭を働かせながら飼い主と楽しめるでしょう。室内でのスキンシップや発散にもなります。
ラブラドール・レトリーバーを散歩させる際に気をつけることは?
1日2〜3回程度、長時間ゆっくり歩きましょう。大型犬のため、室内のトイレで排泄できず、散歩時しかしない子は、短時間で回数を増やしてください。食後すぐの散歩は避け、関節など、その子の状態に応じて距離や時間を調節しましょう。
ラブラドール・レトリーバーがかかりやすい病気は?
ここからは、ラブラドール・レトリーバーがかかりやすい病気を見ていきましょう。
股関節形成不全
先天的に関節の形状が変化しているため、歩く際などに股関節に負荷がかかり、違和感や重度になると痛みを感じることがあります。できるだけ早期発見できるよう普段から観察してください。
腫瘍
レトリーバー系は悪性だけでなく良性の腫瘍もできやすいです。体表の腫瘍は普段のスキンシップの際、体内の腫瘍は半年〜1年に一度、血液検査や超音波検査などの診断を受けると早期発見につながります。
インスリノーマ
膵臓にできる腫瘍で、悪性度が高い疾患です。低血糖などの障害を起こすことがあり、血液検査や超音波検査などが必要となります。元気がない・痩せてきたなどの変化に気づいたらできるだけ早く受診してください。
リンパ腫
皮膚表面と内臓にできる場合があり、最近では低分化型と呼ばれる悪性度の低いリンパ腫も存在すると言われています。定期的なかかりつけの先生への受診や検査が早期発見につながるでしょう。
胃拡張・胃捻転
空気などで胃が拡張・捻転してしまう疾患です。命の危険につながる可能性の高い病気のため、嘔吐の頻発・おなかのハリや違和感で伏せた状態でいることが多い、などの症状があったらすぐの受診をおすすめします。
アトピー性皮膚炎
皮膚に強い痒みを生じる疾患です。アレルギー同様、免疫の状態の不安定さで起こる疾患ですが、明確なアレルゲンはありません。痒そう・赤みがある・脱毛があるなどの場合、速やかな受診をおすすめします。
眼瞼外反症
瞼が外側に反り返る異常です。下まぶたが外反することが多く、眼球が露出する頻度が高まり、角膜や結膜を傷つけることがあります。放置すると炎症が重度になるので、外観上の違和感があったら受診をしてください。
網膜剥離
網膜が剥離する病気です。痛みを伴い、視力の低下や失明などが起こることもあります。眼球の激しい充血・目を閉じたままにするなどの異常があったら受診をしましょう。眼科専門の動物病院の方がスムーズに進むことがあるので、紹介状を書いていただくかもしれません。
外耳炎
夏場などの湿度の高い時期に、感染性の外耳炎を起こす場合があります。また、アトピー性皮膚炎や脂漏症など、慢性的な皮膚の状態悪化で外耳炎を起こすケースもあります。
喉頭麻痺
喉頭と呼ばれる気管につながる軟骨の部分が麻痺を起こし、呼吸困難などを起こす病気です。呼吸がしづらくなるため、熱中症になりやすいなどのリスクも高まります。
巨大食道症
食道の筋肉が弛緩・拡張することで、食べたものを胃や腸へと送る運動機能が低下・消失する病気です。食事後、短時間のうちに内容物を吐き出す行動が見られることが多く、レントゲン検査を行うことが一般的です。
弁狭窄
血液の逆流を防ぐための弁が狭窄することで循環不全を起こします。重度になると心不全の進行・呼吸困難・腹水の貯留などが生じます。超音波やレントゲンでの検査後、内科的治療または外科的治療にて管理します。後者は専門性の高い手術のため、高度医療施設などで行う可能性が高いです。
甲状腺機能低下症
代謝に関するホルモン分泌の機能が低下する疾患です。脂質代謝や腸運動の異常、脱毛等を併発することもあります。眼をシパシパさせる・開けないなど異常を感じたらすぐに受診しましょう。失明する可能性もあります。
糖尿病
糖の代謝の異常が起こる病気です。重度になると、エネルギーを糖以外から作り出そうとし、通常の機能が為せなくなります。命の危険につながるので、食べているのに痩せていく、食欲の変化があるなどの違和感に気づいたら、かかりつけの先生に相談しましょう。
尿石症(シスチン)
シスチン結石という尿結石ができる疾患です。尿検査やエコーで確認できるケースが多いので、血尿・排尿時の異常に気づいたら、採尿して受診しましょう。療法食などで結石が解けるか試み、変化がなければ外科的に摘出する可能性が高いです。
膣炎
膣が感染を起こす疾患で、陰部からの排膿がある場合が多いです。排尿後に陰部を清潔にする・清潔でない場所に陰部を付着させないよう気を付けましょう。シニア犬や抵抗力が低い犬は発しやすく、避妊手術で子宮を除去していても、膣や残った子宮の断端部分で排膿する場合があります。
ナルコレプシー
珍しい神経疾患です。何らかの刺激により睡眠が誘発され、脱力発作が起こります。脳の受容体の異常であることが多いですが、治療は投薬でコントロールすることが一般的です。疑わしい発作があったら、まずその際の動画を撮影して受診すると、診察がスムーズに進む可能性が高いです。
ラブラドール・レトリーバーの日常のお手入れで気をつけることは?
ラブラドール・レトリーバーは、よく毛の抜ける犬種であるため、ブラッシングはこまめに行ってあげましょう。また皮膚トラブルも起こりやすい犬種です。その子の皮膚の状態に応じ、適切な頻度をかかりつけの先生やトリマーなどと相談するよう心がけましょう。
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。