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ブラウン管テレビの静電気で演奏!? 人と機械をつなげる音楽家・和田永

聞いてみた

和田永

和田永

1987年生まれ。学生時代よりアーティスト/ミュージシャンとして音楽と美術の領域で活動を開始。2009年より年代物のテープレコーダーを楽器として演奏するグループ「Open Reel Ensemble」を結成してライブ活動を展開。2015年より役割を終えた電化製品を新たな家電楽器として蘇生させ、徐々にオーケストラを形作っていくプロジェクト「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」を始動させ取り組む。

ものづくり生態図鑑#12 アーティスト・和田永

ものづくり生態図鑑#12 アーティスト・和田永

アーティスト・和田永の特ちょう

ものづくり生態図鑑#12 アーティスト・和田永

【分類】
ものづくり科 電子工作属 家電楽器種

【生そく地】
ホームセンター ホームセンター 電線コーナー

【特ちょう】
使われなくなった でんかせいひんを ふしぎな
オリジナル楽器 にかえてしまうぞ

秘密基地みたいな場所で

秘密基地みたいな場所にいる和田さん

──ものづくりを始めたきっかけは何ですか?

和田永さんアイコン

和田永

子どもの頃、家族旅行で訪れたインドネシアで体感したガムラン(※)にトラウマ級の衝撃を受けました。ガルーダと呼ばれる鳥の神様が舞うダンスも衝撃でした。その後、日本で暮らす中で、ブラウン管の砂嵐の向こうにガルーダがいるような気がして、ある時から、ブラウン管テレビが埋め込まれた巨大な蟹の足の塔がそびえ立っている場所で、音楽の祭典が待っていると妄想していました。ですが、地球にはそんな場所はないと友だちに教えられ、自分でつくるしかないと思い立ったのが、最初です。

※ガムランとは:インドネシアで行われているさまざまな銅鑼や鍵盤打楽器による合奏の民族音楽の総称。

──活動について説明をお願いします。

和田永さんアイコン

和田永

2009年頃から年代物のテープレコーダーを演奏するライブ活動を展開したり、ブラウン管テレビを打楽器として演奏するパフォーマンスなどをしてきました。

ブラウン管テレビを打楽器として演奏するパフォーマンス

Photo by Mao Yamamoto

和田永さんアイコン

和田永

2015年からは「エレクトロニコス・ファンタスティコス!(以下:ニコス)」という活動にも取り組んでいます。誰でも参加できる形で、役割を終えた電化製品を新たな家電楽器として蘇生させてオーケストラを形作ろうとしています。NPOの音楽団体・トッピングイーストさんからお声がけいただいたのがきっかけで始まった、オープンな参加型アートプロジェクトです。

オープンな参加型アートプロジェクトの様子

和田永さんアイコン

和田永

はじめは墨田区のスペースを借りて、秘密基地みたいな場所をつくりました。そこで寝泊まりしながら、地域の方々にいらない家電を募って、分解して楽器の試作をつくっていました。徐々にミュージシャンやエンジニアの方々も集まって、現在では80名くらいの参加メンバーとともに日夜創作活動を続けています。

 

ニコスの活動では、電磁テクノロジーが現実のありようを超越し、さらに楽器として発展したとき、そこにどんなパラレル・ワールドが広がるのかを実験している感じですね。

参加メンバーと創作活動

──今までつくってきた中で、特に思い入れのある作品を教えてください。

和田永さんアイコン

和田永

ニコスの活動を通して、これまでに20種類以上の古い家電が楽器としてのセカンド・ライフを迎えてきました。でもやっぱり一番思い入れがあるのは「ブラウン管ドラム」ですね。僕が大学生のときに偶然プラグを差し間違えていたことにより生まれた楽器で、それとともに歩んできた10年間といっても過言ではないくらいです。ちょうど「地デジ化」が推し進められて、ブラウン管がどんどん役割を終えて捨てられてしまう時期でもあったのが印象に残っています。でもそこから「未来世紀ブラウン管」が始まった気がします。

ブラウン管ドラム

Photo by Mao Yamamoto

パフォーマンスの様子

Photo by Mao Yamamoto

エレクトロマグネティック・トライブ!

エレクトロマグネティック・トライブ!

Photo by Mao Yamamoto

──領域を超えて様々な活動をされていますが、自分の活動のジャンルは何だと思いますか?

和田永さんアイコン

和田永

今の僕の活動を例えるなら「部族」ですかね。電磁部族、つまりエレクトロマグネティック・トライブ!(笑) 民族音楽的な意味も含みつつ、家電が材料でインターネットが通信手段なので地理を越えつつ、僕自身も電化製品を演奏する電磁部族の一人である、という妄想を続けています。

 

エンジニアもミュージシャンもいるし、「ものづくりからはじまる楽団」というイメージですね。コミュニティや場をつくりながら色んな人とグルーヴしていく感覚がずっとあります。

──作品をつくっていて難しいことや苦しいことはありますか?

和田永さんアイコン

和田永

個人制作においても、みんなでものを作るときも、基本的には常に困難に立ち向かっている気持ちです(笑)。特に、音楽やそれを奏でる楽器というものは、人類が長い年月をかけて脈々と受け継がれてきたものすごい技術と文化なんですよね。「わざわざブラウン管テレビや扇風機を使わなくてもいいじゃん」って普通はなりますけど、それでしかできない何かを発見したいですね。完成された音楽や楽器とは異なる世界線を冒険していくという意味で、困難ですけど常に謎のロマンがありますね(笑)。

ブラウン管

和田永さんアイコン

和田永

あとは緊急の課題としては楽器を置くスペースですね。ニコスは6年目なんですけどモノがどんどん増えちゃって、ブラウン管まみれなんですよね。そしてどれも放送電波は砂嵐しか映らない。それは良さでもあるんですけどね(笑)。

──愛用している道具などはありますか?

和田永さんアイコン

和田永

道具と言っていいのかわかりませんが、「黒ガムテープ」と「アロンアルファ」ですね。楽器をつくるときに、とりあえず仮止めとして家電と家電をくっつけたり、なんにでも使えるので、手放すことはできません。

「黒ガムテープ」と「アロンアルファ」を愛用

和田永さんアイコン

和田永

ホームセンターにもよく行きます。「扇風機にギターストラップをつけるのに最適な部品」とかネットで検索しても出てこないので、基本的には足を運んで探すようにしています。材料を探しているうちに、思いもよらない良いアイデアが生まれることも多いですね。あとイベントでホテルに泊まるときはホームセンターと電気屋が近くにあるかどうかを重要視してます(笑)。

通電したやつだいたい友達

「通電したやつだいたい友達」

──コロナ禍において制作に対する考えが変わったことはありますか?

和田永さんアイコン

和田永

ありますね。ブラウン管の静電気を拾い、手を繋いで電気を伝えることで音を鳴らすという演奏法があって、それを拡張した「通電したやつだいたい友達」というキャッチフレーズの「大通電会」を予定していました。しかし、コロナ禍で中止になっちゃって……。ですが、逆に電磁波を応用した非接触型の新たな奏法も、参加メンバーの知恵が結集して沢山生まれています。とはいえ、人間が電気回路の一部となって、人と人が接触することによる演奏やコミュニケーションの可能性はより模索していきたいと思うようになりました。落ち着いたらまた、濃厚接触通電したいですね。

──あらゆる制限がないとしたら、どんなものを作りたいですか?

和田永さんアイコン

和田永

子どもの頃に妄想した怪電波を発する巨大な蟹の足の塔がそびえたつ街ですかね(笑)。電磁パンクランドとして、公園の一面を持ちながらも住人もいるような感じで……。僕は塔の地下深くに住んで、そこで作曲を続けます。

和田さんが描いた妄想図

和田永が「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」を立ち上げた時に描いた妄想図

──ものづくりを続けるコツはありますか?

和田永さんアイコン

和田永

みんなでアイデアや得意なことを持ち寄ってつくっているのがけっこう大きいですね。仲間がいる、グルーヴしていくっていう感覚は、続けていく楽しさそのものですね。このプロジェクトで何かものをつくったら、その楽器を演奏してくれる人や、奏法を見つける人、曲をつくる人、その楽器からまた新しい変種や亜種や別のものをつくる人が出てくる。そういうふうに、いいリレーが生まれるというか、カオスなコミュニケーションがどんどん起きていくとブレーキがかからなくなりますね(笑)。公園に集まってワイワイするような感覚を大切にしていきたいですね。

──和田さんにとってものづくりとは?

和田永さんアイコン

和田永

それを見てしまったら後戻りできないような「“魔”ものづくり」だと思っています。昼はものづくり、夜は魔ものづくり、みたいな感じで。家電製品の物の怪(もののけ)をつくっているような。呼び覚ますような?

──今後チャレンジを考えていることはありますか。

和田永さんアイコン

和田永

今まで制作してきた家電楽器の考え方やつくり方、必要な材料などをまとめたPDFをインターネットを通じて入手できるようにしたいなと思っています。そしていつか「国境無き電磁オーケストラ」をつくってみたいですね。そしてご当地のオリジナル楽器が生まれたら、その場所に僕が直接向かう。そうやって旅をしながらお祭りをしたいですね。言葉は伝わらなくても、血流と電流の通ったビートでコミュニケーションができたら最高ですね。

パフォーマンスの様子2

Photo by Mao Yamamoto

──和田永さん、ありがとうございました!

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