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去る2020年11月3日、カインズ朝霞店がグランドオープンを迎えた。
買い物をより便利にするためのデジタル施策を数多く取り入れ、新しい生活様式に対応したショッピング環境を整備。お目当ての商品が陳列された場所までお客さまをエスコートする「売場案内ロボット」の姿が近未来的だ。
現在、朝霞店では2台の売場案内ロボットが活躍している
売場案内ロボットの導入はホームセンター業界初の試みとなるが、業界初なのはこれだけではない。カインズ朝霞店では日本のホームセンターとして初めて、FSC®認証を受けた国産針葉樹合板の取り扱いを開始。その木材はFSC®認証マークとともに、売場に並んでいる。
だがしかし、「FSC®認証」のフレーズにピンとくる人は、そう多くはないはずだ。一言で説明するなら、FSC®認証を受けた木材を購入することが森林保護につながる。その理由は何なのか。日本におけるFSC®の事務局「FSC®ジャパン」の広報を務める河野絵美佳さんにお話を伺った。
森林破壊が深刻なインドネシア・スマトラ島。紙パルプ用の植林地開拓のために森が焼き払われた(©Eyes on the Forest 写真提供:WWFジャパン)
FSC®とは「Forest Stewardship Council®(森林管理協議会)」の略称。責任ある森林管理を世界に普及させることを目的とした非営利団体であり、国際的な森林認証制度を運営している。カインズ朝霞店が取り扱いを始めたのも、この制度に認められた木材だ。
「私たちは木を原料とした品々に囲まれ、木なくしては生活できません。だからといって、やみくもに木を切っては、地球から森が消えてしまいます。FSC®は、森を守りながら森林資源を使っていくためのルールを作り、管理を行う団体です」
木材はもちろん、紙の原料も森林からやってくる。何気なく手に取り、使っている物の向こう側に森林破壊があることは想像できても、どこか遠い世界の話だ。
しかし、事態は深刻だ。地球上の天然林の面積は、2010年から2015年の間に年平均650ヘクタールが減少。この減少率をサッカーコートに置き換えると、3.5秒の間にコート1面分の天然林が消滅していることになるという。
インドネシア・スマトラ島の先住民族。やはり植林地開拓ために、彼らの住まいも奪われた(©Eyes on the Forest 写真提供:WWFジャパン)
「大規模な山火事も雨量の増加も、世界にさまざまな自然災害をもたらしている気候変動の一因は森林破壊です。森林破壊が進めば、そこに生息する動物のすみかを奪うことにもなります。また、先住民族をはじめとする森の中や周辺に住む人の数は約3億5,000万人。やみくもな森林伐採は、彼らのくらしを脅かすという、人権侵害の側面も孕んでいるのです」
こうした事態が問題視され始めたのは、1980年代のこと。森林保護の気運は欧米を中心に高まりを見せ、そこで起こったのが「環境破壊や人権侵害につながる木材資源から製造された商品は買わない」という意思を示す、市井の人々による不買運動だ。
「すると企業は、こぞって『うちは環境に配慮していますよ』と主張するためのマークを作り、商品に貼り始めました。ただし、それはあくまでも企業独自のマーク。本当に環境に配慮しているのか、どこまで配慮しているのかを評価する基準は存在せず、不買運動そのものが形骸化していった経緯があります」
そう、不買運動の形骸化こそがFSC®設立の背景だ。その後、1992年にブラジル・リオデジャネイロで開催された「地球サミット」において、森林保護を目的とした世界条約が採択されなかったことが最後のひと押しとなり、FSC®は1994年に産声を上げる。
「繰り返しになりますが、私たちFSC®は協議会であり、認証制度を管理をする団体です。環境保護団体や人権保護団体、さらには経済を担う企業にも参加いただき、環境・人権・経済という多角的な面から、森を守りながら森林資源を使うためのルール作りを行っています」
森を守りながら、森林資源を使うためのルール。このルールを満たした製品にのみ付与されるのがFSC®認証であり、FSC®マークだ。カインズ朝霞店では、まさにその認証を受けた木材の取り扱いを始めたが、FSC®が定めるルールは非常に厳格だ。
「私たちは製品にFSC®認証を付与する前段階として、ふたつの認証を設けています。伐採対象となる森林の管理に問題がないかを審査するFM認証、これをクリアした認証材が消費者の手に届くまでの加工・流通過程に問題がないかを審査するCoC認証です」
つまりはFM認証を取得した森林の木材が、CoC認証を取得した企業によって加工されることで、ようやく製品にFSC®マークを付けられる仕組みだ。そしてFM認証を取得するためには、FSC®が設けた10の原則と70の基準、さらには各国の状況を考慮した約200もの指標すべてをクリアする必要がある。
この厳格さこそがFSC®認証の意義だが、さらに付け加えるならば、FSC®が行うのはあくまでもルール作りのみ。公平な視点を担保すべく、審査そのものは第三者機関に委ねている。