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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
賢そうにぴんと立った耳、尖った口吻がかっこいいシベリアン・ハスキーは、スピッツ族の仲間です。がっちりした体躯とオオカミのようなその風貌でありながら、温厚で飼いやすい犬種として人気があります。今回は、獣医師の林美彩先生に教えていただいた、大きめの中型犬に属する、シベリアン・ハスキーの性格の特徴や飼う上での注意点などについて解説していきます。
目次
- シベリアン・ハスキーの歴史やルーツは?
- シベリアン・ハスキーの体高・体重・平均寿命は?
- シベリアン・ハスキーの毛色の種類や被毛の特徴は?
- シベリアン・ハスキーはどんな性格?オスとメスで違いはあるの?
- シベリアン・ハスキーを飼うのに向いている人は?
- シベリアン・ハスキーの飼い方や生活上で注意すべきことは?
- シベリアン・ハスキーのしつけを始める時期や心がけておくべきことは?
- シベリアン・ハスキーを散歩させる際に気をつけたいことは?
- シベリアン・ハスキーにおすすめの遊びは?
- シベリアン・ハスキーの食事の注意点は?
- シベリアン・ハスキーがかかりやすい病気とその予防法は?
- シベリアン・ハスキーの日常のお手入れで気を付けることは?
シベリアン・ハスキーの歴史やルーツは?
シベリア北東部のチェルスキー山脈一体を原産とする犬種と言われています。古くから北東アジアに住んでいたチュクチ族やイヌイットが、冬はそり犬として、夏場はボート引きとして飼っていたようです。遠吠えする声がハスキーであったことが名前の由来という説があります。
進化系統上はスピッツと同系で、エスキモー犬の一種です。スピッツとは、ドイツ語で「尖っている」という意味です。極寒の地を原産とするスピッツ族は、冷気を直接肺まで送らないように、長く尖った口元を持っているのが特徴です。
シベリアン・ハスキーのワイルドな風貌は、オオカミに少し似ていますが、実は、ほかの犬種よりもオオカミに近い遺伝子をもっていることが、近年の研究によって明らかになっています。日本では、90年代に漫画の影響で一躍有名になり、一時的な流行を迎えましたが、現在は落ち着いています。
シベリアン・ハスキーの体高・体重・平均寿命は?
シベリアン・ハスキーの体高は、オスは54~60cm、メスは51~56cmほど。体重はオスが20~27kg、メスが16~23kgと大きめですが、そり犬の中では軽量の犬種とされています。
また、シベリアン・ハスキーの平均寿命は、12~15歳で、大型犬の中では最も長寿な犬種と言われています。ただし、寿命はあくまで目安で、個体によって異なり、環境や生活様式に左右されます。環境を整え、体調管理に気を配ることで長生きしてくれることもあります。
シベリアン・ハスキーの毛色の種類や被毛の特徴は?
豊富な毛色が魅力のひとつであるシベリアン・ハスキー。毛色はブラック×ホワイト、シルバー×ホワイト、レッド×ホワイト、チョコレート×ホワイトなどがいます。以下にそれぞれの毛色についてご紹介します。
ブラック×ホワイト
シベリアン・ハスキーというとすぐ目に浮かぶ代表的な毛色です。ホワイトをベースに、胴体から額、顔にかけてブラックの毛が交じります。成長とともに顔の模様が変化し、顔の表情が変わって見えるのが、飼う楽しみとなります。
シルバー×ホワイト
ホワイトとシルバー(グレー)がかった毛色の組み合わせが上品な印象です。シルバーの色の濃さによって印象が変わることもあります。
チョコレート×ホワイト
赤みがかった明るい茶色(レッド)とホワイトの組み合わせで、温かで穏やかな印象を与えます。ここ数年、徐々に人気が高まっている毛色です。
他にも日本ではめずらしいですが、中には「ホワイトハスキー」と呼ばれる全身白色の子もいるそうです。
どのカラーも、太い眉のような顔の斑紋が表情豊かに見えるのが愛嬌に溢れていて可愛いですね。目の色はブルー、ブラウン、左右の目の色が違うオッドアイも犬種として容認されています。寒い地方の出身であるシベリアン・ハスキーは、その豊富な毛量が魅力のひとつですが、被毛は、撥水性が高く、硬めの手触りのオーバーコートと、体温を逃さないように厚く密集した短いアンダーコートの2重構造(ダブルコート)になっています。
シベリアン・ハスキーはどんな性格?オスとメスで違いはあるの?
シベリアン・ハスキーの性格は、極寒のシベリアでそり犬として活躍してきた、そのルーツによるところが大きいでしょう。仲間と足並みを揃えてそりを引く作業を行う上で、協調性が養われたようで、従順で集団生活に向いています。スタミナ、パワーともにあり、活発でエネルギッシュな子が多いです。
また、仲間意識が強く、人に寄り添うことを好む反面、寂しがりなので、大きいからと言って戸外でひとりぼっちにさせていると、強い孤独感を感じさせてしまいます。室内でいつも家族とともに過ごさせることで、心が安定し、体調にもいい影響を与えます。オスとメスの性格は大きく違いはないようですが、メスは気が強い傾向にあると言われています。
シベリアン・ハスキーを飼うのに向いている人は?
運動量が多いシベリアン・ハスキーを飼うには、朝と夕、1時間ずつを目安に、散歩に連れていくことができる時間や体力のある人でないと難しいでしょう。
また、ダブルコートで抜け毛も多いので、定期的なブラッシングができる人、抜け毛が気にならない人が望ましいです。また、シベリアン・ハスキーは群れで生活していたという歴史からひとりぼっちにされるのが苦手なので、家に誰もいない時間が長いという家庭には向かないかもしれません。
環境面では、熱中症になりやすい夏場はシベリアン・ハスキーにとって危険な季節なので、室内飼いができることが望ましいです。室内でもゲームをしたり、体を使ったりするスペースを確保できるおうちに向いていると言えます。
シベリアン・ハスキーの飼い方や生活上で注意すべきことは?
シベリアン・ハスキーは、ひとりぼっちにさせて仲間を認識できない状態にされると、狼のように遠吠えをする行動が見られるため、寂しさや孤独によるストレスを感じさせないようにすることが大切です。
また、シベリアン・ハスキーはそり犬なのでスタミナがあります。とにかく走りまわるのが大好きで、運動不足がストレスとなってしまうので、毎日2回の散歩は欠かせません。運動不足から来るストレスで、いたずらやムダ吠えをしたり、知らない人やほかの犬に対して攻撃的になったりすることもあります。可能であれば、散歩中にも思いっきり走り回らせてあげられる時間があるといいですね。
そり犬なので、リードを強く引っ張る、「引っ張り癖」があります。むやみに制限するのではなく、引っ張りそうになったら、声がけやおやつで気をそらすなどして、引っ張りたい気持ちを上手にコントロールしてあげましょう。社会化期に幼稚園や訓練所などを利用して、きちんとしつけておくのもいいかもしれません。
シベリアン・ハスキーのしつけを始める時期や心がけておくべきことは?
どの犬種もそうですが、感覚器や運動機能が発達してくる生後3〜16週の社会化期と呼ばれる時期に、しつけをしておくことが大切です。
おうちに犬を迎え入れたら、様子を見つつその日から始めるといいでしょう。大きな声を出したり、叩いたりなどの体罰を加えるしつけはよくありません。できなかったことを叱るのではなく、失敗させないないように導いてあげたり、「飼い主さんにとって望ましいこと」をしたときに、たくさん褒めたりすることが大きなポイントです。しつけの仕方が分からない時にはしつけ教室などを利用するのが良いと思います。
また、シベリアン・ハスキーはほかの犬種と比較すると、物を覚えるのに時間がかかる傾向にありますので、飼い主側の忍耐力も要求されます。時間をかければちゃんと覚えてくれるので、気長につきあってあげてください。
シベリアン・ハスキーを散歩させる際に気をつけたいことは?
活動的で疲れ知らずの犬種なので、1日2回、1時間ずつの散歩は欠かせません。運動不足がストレスになってしまうので、起伏のある散歩コースや、途中にドックランがあるような環境が望ましいでしょう。
寒い地方の犬なので、気温、湿度ともに高い日本の夏を苦手とします。気温が高くなってきたときの散歩は、熱中症にならないように様子を見ながら行う必要があります。
シベリアン・ハスキーにおすすめの遊びは?
運動欲求が高いため、ドックランや広い場所で思いきり走ったりして、体力を使う遊びをするのがお勧めです。ただし、暑い時期や、雨の日などは、室内で遊ばせてあげたいので、そのような遊びができないのでノーズワークや知育玩具など、体を使って楽しく過ごせるように工夫してあげてください。
シベリアン・ハスキーの食事の注意点は?
シベリアン・ハスキーは、極寒の地域で暮らしていたことから、脂肪を貯めやすい体質といわれています。体重増加は関節系負担をかけるので要注意です。脂肪分が多いことで脂漏症にもつながるので、脂肪の摂りすぎにも気をつけてあげましょう。
また、市販のものでも手作り食でも、体重変動を見ながら量を調節してあげることが大切です。また、量を控えめにして、何度かに分けて与えるようにすると、食べ過ぎを防ぐことができます。
シベリアン・ハスキーがかかりやすい病気とその予防法は?
シベリアン・ハスキーがかかりやすい病気やその予防法、その他に気をつけるべきことを押さえて、少しでも長く一緒に暮らせるようにしましょう。
股関節形成不全
股関節が発育の段階で形態的な異常を起こし、様々な症状を引き起こす病気です。歩き方がおかしかったり、横座りをしたりするようになるなど病気が疑われたら、動物病院を受診しましょう。対策としては、体重を増やさないようにし、筋力をつけることですが、重度の症状を引き起こしている場合には手術となります。
進行性網膜委縮症
暗い場所が見えづらくなる夜盲症である進行性網膜萎縮症(PRA)は、シベリアン・ハスキーの遺伝的な病気です。現状、有効な治療法はありませんが、早期の発見による投薬治療で、病気の進行を遅らせることができます。白内障や緑内障も、シベリアン・ハスキーには見られることが少なくありませんので、定期的にチェックするように心がけてください。
脂漏症
シベリアン・ハスキーの皮膚はダブルコートの被毛にびっしりと覆われていて蒸れやすいため、体がべとついて油っぽくなったり、乾燥してフケが増えたりする脂漏症になることがあります。こまめにブラッシングして、抗生剤やシャンプーなどを使って皮膚を清潔な状態に保ちましょう。
癲癇(かんしゃく)
神経細胞の興奮が過剰になり、引き起こされる脳の病気のことですが、シベリアン・ハスキーにも見られます。抗てんかん薬などを用いての治療となりますが、その他の脳疾患(水頭症や脳腫瘍など)が原因の場合には、それらの治療を優先して行うこともあります。
シベリアン・ハスキーの日常のお手入れで気を付けることは?
ふさふさとした毛並みが魅力的なシベリアン・ハスキーですが、その分、春と秋ごろの換毛期の抜け毛の量は大量です。小まめなブラッシングは抜け毛の予防にもつながるので、換毛期以外の季節にも週2~3回程度はブラッシングを行いましょう。
いきなりブラシをあてるのではなく、手で全身を触ってみて毛玉があったらほぐしてから、ブラッシングしましょう。長い部分は手のひらに毛をのせ、毛先からとかすといいでしょう。ブラッシングをいいスキンシップの機会として、楽しい時間にしてあげましょう。特に汚れがなければシャンプーは月1回程度でも十分でしょう。
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