料理研究家・リュウジの簡単やばうまレシピ「手羽元と大根の塩煮込み」
リンクをコピーしました
目次/ INDEX
皆さんは、「ごんじり」をご存知ですか?
周囲で実際に聞いてみると、「郷土料理?」、「お酒の名前?」、「焼き鳥の種類?(ぼんじり)」などなど、色々な声があがっていました。
そう勘違いするのも、不思議ではありません。関東から東北にかけては定番と呼ばれるほどの認知があるものの、西日本では知名度がほぼない商品だからです。
知らない人のためにお伝えすると、ごんじりは「寒干大根のスナック」です。大根を丹念に干して、コクのある甘みとほどよい酸味で仕上げられており、発祥の地・群馬県などでは定番のおやつとして知られています。
お茶うけとしてはもちろん、おつまみやお弁当のおかずとしても活躍しており、ポリポリの食感にハマる人が続出。素朴な味わいにピリッと唐辛子のアクセントがきいて、一度食べ始めたら止まりません!
また、低カロリーで食物繊維が豊富なこと、噛みごたえがしっかりしているので満腹感を得られやすいことから、ダイエット中の人やカロリーを気にしている人にもオススメ。しかも、一つずつ個包装されて長期保存がきくので、どこでも食べられます。
そんなに美味しくて、ヘルシーで、どんなシーンでも食べられるのに、なぜ国民の半数が知らないという事態に陥っているのか…。名前も特徴的な「ごんじり」は、一体どのように開発されたのか…。商品を生み出した村岡食品工業株式会社に、お話を聞いてみました。
多くの人が気になっているのは「ごんじり」という商品名について。そこで、このインパクト抜群の商品名がどのような経緯で付けられたのか伺ってみました。
「実は2つの説がありまして。まず一つ目は、食べる時の歯ごたえを表す群馬県の方言『ごんじり、ごんじり』からきているという説。ただ、現在では使われていないので、かなり昔に使われていたのではないかと思います」(広報担当者)
もう一つの説は、「だいこんのしり」から「ごんじり」となったという説。農家の人たちが農作物を大事にしながら大根の尻尾まで食べていたので、この名前がついたのではないかということです。
商品名に込められた、農作物への感謝と、柔らかいのにコシがある魅力的な食感。「ごんじり」にかける開発者の心意気が伝わってきます。
「ごんじり」を作っているのは、1933年創業の「村岡食品工業」。1965年には「浜千鳥」という商品が、全国漬物品評会で農林大臣賞受賞を受賞するなど、古くから多くの人に愛されている群馬県の老舗企業です。
1985年には現在の主力商品「梅しば」を個包装で販売開始。保存期間が長く気軽に外へ持っていける「漬物スナック」は画期的で、爆発的な人気につながりました。
創業当時の社屋(村岡商店)と、現在の社屋
「それまでは一般的な漬物屋でしたが、お菓子のように個包装で『梅しば』を販売したことで、日本全国のスーパーやコンビニなどで扱ってもらえるようになりました。お菓子コーナーや珍味のコーナーで漬物を売っているのは異色だったと思います。発売当初は、『価格が少し高いのではないか』、『本当に売れるのか』など心配する声もありましたが、幸いにも多くの人にリピート購入していただき、口コミでどんどん知られるようになりました」
個包装で1個ずつに問い合わせ先が書いてあったことも、爆発的な人気の大きな要因とのこと。タレントや芸能人が「美味しい」と自発的にPRしてくれたことなどが重なり、どんどん販路が広がっていったそうです。
そんな「梅しば」の大ヒットに続くべく開発されたのが「ごんじり」。1993年ごろに開発スタートしてから、約2年の歳月をかけて商品化しています。
「当時は、しょっぱい味の梅しばや甘酸っぱい味の小茄子、かんろ梅などが多かったんです。そこで、より日本人に馴染みのあるしょうゆ味をベースにした漬物スナック『ごんじり』を作ることになりました。まず原料が必要なので、中国で最適な産地を探して、大根の栽培に必要な種まきから始めました」
大根の漬物は種をまいてから、秋から冬にかけて収穫し、乾燥させる必要があります。そのタイミングで必ず原料を確保しないと、漬物が作れません。しかも、素材の大根の品質も細かくチェックをしながら、どこまで乾燥させるのか、どれくらいの大きさに切るのか、なども調整しなければいけません。工場における製造過程では、機械に任せられない手作業の工程があるなど、開発には色々な苦労があったそうです。
ごんじりを開発する上で、最初の課題は「品質の保持」でした。ごんじりは大根の素朴な味わいを残すため、通常の漬物(沢庵など)のように塩漬けしていないからです。
「例えば、沢庵は長期保存ができるよう塩漬けにして、水分を抜いてから調理されます。一方でごんじりは、塩を使わずに寒干しで乾燥させて、切り干し大根のように水分を飛ばします。その状態は放っておくと悪くなりやすく、カビが発生することがあるんです。それを防ぐために色々と試しましたが、徹底した冷蔵管理を行うことで対応できるようになりました。また製造工程に原料をお湯で茹でることを取り入れ、大根を柔らかくするのと同時に殺菌もしています」
茹で時間は、ごんじりの大事な食感に関わるため、何十回にもわたって微調整を重ねているとのこと。茹で時間が長すぎると、「ごんじり、ごんじり」の食感が損なわれてしまうからです。その他にも、漬け込み期間の調整や、味を安定させるための工夫など、試行錯誤を日々続けていたそうです。
「生の大根を一度からっからに乾燥させた時には、10分の1くらいの重さになりますが、製造過程の中で発酵調味液などを染み込ませ、そこから3倍弱まで膨らませます。完成したごんじりは、大根の風味とともに、凝縮された旨味、コク、酸味を感じられると思います」
また、食べやすさについても試行錯誤しており、「ひと口で食べられる」ことにこだわり抜きました。4.7cm(開発当初)→4.0cm(現在)へと、ミリ単位の改善を重ねています。