秘儀としての焚火、その召喚術
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コクヨといえば文具! のイメージがありますが、実は売上の45.4%を占めているのが、オフィスなどの空間構築の事業です(2021年度)。オフィスも文具も取り扱うコクヨには、整理収納に関するノウハウも色々ある! というわけで、カインズさんをコクヨのオフィスにご招待。実際に社員が働いているところを横目で見て頂きながら、コクヨ式の整理術を紐解きます。
案内人
コクヨ株式会社 ワークスタイルイノベーション部 齋藤 敦子
元々インテリアを手がけていたが、文具という手の中のものから、人間を丸ごと包む家具や空間まで、全部を扱う数少ない企業であることに魅力を感じコクヨに入社。働き方と働く環境に関する研究開発に従事し、企業や行政のワークプレイスやフューチャーセンター等のデザインに携わる。誰でも楽しくクリエイティブに働ける空間づくりのアドバイザーとして、学校などでも講演や研修などを行う。著書として「コクヨ式 机まわりの整え方」など。
聞き手
株式会社カインズ 与那覇 一史
自宅の本棚がごちゃごちゃしているのが気になる。
株式会社カインズ 鶴岡 進
書斎は結構キレイにしている自信あり!
さっそくですが、今日お邪魔している「コクヨ霞が関オフィス」はライブオフィス(※実際に社員が働いている現場を見学できるオフィス)なんですね。ライブオフィスというのは、コクヨさんが仕掛けたんですか?
実は、1969年からやっています。「明日のオフィスの実験場」という、新聞広告も出したんですよ。
へぇ~、そんなに前から!
当時としてはかなり画期的でした。
ライブオフィスの概念というのは、どういうところから生まれてきたんでしょうか?
働き方がどんどん変わっていく中で、オフィスも変わらなければいけない。お客様に提案する前に、まず私たちが最初に実験して、失敗する。その様子を、包み隠さずお客様に見て頂く。例えば、フリーアドレスは今でこそ普通ですけれど、昔だったら自席がないなんて、信じられませんよね。
そうですよね……
実験してみると、良いところも悪いところもある。やってみないと分からないことです。良いところは残し、悪いところは改善する。通底しているのは、お客様により良いもの、体験を提供したいというDNAです。ただ商品を並べて見せるだけのショールームではなく、実際に人が働いているところを観察しながら作る生きた実験場であること。それはライブオフィスがスタートした当初から現在まで、ずっと貫いています。
それではさっそく、中に入ってみましょう。
オフィスの中は、原則フリーアドレスになっています。ただし、総務などサポート業務に携わるメンバーがどこにいるか分からないと困るので、そういった一部の人たちは決まった場所があります。帰るときは机の上に何もない状態にする、クリーンデスクが基本ルールです。
キャビネットの中を見てみましょう。ファイリングって、個人や部門に任せてしまうと、書類や封筒、ケーブル、デバイスがぐちゃぐちゃになってしまう。異動してくると、どこに何があるかまったくわからない状態になりがちですよね。
そうですね……
そうなのよ……
なので、書類は基本的に電子化し、個人持ちはせず共有することを大事にしています。ファイルボックスは、色で書類の重要度を決めています。たとえば、赤は絶対に社外に持ち出してはいけない重要書類。それを使っている人は「何か重要な仕事をしているんだな」と周囲も注意することができます。また、机の上に放置したままになっていたら危ないよ、ということにも気づけます。ただ重要書類は頻繁に使うものではないので、キャビネットでは上の方に。
位置的にも手に取りやすいところには、よく使うものを。緑の備品、水色は議事録というように、色分けして置いてあります。
書類は、データでも見られるようにしてあるんですか?
基本はデータにしています。法律上、紙で取っておく必要があるものや、パッと見たいもの、例えば議事録などは、紙で置く場合もあります。
何年で入れ替わる、というルールはあるんでしょうか?
基本は1年で入れ替えて、法律上取っておかなければいけないものは、外部の倉庫に動かします。オフィスの中にあるのは、最低でも1カ月に1回は使うもの、という考え方です。
3カ月に1回や、半年に1回ならこの中になくてもいい、ということですか?
頻度と重要度で分類して、不要なものは処分します。頻度が低くても重要なものは取っておくけど、取り出しやすいところじゃなくてもいい。逆に頻度が高いものは、取り出しやすいところに置きます。
PCなど各自で管理するものは、個人ロッカーに入れます。最初は「これじゃ入りきらない!」という声もあったんですけど、「その書類、本当に個人で持つ必要ありますか? 共有管理にしたほうがいいですよね?」と仕分けして、今のような形になりました。
ロッカーに顔写真をつけているんですね。
一言コメントみたいなのも書いてある。しかも、結構自由ですね。
そうそう、自己紹介みたいな。私はこれが好き! とかね。
顔写真だけだと想像がつかないような内容もありますね。
写真はキリッとしているけど、コメントを読むとフレンドリーな内容で、このギャップがいいですよね。特に今はコロナでなかなか会えないから、人の内面にある色んなこと、キャラを知れるといい。ロッカーはポストにもなっているので、書類を入れながら「この人はこういうのが好きなんだ~」って思ったり。
なるほどなるほど
そういうのが見えるとホッとするんですよね。
こちらは、サプライドックのコーナーです。例えばハサミって、使う人は使うけど、使わない人は週に1回くらいしか使わない。
はいはいはいはい
なので、文具は共有化という形にしています。そうすると何がいいかというと、テープのりを自分で持っていて、使おうとすると中身がないとか……
あるあるあるある(涙)
ステープラーだと針がないとか。ここはいつも補充されているので、みんなが使いやすい。あとは、置き場所が決まっているので、誰かが使っていると出かけているのが分かる。持っていったら必ず戻す、ということができるようになっています。
このシートは手作りなんですか?
コクヨの通販のカウネットで売っていて、自分でプチプチちぎって好きな形に作れます。
なるほど、いいですね! 切らなくてもいいんだ。
すごくマニアな人は、抜いた後に写真を貼ったりしています。家でも、物の置き場所にマステなどを貼って「ハサミ」なんて書いておくといいかもしれません。
そうすると、置き場所が分かるし、戻したくなるんですよね。私は食品工場で働いていたことがあるんですが、異物混入が絶対に起こってはいけないので、使ったら絶対に戻してねというために、こういうことをやっていました。
そうそう、このアイデアは「姿置き」という日本の工場からヒントを得ているんですよ。
実は、サプライドックには裏のメリットもありまして。ここにコピー機もあって、カッターマットもあって、ちょっとした作業スペースになっている。そうすると、ここに人が滞在するんです。例えば、旅費精算のために領収書を糊でピッと貼っていると、知り合いが来て「お~! ひさしぶり~!」みたいな。昔でいう“タバコ部屋”みたいな感じですね。
お~、なるほど。
プリントアウトを取りに来るようなタイミングって、仕事の合間だったりするので。そこで「元気~?」ってコミュニケーションがとれる。なので、あえて横にソファーをおいたりして、人と人の“交差点”にしています。
こちらは設計チームが主に使っている、カタログなどのスペースです。カタログって、微妙にA4より幅があったり、逆に小さかったりと不定形なものも多いので、基本はファイルボックスに入れて形をそろえています。
下には、設計者ごとに名前が書いてあるボックスを置いています。設計者って、結構色んな不定形のものを持っていて。取り寄せた布地のサンプルとかね。そういったものは、個人のボックスの中でやりくりしてもらいます。
たしかに、箱に入れると目かくしになってキレイに見えますね。
こういうカタログって、倉庫に入れてしまうこともあると思うんですけど、ここは通路。あえて人通りのあるところに書庫を作っています。そうすると、調べものをしているときに通りがかった人が「こんなのもあるけど、どう?」って教えてくれたりするんです。
ここも、人と人の接点になるんですね。
だいたい、人が通らないところに置きますよね。
みんなが使うものなので、みんなが見えるところに置いています。使うものなので、しまい込んだら意味がない。普段使うものは、なるべく見やすく、手に取りやすいところに置くのがポイントです。
ちなみに、後ろを向いているファイルボックスは“空き地”なんですよ。
へ~!
中身がカラになっていて、この分類に置きたいカタログが増えたら、ひっくり返して入れる。なので、パッと見ると、どれぐらい“空き地”があるかが一目瞭然になっています。
余白の作り方がうまいですね。
物ってどうしても増えていくので、余白がないと収められない。全部埋まったら、取捨選択しなければいけません。うまく余白をコントロールするためには、見える化するのが大事です。
家でも廊下を本棚にしてもおもしろいかも。
最近は家で働く人も多いですし、本もあると刺激になりますよね。美観だけ考えればフタをして隠した方がいいのかもしれないですけど、見えているのも大事で。次はどういう提案をしようか、と考えている時には、目に入った方が発想につながります。フタがあると、ひとつずつ開けないといけないですものね。壁一面に資料やサンプルがあるっていうのは生産性のためにも大事ですし、わざわざリアルなオフィスに来る理由にもなると思います。
オフィスは「いかに創造的に、快適に働けるか」が、重要なので、そのためにカイゼンし続ける必要があります。なので、収納もあなどれません。実は、見た目をキレイに整えるというのは、整理整頓の「整頓」だけで、「整理」ではないんですよ。
というと?
整理というのは「ことわりをととのえる」こと。使いたい時に使いたい物がパッと使えるようにすること。自分たちがどう仕事をしたいのか、どう暮らしたいのか、から考えないといけない。単なる「片付け」ではないんです。
「片付けじゃない」って、めちゃくちゃ深いですね……。見た目だけキレイでも、使いやすくないと意味がないんだ……。
「インテリア」と「整理」を分けて考えてしまう人が多いんですけど……。「インテリア」はカーテンを変えたり、好きなランプを置いたり、どうしようかと考えるのが楽しい。それが「片付け」になると、めんどくさいな~ってなってしまって、モチベーションが全然違う。
でも、やっぱり同じで。家で働いていたら、働くのをもっと快適にしたいし、リラックスする場所も分けたい。そういう時に物をどう整えるか。どう過ごしたいかで、机や照明の配置のように、自然に決まってくる。それはインテリアと一緒なので、楽しく考えてもらえたらなと思います。
いや~、おもしろかったです。来る前は、もっと隠しているイメージだったんです。見せることでインスピレーションを促したりしていて、見えていることに対してストレスを感じなかったですね。
全部フタをしてしまうと、かえって仕事がしにくかったりしますよね。見せるのが大事で。きちんと分類して、戻せるようにしてあげれば、自然に整います。
自分の書斎もキレイな自信があったんですが、ただ物を捨てて減らしているだけだったなと思いました。物があっても、整っていれば気持ちよく使えるんだなってことが分かりました。
持たないことが必ずしも良いこととは限らないというか……やっぱり、何もないところでクリエイションが起こるかというと、違うと思いますし。意外と若い人の方がその感覚があって、紙でアルバムを作ったり、自分で編集したものを置いたりしていますね。
たしかにそうですね。いや~、本当におもしろかったです。
本日は、ありがとうございました!
ようこそいらっしゃいました!