日傘のスキをなくしたら妖怪っぽくなった話
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目次/ INDEX
競争の激しいホームセンター業界。その中でもカインズは「IT×小売業」の実現をトップスピードで進めています。
近年ではカインズのデジタルシフトぶりが目覚ましく、「IT大工」と呼ばれるようになりました。
なかでもデジタルツールとリアル店舗を融合させたサービス「CAINZ PickUp(カインズピックアップ)」は、オンラインで注文した商品を店舗で取り置きしてもらい、スムーズに受け取れるすぐれもの。
広いカインズ店内で商品を探して回るのは大変ですよね。
カインズのお買い物がもっとラクになる「CAINZ PickUp」について、使い方と開発秘話を開発担当社員がやさしく解説します!
白鳥 好太(しろとり・こうた)
株式会社カインズ 店舗生産性改革部 業務改革推進リーダー。店長、エリアマネジャーを経験し2018年から2020年までデジタル戦略本部に所属。CAINZ PickUpを中心としたサービス設計を担当。
──CAINZ PickUpとはどんなサービスなのですか?
1.カインズアプリから受け取り店舗を選ぶ
2. 取り置き商品の在庫を確認し、取り置き数を入力
3. お支払方法と受け取り場所を選ぶ
4. 受け取り希望日を選ぶ
5. 希望日に店内カウンターかPickUpロッカーにてお受け取り
6.商品を確認して購入!
白鳥好太
店舗に在庫があれば、最短で当日受け取ることができます。また、商品を直接確認したあとにお支払いいただくので「オンラインショップで見た画像と実物がちょっと違った」「イメージしていたより大きかった・小さかった」などの購入ミスも防ぐことができます。
白鳥好太
受け取りロッカーでは事前に届くメールに記載されたQRコードをかざせばすぐに商品を受け取ることができるので、わずらわしい手続きなどは一切ありません。カインズでのお買い物が非常にラクになることもあり、利用者数は右肩上がりです。
──なぜCAINZ PickUpを始めたのですか?
白鳥好太
カインズは2019年から新体制になり、デジタル戦略に本格的に力を入れ始めました。その詳しい理由や方針はこちらの記事を見てほしいのですが、とにかくカインズはリアルな店舗とデジタルツールをうまく組み合わせてもっと便利になるぞ、と宣言したんです。
CAINZ PickUpもこのデジタル戦略の1つとして、2019年12月に開始しました。構想に約1ヶ月、開発は約2週間と、超スピードで導入されたサービスです。
──「ネットで注文し、店舗で受け取る」仕組みにしたのはなぜですか?
白鳥好太
実店舗が各地にあることがカインズの何よりの強みだからです。
例えば皆さんが良く知るAmazonは今や世界で最も利用されているECサイトの1つですが、Amazonが運営する実際の店舗は数少ない。皆さんもAmazonでお買い物をするときはネット上で完結することがほとんどではないですか?
ECサイトが発達しているアメリカでもAmazonは非常によく使われ、市場の約半分を占めると言われています。しかし、アメリカでは実際に店舗を持つ業界専門企業のECサイトもよく利用され、うまくいっているケースが多いんです。カインズもそこに注目しました。
ネットや店舗などあらゆるチャネル(経路)を連携させてお客様との接点を増やし売上をアップさせる方法を「オムニチャネル」といい、世界の小売企業が取り入れつつある
白鳥好太
カインズの財産はなによりも豊富な商品と各地にある店舗です。それを武器とするためにも、オンラインツールとリアルな店舗を融合させて、新たな販売経路をつくる必要がある。そんな方針から生まれたのがCAINZ PickUpなんです。
「ネットで注文して店舗で受け取る」というシンプルな導線ですが、これができるのは実際の店舗を各地に持ちながらオンラインショップやアプリと効率的に連携が取れるカインズだからこそだと言えます。
──CAINZ PickUp導入に向けて動き始めた2019年当時、どのような状況でしたか?
白鳥好太
CAINZ PickUpの機能があれば非常に便利なことはわかっている反面、店舗の在庫数をネット上で公開することによる様々なリスクが考えられ、反対意見も多くありました。
白鳥好太
例えば、カインズアプリではこのように商品の在庫数が表示されますが、この数字は必ずしも実際の店舗の在庫数とリアルタイムで一致しているわけではありません。どうしてもデータの更新タイミングなどシステム上の理由からズレが生じてしまうことがあるんです。そのため、ご注文いただいても店舗でお取り置きができず、やむなくお客様へお断りを入れる場合があります。
しかし、お客様からするとアプリで在庫が10と表示されていたのに店舗で10個取り置きできないのはおかしいですよね。そういうマイナス面があることを承知しながらのスタートでした。
──CAINZ PickUp導入にはどんな経緯が?
白鳥好太
店舗従業員への説明が大変でした。先ほどの在庫数のリスクもありますが、何より従業員からすると新しく業務が増えるわけですから。それまではお客様が自分でやっていた「商品の確保」を従業員が代わりにやるんです。この新しい業務を増やすことに対して、店舗メンバーに納得してもらうのにとても苦労しました。
商品が多岐にわたり、店内も広大なカインズ。商品の確保はお客様と従業員双方にとって課題だ
──従業員の負担を減らす工夫をしているのですか?
白鳥好太
そうですね。まずはネット上の在庫数の表示を正しい数値に近づけることを最優先しています。また、サービス開始後も常に改善を続けられることが大きいです。IT特化の優秀な人材を積極的に採用したおかげで、開発・改善のスピードは以前のカインズとは比べ物になりません。
サービス開始時は多少粗さが残っていても、従業員とお客様の声を聞きながら日々リアルタイムでスピーディーに改善ができるようになった強みを肌で感じています。
──CAINZ PickUpなどデジタル戦略を進める中でカインズはどう変わったのでしょう?
白鳥好太
カインズ社員の意識は大きく変わったんじゃないでしょうか。特に私はデジタル戦略本部に異動するまでずっと店舗の現場にいた人間で、PCすらほとんど使わずに仕事をしていました。デジタルという言葉を社内で使ったこともなかったぐらいで…(笑)。
そんな状態だったので、新たにジョインされたデジタル特化の優秀なエンジニアさん・デザイナーさんと話すと毎日が発見です。開発スピードが速いのと同時に、得られる知識や考え方も多く、本当にいい環境だと思います。
表参道にあるデジタル戦略の拠点『CAINZ INNOVATION HUB』
──デジタル化を進めるうえで重要な考え方とは何でしょうか。
白鳥好太
「無理してデジタルを使うな!」です(笑)。IT業界では当たり前かもしれませんが、デジタルシフトは手段であって目的ではありません。以前の私たちのようにITの知見がない状態ではつい「ITを使って何をやろうか?」と考えてしまいがちですが、それはちょっと危険で、あまり意味のないことなんですよね。
カインズの場合は、最大の強みである商品と店舗を使って、お客様によりよい体験をしてもらうためにデジタルを活用しています。デジタル先行ではなく、あくまでも「お客様への提供価値をあげるためにどうすればいいか?」を考えることが重要ですね。
──CAINZ PickUpは今後も改善されますか?
白鳥好太
はい、毎日エンジニアと話し合いながら改善を続けています。最近ではCAINZ PickUpの流れを応用して、資材の購入・カットをネットで注文し、店舗で加工済みの資材を受取りいただける「事前加工サービス」や、PickUpした商品を駐車場まで持っていく「DrivePickUp」、24時間いつでも商品を受け取ることができる「店外ロッカー」の設置なども始めました。
店舗受け取りサービスは一見シンプルですが、事業として拡張できる可能性をまだまだ秘めています。カインズで取り扱う商品は多岐にわたるので、それぞれの商品や使用シーンに合わせてもっと手軽に使っていただけるようにしていきたいですね。
白鳥好太
CAINZ PickUpは、カインズのオンラインショップやアプリから希望の商品を選択し、お近くのカインズ店舗で取り置きして受け取れるサービスです。広いカインズ店内で商品を探し回る必要がありません。