窓やサッシの結露・カビ対策に! 窓を知りつくすプロ「YKK AP」がコツを伝授
リンクをコピーしました
目次/ INDEX
牛のイラストもレトロかわいい「ミルクペイント」
これまで絵の具や塗料のパッケージといえば、地味なデザインが中心。分かりやすく機能的ではあったものの、「写真に映える」「持っていて気分が上がる」といった側面は存在しなかった。
そんな概念を大きく変えたのが、ターナーの「ミルクペイント」シリーズ。誰もが知るアクリル絵の具やポスターカラーなどを作ってきた絵の具・塗料の総合メーカーであるターナーが、自社の歴史の中でも新しい試みによって生み出した商品なのだ。
かわいいパッケージに惹かれて思わずパケ買いしてしまう「ミルクペイント」は、どのように開発されたのか。ターナー色彩の塗料が試せるショールーム「カラースパイス」にて、店長の小林美穂さんに話を伺った。
ターナー色彩株式会社会長の地平宏さん。「ミルクペイント」の立役者
「ミルクペイント」の開発が始まったのは、2012年。会長の地平宏さんが発起人となり、女性だけの「チームなでしこ」を発足させた。
「これまでの商品開発は、営業と企画が主体。このチームは、社内中のさまざまな部署から推薦で人を招集させました。全員女性で、いろんな部署から集まったメンバーで商品を作ることは、会社としても初めての試みでした」
チーム結成から2年後、2014年に無事「ミルクペイント」は世の中へ。開発メンバーに加えて、パッケージデザインも女性デザイナーへ外注したとのこと。
「牛の向きをどちら向きにするか、といったところまで考え抜きました」
女性のキュンとする感性が詰まった商品を広めるため、発信でも新しいチャレンジをすることに。
「2015年頃からブロガーなど発信力がある人の中からアンバサダーを選び、魅力を拡散してもらっています。このアイデアも地平が考えたもの。会社の理念でもある“色彩で人々の心を豊かにしたい”という考えをベースにSNS戦略を実行したところ、大きな反響を頂きました」
作って売るだけではなく、みんなで使っているからこそ、ユーザーの気持ちにも寄り添える
さらに、作例を載せた冊子を季節ごとに作って、DIYのアイデアを提供。社員たちも社内限定のイベント「プチガーデンコンテスト」で、「ミルクペイント」を自由自在に活用している。
覚えやすくてかわいい「ミルクペイント」という名前。どうやって付けられたのだろうか。
「絵の具は、顔料、水、のりという3つの原料でできています。通常のりには、アラビアガムやアクリル樹脂などが使われていますが、ミルクペイントは、ミルクカゼインという牛乳のたんぱく質由来の素材を使っています。これは牛乳を搾ったときのカスから作られるので、森永乳業さんと協業してご提供頂いています」
このヒューマン・フレンドリーな原料であるミルクカゼインに由来し、「ミルク」というネーミングが採用された。また、アメリカにバターミルクペイントというものがあり、そこからアメリカンなデザインにもつながっている。
背景の壁もアンチウイルスプラスで塗装
コロナ禍だからこそ生まれた、うれしい機能がプラスされた商品も登場している。
「『ミルクペイント アンチウイルスプラス』という室内用のミルクペイントです。かわいい色はそのままで、抗ウイルスの機能性をプラスしました」
誰もがウイルスに敏感となったこのご時世―。素材へのこだわりだけでなく、時代に合わせたニーズを組んだ機能付きとは、うれしい製品展開だ。
同じシリーズでも、アイテムごとに色がかわいいので思わず集めたくなる
美術の授業などで、誰もが一度は目にしたことがあるであろうターナーのアクリル絵の具。白地に黒字ロゴが描かれたシンプルなデザインは、新商品にも踏襲され続けていた。
今までのアイコニックなパッケージデザインを一新
「他の商品とは違い、ミルクペイントはアイテムごとにデザインを変えています」
その戦略が功を成して、「インスタ映えする」との口コミが広がって商品の認知を一気に広めることとなった。「使い切れない」との声から小さいサイズも生まれ、並べて飾りたくなるかわいいサイズ感が女性たちの心を鷲掴みにしたのである。
流行をおさえたカラーラインナップは、DIY顧問からのアドバイスを受けて作られている。
「200以上ある色見本からセレクトし、どの商品も色選定はこだわっています。塗ったものや塗り面積によって、色のイメージが変わる。立体物に色を塗って、光加減や面積を変えてイメージ通りになるか試して作ります」
“色彩の可能性を信じ、人の心や社会を豊かに”と掲げるターナーだからこそ、人々の心をくすぐるカラーラインナップを実現できるに違いない。
塗りやすさ、扱いやすさも魅力
色や見た目に惹かれても、塗料の実用性がなければヒットにつながらない。商品の使いやすさが評価されたからこそ、人気アイテムへと成長していった。
「パッケージに惹かれてご購入頂いたあとに、『商品が使いやすい』『意外にも臭くない』という声を多く頂きます」
「絵の具のように水で希釈する必要もなく、そのまま塗れて簡単。きれいに塗りやすく、臭いがないため、慣れていない人も使いやすいのです」
さらに、いろんな素材に塗ることができるのも魅力の一つだ。
「壁や木、布、ガラスなどにも塗ることができます。コスプレ好きの人が、布に使ったという話もありました」
御徒町駅の近くにあるJR高架下「2K540」内のお店「カラースパイス」
「ミルクペイント」を購入前に、商品の使用感を体験したい、どんなものに塗れるのか知りたいときに訪れるべき場所が、ショールーム「カラースパイス」。
店内のおしゃれな壁や小物は、小林さんたちが自らペイントしたものばかり。実物を目にして「こんなアイテムに塗れる」「こんな雰囲気に仕上がる」と知ることができ、さらには小林さんがDIYerの悩みに答えてくれる頼もしい場所でもある。
看板も小林さんの手作り
お店を訪れる女性からは「ミルクペイントで壁を塗りたい」という需要が多く、男性はワックスやアイアンペイントを求めて訪れることが多い。テレワーク化が進んだ今、「ウェブ会議での背景用に壁の色を変えたい」といった要望も寄せられる。
「家にいる時間が増えたことで、今まで気にならなかったところが気になったり、リフォームのために塗りたいと選びに来る人もいたり。ときには、養生のやり方から教えることもあります」
壁に塗りたいときは、事前に面積の確認を忘れずに。1平方メートルの見本はこちら
「心も道具も質問やご要望に合わせて準備しておくことができるので、ぜひカラースパイスを訪れる際には事前予約してください」
「SNS映えする」だけではない、実力派塗料「ミルクペイント」。
地平会長のアイデアと、絶妙な色合いや心ときめくパッケージを作り上げた女性メンバーたちの奮闘があったからこそ、爆発的なヒットへとつながったのである。