野菜作りをはじめて3ヶ月目の人が、野菜作りをはじめていない人に伝えたいこと
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目次/ INDEX
1980年代後半から1990年代にかけて巻き起こった熱帯魚ブーム。その隆盛がいったん落ち着きをみせると、国内におけるアクアリウム人口は、少子高齢化と共に減少の一途をたどってきた。
熱狂的ファンは依然として存在するものの、アクアリウム人口を総体的に増やすことは、アクアリウム業界全体の課題となっている。
――そのような状況の中、アクアリウム用品メーカーのジェックス株式会社(GEX)が2020年2月、革新的な商品を開発した。昔ながらの“面倒な”観賞魚飼育のイメージを一新し、「アクアリウム人口の裾野を広げる糸口になる」かもしれないと期待されている。
1970年代、熱帯魚を飼育することは、まだ一部の人間による“高級な趣味”とされていた。しかし、大阪府大東市に五味商事という会社が誕生すると、その状況は一変する。もちろん同業他社の役割も大きかったが、以降、手軽な趣味としてのアクアリウムが日本国内に広がることになる。この五味商事こそジェックス株式会社の前身だった。
ジェックス創業者の五味健氏は1977年、「一般の方々にもアクアリウムを楽しんでもらいたい」という情熱から、熱帯魚や水槽用エアーポンプの輸入販売を開始。その後、水槽やエサ、水質調整剤など観賞魚用品の開発に着手し、日本国内におけるアクアリウム人口の増加を牽引した。そして2019年現在、ジェックスはアクアリウム関連グッズの市場において、国内1位の売上高を記録するまでに成長した。
しかし業績好調なジェックスも、いま大きな悩みを抱えている。すなわち「アクアリウム人口の総体的な減少」という問題だ。それを解決するためにジェックスが開発した商品の一つが『ラクフィル』である。
ジェックス株式会社 商品開発部 設計技術課 大島巧士さん
“水換え革命”と銘打って発売された『ラクフィル』は、水槽の水換えを3秒で開始できる商品。水換え機能が付いている濾過フィルターだ。
開発者の一人である大島巧士さん(商品開発部設計技術課)は「アクアリウム人口を増やしたい。そのためには、その障害になることを一つずつ取り除いていきたい」と語る。その中でも最も大きい障壁が、水槽の水換え作業だ。
「アクアリウムを楽しむためには、“水槽の水換え作業”が不可欠です。1〜2週間ごとに水槽の1/3〜1/4にあたる水を新しい水に換えるのが理想。そう説明するペットショップも多いです。しかし400名を対象にした当社の調査によると、すでに熱帯魚を飼育している熱心なアクアリストの方々であっても、その約80%が“水換えは面倒”だと回答しています」
『ラクフィル』を水槽に取り付けると手が濡れずに排水可能
たしかに、従来の一般的な水替え作業は非常に手間が掛かった。手動ポンプ、ホース、バケツを使って水槽から水を抜く。そして、水道水をバケツに入れ、そこに塩素を中和するカルキ抜きを入れる。その後、水槽の水と水温を合わせて水槽に足す。これが主流だった。
「いちいちポンプやバケツを用意して、水槽のライトや蓋を外して、という手間が定期的に必要となる。かといって、水換えをしない期間が長引けば、水質が一気に変わって魚が病気になってしまう」
さらに、ポンプで誤って魚を吸い出してしまったり、家の床に水が溢れてしまったり、水換え作業には失敗につながる要因が多かった。その結果、「アクアリウムは面倒くさい」というイメージが定着してしまった。
「もちろん、熱帯魚の愛好家やアクアリストなら水換え自体も楽しむべき、という考え方もあります。しかし、この面倒な作業を取り除ければ、もっとアクアリストが増えるはず。
加えて、いま魚を飼育していない人でも、そのうち60%以上の方々は過去になんらかの魚を一度は飼育した経験を持っています。水換えの手間がなくなれば、もう一度、アクアリウムに帰ってきてくれるのでは」と大島さんは期待をにじませる。
とはいえ、過去にも「水換えの回数を減らす」ためのグッズはたくさん発売されてきた。他社に限らず、ジェックスも開発している。たとえば、ろ過バクテリアなどを活用して水換えの“頻度”を減らして水質を維持するためのグッズは多い。
しかし、面倒な一回一回の水換えそのものを“ラク”にするグッズ、しかもろ過フィルターに搭載されたようなグッズはこれまで市場になかった。なぜなら、ユーザーに水換えはバケツと水抜きポンプを使って行うもの、という固定概念があったことと、メーカーにとっては開発に莫大な金額と時間が必要、という現実があったからだ。
そのため「いかにバクテリアを効率よく繁殖させ、ろ過の機能を向上させるか、いかにきれいな水を維持するか」というアプローチの商品が多く開発されてきた。
「もちろん、ろ過を安定させることは一番大切です。しかし、そこで躓いてしまうお客様も少なくないのではないかと私たちは考えました。それならば、面倒な水換え自体を手軽なものにはできないか、と視点をズラすことにしたんです」
「週1回の水を交換する習慣が簡単にできれば、きれいな水槽の維持も比較的簡単にできるんじゃないか」——逆転の発想から『ラクフィル』は誕生することになる。