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【ビール入門】「エール」と「ラガー」の違いを詳しく解説!

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矢野竜広

矢野竜広

ビアエッセイスト。1980年生まれ、東京都出身。コピーライター、放送作家を経て2013年、妻の故郷である鳥取県に移住しフリーライターに。著書に『ビールの図鑑』『日本のクラフトビール図鑑』(ともに共著、マイナビ)、『山陰クラフトビール』(今井出版)などがある。山陰と世界のブルワリー探訪をライフワークにすべく活動中。

エールとはビールの主原料の一つ、酵母の種類

「イギリスのパブで飲んだエールビールは美味しかった!」

「私はビールだったらエールの方が好き」

「エールビールらしく香りが豊かだ!」

ビールの話をしていることは理解できるものの、「エール」とか「エールビール」を知らないとよくわからない会話です。エールとはどんな風に美味しいのか、どんな味なのか、どんな香りなのか…?

そこで「エールビールが何か?」を徹底的に解説。作り方から歴史、豆知識までエールのことをわかりやすくまとめました。最後まで読めば、「エールってさ…」とつい話したくなるレベルになるはず。

先に結論から言うと、エールというのはビールの酵母の種類です。

ビールの主原料は麦芽、ホップ、水、そして酵母。酵母は大きさ5~10ミクロンほどの微生物で、この微生物が麦芽由来の糖を食べると、アルコールと二酸化炭素を排出します(もちろん1匹だけではなく、1gあたりの酵母数は10億匹とも言われる)。つまり、酵母があるからこそ麦の汁はお酒(ビール)になるのです。

その酵母を大別すると「エール」と「ラガー」に分かれます。

エールはラガーと対比すると理解しやすい

「ワインを2種類に分けなさい」と言われたら、多くの人は「赤ワインと白ワインに分けよう」と考えると思います。それと全く同じで、「ビールを2種類に分けなさい」と言われたら、酵母の個性の違いでエール系とラガー系に分けられるのです(ビールの場合、色は関係ありません)。

「エールが何か?」を理解するために、ラガーも併せて知っておきましょう。両者は非常にわかりやすい違いがあります。

発酵の温度

エール酵母は15~25℃の常温の温度帯で活発に発酵。一方、ラガー酵母は5~10℃程度の低い温度帯で活動する。

発酵時の様子

エール酵母は発酵すると液体の表面に浮かび上がってくる。このため、エール酵母のことを上面発酵酵母と呼ぶ。一方、ラガー酵母は発酵すると液体の底に沈殿する。このため、ラガー酵母のことを下面発酵酵母と呼ぶ。

※上か下か迷いがちだが、「エール=上の温度、上に溜まる / ラガー=下の温度、下に溜まる」と一致しているので覚えてしまいたい。

発酵の期間

エール酵母の発酵期間は3~5日(熟成期間は2週間)と短い。一方、ラガー酵母の発酵期間は7~10日(熟成期間は1カ月)と長い。

できあがるビールの個性

エール酵母は発酵の副産物として、香り成分のエステルをたくさん生成するため香りが豊か。一方、ラガー酵母はエステルをあまり生成しないため香りは弱くすっきりしている。

…まとめると、エール酵母は暖かい気温のなかでちゃちゃっと香り豊かに発酵。ラガー酵母は寒い気温のなかでじっくりすっきり発酵します。この2つの酵母、歴史が古いのはエールの方なんです。

エールは2000年、ラガーは600年の歴史

エールには2000年の歴史があります。始まりの地はイギリスで、古代ローマ帝国の統治下時代にまで遡ります。「エール」という言葉の語源には諸説ありますが、5世紀にゲルマン系のアングロサクソン人が支配をする時代には、「エール」という名前が定着していたようです。

15~25℃の常温の温度帯で活発に発酵するエールは、常に雑菌の繁殖による酸敗のリスクと隣り合わせでした。その点、夏は涼しく冬は暖流や偏西風の影響で比較的温暖なイギリスの西海岸性気候は、エール造りに適していました。18世紀初頭にはポーターという黒色のエールが人気を博し、続いてペールエールという苦みがきいたビールも世界中で支持されるなど、この頃はエールの天下でした。

しかし、この栄華は長くは続きません。

伏線は15世紀のドイツ南部バイエルンにありました。夏は暑く冬は寒い大陸性気候のバイエルンでは冬場の寒い時期、洞穴に氷を入れてビールを熟成させることで酸敗を防いでいました。このなかでラガー酵母が誕生(ラガーとは「貯蔵する」という意味)。このラガー酵母が19世紀にチェコに渡って「ピルスナー」というビールを誕生させてから、ビールの歴史はエールからラガーへと大きく転換したのです。

ラガー系のピルスナーは世界を席巻。その浸透ぶりは凄まじく、「ビール=ピルスナー」という認識が生まれてしまうほどでした。

ピルスナーだけじゃない! ビールは100種類以上

チェコで生まれたラガー系のピルスナーというスタイルは、苦みがあってすっきりしていて液は金色で泡は純白なのが特徴。つまり、多くの人が「ビール」と聞いて思い浮かべる、いわゆる“フツーのビール”です。

今でも「ビール=ピルスナー」と思っている人はいますが、そんなことはありません。先ほど歴史を見てきた通り、ピルスナーというのは後発のラガー系であり、ラガー酵母を使ったビールにもヘレス、ドゥンケル、シュバルツ、ボックなど様々な種類があります。2000年の歴史を誇るエールには、国ごとにさらに多様なスタイルがあります。

また、ビールは酵母の違いでエールとラガーの2種類に分けられると説明しましたが、実は例外があります。その代表格が自然発酵ビール。エールもラガーも現在では純粋培養された、働きのいい酵母が使われていますが、自然発酵は空中に浮遊している複数の野生酵母で醸します。

「World Beer Cup」という世界的なビールのコンテストのHPを見ると、111のカテゴリーで金賞銀賞銅賞が争われていることがわかります。つまり、ビールは100以上のスタイルがあるのです。いずれもエール、ラガー、その他(自然発酵など)のどれかに属しています。最近、ビールの進化の過程でエールでもラガーでもないその他のものが増える傾向にあります。

国別に見る、代表的なエールビールの種類

では、最後にエールビールの具体的な種類を国別に紹介します。

イギリス

  • イングリッシュペールエール
  • イングリッシュブラウンエール
  • マイルドエール
  • ポーター
  • スコティッシュエール
  • スコッチエール
  • バーレーワイン

エールの母国であり、今なおよくエールが飲まれているイギリス。低アルコールのスコティッシュエールからハイアルコールのスコッチエールやバーレーワインまで幅広い種類を擁しています。大麦の産地であることから、モルトをたくさん使用した穀物香豊かなエールが特徴です。一方で、ペールエールなどホップをきかせた苦いエールもあります。これはインド向けのインディアペールエール(IPA)に発展、そのIPAは後にアメリカで大発展を遂げます。また、18世紀に一世を風靡した黒ビールのポーターは、海の向こうのアイルランドでスタウトとして進化。種類の豊富さだけではなく、影響力でも随一のエール大国と言えます。

ベルギー

  • ベルジャンペールストロングエール
  • ベルジャンダークストロングエール
  • ベルジャンホワイトエール
  • フランダースレッドエール
  • フランダースブラウンエール
  • ベルジャンダブル
  • ベルジャントリプル
  • セゾン

イギリスと並んで多種多彩なエールを生み出した国、ベルギー。ベルギービールの特徴を一言で表現するなら「多様性」で、他の国にはない豊かなバラエティーに持ち味があります。ベルジャンホワイトエールは苦みが弱く、フランダースレッドエールは酸味があるなど一口飲んだだけでそれとわかるほど。また、ストロングエールやベルジャントリプルのように、アルコール度数が10%に迫るハイアルコールなエールをたくさん生み出しています。

ドイツ

  • ケルシュ
  • アルト
  • ベルリナーヴァイス
  • ヴァイツェン

ラガー大国ドイツにも面白いエールが存在します。ケルンのケルシュとデュッセルドルフのアルトは隣り合っている都市同士で造られていることもあり、ライバル関係にあるのがまずユニーク。ただ味わいはかなり異なり、ケルシュは繊細な白ワインのようで、アルトはモルティーさが魅力。ベルリンのベルリナーヴァイスはエール酵母に加えて、乳酸菌を用いるため酸味が特徴です。小麦麦芽を50%以上使用するヴァイツェンは、酵母由来のバナナに似たフルーティーな香りが一番の特徴と言えます。

フランス

  • ビエールドギャルド

ワイン大国フランスは、北部のベルギーに隣接する地で個性的なエールが生まれました。ビエールドギャルドは農家が冬の間に仕込み、木樽で発酵させた後にセラーで熟成させる自家製ビールが発祥です。

アメリカ

  • アメリカンペールエール
  • アメリカンIPA

ペールエールもIPAも元々はイギリス発祥ながら、今現在大きく花開いたのはアメリカという地でした。「アメリカン」の根拠はアメリカのホップを使用していること。アメリカのホップはイギリスの紅茶のような香りとは違い、柑橘系の香りが特徴。IPAは進化を続け、ヘイジーIPAといった濁ったもの、酸味の強いサワーIPA、樽貯蔵で香りを付けたバレルエイジドIPAなど今なお次々に新しいスタイルが登場しています。

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