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ストローは「ビールを美味しく飲む」ために発明された

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矢野竜広

矢野竜広

ビアエッセイスト。1980年生まれ、東京都出身。コピーライター、放送作家を経て2013年、妻の故郷である鳥取県に移住しフリーライターに。著書に『ビールの図鑑』『日本のクラフトビール図鑑』(ともに共著、マイナビ)、『山陰クラフトビール』(今井出版)などがある。山陰と世界のブルワリー探訪をライフワークにすべく活動中。

素材が変化、食べられるストローも開発

紙や竹、そして微生物が分解できるようなバイオポリマー製に素材が変わってきているストロー。

ストローは近年、プラスチックごみが引き起こす海洋汚染が問題になっています。プラスチックごみは海へと流れ込むと細かくなり、“マイクロプラスチック”と呼ばれる粒子に。これが分解されるまでに数十年から、場合によっては千年以上かかる。当然、その間に魚や亀など海に棲む生物に悪影響を与えます。

こうした環境破壊を受けて国際機関も動き出し、EUでは使い捨てのプラスチック製品を禁止する法案を採択させています。洋菓子メーカーの中には、食べられるストローを開発したところも。時代の流れで素材が変わりながらも、人類が水分補給する際のお供としてストローは欠かせません。

そんなストローですが、人類はどうやって発明したのでしょう?

メソポタミアのビール造りとストローの歴史

実はこのストローが誕生したのは、ビールがきっかけだったと言われています。

今、ストローでビールを飲む人はほとんどいないので、「え?ストローでビール?」と驚くかもしれません。では、なぜ昔はストローでビールを飲んだのか? それには、理由がありました。

遠い昔。紀元前何千年のこと。メソポタミア文明を築いたシュメール人はビールを造っていましたが、この造り方が現代とはずいぶん異なっていたのです。シュメール人は大麦を発芽させるとともに小麦の皮をはいで、それらを原料にパンを焼きあげていました。

もちろん、そのまま食べることもあったでしょうが、パンを細かく砕いてお湯に浸すこともありました。そして、刻まれたパンが水に浮かぶ甕をそのまま放置することで自然発酵を促し、ビールを造ったのです。

シュメール人のアイディアがストローを生んだ

また当時、味付けや香り付けのためにナツメヤシの実や様々な種類の葉っぱなども使われていたようです。すると、できあがったビールは穀物はもちろん、何かの実やら植物やら果ては発酵中に甕に飛び込んだ虫やらが浮かんでひどく濁っていました。

そこでシュメール人は一計を案じます。細長くて茎の内部が空洞になっている葦をビールに突っ込んで、浮遊物を避けて飲むことにしたのです。ストローはこうして誕生したと考えられています。

面白いのは、ストローにも身分差があったらしいこと。身分の高いシュメール人は金で装飾が施されたストローを使用しており、亡くなったときには副葬品として亡骸とともに埋められたそうです。

ストローを使わないよう工夫したエジプト人

時代がくだると、ビールの文化はメソポタミアからエジプトへと伝播します。当然、ストロー文化もエジプトで花開いたのか…と思いきや、実はそうでもないことがわかっています。

というのは、エジプト人がまるで現代人のようにビールを清澄させることにこだわったから。発酵が終わったビールを篩にかけるのみならず、さらに陶土を加えることで余計な浮遊物を徹底的に除去していました。

メソポタミアに残された画にはストローが頻繁に登場するのに、澄んだビールを好んだエジプトではそういう画はあまりなかったそうです。ビール文化はやがてヨーロッパに伝わり、時代とともに清澄技術も上がり、いつしかビールをストローで飲む文化は失われていきました。

今でもビールとストローが密接な関係の地域

ところが、今なおビールとストローが密接な関係を築いているところがあります。一つはドイツ。ベルリン周辺で造られているベルリーナー・ヴァイセというビールはカクテルのような鮮やかな色と軽い飲み口が特徴なのですが、ストローで飲むのも大きな特徴です。

また、中国や東南アジアなどアジアでは今もビールをストローで飲む習慣が根付いています。中国ビールで最も有名な青島(チンタオ)では、ビールをビニール袋で販売することで一躍有名になりましたが、販売時に袋にストローをさしてくれます。

タイではコンビニでビールを買ったときに、店員さんが迷うことなくストローを入れてくるそう。もし日本だったら「え?」と二度見してしまいそうですね。

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