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中国産業のヒーターベストが人気のワケ。戦時中から続く作業服メーカーの底力

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小橋 徳久

小橋 徳久

中国産業株式会社代表取締役社長。1972年生まれ。1994年入社、営業・企画担当を経て、2000年に独立しショップ「ワークハウス」を立ち上げる。ワークハウスは岡山を中心に、東京、広島県福山市にも店舗を構える。2015年に中国産業に戻り、専務に就任。2017年より副社長を経て社長に就任。

ヒーターベストの進化と弱点とは?

近年、ヒーターベストが冬場の防寒アイテムの選択肢として、じわじわと人気を集めている。

ヒーターベストとは、電気の力で発熱し体を温めてくれるアイテム。バイクや釣りなど屋外で楽しむ趣味の愛好家や建設現場や交通整理などの仕事の従事者には、厳寒期の助っ人として重宝されてきた。

技術の進化でバッテリーが小型化され、発熱量も調節できるようになるなど使いやすさが年々向上。女性をターゲットにしたアイテムも、ひと昔前と比べて増加傾向にある。

しかし、そんなヒーターベストにも弱点はあった。主に男性をターゲットにしてきたことから厚みがあったり、武骨な見た目のアイテムが多かったのだ。

そんな状況の中、機能性の向上に加えてファッション性も追求したヒーターベストを開発したのが、岡山県倉敷市に本社を置く中国産業株式会社だ。防水性と安全性も兼ね備え、洗濯もできる


中国産業が開発したヒーターベストは、一見するとシンプルなベストにしか見えない。しかし、これがこれまでにありそうでなかったのだ。

ヒーターベストのキモとも言える電熱線は国内産の東レのカーボン製を使用。内側に隠れたスイッチはシリコン樹脂製で、基盤部分を完全に塞いでいるので憂いなく洗濯が可能だ。

それだけではない。基準の厳しいEU(欧州連合地域)の安全マーク「CEマーク」と特定有害物資の使用を制限する「RoHS」認定を取得。防水性と安全性、そしてファッション性を兼ね備えている。

だが、このヒーターベストの開発は簡単ではなかった。

作業着の草分け「DOGMAN」でも難しかったヒーターベスト開発

「この商品の開発はとてもハードルが高く、新型コロナウイルスの影響もあって、世に出すことができなかった可能性も十分にありました」

こう話すのは、中国産業株式会社代表取締役社長の小橋徳久さんだ。最も困難だったのは、「あくまでも普段使いで着用できるベスト」という商品コンセプトにあったという。

中国産業株式会社 代表取締役社長 小橋徳久さん

中国産業株式会社 代表取締役社長 小橋徳久さん。中国産業の創業者は母方の祖父に当たる。


中国産業は、老舗でありながら、作業服・ワークウェア業界で勢いよく成長を続けてきた。業界では、スタイリッシュな作業着の草分けブランド「DOGMAN」で知られている。つなぎ服やカーゴパンツなど機能性重視のアイテムからブルゾンやベストなどオシャレに振ったアイテムまで、これまでにリリースしてきたアイテムは実に多種多様だ。

商品開発で一貫しているのは、丈夫さはもちろん、防水や防汚、JIS対応といった実用性を徹底的に追求すること。同時に、ボタンや糸やファスナーに至るまでディテイルにもこだわる。機能性とファッション性を高い次元で融合させるところこそ、中国産業の真骨頂だ。

たとえば、男性がデニムのパンツを履く際に「ヒップの生地が余って見た目が悪くなる」という課題が顕在化したときには、独自に日本人の体型を研究。日本人の薄い臀部でも綺麗に履ける、細身のシルエットの型紙をゼロから起こしたというエピソードもある。課題解決のためなら一切の労苦をいとわない粘り強さも中国産業の特長だ。

そんな百戦錬磨の中国産業をもってしても、このヒーターベストを作るのは困難を極めた。

「このアイテムはヒーターベストでありながら、ヒーター機能が付加価値でしかないことに一番の特徴があります。着ていてもヒーターベストに見えない、あくまでも普通のベストであることを求められました。これが一番難しい点でしたね。服は汚れたら洗濯しますが、水に弱い電熱線が入っているものを洗うわけです。スイッチは独自開発しましたが、何度も失敗を重ねてようやく完成にこぎ着けました」

開発の真っ只中で、コロナ禍に見舞われたのも大きな逆風だった。

「やはり渡航制限が出て、海外の生産現場に直接足を運べなかったのが一番厳しかったです。品質管理をするうえで現場を見るのは基本ですから。ただ、うちは他社より早い段階で海外に出ていてつながりがあったので、止まってしまった会社があったら別の会社にお願いしよう、と取引先を変えることでピンチを切り抜けることができました」

中国産業本社にあるミシンルーム。日々、試作品が作られている。

中国産業本社にあるミシンルーム。日々、試作品が作られている。

中国産業は自社内に商社機能を持っていたのも、コロナ禍では大いに役立ったという。

「当然、開発段階においてこちらと海外の工場でリモートのやり取りもあったのですが、商社機能が社内にあったので言語的な問題は全くなくスムーズでした。基本は全部自社だけでできたのはよかったですね。最終的にはもう自分達が頑張れば、あとは何とかなるという感じでした」

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