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なぜ1万円の虫取り網が売れる? 播州の従業員10名の網メーカーに聞いてみた

メーカー

寺本健二

寺本健二

昭和17年創業の株式会社エーワン代表。「お客様の笑顔のために」を掲げて、エーワン(網/釣竿)・テラモト(園芸)のブランドを展開している。

付加価値の付いた虫取り網が売れる

エーワン社内

所狭しと多種多彩な網が並ぶ株式会社エーワン本社

虫取り網は独自の進化を遂げており、価格が1万円を超えるものも存在している。

兵庫県は播州の加西市にある従業員10名の株式会社エーワンは、虫取り網や魚網など多数の網を開発・製造している。代表の寺本健二さんにこの半世紀にわたる網の進化について聞いた。

「かつては竹の棒に網目の粗いものが主流でした。時代とともに網の素材が進化し棒もパイプ柄のものに変わり、使い勝手のいい伸縮式に移行しました。虫取り網についてはお子様がメインターゲットでしたが、趣味の多様化が進む中で成人以降も虫取りをされる方が増加しています。その結果、付加価値を求めるニーズが高まり、インターネットやSNSなど情報インフラの発展と相まって、差別化した商品が売れるようになってきています」

定番の「ピンポイントハンター」というアイテムは、一見普通の虫取り網に見えるが、細かいところにこだわりが詰まっている。寺本社長はこう解説する。

長く伸びて小さい。2つのニーズを満たした網

ピンポイントハンター商品カット

枝の間をすり抜けて虫まで届くピンポイントハンター(JAN/4906988336376)

「まず長く伸びるのが特長で高い木の上の獲物まで届きます2.6m。小径網で枝の間から獲物が狙えるのもポイント網径14cm。網ヘッドの着脱ができ、アフターパーツとの交換も可能です。さらに、バネ枠を使用しているので、枠が木にフィットするため獲物を逃がさずキャッチできるんです」

このピンポイントハンター、「長く伸びる商品が欲しい」というニーズと「小さな網だとよく取れる」という2つのニーズを満たしたものだという。

「伸縮棒に小さな網を付けただけの商品にはしたくなかったので、ヘッドを着脱式にして交換パーツが取り付けできるようにしました。ニーズは満たしていたものの、当初はあまり売れませんでした。当時としては売価が高かったんです。2008年頃でしたが、その頃は販売チャネルが店売り主流でしたしね」

インターネット通販市場が伸び、SNSでの情報発信が当たり前になると、付加価値を付けた特殊なアイテムが売れるように。当初はなかなか売れなかったピンポイントハンターもシリーズ化され、今では4.5m伸縮する売価11000円の「超なが!スーパーロングピンポイントネット」の売れ行きも好調とのこと。とにかく長い網が欲しいという底堅いニーズがしっかりあるためだ。

虫取り網という商材がたどった半世紀

エーワン本社外観

本社と工場は兵庫県加西市の住宅街の一角にある

網が現在のような進化を遂げていることには「感慨深いものがあります」と寺本社長は過去を振り返る。株式会社エーワンの創業は戦中の昭和17年。兵庫県の播州地区が播州釣り針の生産地だったこともあり、当初は釣り針の仕掛けや竿のセットを大阪の問屋に卸していたという。

「祖父が玩具問屋から網が作れないか?と相談されたのがきっかけだそうです。かつては竹の棒に網目の荒いタモ網が主流だったことは申しました。祖父の代から父の代に移った当時、原材料の竹を仕入れに淡路や大分、鹿児島までトラックに乗って仕入れに行くこともしばしばありました。太い竹は全国にあるのですが、網に向いた細くて丈夫な竹が育つエリアは限られていたのです。私も父の運転するトラックに乗って行っていましたのでよく覚えています」

販売先はかつては、学校の前にある町の文具店や駄菓子が中心だったが、時代とともにホームセンターが主流となり、やがてインターネット販売がメインとなり、商品の細分化も一気に進んだ。寺本社長は虫取り網という商材の半世紀をすべて目の前で見てきたと言える。そんな社長から見る最近のトレンドや売れ筋についても聞いてみた。

アウトドアやメール便という時代のニーズに応えて

ファンキーズDX着脱シーン

ファンキーズDXシリーズは着脱が可能なため持ち運びが便利

「最近はアウトドアブームなので、キャンプでも使えて差別化できる商品としてキャンパーズネットシリーズというアイテムを展開しています。アウトドア風の迷彩柄を施した虫捕り網と魚網のセットで、持ち運びに便利な収納バック付きなのがポイントです」

このキャンパーズネットシリーズのベースとなったのが、ファンキーズDXシリーズ。これはコンパクトな網であることが一番の特長なのだが、ここにも時代の変化が反映されていた。ネット販売が増えてきたことで、ポスト投函できるメール便のニーズが高まったのだ

「網をネットで販売するには、網自体を安くしても送料が高く、不満の声が弊社にも届くように。そこで、メール便で送れるアイテムの開発に乗り出しました。最初は在庫品の部材を集めて小さな網を作り、メール便で販売し小さな網もニーズがあることを確認。そこで、きちんとパッケージングをし、発売したら売れ筋商品に。小さな網も売れることを認知したのでファンキーズシリーズ販売へと移行しました。これもヒットしましたが類似品も多く出てきたので、差別化を図るため丈夫で少しサイズが大きく丈夫なファンキーズDXシリーズの発売につながりました」。今では主力商品になりました。

網を通じてお客さんの笑顔のお手伝いがしたい

現在、エーワンでは市場に出せなかった規格外品を学童保育などに無償提供したり、海洋マイクロプラゴミ回収作業の協力のため専用網の制作をしたり、昆虫系YouTuberとコラボ企画をしたりなど、多彩な活動を行っている。

「意外に思われるかもしれませんが、網は少しずつ伸びている業界です。全体の本数は減ってはいるものの売り上げは伸びているのです。これは大人の趣味の方が増えていることが背景にあります。SDGsのこともありますので、皆さんに喜んでもらえて環境によく、そして楽しい活動を今度も取り組んでいきたいと思います」

最後にエーワンの展望について聞いた。網以外も作りたいと思う一方、網を通じて貢献したいという思いがあるという。

「やはり私たちの原動力は、お客さんの笑顔です。網を通じて自然の中で遊ぶ楽しさ、生き物とのふれあい、命の大切さ、家族や友人との楽しい時間の共有など、楽しさを広げることを目指していますね。網ではない商材も作りたいと思いますが、ずっとやってきた網を通じて社会に貢献し、お客様も社員も幸せであるようにといつも思っています」

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