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アブラムシを駆除したい! 手軽な撃退法、発生原因や予防策も

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監修者:秋元信一

監修者:秋元信一

北海道大学大学院 農学研究院 名誉教授。アブラムシなどの植食性昆虫の分類学、生態学、進化学が専門。元日本昆虫学会会長。著書として、『アブラムシの生物学(共著)(東京大学出版会』、『親子関係の進化生物学(共著)(北海道大学図書刊行会)』など。

アブラムシってこんな害虫

アブラムシってこんな害虫

もしかしたらその被害は、アブラムシの仕業かも

あなたが大切に育てている花や観葉植物、野菜をよく見ると、害虫の被害にあっていないでしょうか? 小さい虫がたくさんついていたり、葉や茎、幹や枝の様子がおかしかったりする場合、もしかしたらそれは、アブラムシの仕業かもしれません。

アブラムシは1匹だけだと目立ちませんが、群棲した状態で目につきます。アブラムシには多くの種類があり、大きさは2〜4mm程度のものが多いです。体の色は、濃い緑や淡い緑、赤や黒、茶色や黄色など種類により異なります。

植物の茎に集まるアブラムシ

アブラムシは厄介なことに1年中発生する害虫です

アブラムシは、寒い地域では卵の状態で冬を越しますが、暖かい地域では1年を通して幼虫を産み続け植物に被害を及ぼします。春から夏(真夏を除く)にかけてはメスだけで増殖。その繁殖力はとても強く、条件が良いと毎日数匹から十数匹のメスを産み、幼虫は10日前後で成虫になります。異なる作物には、異なる種のアブラムシがつくことが多いです。

アブラムシは厄介なことに1年中発生する害虫で、特に春と秋の雨が多くない時期に活発に。暑さに弱いため夏には比較的見かけなくなりますが、初夏頃にハネのあるアブラムシが生まれて新しい植物へ移動後、秋になると戻ってきて繁殖を繰り返し、オスが生まれて交尾をして卵の状態で越冬します。暖かい地域ほど、幼虫で冬を越す種が多くなります。

秋元 信一 先生プロフィール写真

秋元先生

ちなみに、新しい植物というのは、同じ種の未寄生の株の場合もありますが、別の種の植物に移る場合もあります。夏の間、植物の根で過ごすアブラムシも多いです。

アブラムシが及ぼす被害

アブラムシが及ぼす被害

直接被害と間接被害を及ぼすアブラムシ

アブラムシが及ぼす被害には、直接被害と間接被害があります。

直接被害は、草花・樹木・野菜など多くの植物の新芽や葉裏などに寄生して、植物の汁液(師管液)を吸って加害すること。1匹ではたいしたことがなくても、群棲して加害するため、特に若い芽や葉が変形し、健全に生育しなくなってしまいます。

また、間接被害は、ウイルス病を媒介することです。ウイルス病は多年生の植物にとって深刻で、かかってしまうと治療することはできません。そのため、かかったら抜き取って焼却処分する必要があります。また、トマトやピーマンなどのナス科の作物は一年生の作物ですが、タバコモザイクウイルスによって株が傷んだり、収穫量が減ってしまうことも。近くにウイルス病を発症している株がある場合は、アブラムシがほかの植物にウイルスを媒介しないよう、特に気をつける必要があります。

アブラムシを駆除したい! 手軽な撃退法、発生原因や予防策も

すす病になる可能性が高くなる

アブラムシの排泄物は甘い液体で甘露(かんろ)と呼ばれ、この甘露を利用するためにアリが集まってきます。アリはアブラムシの天敵であるテントウムシなどからアブラムシをガードするので、アブラムシの繁殖を助けてしまいます。さらに、この甘露でベタついた部分はカビが発生しやすくなり、カビが原因となるすす病になる可能性が高くなります。

アブラムシが発生する原因は?

アブラムシが発生する原因は?

アブラムシが発生する原因として、肥料の与えすぎがあります。特にチッ素成分の多い肥料を与えてしまうと、アブラムシが好むアミノ酸が植物の中に多くなり、多くのアブラムシを引き寄せることになります。

日当たりや風通しが悪い場所に植物を置いておくと徒長してしまうことが有りますが、徒長すると植物の表面の組織が薄くなり、アブラムシがくちばしを突き刺して汁を吸いやすい状態になります。徒長もまた、チッ素分が多すぎることで起きやすくなる現象です。チッ素分を与えすぎないことのほか、チッ素と併せてカリウムを与える、風通しのよい場所に置いて節間が詰まったがっしりした株を作るようにするなどして防ぎましょう。

アブラムシの駆除方法

アブラムシの駆除方法

アブラムシの駆除に必要な道具

  • 手で取る
  • 水で流す
  • 粘着性のあるテープで取る
  • 黄色い粘着板
  • 殺虫剤

アブラムシは、多くの植物の葉や新芽、つぼみや花などやわらかい部分に集まります。発生してしまった場合の駆除方法はいくつかあるので、自分に合った方法で対処しましょう。

アブラムシの駆除方法1:殺虫剤を使用しない場合

アブラムシの駆除方法1:殺虫剤を使用しない場合

アブラムシは黄色い物に集まる性質

殺虫剤を使用しない駆除方法として最も簡単なのは手で取ったり、指先ではじいて取り除くことです。また、ホースの水流で流すこともできます。道具を使うのであれば、粘着テープの粘着面でアブラムシを貼りつけて取り除いてもよいでしょう。

秋元 信一 先生プロフィール写真

秋元先生

ただし、1匹でも残ってしまうと、その個体から爆発的に数を増やしていきますので、根絶させることはかなり難しくなります。

また、アブラムシは黄色い物に集まる性質があります。その性質を利用して、黄色の粘着板を設置して駆除することもできます。アブラムシの天敵であるテントウムシやカゲロウ、ヒラタアブの幼虫などを寄生された植物の周りに放つという対処法も。

ピーマンの一大産地である高知県では、ほぼ無農薬でピーマン栽培をしています。これは、ピーマン用ビニールハウスの中に、もともと日本にいるタバコカスミカメを放しているからだそうです。タバコカスミカメはアブラムシの天敵なので、農薬を使わなくてもアブラムシを退治してくれるのだそう。タバコカスミカメはヨモギの草むらを捕虫網で探ると捕まえられることがあります。また、タバコカスミカメはゴマの害虫でもあるので、ゴマを育てていると自然と集めることができるのだとか。高知県のピーマン用ビニールハウスにはゴマが植えられていて、餌となるアブラムシがいなくなるとゴマを食べ、アブラムシが殖えると退治に行ってくれるのだそうです。

秋元 信一 先生プロフィール写真

秋元先生

ビニールハウスや温室での栽培では、アブラムシが寄生した麦類を持ち込むことで、天敵の寄生蜂や捕食者を常に維持しておいて、大事な作物にアブラムシがついたときに、すぐに天敵がアブラムシを攻撃できるような方法が使われています。麦についたアブラムシは、作物につくことはありません。

アブラムシの駆除方法2:殺虫剤を使用する場合

アブラムシの駆除方法2:殺虫剤を使用する場合

殺虫剤を使うのも効率が良い対処法

アブラムシの駆除方法として、殺虫剤を使うのも効率が良い対処法です。特に、種まきや植え付けの時に殺虫剤を使うと効果があります。

多くの薬剤が効きますが、アブラムシは繁殖が旺盛なため、植物に成分が吸収されて長期間効果が続く浸透移行性剤が便利です。アブラムシ以外の害虫まで退治したい場合はオルトラン類が効果的。4月ごろになると多くの植物が芽吹いてきますが、柔らかい芽はアブラムシの大好物。芽吹きとともにオルトランを株元にまいておくと、水やりの水や雨で溶けたオルトランが根から吸収され、植物全体に行き渡ります。アブラムシがくちばしを突き刺して汁を吸うと、オルトランの成分も一緒に吸ってしまい、駆除できるという仕組みです。成分は果実などにも行き渡るので、野菜や果樹など、収穫後に食べる作物については、取扱説明書に書かれている用法・用量を守って使うようにしましょう。

アブラムシ中心の防除の場合は約1~2カ月程度の効果が続くベストガード粒剤やモスピラン粒剤のほか、病気の予防と治療が一度にできる便利な殺虫殺菌剤ベニカXシリーズがおすすめです。収穫間際の野菜類には食品成分を使用したベニカマイルドスプレーで防除します。

薬剤を使用する場合は、その使用条件が合致していることをラベルなどで必ず確認してくださいね。

アブラムシ駆除の予防と対策

アブラムシ駆除の予防と対策

早めの発見と早めの対処が大切です

アブラムシは驚異的な繁殖スピードで瞬く間に広がり、植物に悪影響を与えます。そのため、アブラムシは早めの発見と早めの対処が大切です。植物を元気に育てるためにも、早期発見を意識してこまめに畑や庭を観察するクセをつけましょう。

できるだけ事前に発生を防止できるよう、予防と対策をまとめておきます。

  • アブラムシを引き寄せないよう、肥料などでチッ素を与え過ぎないように注意しましょう。

  • 適度に風が当たる環境に置いて、がっしりとした株を作るようにしましょう。

  • アブラムシの天敵となる益虫を殺してしまうことがあるので、やたらに殺虫剤をまくのは止めましょう

自然界はさまざまな生き物が暮らしていることで、適切な範囲にバランスが保たれています。なにかが減ってしまうとバランスが崩れて、ほかの何かだけが殖えてしまいます。アブラムシが殖えるのも、天敵が少ないことが原因ということもあります。やたらに殺虫剤をまいてしまうと、アブラムシを退治してくれる益虫も減ってしまいます。庭という小さな世界であっても、生物の多様性があることで特定の害虫が増えなくなるのだということを覚えておいてください。

アブラムシの駆除にまつわるQ&A

アブラムシの駆除にまつわるQ&A

Q. 殺虫剤を使用しない方法で、ほかにアブラムシに有効な駆除方法はありますか?

A. 発生密度が比較的多い場合は、歯ブラシや筆などを利用してアブラムシを直接こすり落とす方法があります。落としたアブラムシをそのまま捨てられる容器も用意しましょう。

また、牛乳を水で薄めて霧吹きに入れて直接吹きかける方法もあります。食用油と洗剤を混ぜた水でも構いません。これをスプレーボトルに入れて噴霧し、アブラムシを膜で覆って呼吸ができないようにします。植物にも悪影響があるので、噴霧後はしっかりと洗い流しましょう。農薬として販売されているマシン油も、アブラムシにとっての毒物が効き目を現すのではなく、油分がアブラムシの呼吸器に詰まって窒息させるタイプの農薬です。薬物としての農薬に不安感がある方にもおすすめです。

Q. アブラムシが運んでくるウイルスにはどんな種類がありますか?

A. キュウリモザイクウイルス(CMV)、カブモザイクウイルス(TuMV)、タバコモザイクウイルス(TMV)といった、多くの野菜に感染するウイルスを運んできます。このウイルスに一度感染すると、治療することができないモザイク病を引き起こします。このほか、壊疽(えそ)を発生させるジャガイモYウイルス(PVY)にも注意が必要です。

Q. アブラムシが発生しやすい植物はなんですか?

A. アブラムシは多くの植物に発生します。一例としてキャベツやダイコン、ホウレンソウやジャガイモ、キュウリやナスなどです。また、ウメやサクラなどの樹木にも影響を及ぼします。日本には約700種類のアブラムシがいると言われ、特にモモアカアブラムシとワタアブラムシは、さまざまな種類の植物に悪影響を及ぼすと言われます。

Q.マンションの高層階でもアブラムシは飛んできますか?

A. アブラムシは自力ではあまり高くまでは飛べませんが、風に巻き上げられて高くまで達して、長距離を移動することがあります。このため,高層マンションの10階以上の部屋のベランダでもアブラムシは発生することがあります。

アブラムシの駆除を動画でおさらい

アブラムシの発生を抑えるには事前の予防と対策が有効です。もし植物に付着しているのを発見した場合でも、今回ご紹介した方法を駆使して根気強く駆除に取り組んでみてくださいね。

※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。

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