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男の子なら一度は通る道。それがカブトムシの飼育だ。一時期のブームこそ沈静化したが、今も、夏を象徴する昆虫としてホームセンターのペット売り場にはカブトムシやクワガタが必ず並んでいる。
しかし本来は、カブトムシなどの昆虫は採集が難しく寿命も短いもの。ペット売り場のカブトムシはどこから届いているのだろうか。そんなカブトムシのペット売り場での取り扱いを実現しているのが、全国にある昆虫販売会社の存在だ。
今から約50年前に24歳のOLが創業した株式会社ミタニは、現在では全国トップレベルのシェアを誇る東日本一のカブトムシ販売会社。カブトムシ養殖のギネス記録を持つ俳優・哀川翔さんのカブトムシ飼育に協力していることでも知られている。そんなカブトムシの安定供給をかなえるミタニの秘密を、代表取締役社長の三谷孝夫さんに伺った。
株式会社ミタニ 代表取締役社長 三谷孝夫さん
広い物流倉庫を併設するミタニ本社社屋
日本有数のカブトムシ販売会社である株式会社ミタニの本社は、日本で二番目に大きな湖、茨城県の霞ケ浦近くにある。創業は今から50年以上前の1968年。きっかけは創業者がたまたま新聞で“昆虫ブーム到来“という見出しを見つけたこと。当時の創業者は外資系IT企業でキーパンチャー(データ入力オペレーター)をしていた24歳のOLだった。
「創業者はもともと独立心が強く、将来は何かしら起業したいと考えていたそうですが、24歳のOLが全く縁のない昆虫販売の事業を始めたのですから、その行動力には驚きます。当然ですが起業に関しては母親や姉に猛反対されたそうです」
茨城県土浦市の自宅を拠点に、近隣の農家の方たちが採取したカブトムシを買い取り、東京の小売店に卸すという仲買事業からミタニはスタートした。実家があった土浦を創業の地にしたのは、昆虫の産地としての地の利を理解してのことだった。土浦のあたりは、クヌギなどの雑木林が多く、平地ばかりで子供でも楽に昆虫が採取できる地域。そのうえ、カブトムシやクワガタが集まりやすいメロンやスイカなどの果物栽培も盛んだった。とはいえ、このような地の利があっても、すぐにうまくいったわけではなかった。
「当初の取引先は縁日の出店や一部のペットショップでした。特に縁日の出店はいわゆる的屋さんが相手で、その中に若い女性が踏み込んでいくわけですから、偏見の目で見られることも多く、なかなか地域や業界に認められなかったようです」
昆虫マーケットも今ほど大きくはなかったのだろう。しかし、やがてミタニを取り巻く環境が一変する。
日本初のホームセンターが開業したのは1972年。1980年代に入ると、ホームセンターのチェーン展開が進み、日本各地の国道沿いに大型ホームセンターの出店ラッシュが相次いだ。もともと取引先だったホームセンターチェーンの店舗数が増えるにともない、ミタニのカブトムシ出荷数も店舗の数だけ増加していった。
「1980年代に、メインの取引先がペットショップからホームセンターやスーパーに代わりました。そしてホームセンターの店舗数が増えるに合わせて昆虫ペット市場自体も拡大し、ミタニの販路も広がっていったんです」
昆虫ペット市場拡大とともに急成長していくミタニは、カブトムシに健康で長生きしてもらうため、飼育用品の分野にも進出した。そして生まれたのが「くぬぎ純太くん」(現在は廃版)だ。成虫の飼育から幼虫のエサにまでオールマイティに使えるマットで、これが全国で大ヒット。そして関東でも随一の昆虫販売会社として、ミタニは業界からも認められる存在となったと三谷さんは振り返る。
しかし昆虫ペット市場もやがて飽和状態に。
「そもそもカブトムシは生活に必要なものではないんです。今はもう昔のように売り場に置くだけで売れるというものじゃない。飼育してもらうためには販売店や消費者への提案が必要なんです」
そこで作ったのがカブトムシの生態などをわかりやすく伝えたPOP。これを販売店に店頭展示用に提供した。
「例えば “朝よりも 夜のカブトの方が強い?”というPOPは、一度昆虫の飼育をリタイヤしてしまった親子をターゲットとしています。これを見たお父さんや子供たちが、『これってホントなのかな?』『じゃあ捕まえて比べてみよう』と再びカブトムシに目を向けてくれたらいいなという願いを込めて作ったもの。これを見た10人のうち1人でも興味を持ってもらえたら成功です」
カブトムシの生態や豆知識などを分かりやすくまとめたPOPの一部
また、販売店の店頭などで、周囲に網を張った内側に雑木林を再現したテントを立て、虫取りの疑似体験イベントも開催。そこで子供たちと直接触れ合い、飼育の相談なども受けている。
「イベントには初めてカブトムシに触れたという子供たちもいますし、見ず知らずの子供同士がいつの間にかカブトムシの話で仲良くなっている姿も見られます。昆虫が子供たちのコミュニケーションツールになっているんですね」
飽和状態の昆虫ペット市場の活性化のため、ミタニではこういったPOPやイベントを通じて子供たちへカブトムシの魅力を伝える活動も積極的に行っている。
だが、ミタニの前には、立ち塞がる次なる壁があった。