八百屋歴10年のプロが指南。新鮮でおいしい産直野菜を選ぶコツ
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ムクドリはハトやカラスなどと同じく、1年を通してほぼ日本全国で見られる野鳥です。一羽一羽はかわいいものの、大きな群れでやって来て騒音やフンの被害をもたらすことがあります。ムクドリ対策に頭を悩ませている方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、ムクドリ対策全般を詳しく解説します。駆除や撃退を検討するほど被害が深刻化しているケースもあるでしょうが、野鳥を独断で捕獲・処理することはできません。また、やみくもに追いやっても「イタチごっこ」に終わる可能性があり、建設的な対策とはいえません。ムクドリの生態をよく理解し、共生も視野に入れて具体策を練るべきでしょう。
ムクドリはスズメ目ムクドリ科に属する鳥類です。ほぼ日本全域に生息している留鳥(一年中同じ地域に住む鳥)で、ハトやカラスのように市街地にもよく現れます。公園の芝生を歩いていたり、街路樹や電線に止まっていたりする姿を見たことがある方も多いでしょう。
ムクドリの全長は20~25cm、翼を広げでも40cm程度と、ハトほど大きくはありません。体色は茶褐色で頭は黒褐色。額、頬、腰、羽の裏側は白く、くちばしと足は黄色~オレンジ色です。
植村さん
オスはメスと比べてより濃い黒色であるほか、その年生まれの幼鳥は全体的に体の色が淡く、顔の模様もはっきりしていません。ムクドリの群れの中には雌雄や成鳥幼鳥とさまざまな個体がいるので、見分けてみてください。
名前の由来の通り椋(むく)の実も大好きですが、基本的には雑食です。昆虫、果実、種子、穀物など何でも食べます。田んぼや家庭菜園に現れる憎き害虫もよく食べてくれることから「益鳥」扱いされていましたが、都市化の進展により餌場が激減した結果、果樹園に侵入したり、生ゴミを漁ったりするようになってしまいました。
ムクドリは少々やんちゃな性格をしており、縄張り争いや餌の取り合いでほかの小鳥と喧嘩することも珍しくありません。群れになって徒党を組み、自分より大きな動物の餌を奪おうとする図々しさも持ち合わせています。
ムクドリは天敵であるカラスやタカから身を守るため、大きな群れを作る習性があります。一羽が危険を察知すると群れ全体に共有し、数百~数千羽が一斉に逃げ出します。
ムクドリは3~7月頃にかけて繁殖期に入り、この時期は群れから離れてつがいとともに行動します。巣は枯れ草や羽、獣毛などを拾って木のうろなどに作りますが、人家の屋根や壁の隙間などで巣作りすることもあります。
一度に4~7個ほど卵を産みます。ムクドリの卵は空色でとてもきれいです。卵は約2週間で孵化、ヒナは1か月弱で巣立ちし、その後1月ほど親鳥と行動します。家族で移動できるようになれば再び群れと合流するため、8月以降はムクドリの群れの目撃数がぐんと増えるのが通常です。
一般的には5~7年生きるといわれており、なかには10年以上生きる個体もいます。
植村さん
住宅地率(住宅や都市など人工用地が占める割合)が80%を超える都市部のムクドリは少し増加しています。一因として考えられるのは、ゴミ出しの方法が改善されたことなどで、天敵となるカラスが減少傾向にあることです。ただし、住宅地率80%を超える都市部というのは国内全体で見るとほんのわずかで、そのほかの場所のムクドリは減少しています。つまり、全体で見ればムクドリは減っているといえます。
昔から「益鳥」「農林鳥」と呼ばれ重宝されているムクドリですが、害鳥扱いされる場面もあります。ここでは、ムクドリによって被る代表的な損害を紹介します。
集団を形成するムクドリの糞尿は相当なものです。ムクドリがねぐらにする街路樹の下にはかなりの数のフンが落ちており、自治体も頭を抱えています。ベランダの洗濯物にフン尿をかけたれたり、車のボンネット上をフンだらけにされたりと、住宅地にもたらす被害も甚大です。
ムクドリは「キュルキュル」とかわいく鳴くこともあれば、「ギャーギャー」と鳴くこともあります。どちらにしろ、数百・数千の規模で一斉に鳴かれたときの音量は相当なものです。
外敵から身を守るためやねぐらの場所争いで、睡眠時以外は仲間とコミュニケーションを取り続けるという習性も悩ましいところ。通常は日没とともに静かになりますが、夜でも明るい都市部ではなかなか眠らず、長時間鳴き続けていることもあります。
雑食で食欲旺盛なムクドリは果実や穀物なども大好きです。苦労して育てた農作物を台無しにしてしまうため、物理的なネットを被せるなどの対策が必要でしょう。ただ、ムクドリはショ糖を消化できないことから、柑橘系の果物は好まないようです。
植村さん
なお、「果樹園への侵入」と「都市化」が結びつけられることがありますが、さほど関係がないと思われます。ムクドリの行動圏はせいぜい半径5kmで、都市と果樹園の距離は一般的にはそれ以上だからです。
植村さん
ちなみに、「生ゴミを漁る」もムクドリの害として挙げられることがありますが、ムクドリがカラスのように生ゴミを漁ることは実はほとんどありません。
繁殖期の巣作りの場所に人家を選ぶことがあります。屋根や壁の隙間、戸袋、ベランダ、室外機の裏など、狭い空間にも巣を作り産卵します。
子育ての拠点に選ばれることで糞尿や騒音被害が発生し、巣から発生したダニや細菌が室内に入り込むかもしれません。結果、感染症やアレルギーに悩まされる方もいます。
ムクドリ対策にはさまざまな方法がありますが、一時的な効果に留まるものもあり、自治体も頭を抱えている状態です。
現在行われている代表的な対策をいくつか紹介しますが、そろそろ発想を変え、ムクドリとの共生を目指すほうが建設的といえます。
防鳥ネットで物理的に寄せ付けないシンプルな対策です。ムクドリが現れる場所に設置することで、食害や巣作りによる複合的被害を防止できます。
ただし、ネットの網目が荒かったり、強度が弱かったりすると、ムクドリに裂かれる恐れがあります。できるだけ細かく頑丈なネットを選びましょう。
電気ショックは、屋根やベランダに微量な電流が流れる設備を仕掛ける対策です。大幅な施行を必要とせず、電極、ソーラーパネル、ソーラーバッテリーを導入すれば設置できる商品もあります。たとえ微量でも得体のしれない感覚にムクドリは警戒します。
バードスパイクは、ベランダの手すりや室外機などに取り付けるトゲトゲのシートです。安定して止まれる場所がなくなるため、飛来しにくくなるというシンプルな対策です。なお、剣山部分は柔らかい素材でできており、止まったからといってムクドリに苦痛を与えるものではありません。
ムクドリがねぐらにしている木や枝を取り除く強引な対策も行われていますが、近くに別のねぐらを作るだけに終わるでしょう。非推奨です。
タカやフクロウの鳴き声を発するスピーカーや、それらを型取った鳥かかしには一定の効果があるといわれています。下記は、カラスの生け捕りを見せしめのように吊るし上げておくというユニークな発想の商品です。
しかし、頭の良いムクドリにはダミーだと勘付かれる可能性もあり、騙しておけるのは一時的かもしれません。たとえばフクロウを模した鳥かかしは、本来フクロウが活動する時間にのみ設置しないと見破られるという声もあります。置き場所や設置時間を変更するなど、さまざまな工夫を用いて利用することになるでしょう。
住宅街では難しいですが、ロケット花火や爆竹の音で追い払う手もあります。ムクドリだけでなく、シカなどほかの野生鳥獣も逃げていくでしょう。実際に、ロケット花火と天敵グッズとの組み合わせで一定の成果を挙げた市もあります。
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こちらは、電子制御による完全自動型の爆音機です。単一形アルカリ乾電池4個で1か月弱使用できます。
音対策の弱点は、音が止んだら再びやってくる可能性があることです。根気強く不快音を鳴らし続ける勝負をしなければなりません。
ムクドリに限らず、野生動物は自然界では遭遇しない光の乱反射などを嫌う傾向にあります。したがって、CDの裏面をぶら下げる、LED電飾を取り付けるといった対策は自治体も行っています。そのうちムクドリが慣れる可能性もありますが、試してみる価値はあるでしょう。
自治体に相談すれば、ムクドリを追い払うためのアドバイスを受けられることがあります。また、各種防鳥グッズやムクドリの糞尿を清掃する高圧洗浄機を貸し出してくれることも。何から対策すればよいかわからない方は、まずはお住まいの自治体に問い合わせてみるとよいでしょう。
ムクドリ対策を行っても被害が減らない場合は駆除を検討するでしょう。しかし、ムクドリは「鳥獣保護管理法」によって保護されており、行政の許可なく駆除・狩猟してはいけません。
ムクドリが巣作りを始めた場合、作り始めであれば撤去できますが、卵を産んでいる場合は鳥獣保護管理法が優先されます。違反すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられるため、正しい手続きを踏みましょう。
お住まいの地域の役所に申請し、許諾を得ましょう。ムクドリは1994年から「狩猟鳥」に指定されており、申請者が狩猟免許を所持しているのが原則です。狩猟には「狩猟期間」や「狩猟区域」が決められているほか、申請には複数の書類が必要です。詳細は自治体に問い合わせてください。
なお、狩猟・捕獲による駆除は個体数の抑制という意味では効果が低いとされています。人間の都合で命を奪うよりも、可能なかぎり共生の道を探ることのほうが大切です。
鳥獣捕獲を生業とするプロの業者は、ムクドリの巣の撤去や清掃作業、再発防止対策を売りにしています。緊急度に応じて検討するのもひとつの選択肢ですが、鳥獣捕獲のノウハウは確立しているとはいえません。対応度や費用にもバラつきがあり、慎重に検討したほうがよいでしょう。
戸袋や換気扇のフードなど、人と極端に近いところに巣を作られたり、人通りが多い場所の真上にねぐらがあったりすることは確かに困ります。とはいえ、ムクドリに限らず、本来、野生の動物は「駆除の対象」ではないはずです。人が困らない場所にそれらを移すことはできないでしょうか。
たとえば、困る場所に巣を作られないように、もっと良い巣場所を用意するというのも一つの手です。もともと樹洞などで繁殖するムクドリは、人が作った巣箱にも入ることがあります。一般的な小鳥用の巣箱よりも一回り大きな、入り口が5cmから6cm、入り口から底までの深さが20cm、底が18cm四方くらいの巣箱を作って、人の手が簡単には届かないような少し高いところに設置すると、繁殖することがあります。
植村さん
戸袋や換気扇の排気口にムクドリが入らないようにネットなどを張り、代わりの繁殖場所として巣箱を用意してあげるのはよいかもしれません。「そろそろ卵が孵化したのかな?」とか、「盛んに餌運びをしている親鳥がお疲れで羽もボロボロになってきたな」とか、「いよいよ巣立ちが近いな」などと観察するのは楽しいですよ。
植村さん
ねぐらについても、ムクドリを追いやるという対策は効果的ではないので、人間が比較的困らない場所に誘導することはできないかと考えています。まずは、ムクドリがねぐらとして好む場所を探るため、ねぐら樹木や周辺環境の計測に力を入れています。ムクドリがねぐらにしたいと思う環境がわかれば、たとえば駅前でも人通りの多い場所にある街路樹ではなく、人が中に立ち入らないロータリーの真ん中や、夜間に人が使わない公園などに誘導できるかもしれません。
ムクドリ対策にかかわるちょっとした疑問にQ&A形式でお答えします。
A.アケビコノハ(蛾)などが食害した後の果実は腐敗が早まるのですが、それをムクドリが好んで食べることがわかっています。食害の犯人がムクドリなのかアケビコノハなのかの判断は付きにくいため、害虫対策も施すのがよいでしょう。
A.たとえ卵だけであっても、勝手に除去することは鳥獣保護管理法に違反します。親鳥が探しにやってくるかもしれないため、まずはお住まいの自治体に相談してみてください。なお、野鳥の卵にはノミやダニが付着している可能性があり、非常に不衛生です。扱いには十分注意しましょう。
A.ムクドリたちが分裂しては集まったり、上昇したと思えば急降下したりする飛び方は「マーマレーション」と呼ばれていますが、行動原理はよくわかっていません。ただ、あのような飛行をすることでほかのムクドリを視覚的に呼び寄せているというのが有望な説です。寒い冬を一緒に乗り越えるため、あるいはタカやカラスといった外敵から身を守るために好都合なのでしょう。
防鳥ネットや忌避グッズなど、さまざまなムクドリ対策があります。「一時的にでも追い払いたい」というニーズには応えられるかもしれませんが、長い目で見るとイタチごっこが続きます。
終わらない攻防に労力や予算をかけるより、共生を探るほうがではないでしょうか。「害鳥」は人間の都合によるレッテル貼りでしかありません。ムクドリのことをもっとよく知り、柔軟に状況を判断をしながら共に生きる道を探りたいものです。
※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。
植村さん
1月から4月ごろの繁殖期前には、羽衣がつやつやしていてとてもきれいです。目から頬にかけて白っぽい毛が生えていますが、個体差があります。