日傘のスキをなくしたら妖怪っぽくなった話
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目次/ INDEX
こんにちは、ライターのJUNERAY(ジューンレイ)です。草陰から失礼します。
黙々と仕事をしているかのように見えますが、実は頭の中が「ある悩み」でいっぱいで困っています。朝からまったく作業が進まずに数時間が経ちました。
仕事が手につかず、夜も眠れなければ朝も起きられないほどの悩み。どんなものかといいますと……
旅行がしたい
これです。
去年から世の中がいろいろあって、皆様もなかなか外出できずにいらっしゃることでしょう。もとから家の中にいるのが苦手な筆者は、人間の三大欲求にも数えられる「旅行欲」が高まりすぎて葛藤の日々を送っています。
海外旅行もいいけれど、やっぱり日本の冬の旅といえばアレ。
温泉旅館に行きたい……
旅館って、いいものですよね……。ホテルに泊まるのとは違う、不思議な特別感。エントランスで謎の置物を眺め(だいたいは『王将』と書いてある巨大な将棋の駒)、道を覚えられるか不安な廊下を辿った先の純和風な客室。
夜はもちろん温泉に入り、日本酒を飲んでフカフカの布団で朝までぐっすりです。外に観光に行かずとも、旅館に泊まるだけでも十分なエンターテインメントと言えるでしょう。
旅館の室内で過ごすぶんにはいいですが、問題はそこにたどり着くまでの移動。筆者はもうブレーキとアクセルがどっちだったかも覚えていない、軽自動車は軽油で走ると思っているほどのペーパードライバーなので、新幹線や飛行機に乗って行かなければなりません。
図解:移動が嫌だという気持ち
そもそも移動距離が長いと、目的地で過ごす時間が減って損ですし、自宅と温泉旅館までの距離をx(エックス)として理想はx=0ということになります。つまり、自宅に温泉旅館がある状態が最高だということです。
図解:人間の幸福について
そこでひらめきました。「いっそ自宅を旅館にしてしまえばいいのではないか」と……。
「いつでも風呂に入れる」「複数枚の壁に囲われている」など、旅館と自宅には多くの類似点があります。マンションの5階にある筆者の家に、これから温泉が湧く可能性はほぼゼロですが、温泉旅館の部屋程度であれば再現できるのではないでしょうか。
ということで、自宅を温泉旅館の和室にします。
まずは筆者の仕事部屋をご覧ください。
先ほどは、草葉の陰からご挨拶をしてしまい亡霊のようでしたが、観葉植物に囲まれることで集中力を高めるねらいがあります。実際の進捗がゼロだという点を除けば理想的な仕事場でしょう。
「なんかちょうどいい机がなかったから」という理由で使い続けているこちらのテーブルも、本来はベランダに置くはずだった屋外用。金属でできているため、仕事をしていると尻と腕から効率よく熱を奪われます。
植物とテーブル以外は小さい本棚くらいしかありません。ちょうど和室で畳が敷いてありますし、今回はこの部屋を旅館風にすることにしましょう。
図解:イマジナリー温泉旅館の部屋
さて、「温泉旅館の部屋」といえば、特徴的なのはこれらのインテリアでしょう。部屋の扉を開けた瞬間、目に飛び込んでくるローテーブルには心が躍りますよね。
そして旅館でしか見たことがない、木の板を曲げたようなタイプの座椅子。これははたして市販されているのだろうか……と探してみたところ、
カインズのオンラインストアにありました。見つからなかったら「木 曲げる やり方 簡単」で検索しようと思っていたので、購入できて本当によかったです。
というわけで、まずはローテーブルと座椅子を入手しました。ここから部屋作りをはじめていきましょう。
早々に届いた家具ですが、筆者が色味をよく見ずに購入したため、テーブルと座椅子の色味が合いません。
材質を見てみたところ、座椅子のほうはラッカー塗装された木材でしたので、こちらを分解して再塗装してみようと思います。色味を合わせることで“家感”が薄まり、旅館の部屋らしくなることを期待しています。
塗装時にクッション部を汚さないように、マイナスドライバーを差し込み……
バキバキバキメキ!
破壊します。普段はできない行為なので、なんだか爽快感がありますね。破壊に関心がある方は、DIYを趣味にしてみてはいかがでしょうか(とはいえクッション部分はあとでまた使うので、原型をとどめた状態で保持するよう意識してみてください)。
クッション部を外すと小さなビスが出てきます。このまま座ると尻に無数の穴が開くことになるので、ペンチですべて引っこ抜きます。
座面に残った接着剤も、マイナスドライバーなどで丁寧に剥がしましょう。
座面がおおむね綺麗になったところで、塗装の準備をします。用意するものは、木製品に使用できる塗料、サンドパット(スポンジ型のヤスリ)、塗装用ブラシ。
ラッカーが塗られたままの状態だと、塗料がうまく塗れない可能性があるので、サンドパットで全体をまんべんなく擦ります。スポンジ状のサンドパットは曲面にもフィットし、ムラなく磨けるのでオススメです。
真ん中から上がサンドパットをかけた面、下が無加工の面です。ツヤがにぶくなり、新しくなめらかな木肌が見えています。この状態になれば塗装してOK。
「マーブル」カラーの「水性屋内外シリコン多用途塗料A」をベースに、グレー系の塗料などを混ぜてテーブルの色に近づけていきます。塗装についてはハケを使うのもいいですが、このようなスポンジタイプのブラシは余分な塗料を吸ってくれて、ムラなく仕上がるのでDIY初心者さんにオススメです。リキッドファンデーションと同じですね。
全体に塗ったら、乾かしている間に別の家具を作成します。
次に作るのは、和室の「床の間」。
「床」にしては踏んでいいのかわからないし、「間」と呼ぶには狭い気がする謎の空間。長年「掛け軸とかお花とかを置くためのお洒落スペース」と認識していましたが、調べたところ、どうやら本当にその用途のスペースらしいです。「客人をもてなすための部屋にあるのが一般的」だそうで、つまり旅館の部屋の象徴と言っても過言ではない存在でしょう。
そんな「床の間」を真っ平らな自室に増設するわけですが、筆者はこの空間について「いい感じの高台」くらいの特徴しか見出だすことができなかったので、部屋の中に段差を作るイメージで作ってみようと思います。
用意するのは、カットベニヤと2×4角材(通称:ツーバイフォー)。
こんな感じで並べて……
強力な両面テープでベニヤを貼ります。釘で打ってしまってもOK。
すでに小高い段差はできましたが、ここで登場するのが、木目調のウォールペーパーと専用の両面テープ。
木材に巻きつけるように貼っていくと……
「床の間」らしき空間ができました。部屋が真四角なためだいぶ長い床の間ですが、筆者のもてなしの心に比例していると解釈していただけると幸いです。
床の間ができたので、部屋を彩る小道具を作りましょう。
まず使うのは、さっきまでウォールペーパーが巻かれていた紙の筒。
長方形の厚紙を用意し、その幅に合わせてカットします。上下それぞれに、両面テープで筒を取り付けたら……
そう、掛け軸です。
やはり床の間に掛け軸は必要不可欠。とても簡単に作れるので、お子様の絵画作品や、お気に入りのスーパーのチラシなどを飾るのにご利用ください。
無地のままだと不穏なので、メインの「書」部分をしたためたいと思います。
「風林火山」や「雪月花」などは頻出。
ただ「○」が描いてあるだけ、など難解なパターンも。
達筆すぎて、何て書いてあるのか読めない。きっと何かありがたいことが書いてあるんだろう。
したためた書を貼り、カインズで買った花瓶にお花を飾ったら、一気に床の間らしくなりました。これで急に、家に重要な人物(※)が来ても、おもてなしの気持ちが伝わるでしょう(※大家さんなど)。
お次は、部屋の雰囲気を演出する「照明」。
我が家の天井照明は、リノベ後の賃貸によくあるリモコン式のシーリングライト。明るく青白い光は旅館の客室にミスマッチなので、こんなものを買ってみました。
天井照明器具専用リモコンスイッチ。これさえあれば、部屋のスイッチに繋がっていないシーリングでも、電気工事なしで照明の付け替えが可能です。
まずは元からあった照明を外して、
このように設置。
新しいコードセットと電球、和風なシェードをつけたら完成です。頭に当たりそうな絶妙に低い位置にあると、旅館らしくなる気がします。
ここで、大切な旅館アイテムの存在を忘れていたことに気がつきました。先ほど床の間を作った際のベニヤとウォールペーパーが余っていたので、こちらを材料にしてさっそく作ります。
ベニヤを四角く組み合わせ、ウォールペーパーを貼ると……
「宿屋でしか見ないタイプのティッシュボックス」ができました。
旅館やホテルのティッシュって、なぜポケットティッシュサイズなのでしょう。花粉が舞う時期だと30秒で使い切ってしまうので、ふつうの箱ティッシュを置いてほしいものです。
そうこうしていたら、座椅子の塗装が乾きました。テーブルによく合ういい色になりましたね。
剥がしたクッション部分を強力な両面テープで貼り直し、
座布団が家になかったのでこれを敷いておきましょう。チェアパッドなんて贅沢な名だね。お前は今日から座布団だよ。
セッティングが終わりました。新しくなった仕事部屋に入室(check-in)してみましょう。
【啄木鳥の間】
なるほど、ここが新しい仕事部屋かあ〜!
どれどれ、中はどうなっているんだろう……
!!!
旅館だ!!
予想よりもかなり“宿っぽい”仕上がりです。「高級旅館」とまではいきませんが、カジュアルに泊まれる和風の宿というおもむき。きっと素泊まりの若者がメイン顧客でしょう。
ローテーブルの上に電気ケトルとお茶などを置くと、急に自宅感がなくなります。「私は今もてなされている側なのだ」という気づきによるものでしょうか。
スーパーで買ってきた和菓子も……
こんな感じで置いておくと「ウェルカムおやつが置いてあるタイプの旅館かー!」という感じがして嬉しいものですね。
温泉旅館化前と後で比べると、部屋の様子はこんな感じ。植物とテーブルしかなかった仕事場が、癒やしのくつろぎ空間になりました。
さて、温泉旅館ならば、お風呂のことも忘れてはいけません。どれだけ部屋を旅館のようにしても、我が家の風呂が蛇口を2・3回ひねらないと、お湯が出ないかわいそうな仕様なのは変わりません。
せめて少しでも温泉気分を盛り上げようと、ひのきの香りの薬用入浴剤を購入しました。こちらがとてもいい香りで、自宅の浴槽に入れて癒やされるのはもちろん……
耐熱容器に粉を入れて、
お湯を注いで置いてみました。
部屋中がひのきのいい香りに包まれて、まるで本当に温泉旅館にいるかのような気分になれたのですが、どう考えても容器の選定を間違えており飲みそうになったので注意が必要です。香りを欲張って多量の粉を溶かしてしまいテンションの高い色になっておりますが、浴槽で使用するととても綺麗なグリーンです。
ちなみに、旅館によくある「窓際の謎のスペース」は、部屋が狭くなりすぎるからと諦めていましたが……
元々の仕事机を置いたらいい感じになりました。
むしろここから眺める室内が「完全に旅館」だったので、ローテーブルと座椅子は観賞用に設置するくらいの勢いでいいのかもしれません。さて、さっそくこの部屋で過ごしてみることにしましょう。
もし旅館に長期滞在できるとしたら、やってみたいものだと常々思っていたことがあります。
それは、「カンヅメで原稿を書くこと」。
どなたのエピソードなのかは存じませんが、文豪と呼ばれる小説家は、温泉旅館にこもって修羅場を乗り切るイメージがあります。かくいう筆者もライターであり、物書きの端くれ。ちょうど締め切りが明日に迫った白紙原稿もあることですし、仕事に打ち込んでみることにしましょう。
「なんとなく文豪っぽい服装」に着替えて、いざ。
……。
……なんか……。
ひのきの匂いかいでると、お風呂入りたくなるな……。
………。
原稿に手をつける前にお風呂に入ることにしたので、私はこの辺りで失礼します。皆さんもぜひ、旅館の要素をご自宅に取り入れてリラックスしてみてくださいね。
〜おまけ〜
和室ですが、夜になってからの雰囲気がいい感じでして……
ひのきの湯でポカポカになった後の冷酒がたいへんにおいしかったので、日本酒がお好きな方はぜひ「温泉旅館モチーフの宅飲み」もお試しください。
JUNERAYでした。
<お酒は二十歳になってから>