潮干狩り歴70年の超人から潮干狩りに必要な持ち物、時期、場所、注意ポイントを超伝授された
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みなさんは「自宅の地震対策」、できていますか?
キッチンで料理をしているお昼時、お風呂でゆっくりくつろいでいる夜中、寝室でぐっすり眠っている早朝……予期せぬ大地震を自宅で迎える確率は、決して低くはないはずです。
いつかはやってくるその時のため、正しい〈知識〉を身に付け、十分な〈備え〉をしておき、発生時に適切な〈行動〉を選択できることが、あなたと大切な家族の命を守ることにつながるはず。
そこで、この記事では防災アドバイザーの岡部梨恵子先生の監修のもと、〈基礎知識編〉〈備え編〉〈行動編〉の3部にわたり、自宅の地震対策のいろはをたっぷりお伝えします。
「十分やっているつもりだけど不安」という人も、「完璧にはやれないから手を付けていない」という人も、一緒に学んでいきましょう!
地震対策の第一歩は、地震そのものについて知ること。「いつか大きい地震が来るかも」というぼんやりしたイメージを、「近い将来、こういう地震がやってくるんだ」といった具体的な知識に変えていきましょう。
そもそも地震とは、地下に存在する「プレート」という岩盤のズレによって生じる現象です。発生のメカニズムにより、次の2つに分類されます。
日本列島周辺のプレート分布図(出典:気象庁ホームページ)
中でも注意しておきたいのが、M7以上のいわゆる「大地震」。
近年は特に、南海トラフ(駿河湾から日向灘沖にかけての海底の溝状の地形)沿いで海溝型の「南海トラフ巨大地震」の発生リスクが高まっています。大規模な津波を伴うM8~M9クラスの巨大地震が今後30年以内に発生する確率は、70~80%と試算されています。
また南関東域でも、今後30年以内にM7クラスの「首都直下型地震」が70%の確率で発生すると、繰り返し言われています。いずれの場合もインフラの停止や古いビルの倒壊などの甚大な被害が発生する可能性が高く、十分な警戒が必要です。
大地震が起こった場合、震源から遠い場所では、最初に小さな縦揺れ、その後に大きな横揺れを感じることが多いとわかっています。なお、余震は数か月~数十年にわたって続くことも。「震源は遠くだから」「余震だから」といって油断は禁物です。
また、耐震性の高いマンションに住んでいる方も油断してはいけません。大地震では「長周期地震動」というゆっくりとした大きな揺れが起こり、高層ビルが船のように長時間揺れ続けることもあります。
高層ビルは短い周期の揺れに対しては強いが、長周期の揺れがくると大きく・長く揺れることがある(出典:気象庁ホームページ)
このように、地震大国の日本では、どんな住宅でも地震の被害に遭う可能性があります。特に、内陸型(直下型)地震はいつ・どこでも起こり、長周期地震動は震源地から数百km離れた遠方にも伝わりやすいため、十分な注意が必要です。
岡部先生
建物に大きな被害がなくても、家具・家電の転倒防止が不十分だと、逃げ遅れて下敷きになる危険があります。また、耐震化され丈夫な建物こそ、外観に被害がないと中の様子はわからないもの。室内で家具の下敷きになっていても、救助には時間がかかります。「うちは頑丈だから大丈夫」と思い込むのは危険です!
それでは、実際に大地震が起きたら、あなたの自宅はどれくらい揺れるのでしょう?
そもそも住宅は、建築基準法で定められた耐震基準を満たしている必要があります。ただし、耐震基準が改正される1981年以前に建てられた場合は、震度5の揺れでも倒壊するおそれがあります。
一方、改正後に建った建物は、震度6強〜7程度の地震でも倒壊しないことが求められるため、大地震が起こっても倒壊のリスクは低いとされています。家具・家電などの固定がしっかりできており、津波や火災がなければ、外にいるよりも安全な可能性が高いでしょう。
しかし、「絶対安心」ということはありません。不安がある方は耐震診断を受け、補強しておくのがおすすめです。
また住宅は「耐震」「制震」「免震」いずれかの工法で建てられています。持ち家の場合は把握している方がほとんどかと思いますが、賃貸の場合、自分の暮らす住宅がどれに当たるか知らない方も多いのでは。物件の管理会社に確認するなどして、自宅の工法がどれに当てはまるのか把握しておきましょう。
それぞれの構造と特徴は、以下の通りです。
ここからはいよいよ、自宅内の地震対策を見直していきましょう! まずは、家具や家電の固定方法についてです。
阪神・淡路大震災の死因でもっとも多かったのは「圧死・窒息死(77%)」。家屋全体が潰れたケースも多々ありますが、圧死のほとんどは、家具・家電の転倒によるもの。家具・家電を固定することが自宅の地震対策の基本と言えます。
家具・家電の固定方法として定番なのが、天井と家具・家電の間に設置する「転倒防止ポール(突っ張り棒)」。また、「L字金具」で壁の木枠に固定している方も多いでしょう。
ただし、こうした固定方法でも、横方向の大きな揺れがくると外れてしまったり、天井の強度が低い場合は天井を突き破ってしまう可能性もあるのです。
岡部先生
『じゃあ固定しても意味がないの?』と思うかもしれませんが、決してそんなことはありません。大型から背の低いものまで、固定は絶対に必要です。なぜなら、大地震の時は、あらゆる家具・家電が飛んでくる可能性があるからです。
家具・家電を固定するためには、「従来の定番グッズだけでなく、固定方法の選択肢を増やしておくことが大切」と話す岡部先生。最近は技術の進歩により、性能の高いアイテムがホームセンターでも多数販売されています。
例えば、家具と壁の間に特殊なスポンジを挟み、揺れを吸収してくれる制振式の家具転倒防止器具。外したいときには剥がせる粘着シートで家具と壁を固定するため、「賃貸物件で壁に穴を開けられないからL字金具は使えない」という方にもおすすめです。
壁と固定できない家具・家電には、ゲル状の耐震マットも有効です。ただし商品によって品質にバラつきがあるため、信頼できるメーカーかつ、「震度7対応」を謳っており、熱や紫外線などの経年劣化に強いものを選びましょう。
なお、テレビの転倒対策は、耐震マットだけでは不十分。「テレビと台を固定すれば安心」と思うかもしれませんが、大地震の際は台とくっついて一体化した状態で倒れてしまいます。台そのものも、必ず床に固定しておきましょう。
どれだけしっかり固定しても、やはり家具・家電が倒れる可能性は考慮する必要があります。もし倒れても、出口や避難経路を塞がないような配置にしておきましょう。
特に無防備でいる寝室には、大きな家具を極力置かないこと。命に直結する「頭」と、ケガをすると逃げ遅れにつながる「足元」には、物が倒れてこないようにすることが大切です。
リビングの棚などの上に小物を置くのであれば、テグスを張る・耐震マットを敷くなどの工夫をすることで、落下のリスクを減らせます。
岡部先生
とはいえ、危険を恐れるあまり普段の生活に溶け込まない地震対策をやりすぎると、生活に支障が出るうえ疲れてしまいます。例えば掛け時計なら、ガラス製の重いものではなく、軽いプラスチック製のものをかけるなど、柔軟に考えてみましょう。
室内の危険をひと通り取り除けたら、次は備蓄を見直してみましょう。
実は、日本の避難所は人口に対して大きく不足しています。例えば東京都の場合、コロナ禍以前でも約2割の人しか避難所に入れないとされていましたが、現在は新型コロナウイルスの感染防止のため、さらに人数制限がかけられ約1割ほどの人しか入れない状態です。
岡部先生
避難所は本来、倒壊・焼失・水没などで自宅に住めなくなった人のためのもの。たとえ自宅が水道や電気、ガスなどのライフラインが使えず不便な状態でも、耐震化されて被害のなかったマンションや戸建ての場合は、入所規制がかけられて避難所には入れない可能性があります。そのようなケースに備えて、自宅で被災生活を送る「在宅避難」をしっかり考えておきましょう。やはり、避難所で見ず知らずの多くの人と寝起きをともにするよりも、たとえ不便であっても自宅で家族で協力して生活する方が、ストレスなく過ごせます。
地震発生後、ライフラインの復旧や必要な物資が届くのは時間がかかるため、在宅避難には水や非常食・保存食などの備蓄が欠かせません。飲料水の目安は、季節に関わらず1日1人あたり3リットル。それが家族の人数×1週間分は必要だと言われています。例えば4人家族なら、1週間で84リットル(2リットルのペットボトル42本)の水が必要となるのです。
岡部先生
本数に驚くかもしれませんが大地震ではみんながパニックに陥り、被災地以外でも買い占めが起こります。南海トラフ巨大地震が発生すると、全国の2リットルペットボトルが手に入りにくくなると言われています。
食料の備蓄と言えば、缶詰やレトルト、防災食を想像する人が多いでしょう。日本の防災食は品質が高くおいしいものばかりですが、値段が高価なためそれだけで揃えると経済的負担も大きく、現実的ではないかもしれません。
そこで役立つのが冷蔵庫。しっかり固定して倒れないようにしておけば、災害時には立派な「備蓄庫」となってくれるでしょう。できるだけ開け閉めの回数を減らして冷気を外に逃がすことを防げれば、中の食料は3日程度もちます。なお、災害時は免疫力も落ちます。食中毒を防ぐためにも、食材は加熱調理して食べましょう。
災害時の食事は、缶詰やレトルト食品といった“いかにも防災用”なものに偏らないことも大切です。味が濃く単一な食事は、2日程度で飽きてしまい、食欲を低下させることも。常温保存可能な牛乳(ロングライフ牛乳)、食物繊維やビタミンが豊富な野菜ジュースなどの備蓄は、災害時の食事の質を格段に上げてくれます。みかんなどさっぱりした果物の缶詰もストックしておくといいでしょう。
岡部先生
レトルトでは、おかゆやリゾットなど胃に優しいものが特におすすめ。インスタントラーメンやカップ麺は賞味期限が半年程度のものも多く、定期的に入れ替えておいた方がいいでしょう。ただし過去の震災では、「インスタントラーメンやカップ麺を作ったはいいけど、断水中で鍋やどんぶりを洗うことができなかったり、残したスープの処理に困った」といった声もありました。災害時の食事というのは、食べ終わった後まで考えて準備することが大切になります。
食事をできるだけ普段通りに近づけることは、災害時に心身の健康を維持することにもつながります。温かい食べ物を自宅でも食べられるように、また食中毒などの予防のためにも、カセットコンロとボンベを必ず用意しておきましょう。
ボンベ1本は1時間強ほどしか使用できず、約1日で使いきってしまうと言われています。カセットコンロの大手メーカーは、1日1家庭あたり1.5本×7日分の備蓄を推奨しています。
また、大地震のときは配管が壊れている可能性があるため、故障していないことが確認されるまではトイレの水は流せなくなります。トイレの回数は、男性で1日5回程度、女性で7~8回程度。回数×家族の人数×1週間分の非常用トイレを備えておきましょう。
備蓄とともに、用意しておけば必ず役立ってくれるのが「非常用持ち出し袋」です。
大地震が発生したときは、ほとんどの人が在宅避難することになります。とはいえ、自宅に被害がなくても近隣からのもらい火(延焼)や、マンションの場合は上の階からの水漏れで部屋が使えなくなる事例も、過去の震災で起きています。このように、自宅で被災生活を送れない場合もありますので、避難する準備はしっかりしておきましょう。
事前に「非常用持ち出し袋」を用意しているかどうかで、避難時の初動は確実に変わります。ただでさえ動揺している災害時に、必要なものを一からかき集めるのは危険行為。余裕のあるうちに備えておくことをおすすめします。
岡部先生
非常用持ち出し袋は、玄関など「逃げるときに必ず通る場所」に置いておきましょう。寝るときには、スマホと小型のバッグ(財布などの貴重品を肌身離さず持てる)を枕元に置く習慣を作り、それらを一緒に持って逃げられるとベストです。
非常用持ち出し袋の重さの目安は「女性10キロ/男性12キロ」と言われることもありますが、この重さの荷物を背負って走るのが難しい人もいるでしょう。岡部先生は中身を厳選し、6キロまで軽くしているそうです。
非常用持ち出し袋として使うバッグを選ぶポイントは次の通り。
これらの条件さえ満たしていれば、高価なものを購入する必要はありません。ホームセンターでは、必要なアイテムが一式揃った「緊急持ち出し品セット」も販売されています。
岡部先生が実際に用意している非常用持ち出し袋
非常用持ち出し袋に入れたいアイテムは年齢・性別・持病の有無などによって異なりますが、どの人にも共通するのは「安全を守る」「食べる」「衛生的に過ごす」「快適に眠る」ためのもの。岡部先生は自身が監修を手掛けた防災ハンドブックで、次のようなものを挙げています。
岡部先生
避難所では水や食料が配られるものの、最低限の飲食物は必要です。在宅避難では好きなものを食べて構いませんが、避難所では周囲にも配慮して。ゼリー飲料や棒状のビスケットのような総合栄養食は、匂いがせず食べやすいものがおすすめです。
ここからは行動編。地震が発生したときに取るべき行動について、たっぷりイメージを膨らませておきましょう。
「今、地震が発生したらどうする?」と聞かれたら「まずはテーブル(机)の下に潜る」と答える人は多いのではないでしょうか。しかし、岡部先生は「そうした“安全神話”が本当に正しいのか疑問を持ってほしい」と指摘します。
岡部先生
実際に大地震が来たら、マンションの高層階の場合は家具が部屋中を激しく移動するため、テーブルの下にいるとテーブルごと壁に叩きつけられることも。旧耐震性の木造住宅の場合は、家ごと潰れるリスクがあるので、机の下に潜るよりも、けがを覚悟で外に逃げた方がいい場合もあるでしょう。
では、どうすれば自分の身を守れるのでしょうか? ……答えは、安全な状態の廊下に出ること。廊下は窓ガラスが比較的少なく、いざというときはすぐに玄関から外に逃げられる「安全地帯」のような場所です。下敷きになったり閉じ込められたりする危険も少ないため、這ってでも廊下に出ることが推奨されています。
ただし、廊下を避難場所にするためには、廊下に何も置かないことが大切です。荷物が置いてあったり、固定していない本棚などの家具があると、廊下は危険な場所でしかありません。
また、関東大震災で火災が多く発生したことから「火を使っていたらまずは止めて」という教訓が生まれましたが、今はガスでもIHでも、震度5からの揺れを感知すると自動的に停止することがほとんどです。むしろ、無理に火を止めに行けば、やけどする場合もあり大変危険です。
家族が別々の場所にいるときに地震が発生することもあります。離れていてもお互いの安否を確認できるよう、日頃から安否確認の方法、集合場所などを事前に話し合っておきましょう。
岡部先生
自分や大切な人の身を守るためは、防災を「他人ごと」とせず「自分ごと」と考えること。知識のアップデートを図るとともに、家族会議などを開いていざというときにはどう行動すべきか、話し合っておきましょう。
災害時には、携帯電話の回線がつながりにくくなり、連絡が取れない場合も。そんなときは、「災害用伝言ダイヤル」や「災害用伝言板」を利用できます。
在宅避難中にトイレなどの水を流してしまう人は少なくありません。しかし、外側からはわからなくても、実は配管が壊れている可能性も。その場合は水漏れが起こり、集合住宅なら下の階に大きな迷惑をかけてしまいます。
地震保険に加入していても、保険は第三者の損害にかかっているものではありません。もし水漏れ事故を起こしてしまった場合、階下の方の修繕費は保険から出ないことを覚えておいてください。そのため、地震発生時は配管が壊れていないとわかるまで、絶対に水を流さないようにしましょう。
岡部先生
お風呂の残り湯は「断水したときトイレに使えるからとっておくべき」とよく言われます。ですが、一度入った後の残り湯は雑菌が発生しているため、衛生面でのリスクがあるでしょう。そもそも、トイレの配管が壊れていれば水漏れの原因にもなります。高層マンションでは長周期地震動の揺れでバスタブの水がこぼれ、室内が水浸しになった事例もありますのでご注意ください。
最後に、自宅を離れて避難する必要が出てきたときの行動も押さえておきましょう。
まずは、自治体のホームページや国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」などから防災マップやハザードマップにアクセスすることで、避難所がどこにあるかを知っておきましょう。地震か水害かによって避難所が異なる場合もありますので、「この災害が起きた時はどこに避難すべきか」まで把握しておくのが望ましいです。
また、避難所まではどんなルートを通るのかも事前に必ず確認を。電柱や信号機、倒壊しそうな古い家屋やブロック塀、固定されていない自動販売機など危険な場所がないかチェックしておきましょう。
海岸近辺で強い揺れに襲われたときは、津波がくる危険性が高いため、安全な高台などを目指してできるだけ早く避難します。近くに高台がある場合は、行政の指示にしたがって速やかに避難しましょう。近くに高台がない場合は、頑丈な高層の建物へ。最初の波の後、さらに高い波が来ることもあるため、一度波が引いても元の場所には戻らないでください。
ここまで、3部にわたって岡部先生に監修いただいた、自宅の地震対策のいろは。
まずはこれからやってくる大地震に対して、日ごろからできるだけ多くの〈知識〉を付けておく。その上で、古い常識を疑い、本当に必要な〈備え〉をしておく。そして「もし地震が起きたらどうするか」の〈行動〉をシミュレーションしてみる。
岡部先生
大事なのは、自分や大切な家族の命を守るため、日々の生活の中でちょっとだけでも防災意識を持って生活すること。「今ここで地震がきたらどう身の安全を守るか」を考える習慣がつくと、とっさの地震の時にも命を守る行動ができます。
地震対策は、思い立ったが吉日。みなさんも今日から少しずつ、できることから取り組んでみませんか。
岡部先生
「今日の降水確率は70%」と言われたら、みなさんきっと傘を持って外出しますよね。同様に、今後30年以内に大規模な被害が発生する確率が高いとわかっているなら、地震対策は絶対に必要なはずです。