あなたのコーヒー、もっとおいしくできるかも? コーヒーの研究者・寺内英貴に聞くコーヒーの淹れ方
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三角形の頭に丸く大きな目、鋭く鋭利な鎌を持つカマキリ。子供・大人を問わず昆虫好きにはとりわけ人気で、ペットとして飼いたいという方も多い虫です。
そこで今回は、カマキリの飼い方と飼育にあたっての注意点などを紹介します。年中生きられる昆虫ではないので、できるだけ長生きできるような環境下で飼ってあげましょう。
カマキリは「カマキリ目」に分類される昆虫の総称です。日本全土に広く分布していますが、寒い地域は苦手なため北海道で見かけることは少ないとされています。逆に、熱帯や亜熱帯地域では多く生息しています。日本に生息している小型種のカマキリ・ヒナカマキリは大きくても1.8cm程度ですが、なかには9cm以上になる大型種もいます。
肉食で生きた獲物しか襲わないためエサの調達が難しく、飼育には向かないという意見もありますが、ちょっとした工夫をすれば飼うことは十分可能です。ただし、どんなに長生きしても成虫の状態で越冬はできません。日本で最もメジャーなカマキリ・オオカマキリは遅くとも11月頃までが寿命です。
ちなみに、カマキリという名称の由来は大きく2つあります。一つは、最大の特徴である鎌のような前脚からきている説(鎌切り)。もう一つは、キリギリスにも似ていることから「鎌を持つキリギリス」という説です。
カマキリは昔から人気の高い昆虫です。見た目の格好良さも理由の一つですが、昆虫好きな方はその身体能力の高さにも注目しています。
カマキリがなぜ最強のハンターといわれるのか、意外と知らないカマキリの能力を紹介します。
カマキリは中国拳法のモデル(螳螂拳)になるほど優れた戦闘力を持っていますが、ライオンやトラのように獲物を追いかけ回すような狩りはあまりしません。どちらかといえば、草木に同化して息を潜める待ち伏せ戦法を得意とします。
例外なく肉食であり、生きた獲物にしか興味がありません。ハエや蝶といった小さな虫だけでなく、自分より体の大きな生き物も食します。人間にとっては驚異であるスズメバチも、彼らはハントしてしまいます。トカゲやカエルのほか、小鳥ですら捕食した例も数多く報告されています。
カマキリ最大の特徴は、鎌のように変形した大きな前脚です。内側には細かいトゲが生えており、捉えた獲物を逃しません。普段は折りたたんでいますが、獲物が射程範囲に入ると1/10秒というスピードで捕獲してしまいます。
移動には中脚・後ろ脚を使います。鎌状に変形した前脚に比べると細くて長く、もろいように見えますが、滑りやすいところでもしっかりと張り付ける爪と吸盤が付いています。不安定な草木の上でもしっかりとハントできるのはこのためです。
カマキリは左右に大きく離れた目で獲物を立体視することができます。人間とは違い、背景の明暗にかかわらず動きのある部分だけを捉えられるため、自分はじっとしたままでも獲物との距離を把握可能です。
目の表面がツヤッとしているので、正面から見ると目が合ったような錯覚を覚えますが、実はたくさんの小さな六角形の目を凝らして動くものを見極めています。
狩りにおいて目は非常に大切なので、花粉などで汚れると前足の内側で目を洗うような動作を繰り返すのも特徴です。
カマキリの頭部には耳がないため、長い間「音を察知できない」昆虫だと思われてきましたが、カマキリの耳は後脚の付け根あたりにあります。ものすごく小さな切れ込みがあり、そこで2万ヘルツ超の音を捉えています。
この超聴覚により、天敵であるコウモリが接近してくると、カマキリはすぐに回避行動を取ることができます。
カマキリは世界に約2,000種類も生息するといわれていますが、日本でよく見られる在来種は「オオカマキリ」と「ハラビロカマキリ」という種類です。
大きさを比較すれば一目瞭然で、オオカマキリが名称通り大きく、大きいと体長9cmを超えることもあります。ほかにもいくつか見分け方があります。
■オオカマキリとハラビロカマキリの違い
オオカマキリ | ハラビロカマキリ | |
体長 | 約7~9.5cm | 約4.5~7 cm |
お腹周り | スリム | 横に広い |
鎌の付け根 | 黄色い | 黄色い突起がある |
羽(翅) | 後翅が黒っぽい | 白い紋様がある |
ほかにも見かけるのは次の種類です。
中国や朝鮮半島にも生息します(ただし外来種ではありません)。オオカマキリとよく似ていますが、体長が約6.5~9cmとやや小さいのと、鎌の付け根がオレンジ色を帯びています。また、後翅は全体的に透明です。
2000年代に初めて国内で発見された外来種であり、在来種を追いやる勢いで急速に広がっているといわれています。体長やお腹周りがハラビロカマキリとそっくりですが、胸のあたりには赤黒い模様がある点が違いです。
名前の通り小型のカマキリで、体長は最大でも5~6cm程度。ほかの種類と比べると子供のようにも見えます。体は褐色のものが多く、鎌には目玉のような模様が見られます。
カマキリを飼うならペットショップなどで販売されているものを購入するのが手っ取り早いですが、元気あふれる野生のカマキリを捕まえるという手もあります。
バッタなどがたくさんいそうな草むらに生息しています。緑豊かな郊外に行けば見つかる可能性が上がりますが、近所の草むらなどでも出会えるでしょう。よく目を凝らして探してみてください。
捕獲するために特別な道具はいりません。次のものがあれば十分でしょう。
必須なのは、カマキリを捕まえて自宅まで持ち帰るためのケースくらいです。素手で触りたくない人は軍手をするとよいでしょう。怪我防止にも役立ちます。また、枝など高いところにいる場合もあるので網があると便利です。
首の後ろの胴体に近い部分を持つと鎌で攻撃されることもなく、カマキリを傷つけることもありません。後ろ脚は非常にもろいので触れないようにしましょう。加減を誤ると取れてしまう恐れがあります。また、羽の辺りも傷つけてはいけません。
カマキリを手に入れたら、長く快適に生きられるように環境を整えてあげる必要があります。最低でも次のものを用意しましょう。
一般的な虫かごで問題ありません。あまりに狭いのもかわいそうなので、多少余裕のあるものが理想です。繁殖を考えているなら、なお広めのタイプをおすすめします。
カマキリは脱皮を繰り返して大きくなります。この際、安定した足場がないと脱皮がうまくいかず、最悪の場合命を落とすことになります。したがって、止まり木は必ず用意しましょう。
止まり木は葉っぱ付きの木の枝がおすすめです。枝だけだと霧吹きで水をあげたときに水滴がつきにくいためです。また、幅と長さも重要で、細くて短い枝だとカマキリが安心して止まれません。理想は飼育ケースの天井に届くほどの長さの枝です。
飼育ケース内で枝が倒れないよう、瓶などに入れて固定するとよいでしょう。誤って瓶の中に落ちるとはい上がってこられない恐れもあるので、脱脂綿などでフタをしておきます。
必ずしも必要ではありませんが、できるだけ自然に近づけるという意味ではあったほうが理想です。カマキリを捕まえた場所にあるものを少量持ち帰るとよいでしょう。
エサは生きている昆虫が理想ですが、毎日生き餌を与えるのが難しいという人は、たまに人間の食べ物を与えても構いません。ピンセットなどでつまみ、カマキリの口の辺りで動かすと、生き物と間違えてかぶりついてくれるでしょう。ヨーグルトは水を少量混ぜ、ティッシュや串の先につけるとなめるように食べてくれます。個体によって好き嫌いがあるため、何が好みなのかいろいろと試してみてください。
なお、カマキリは大飯食らいではないので、エサの頻度は1〜2日に1回で十分です。
カマキリは少々空腹でも死にませんが、喉の乾きには弱い昆虫です。飼育ケース内の止まり木に霧吹きをかけたり、水に浸したガーゼを置いたりし、水を切らさないようにしましょう。
カマキリを赤ちゃんから飼ってみたいという人は、産卵させるか、自然にある卵を持ち帰って孵化させる必要があります。
オオカマキリの場合、8月から11月頃にかけて交尾・産卵します。秋の終わり頃、飼育ケース内の止まり木などにフワフワとした塊を見かけたら、それが卵です。
1匹飼いで交尾・産卵できなかった場合は、自然界のものを持ち帰るとよいでしょう。カマキリは木の枝先や家の壁、石などさまざまなところに卵を産み付けますが、採集に適しているのは木の枝です。
卵を傷つけないよう枝ごと持ち帰り、瓶などに立てて縦の状態をキープしてください。採集は冬でも構いませんが、赤ちゃんが生まれる直前、3月の終わり頃がおすすめです。
小さな蜂の巣にも見える、フワフワした泡のような形状をしています。卵全体のことを「卵鞘(らんしょう)」と呼び、卵鞘内には3~5mmほどの卵が100~300個、ぎっしり詰まっています。
卵の見た目はカマキリの種類によって多少違います。たとえばオオカマキリの卵は大きく、薄茶色をしています。ハラビロカマキリの卵には突起のようなものがあり、濃い茶褐色をしているのが特徴です。
孵化にあたって特別なことは必要ありません。卵鞘のフワフワには保湿効果があり、寒い冬や雨風から守ってくれているからです。
順調にいけば4~5月頃に一斉に孵化します。一つの卵鞘から数百匹が誕生するので、飼育ケースは広めのものが理想です。また、フタの締め方が甘いと簡単に脱走し、家の中がカマキリの赤ちゃんだらけになるので注意しましょう。
生まれた赤ちゃんを放置しておくと共食いをする恐れがあるため、数匹ずつ飼いましょう。自然界にあった卵を持ち帰った場合は、飼える匹数以外は採集した場所に戻してあげてください。卵を持ち帰った場所と異なる場所には絶対に戻さないようにしましょう。
牧田さん
卵を持ち帰った場所と異なる場所には絶対に戻さないようにしましょう。
カマキリの幼虫のエサは、成長段階によって異なります。卵から生まれて間もない頃はアブラムシやコバエを食べますが、段々と大きくなるにつれて、バッタやコオロギの幼虫なども食べるようになります。生きた昆虫を用意し続けるのは大変ですが、幼虫の大きさに合わせて、エサの生き物も与えてあげましょう。また、水を切らしてはいけないのは成虫と同じです。
カマキリは成長が早く、脱皮を繰り返してあっという間に大きくなります。孵化してから3か月もすれば立派な成虫になるでしょう。
採集した卵がなぜか孵化しない場合、すでに赤ちゃんが生まれた後の可能性があります。または、何らかの外傷を負ったせいですでに死んでしまっている場合も。さらには、「カマキリカツオブシムシ」という別の昆虫に食べられてしまっていることすらあります。
孵化しない卵を見分けるのは難しいですが、異常に色あせていたり、穴がたくさん空いていたりする場合は採集しないほうが無難です。
昆虫界最強のハンターと呼ばれるカマキリですが、飼育環境が悪ければあっという間に弱ってしまいます。カマキリを飼うにあたっての主な注意点をまとめました。
カマキリは寒さに弱い昆虫なので、室内飼いでは冷房のかけすぎに要注意です。飼育適温は20〜25℃ほどといわれています。
温度とともに湿度にも気を配りましょう。止まり木の葉や敷いている草などが乾燥しないよう、適宜湿らせてあげてください。
狭い飼育ケース内に糞がたまるのは不衛生です。給水用に置いているガーゼなども糞だらけになるので、こまめに清掃することをおすすめします。床材として敷いている草やわらなども、できれば新しいものに交換してあげます。
なお、清掃時にカマキリが飛んでいってしまう恐れがあるので、別に容器を用意し、掃除中はそこで待機させておきましょう。
カマキリは少食な昆虫ですが、エサを与えると狩猟本能を優先させ、際限なく食べてしまうことがあります。エサのやりすぎは体調不良を引き起こす原因になるので、1〜2日に1回、非常に多くても2回で十分です。
ただし、水分補給は大切なので、給水はいつでもできるようにしてあげてください。
2匹を同じケース内で飼うとかなりの確率で共食いします。エサを十分与えていても、動くものを見ると狩りを優先する習性があるため、複数匹飼う場合はその数だけ飼育ケースを用意しましょう。
オスとメスを交尾させる場合のみ、同じケース内に入れますが、交尾後は引き離さないとオスがメスに捕食されてしまうことがあります。
カマキリの飼い方でよくある質問をQ&A形式でまとめました。役立ちそうなものがあればぜひ参考にしてください。
A.すべての個体にいるわけではありませんが、「ハリガネムシ」という細長い虫に寄生されているカマキリは多くいます。ただ、人間に害はないので安心してください。
ハリガネムシはカマキリの体内で成長し、頃合いになると水辺に誘導して入水させて脱出します。カマキリのお尻を水に浸すと(勘違いした)ハリガネムシが出てくるのはこの習性のためです。
ペットとして飼っているカマキリの体内に寄生虫がいるのは我慢ならないかもしれませんが、無理に追い出すとカマキリが弱ってしまうともいわれています。
A.カマキリはカメムシの仲間などと違い、特有の強い臭いがしない昆虫です。糞はたくさんしますが、掃除すれば問題ないため、心配するほどではないでしょう。
A.同じ卵鞘から生まれたカマキリでも、色が違うことはよくあります。たとえばオオカマキリは、緑色と茶褐色が5:5の割合で現れるといわれています。
確かな理由は解明されていませんが、周囲の葉や木の保護色となるうえで、すべてが同じ色だと生存率が下がるためだという説があります。
A.そうとも限りません。交尾後にちゃっかり逃げるオスもたくさんいることがわかっています。反対に、交尾前や交尾中に食べられてしまうオスもいます。通常、メスはオスの頭からかじりつきますが、オスは頭部を失っても交尾の続行が可能です。
ちなみに、運良く(?)逃げおおせたオスカマキリは、別のメスとも交尾する可能性があります。
カマキリを標本にしたいと考えている方もいるかもしれませんが、標本にするのは少し難しいです。死後はすぐ色つやが変わってしまい、生きていた頃の美しさを維持するのが難しいからです。もちろん上手な標本の仕方もありますが、相応の技術が必要になります。
カマキリは太古からほとんど姿が変わらず、まだまだ知られざる秘密が多い昆虫です。前脚の鎌で顔を洗うような仕草や、首を伸ばしてキョロキョロと周囲を見渡す様子に人間臭さを感じるという声もあります。せっかくペットとして迎えるのですから、できるだけ長生きできるようにお世話してあげてください。
牧田さん
ちなみに、日本で一番大きいのはオオカマキリではなく、沖縄に生息しているマエモンカマキリです。マエモンカマキリはオオカマキリの亜種といわれており、最大で10cm以上の個体もいます。