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ナナフシは枝や葉に擬態しているユニークな昆虫です。世界には2,500種類以上のナナフシが確認されており、日本にも30種ほどが生息しています。今回紹介するトゲナナフシはその一種で、その名の通り体にトゲのような突起が見られるのが特徴です。
一部地域ではトゲナナフシを絶滅危惧種にも指定されているくらい、身近では見かける機会が減りつつある昆虫です。飼育するのであれば、元気に長生きできるように飼ってあげましょう。この記事では、トゲナナフシの上手な飼い方を紹介します。
ナナフシはナナフシ目に分類される昆虫の総称で、トゲナナフシはその一種です。学名は「Neohirasea japonica」といいます。
成虫の体長は5.5~7.5cmほど、ナナフシの仲間としては太めの体型をしていますが、最大の特徴は背面にあるトゲ状の突起物です。このような突起を持つナナフシは国内では珍しく、ほかの種との区別はしやすいでしょう。
体色は緑色と茶色の2種類が確認されていますが、圧倒的多数はなのは茶色タイプです。
平地の森林に幅広く生息していますが、国内では北海道を除く本州、四国、九州、沖縄で確認されています。しかし、一部地域では絶滅危惧Ⅱ類や一般保護生物に指定されています。なお、台湾、中国の広東省、江西省など海外でも確認されています。
一般的にナナフシはさまざまな種類の葉を食べる種類が多いです。特に翅を持たないナナフシは移動できる距離が限られているため、選り好みすることが少ないといわれています。
トゲナナフシはバラ・イチゴ・ノイバラ・アザミなどトゲのある植物の葉を好むようですが、ほかにもさまざまな種類の葉を食べます。夜行性のため、夜に見ると活発に動き回って食事をするトゲナナフシを観察できるでしょう。
トゲナナフシの活動時期は6月~12月で、成虫になってからの寿命は数か月です。
トゲナナフシのほとんどがメスであり、繁殖はメス単体でも行える「単為生殖」が可能な生き物です。したがって、適切な飼い方をしていれば繁殖は可能でしょう。なお執筆時現在、オスは国内で数例しか確認されていないほどレアな存在です。
産卵数は一度に数十~100個ほどで、植物の種子そっくりの卵を産卵します。卵の時点でほぼ完璧に擬態していることから、野外でトゲナナフシの卵を見つけるのは相当難しいでしょう。
幼虫は気温が暖かくなると孵化し、柔らかい新芽を食べて成長します。脱皮を繰り返し、5齢幼虫ともなると立派なトゲを確認することができます。
トゲナナフシが活発になる夜間に、餌となるバラ・イチゴ・ノイバラ・アザミなどの植物がある周辺を探してみるとよいでしょう。森ではナナフシの代表種ともいえるナナフシモドキ(ナナフシ)が見つかることも多いですが、トゲナナフシは見た目が特徴的なため間違うことなく捕まえられます。
木の幹や葉を揺すると落ちてくることが多く、虫取り網を広げておくとうまくキャッチできることがあります。網から出す際はトゲナナフシを驚かすことなく、優しくそっとつかんでください。不必要な刺激を与えると、自分の脚を切り離してでも逃げようとする「自切」を行うかもしれません。
念のためトゲナナフシを見つけた場所の木の枝や葉を持ち帰ってもよいですが、持ち出しを禁止している場所もあります。事前に調べ、ルールに則って行動しましょう。
また、昆虫専門のショップやインターネット上のオークション経由で入手することも可能です。数百円~1,000円ほどで取り扱われていることがほとんどでしょう。
ナナフシを飼うために必要なものは基本的に共通しています。トゲナナフシだからといって、特別なものは必要ありません。必要なもの、あったほうがよいものは次の通りです。
飼育ケースの素材は虫かご(プラケース)や水槽で問題ありませんが、高さのあるものを選びましょう。ナナフシは天井にぶら下がりながら脱皮するため、高さがないと脱皮に失敗する恐れがあります。ただし、初齢幼虫であれば高さが低い容器でも構いません。
トゲナナフシがストレスなく動き回れるよう、広さも確保してあげたほうが無難です。上記のようにやや大きめの容器を用意してあげるとよいでしょう。
床材はなくても問題ありませんが、掃除の手間を考えると敷いておくほうが便利です。フンや卵も確認しやすくなります。新聞紙やキッチンペーパーなどでよいでしょう。
餌はバラ・イチゴ・ノイバラ・アザミの葉などを与えますが、何でもよく食べるため、いろいろな植物の葉を与えてみるとよいでしょう。個体によって好みが分かれることもあります。
自然採集するのが難しい場合は、コマツナなどの葉物野菜を与えるのがおすすめです。特に、硬い葉を食べられない幼虫には適した餌です。ただし農薬入りの野菜ではトゲナナフシが死んでしまうかもしれないため、商品選びには注意しましょう。
植物の枝を挿すための容器があると便利です。空き瓶でも花瓶でも構いませんが、園芸用の吸水スポンジなら好きな角度や状態に調整しやすいです。
ナナフシは適度に湿った環境を好むため、霧吹きは必須アイテムです。水分補給も兼ねて飼育容器内を濡らしておきましょう。湿らせたティッシュやガーゼを入れておくのも良い手です。
トゲナナフシの飼い方で特に意識したい点を解説します。基本的にはほかのナナフシと同じであり、特別な難しさはありません。ただ、抵抗力が強い昆虫とはいえないため油断は禁物です。
ナナフシは横方向よりも縦方向の動きをよくする昆虫なので、高さのない飼育容器しかない場合は縦置きにしてみましょう。こうすることで、トゲナナフシが木の枝に登ったり、天井にぶら下がったりしやすくなります。
トゲナナフシは風通しの良い木陰などを好みます。屋外で飼う場合、飼育容器は直射日光を避けて置いてください。室内飼いでも、直射日光が長く当たる窓際などは避けたほうが無難です。
トゲナナフシは何でもよく食べますが、餌の鮮度が落ちていると口にしないことがあります。できれば3〜4日ごとに新しいものに交換してあげましょう。なお、スーパーや青果店の野菜は餌の自然採集が難しい冬に重宝しますが、農薬には注意してください。
ナナフシは日没後に活発になります。飼い主さんがお休みのときに餌を食べるため、夜間に強い灯りを照らしたり、飼育容器の中を覗かないようにしましょう。不穏な空気を感じると食事を止め、枝に擬態して動かなくなります。
トゲナナフシはよく水を飲むため、1〜2日に1回は飼育容器内の壁面に霧吹きをかけてあげましょう。濡らしたティッシュやガーゼを置いておくのも良い方法です。
トゲナナフシは単為生殖が可能なため、飼育環境が適切であれば産卵してくれるでしょう。少し注意したいのはそこからです。トゲナナフシの卵を孵化させ、幼虫から成虫にまで育てあげるのには、ちょっとした配慮が必要です。
トゲナナフシが卵を産んだら、卵を保管・管理する用のケースを用意しましょう。小さなプラケースやプリンカップなどで構いません。底には園芸などに使われる軽石を敷きます。ほかの砂土でも問題ありませんが、通気性・保湿性を求めるならハイドロカルチャーがおすすめ。高温で焼成してあるため、衛生面でも安心です。孵化したときの足場として、軽石の上にキッチンペーパーやレンジフードフィルターを置くのもよいでしょう。
卵は隣接させず、ある程度の距離を保って配置するのがポイントです。こうすることで、万が一カビが生えてしまったときに全滅するのを防げます。
湿度の加減は経験がいりますが、霧吹きや水苔などを使って自然下の環境に近づけることが大切です。乾燥はもちろん、湿潤しすぎてもよくありません。急激な湿度変化も避けたいため、飼育容器のふたにキッチンペーパーを挟むなどして工夫しましょう。
孵化に成功したら今度は餌やりです。幼虫はまだ硬い葉を食べられないため、柔らかい新芽を与えましょう。コマツナやレモンリーフ(ツツジ科)もよく食べます。
水分補給は、水苔や濡らしたティッシュを配置しておくのがおすすめ。茎つきの植物を挿しておけば餌も長持ちします。飲み水をそのまま入れると幼虫が溺れる恐れがあるため避けたほうが無難です。
幼虫であればプリンカップほどの容器で飼育できますが、脱皮を繰り返し、背中のトゲが目立ってきたら成虫用の飼育容器に引っ越しさせてください。あまりに狭いと脱皮がうまくいかず、最悪の場合死んでしまいます。5齢幼虫にもなれば、トゲナナフシらしい立派なトゲトゲが出てくるでしょう。
トゲナナフシを飼うのに必要なものは、一般的なナナフシと変わりません。強いていうなら餌選びに違いがありますが、いろいろな種類の葉を食べてくれることが多いです。ただし、野菜や園芸用の植物の葉を与える場合は農薬の有無に注意しましょう
乾燥には気をつけ、飼育容器の置き場所や適度な霧吹きを心がければ、自然と産卵してくれるでしょう。
牧田さん
卵から育てるのもトゲナナフシを飼う楽しみの一つなので、ぜひ繁殖にもチャレンジしてみてください。その際も湿度管理と鮮度の良い餌選びはお忘れなく。うまくいけば、かわいい赤ちゃんがたくさん育ってくれますよ。