泥汚れで悲惨な玄関タイルを神アイテムでピカピカにお掃除してみた
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目次/ INDEX
秋の訪れとともに、金木犀が香る季節がめぐってきました。風に乗ってふわりと届くその優しい香りを、心待ちにしていた人も少なくないのではないでしょうか。最近では、金木犀の香りを使ったフレグランスやボディケアアイテムも登場しており、身にまとう香りとしても高い人気を集めています。
「三大香木」のひとつにも数えられる金木犀の香りは、人をどこか懐かしく切ない気持ちにさせる独特な力を持っています。不思議なことに、このような感覚は多くの日本人に共通しているようなのです。
その謎を明らかにするため、人間の嗅覚と記憶の関係を研究している政岡ゆり先生にお話を伺いました。金木犀の香りから感じるノスタルジックな感覚の正体を、科学的に解き明かします。
政岡ゆり先生(オンラインで取材しました)
──今年も金木犀の良い香りが漂う季節になりました。そもそも人は、「良いにおい」と「嫌なにおい」をどのように嗅ぎ分けているのでしょうか?
「嫌なにおいというのは、わりと万人に共通なんですよね。ガスのにおい、腐敗したにおいなど、身の危険を感じるようなにおいを人は『不快なにおい』として認識します」
──自分の身を守るために本能的に避ける、ということでしょうか?
「そういう傾向が見られますね。一方、良いと感じるにおいは人それぞれで、かなり多様性があります。その理由は、良いにおいというのが、人の『記憶』と深く結びついているからなんです」
──においと記憶……?
「例えば、花のにおいをほとんどの人が良い香りだと感じるのは、花に対して多くの人が、美しかったり幸せだったりする『良い記憶』を持っているからです」
──たしかに、花に嫌な思い入れがある人は少ないかもしれません。
「でも、花に『嫌な記憶』があると、多くの人は良いにおいと感じる香りであっても、その人にとっては不快に感じられるということも起こるんです。別れた恋人が持ってきた薔薇の香りとかね(笑)」
──なるほど(笑)。どうして香りは記憶と深く関係しているのでしょうか?
「それは、嗅覚と脳の仕組みから説明できます。鼻から吸い込んだにおいの分子は、嗅神経から脳の深部にある『扁桃体』と『海馬』という部位に直接入っていきます。扁桃体は『感情』に、海馬は『記憶』に関連した部位なんです」
──嗅覚は、感情や記憶に直結しているということですか?
「はい。視覚・聴覚・触覚・味覚といった嗅覚以外の感覚は、『視床』という中継地点を通って脳の各部位へと伝達されます。これに対し、嗅覚だけは唯一、この中継地点を通らずにダイレクトに感情中枢・記憶中枢へと到達します」
──五感の中で嗅覚だけなんですね。
「そうです。なので、あるにおいを嗅ぐと、過去の記憶やそれにまつわる感情がぱっとよみがえるということが起こりやすいんです」
──香りが記憶を呼び起こすのには、ちゃんと理由があったのですね。
「こうした現象は、マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』の中で、マドレーヌの香りから過去の記憶がよみがえるエピソードが描かれていることから、『プルースト現象』とも呼ばれています」
──名前までついている現象だとは知りませんでした。
「それからもうひとつ、記憶のほかにも嗅覚と密接に関わっているのが『呼吸』です」
──呼吸、ですか。
「例えば、金木犀やラベンダーなどの心地良い香りを嗅ぐと、呼吸は無意識のうちに深くゆっくりと行われます。逆に、嫌な記憶に結びつくにおいとか、身の危険を感じるような不快なにおいを嗅ぐと、呼吸は浅く、速くなるんです」
──たしかに、言われてみるとそうかもしれません。
「良い記憶と結びついた香りを嗅ぐと、自然と呼吸が深くなって気持ちが落ち着き、『ああ、良い香りだな』と感じるんですね」
──金木犀のあの特徴的な香りには、どのような成分が含まれているのでしょうか?
「金木犀には白・薄黄色・橙黄色(だいだい色)の3種類がありますが、日本で多く見られるのは橙黄色ですね。橙黄色の金木犀だと『リナロール』という成分がメインで、これはラベンダーに多く含まれる香りです。ほかには、ハーバル系の『トランスβ-オシメン』、フローラル系の『トランスリナロールオキシド』や、グリーン系でフレッシュな成分の『シス-リナロールオキシド』、すみれに含まれていてフルーティな香りが特徴の『イオノン』があります」
──どれも花や果実の甘い香りを連想させる成分ですね。金木犀は遠く離れたところからも香ってくることがありますが、においの強さにはどの成分が関係していますか?
「『リナロール』『トランスリナロールオキシド』『シス-リナロールオキシド』は香気寄与成分で揮発性が強く、空気中に香りがぱっと広がる理由のひとつはこれかもしれません」