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夏の暑さ対策に「打ち水」が効果的な理由。涼しくなる原理と効果的にまくためのポイント

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佐藤俊和

佐藤俊和

大学の後期博士課程を修了後、電機メーカーに就職。半導体エンジニアとして仕事に従事する傍ら、たまたま書店で見つけた気象の本に興味を持ち、趣味で気象の勉強を開始。メーカー在籍中の2013年に気象予報士の資格を取得。2017年4月からウェザーマップに所属し、気象を趣味から仕事に変えて活動中。

夏の暑さ対策に「打ち水」を取り入れよう!

日本では、古くから夏の暑さ対策として「打ち水」が行われてきました。現代でも、庭や軒先、ベランダ、コンクリートなどに水をかけることで、簡単に涼を得ることができます。

見ているだけでも涼しくなりそうな打ち水ですが、涼しくなる原理がわかると、より効果的に水をまくことができるはずです。

この記事では、打ち水の原理や、より清涼感を得るためのポイントをご紹介します。節電やエコにもつながるので、ぜひ参考にしてみてください。

打ち水の目的

打ち水用のバケツとひしゃく

打ち水には、「土ぼこりが舞い上がるのを防ぐため」「来客に対して場を清めるため」など、さまざまな目的がありますが、なにより「涼を得るため」に行われてきました。

近年は、気候変動やヒートアイランド現象の対策として、行政や自治体が積極的に打ち水を推進しています。そのため、家庭用の二次用水や下水再生水などを有効活用した取り組みが、各地で盛んに行われています。

打ち水で涼しくなる原理

東京駅 丸の内駅前広場の「打ち水システム」

「気化熱」が地面から熱を奪う

打ち水で涼しくなる理由には、「気化熱」が関係しています。液体の物質が気体になるときには、周囲から熱を吸収する必要があり、その際にやりとりされる熱のことを気化熱と呼びます。打ち水をすると、水が蒸発するときに、接している地面から気化熱を奪います。そのことで地面の温度が下がり、涼しく感じるのです。

また、気化熱は液体が接している場所で絶えず発生します。熱が蓄えられやすいコンクリートやアスファルトに比べ、保水性の高い土や濡れた芝生などが涼しく感じるのは、このためです。

打ち水によってそよ風が発生する

打ち水を行った場所は、水蒸気によって一時的に気圧が上昇します。一方で、打ち水をしていない場所は変わりません。空気は気圧の高いほうから低いほうに向かって流れていく性質があるため、この差によって自然なそよ風が発生するのです。また、打ち水を行った場所は周囲より気温が下がるため、この気温差によっても空気の流れが生じます。濡れた地面を通る風が爽やかに感じるのは、このような理由からです。

五感を刺激し、清涼感を生む

打ち水には、五感を刺激し、体感的な涼しさを引き起こす効果もあるといわれています。また、水をまくときに、浴衣を着たり、風鈴の音を聞いたりすることで、さらに涼しく感じられます。打ち水を行いながら日本に根付く伝統文化を楽しむことで、爽快な夏を過ごせるでしょう。

打ち水で得られるさまざまな効果

打ち水をすると、涼しくなるだけでなくエアコンの使用時間が短くなる、ヒートアイランド現象の対策になるなど、さまざまな効果が期待できます。ここからは、打ち水の効果について詳しく見ていきましょう。

ベランダの室外機

ベランダへの打ち水で室内の温度を下げる

ベランダの多くは表面がコンクリートでできているため、どうしても熱がたまりやすくなってしまいます。また、マンションやアパートなどの集合住宅では、ベランダの熱気が室内に入る空気の温度を上げてしまいます。打ち水をすると、コンクリートの熱を奪い、室内の気温を下げることが可能です。

エアコンの使用時間が短くなる

打ち水を行うことで、建物の周囲の温度上昇がある程度抑えられます。すると室内に入る空気の温度が上がりにくくなることから、エアコンを使用する時間も自ずと短くなるでしょう。節電や、CO2排出量の減少につながるのもポイントです。

ヒートアイランド現象の対策になる

「ヒートアイランド現象」は、都市部の気温が郊外などの周囲の気温よりも高くなる現象です。近年は熱中症による健康被害や生態系への影響などが懸念され、ヒートアイランド現象への一刻も早い対策が叫ばれています。都市部に多いアスファルトやコンクリートに熱が溜まるのも、ヒートアイランド現象を引き起こす原因の一つ。これらの対策としても、打ち水は効果的です。

打ち水を効果的にするためのポイント

打ち水をする

朝・夕方にまく

まいた水がすぐに蒸発しないよう、気温が低い時間帯に打ち水をしましょう。また、暑くなる前に水をまくことで気温の上昇を抑えられます。暑さがピークを迎える昼の時間帯はまいた水がすぐに蒸発してなくなってしまいますし、効果を得ようと大量の水をまくと湿度が高くなって、かえって不快な体感になってしまう可能性もあります。

日陰にまく

日向に水をまくとすぐに水が蒸発してしまうため、注意が必要です。高い効果を得るには、できるだけ日が当たりにくい場所に打ち水をするのがおすすめ。日陰がないベランダでは、すのこやグリーンカーテンを利用して、意図的に日陰を作ってから打ち水を行いましょう。

エアコンの室外機にまく

室外機の熱交換器に水をかけて冷やすことで、冷房の運転効率が上がります。運転効率の向上により消費電力が少なくなると、節電効果に期待が持てます。

二次用水を利用する

打ち水では、二次用水の利用が推奨されています。お風呂の残り湯や雨水、エアコンの室外機から出る水、子ども用プールの残り水など、家庭の二次用水を積極的に使うことは節水につながります。また、二次用水の活用は、家庭の水利用のあり方を見直すきっかけとして、近年注目されています。

国土交通省は、お風呂の残り湯や下水再生水など、水の二次利用を原則とした『打ち水大作戦』を開催。過去のイベントでは、路面温度が約6℃も下がったという結果が出ています。また、水道局は、打ち水用に下水再生水の無償提供を行い、無理のない節水を推奨しています。

打ち水で夏を乗り切ろう!

打ち水は、ベランダでも簡単にでき、節電にもつながるので、夏の暑さ対策に有効です。また、「朝・夕」や「日陰」にまくというポイントをおさえると、より高い効果が期待できるでしょう。

特に都心では、気候変動やヒートアイランド現象の対策にもなるので、ぜひ暮らしのなかに取り入れてみてください。

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