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イグアナと猫と暮らす作家・吉川ばんびに聞くリアルなペット事情

クリエイター

吉川ばんび

吉川ばんび

1991年生まれ。「文春オンライン」「東洋経済オンライン」「日刊SPA!」「週刊女性PRIME」などでコラム、エッセイを執筆。とくに関心のある分野は貧困や機能不全家族、ブラック企業、社会問題など。著書『年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声』発売中。

おうち時間で急増したペット需要

コロナ禍の影響でおうち時間が増えている昨今。愛くるしいペットという存在に癒やされたり、おうちでペットと一緒に素敵な時間を過ごしたいと思い、飼うことを決意した人は少なくないのではないでしょうか。

しかし、「思ったより大変」と飼育放棄してしまう人がいる、なんてニュースも度々目にするようになりました。人間がただ癒やされたいという理由だけでペットを飼い始めるのはリスクが大きいように感じます。

だからこそ良いことも悪いことも含めて「ペットと暮らす生活の実情を少しでも多くの人に知ってもらいたい!」と思い、実際に生き物と暮らしている人へインタビューを実施。

今回は、5歳のイグアナと2歳の猫、種族の違うペットと生活を共にする作家・吉川ばんびさんに話を聞きます。

イグアナと猫。ただでさえペットを飼うということは簡単なことではないのですが、種族の異なるペットとの生活は一体どういうものなのか。全貌を語り尽くしていただきました。

作家・吉川ばんびさんの愛イグアナ、愛猫を紹介してもらう

──まずは吉川さんが一緒に暮らしているイグアナと猫の紹介からお願いします!

吉川 では最初に飼い始めたイグアナちゃんから紹介しますね。我が家のイグアナは「バブルス」という名前で「バブちゃん」と呼んでいます。ペットショップで出会って、4年半前に我が家へきました。

最初に飼い始めたイグアナ

▲イグアナの「バブルス」(通称「バブちゃん」)。女の子

──最初にペットを飼うとなると犬や猫などが思い浮かびますが、なぜ爬虫類だったのでしょうか?

吉川 もともと爬虫類が好きで、いつか飼いたいという思いがあったんですよね。それで会社員をしていたとき、バブちゃんをペットとして迎えました。ペットとしてメジャーな犬や猫は飼い主がいないと寂しがるじゃないですか。仕事で家を空けたときに寂しがらせることが耐えられなくて……。それに比べて爬虫類は個体差はあれど、犬・猫と違い人に構われるとストレスになる生き物だったのが飼った理由としては大きいです。しっかり生活環境を整えてあげること、家にいるときは徹底的にお世話してあげることを意識すれば、自分が仕事で家を空けても快適に過ごしてくれるのではないかと思いイグアナにしました。

──爬虫類の中でも特にイグアナを選んだのにはどんな理由があったのでしょうか?

吉川 イグアナ自体かわいくて好きだったのと「大型トカゲ唯一の草食動物」であるのが理由ですね。

──イグアナって草食なんですね!  虫とかを食べる印象がありました。

吉川 ですよね。私の倫理観的に、人間がペットとして飼育している生き物のためにエサとしてほかの生き物を犠牲にすることがすごく嫌だったんですよ。自然界の弱肉強食の構造自体は問題ないけど、そこに人の手が介在するのは嫌で。肉食動物を飼う選択肢は最初から除外していました。

──なるほど。ちなみに「バブルス」という名前の由来は?

吉川 バブちゃんは友だちと決めました。最初は身体が緑だったから「ヨモギ」が良いなと思っていたんです。

幼少期は身体が緑だった

▲幼少期のバブルスちゃん

──子どもの頃はかなり緑なんですね。

吉川 そうなんです! ただバブちゃんはエルサルバドル(※)出身だったので、友だちから「和名は合わないんじゃない?」と言われ、私もたしかにな……と。そこで友だちから提案されたのが「バブルス」でした。ディズニーの「ラプンツェル」に登場するカメレオン分かりますか?

※エルサルバドル 中央アメリカに位置する自然豊かな国

──分かります!  でもあのキャラクターの名前は「パスカル」だったような……?

吉川 そうなんです。友だちが「パスカル」を「バブルス」と間違えて覚えていて、「バブルス」を推されたという(笑)。それで私のほうで「バブルス」の名前をネットで調べてみたら、確認できる限りでイグアナにその名前を付けている人がいなかったのと、マイケル・ジャクソンが飼っていた猿の名前が「バブルス」で。イケてるじゃん! と思って、バブルスにしました。

──イケてますね!  続いて、猫の名前の由来は何でしょう?

吉川 猫ちゃんの名前は「さくら」で、「さくちゃん」と呼んでいます。うちに来てから5月で2年になります。

猫の「さくら」

▲猫の「さくら」(通称「さくちゃん」)。女の子

──さくらちゃんとはどのような出会いだったんですか?

吉川 家にいたら「にゃーにゃー」と子猫の声が聴こえてきて。最初は近くに母猫がいるだろうと思って気にしていなかったのですが、徐々に切羽詰まった鳴き声になってきたから見に行ってみると一人ぼっちの子猫がいて。目ヤニで目が開かないような状態だったので保護したんです。それで、いたのがちょうど家の前の桜の木の下だったので「さくら」と名づけました。

幼少期のさくらちゃん

▲幼少期のさくらちゃん

飼育放棄第1位? イグアナの飼育に必要なアイテムと心構え

──個体差はあると思うのですが、イグアナ・猫を飼う上で吉川さんが最初に揃えたアイテムをそれぞれ教えてください。

吉川 ではまずバブちゃんを飼うときに揃えたアイテムから。

  • ケージ
  • ハ虫類マット(ケージの下に敷く木のクッション材)
  • トイレ用の水容器
  • 爬虫類餌皿
  • エサ(爬虫類用ペレット、チンゲン菜・小松菜などの野菜)
  • カルシウムパウダー
  • 霧吹き(ペレットをふやかす用)
  • 保温球
  • バスキングライト
  • 紫外線ライト
  • ライト用のカバー
  • 湿度計
  • 流木(イグアナが登る用の木)

──カルシウムパウダーって何ですか?

吉川 イグアナは血中のカルシウム濃度が低くなっていたり、カルシウムとリンの比率が逆転してしまうとMBD(代謝性骨疾患)という骨がもろくなる病気を引き起こしやすくなります。本来、野生のイグアナは日光浴によりビタミンDを活性化したりすることでカルシウム不足を免れるのですが、エルサルバドルに比べて日本は日光が足りないので、日本の飼育下のイグアナちゃんの約8割がMBDに罹っているそう……。そこで、ペレットや野菜の上にカルシウムパウダーをかけて与えるんです。

野菜などの上にカルシウムパウダーをかけて与える

▲野菜のほかに、イチゴ・ミカン・ブドウなどのフルーツも食す

──そんな事情があるとは知りませんでした。ライトも3種類必要とのこと。これも温暖地生まれならではですよね。

吉川 やはり野生のイグアナが生活している環境に比べると、飼育下では紫外線量も温度も低いのでライトを使って環境を整えることはとても大切ですね。「保温球」でケージ全体を暖かくし、「バスキングライト」でイグアナちゃんの身体を集中的に温めて、「紫外線ライト」で日光浴で接種できない分の紫外線を摂取しています。夜は気温が下がってケージ内がキンキンに冷えることもあり、保温球は絶対に必要なライトなんです。

※バスキングライト 赤外線を含む光を照射する爬虫類用のライト

──とにかく冷やさないようにしなければいけないんですね……。イグアナは湿度にも気を付ける印象があります。

吉川 湿度は高めが基本ですね。イグアナはケージの中で過ごす子と、部屋の中に放し飼いで過ごす子とで分かれます。バブちゃんはケージの中だとストレスを感じてしまう性格なので、日中は加湿器をつけた部屋を徘徊しつつ日光浴をしています。夜寝るときだけケージに入れていて、体温の温度管理をしている感じです。だいたい28~32℃の場所にいないと体調が悪くなったり、最悪亡くなってしまったりするので。

日光浴中のバブルスちゃん

▲日光浴中のバブルスちゃん

吉川 あとうちのバブちゃんに限った話かもしれませんが、とにかくフカフカしたものが好きです。
毛布やタオル、抱き枕などにしがみついているので、これも必需品ですね。

フカフカしたものを好む

▲ふかふかの毛布に包まりながら枕に顎を乗せてご満悦

──めちゃめちゃかわいい……!  どんな生き物も飼育するのは大変ですが、イグアナは食べ物や温度・湿度管理など思っている以上に気を使うことが多いですよね。

吉川 ワンちゃん猫ちゃんと比べると、イグアナを飼うのは難しいかもしれません。私自身、バブちゃんをお迎えするまでに3ヵ月くらい迷いましたし……。日本で一番飼育放棄が多い動物はイグアナと言っている獣医さんもいるみたいなので。

──えぇ!  知らなかった……。

吉川 イグアナは子どもの頃はとにかく小さくて色も綺麗でかわいくて、しかも6,000円くらいで手に入るので、みんな欲しがるんです。ただ、飼育環境を整えるのにまず費用がかかります。初期費用だけで10万円ほどかかりましたね。

──ライトなど揃えるものが多い分、それくらいはかかってしまうんですね。

吉川 さらに、イグアナが病気を患ったときに見てくれる病院が少なく、見つかってもペット保険が利かないから医療費が高い。幸いにもバブちゃんはお世話になっている病院がありますけど、やっぱり医療費はかなりの額で、1回10万円くらいかかります。

──そんなに!?

吉川 バブちゃんは子どものときに自分で尻尾を切ってしまって、それ以来、再生した尻尾が壊死してしまうことが何度かあり、その場合は壊死した箇所を切断しないといけないんです。そのたびに10万円とかかかりますね。そういうイグアナ自体の病気のリスクだけでなく、イグアナに噛まれたときなど飼い主側もリスクもあります。

──噛まれるとどうなってしまうのでしょう?

吉川 イグアナは歯が強いので、皮膚が千切れてしまったり、下手をすると神経を損傷し、指が動かなくなったりします。尻尾も太くて丈夫で、尻尾の攻撃はガラスが割れるくらいの威力があります。それを鞭にして攻撃してくる子も。仲良くなれないと危険を伴うこともあることは事実です。

──飼い主の手腕が問われるわけですね……。

吉川 私も先日、足の甲を噛まれて足の親指がうまく動かなくなりました。神経ではないのですがおそらく、筋か腱がやられてしまったようで動かず。そういうリスクも事前に知っておくために、飼う前にイグアナを飼っている人のブログを片っ端から読んでいたので、想定内の事態ですけど。

──最初の敷居が低いからこそ、飼った後の大変さにギャップを感じて放棄してしまう方も多いんですね。だから最初のリサーチがとても重要になってくると。

吉川 そうですね。私は自分の家に迎え入れる以上、「ペット」ではなく「家族」だと思っているんですよ。自分で選んで家にお迎えした家族に手の神経を切られたとしても、ペットがやったことはすべて自分の責任だと私は考えています。逆にその覚悟がなければペットを飼わないほうがいいのかもしれません。

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