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31年間、息の合わない双子が、激安で自分を磨ける「美容家電」を使った結果

クリエイター

奈津子・大木亜希子

奈津子・大木亜希子

【右:奈津子】双子の姉。ドラマ『野ブタ。をプロデュース』で女優デビュー以降、様々な作品に出演。のちに、妹の亜希子とともにSDN48に在籍し歌手活動も開始。在籍中、劇場が秋葉原の電気街に近かったことから家電の魅力にハマる。グループ卒業後は「家電製品アドバイザー」の資格を取得し、“家電女優”と称して様々なメディアで活躍中。Twitter:@natsuko_twins 【左:大木亜希子】双子の妹。姉とともに女優・アイドルとして活動したのち、現在は作家・ライターとして様々なメディアに寄稿。自著に『アイドル、やめました。 AKB48のセカンドキャリア』(宝島社)や『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(祥伝社)など。Twitter:@akiko_twins

ビジネス双子になりかけた時代

かつて、『クイズ! ヘキサゴンⅡ』という番組があった。CX系の人気クイズ番組で、毎週のように高視聴率を叩き出す、いわばモンスター番組だった。

2007年の年明け、私・大木亜希子と、私の双子の姉・奈津子は、その番組にゲストとして呼んでもらえることになった。そうは言っても、自分の実力ではない。所属していた芸能事務所が獲得してきてくれたチャンスであることは明白で、「ここで結果を出さなければ後がない」というほど背水の陣であった。

10年ほど前、SDN48に所属していた頃の、楽屋での双子ツーショット

10年ほど前、SDN48に所属していた頃の、楽屋での双子ツーショット

たしか、「双子芸能人スペシャル」というような回だったと思う。当日の共演者は、斉藤祥太・慶太さん。そして、お笑い芸人のザ・たっちさんといった、双子業界のレジェンドの皆様だった。

私は、収録数日前から緊張により心因性の腹痛が頻発していた。「お願いですから、誰か緊張しない方法を今すぐ教えてください」──日々切実にそう願うほど、私は大きなプレッシャーを感じていた。

そして、迎えた収録当日。

緊張のあまり記憶が途切れ途切れだが、ひとつだけ冷静に事実を言うとするならば、「結果は散々だった」ということである。我々は、「奈津子です。亜希子です。よろしくお願いします!」という決め台詞ひとつさえ息が合わず、スタッフを困惑させた。家で何度も練習してきたにも関わらず、コンマ5秒の言葉のハモリがズレてしまうのである。

ザ・たっちさんは、本番中も軽快かつチャーミングに「幽体離脱」をされて現場を魅了した。斉藤祥太・慶太さんも生粋の魅力的な眼差しで連携プレーを披露し、大いに空間を盛り上げた。“プロの双子”として魅せる2組の先輩を前に、我々双子だけは武器がなく、心中大嵐である。

やり場のない怒りから、私たちはお互いの足をこっそりと踏んづけたり、互いの失敗を大きく罵り合ったりした。あの頃は、どのようにして「双子のキャッチーさ」を世に発信していけばよいのか分からず、各々のアイデンティティも曖昧だった。

“プロの双子”として、我々は大成できなかった──。

10年経って、双子の呪縛から解放

しかし、である。

そこから10年以上の歳月が経ち、私と、姉の奈津子は別々の仕事に就くようになった。

現在の奈津子と亜希子

私はタレントからライターが本職になった。現在は自著の執筆やWebメディアへの寄稿を生業としており、おかげさまで仕事は順調だ。

姉の奈津子は「家電製品アドバイザー」という難関の資格を取得し、“家電女優”として唯一無二のフィールドで活動を続けている。姉の自宅には総勢130種類の家電が完備され、常に最新アイテムを使いこなしているほどだ。彼女にしかできない仕事で自己表現をしている姿は、妹の私から見ても非常にパワフルで誇らしい。

「息の合わない双子」という苦しみから抜け出し、互いに無理せず自分のフィールドで仕事ができている環境は、控えめに言っても天国である。『ヘキサゴン』の収録で落ち込んでいた自分たちにも、未来を教えてあげたいくらいだ。

だが、事態は簡単に終わらなかった。大人になってからも問題は勃発する。

それは、私が一方的に「姉の人生のステータス」に嫉妬してしまうということである。

姉は2年ほど前、1つ年上のエンジニアの彼と結婚をした。姉の夫は優しくて穏やかな人柄である。そして、きちんと経済力がある。姉夫婦が私の目の前で仲睦まじい姿を見せてくると、正直

「ハンッ! イチャイチャしちゃって」

と、鼻息が荒くなってしまうのだ。

「煩悩の塊のような女だな」と思ってもらっても構わない。まさに煩悩の塊なのだから。これまで、どれだけ「私には私の運命の人が現れる」と思ってみても無駄だった。

姉が持っていて、今の私が持っていないものが羨ましい。喉から手が出るほど欲しい。むろん姉は姉で人生の苦労があるのだろうが、それを差し引いても羨ましい。直視できない。

これは、双子が歩む宿命なのかもしれない。

互いの人生へのマウンティング

もはや、この気持ちを伝えてしまいたい。そう思った私は、ある日、姉を呼び出した。

亜希子顔写真

亜希子

あのな、なっちゃんに、ずっと言いたかったことがある。

奈津子顔写真

奈津子

なに?

亜希子顔写真

亜希子

なっちゃんの生活を見ていると、時々、無性に羨ましくて発狂しそうになる。

奈津子顔写真

奈津子

は?

亜希子顔写真

亜希子

素敵な旦那さんがいて、生活も上手く回ってて、仕事も家計も順調で。全部羨ましい。

奈津子顔写真

奈津子

え…うん。

亜希子顔写真

亜希子

たとえば私は、なにかひとつ家電を買うにしても、自分の財布と相談して買わなきゃいけないの。でも、なっちゃんは良い家電いっぱい持ってるし、優雅に暮らしてる。

奈津子顔写真

奈津子

はぁ。

亜希子顔写真

亜希子

そのすべてが羨ましい。

この時点で平常心を取り戻し、自分のご乱心ぶりを俯瞰してしまう私。

亜希子顔写真

亜希子

すまん。あまり深い意味はないんだけどさ。

奈津子顔写真

奈津子

……。

妙な空気が流れてしまった後、姉が一言、ポツリと言った。

奈津子顔写真

奈津子

なんかよく分かんないけど。人の生活を羨むくらいだったら、自分でも買える家電を使って生活を豊かにしたり、綺麗になろうとしたり、なにかできることを考えないわけ?

衝撃的な一撃に動揺する私。続けて彼女はこう言った。

奈津子顔写真

奈津子

世の中には、安くても良い家電がたくさんあるよ。

え…? そうなん…?

これまで、“ていねいな暮らし”とは無縁の生活を送ってきたので、動揺する私。

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