埼玉県平野部なぜ暑い? 熊谷地方気象台と熊谷市長に聞いてみた
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バードウォッチングは誰でも簡単に楽しめるレジャーです。
必要なのは双眼鏡と図鑑だけ。近場でも十分、鳥の観察はできます。
その証拠に、近年のアウトドア人気も相まって、実は密かなブームになっています。鳥の特徴や鳴き声からその種類を特定するアプリや、写真と文章を入れてオリジナルの野鳥図鑑を作れるアプリなども開発されるほど。
とはいえ、「場所探しや道具などの準備が大変そう」「初心者が楽しめるのか不安」と感じている人もいるかもしれません。でも、実はとても手軽で、老若男女問わず楽しめる趣味なんです。
今回は、野生生物研究員として野生生物の調査や保全に取り組んでいた経験を持つ、イラストレーターの一日一種さんにお話を伺いました。実際にバードウォッチングも行ってきたので、そこで学んだ、鳥が気になる人必見の基礎知識や魅力を余すことなくお伝えします。
バードウォッチングが親しまれている理由は、いくつかあります。中でも初心者の方におすすめしたい理由は、この2つです。
近所の公園や、通勤・通学路にある水路や植え込みにも鳥はいるので、遠出は不要です。
「身近に鳥なんていない」と感じている人もいると思いますが、実は日常生活の中でも複数種類の鳥に出会っています。鳥に関する知識や関心が増すと、自然と周囲の鳥たちに気付けるようになります。
バードウォッチングには、難しいルールはありません。また、専門知識や高価な道具も不要なので、未経験者や子どもでも、思い立ったらすぐに始めることができます。
散歩や通勤の間だけでもできるので、体力や時間に余裕がない人にもおすすめです。
鳥は種類が豊富で、日本だけでもおよそ600種以上の鳥が確認されています。見た目や鳴き声はもちろん、行動も種類によってさまざま。観察していると、その鳥独自のかわいい姿を見ることができます。
また、日常の中でも鳥ごとの違いを観察できるのが、バードウォッチングの醍醐味です。
例えば、街でよく見られるハトは2種類いることを知っていますか?
「ドバト」と「キジバト」です。
このように、街中でよく見る鳥でも、観察すると意外な発見があります。ディスプレイ(求愛のために、オスが体や動作を誇示する行動)という行動が見られることもあるでしょう。動きが大きくかわいいので、見かけたらそっと観察してみてください。
オスが頭を上下に振ったり、メスに餌をあげたりと、ディスプレイの方法はさまざま
観察すればするほど、よりたくさんの行動を見ることができます。「そういえばこんな動きをしているところ、見たことあったな」と思うこともあるかもしれません。行動の意味を調べることで、もっと面白く感じられるはずです。
かわいらしくて心がほっこりする、注目の仕草や行動を紹介します。
羽づくろいする姿がかわいい!
基本1羽で行う行動ですが、野鳥の種類によっては時折2羽でお互いに羽づくろいをしていることも
寝ている姿や…
寝るときの、くちばしを羽の中に埋めて丸まったシルエットが特徴的
群れで行動する姿もおすすめ!
群れで同じ方向に進んでいく姿がかわいい
日本で見られる鳥は、「渡り鳥」、「留鳥」、「漂鳥」に分けられます。
渡り鳥 | 季節によって長距離移動をする「渡り」という習性を持つ鳥。「渡り」をする季節によって、夏鳥、冬鳥と分けられる。 例:カッコウ、ツバメ |
留鳥 | 「渡り」の習性を持たない鳥で、1年中見ることができる。 例:シジュウカラ、ドバト、ムクドリ |
漂鳥 | 夏は日本の北方や山地で過ごし、冬になると日本南方や平地に移動する鳥。 例:ウグイス、キジバト(留鳥と呼ばれることもある)、ヒヨドリ |
では、バードウォッチングの持ち物の準備を始めましょう。
バードウォッチングは、双眼鏡と持ち歩けるサイズの図鑑さえあれば、鳥が逃げない距離からじっくり観察し、その生態を調べることができるので十分楽しめます。あとは「鳥を見たい!」という気持ちがあれば完璧です。
双眼鏡を選ぶときのポイントは、「倍率」と「有効径」です。
倍率 | 対象物がどれくらい大きく見えるかを表す。 8〜10倍が一般的。 倍率が高いほど見えやすいが、手ブレしたり視野が狭くなったりする。 |
有効径 | 双眼鏡を覗いたときの明るさの指標。 有効径が30mm程度の中口径が一般的(25mm以下はコンパクト、40mm以上が大口径)。 径が大きいほど明るいが、サイズは大きくなり、重量も増える。 |
初心者には、適度に見えやすく扱いやすい「倍率は8倍程度、有効径は30mmくらいの中口径」の双眼鏡がおすすめです。値段は5,000〜10,000円程度。
気を付けてほしいのは、双眼鏡は必ず首からかけること。特に初心者の方は、どうしても夢中になって見ているうちに落としてしまい、壊してしまうというケースが多いんです。
まずはアイカップ(見口)を引き出しましょう。そうすると、接眼レンズと目の距離が広がり、目が疲れにくくなります(眼鏡を掛けている場合は不要)。
次に目幅を合わせます。双眼鏡を覗き、左右の鏡筒を内、外へ動かして調節してください。
覗いたときの視野が1つの円に見える場所に合わせます。
最後は視度調節。必須ではないですが、左右で視力差がある人は、調節しないと気分が悪くなることもあります。片目ずつ双眼鏡を覗き、右目側の鏡筒に付いている調節リングでピントを合わせれば完了です。
最初は、ポーチに入る程度の、鳴き声も紹介されているポケット図鑑を選ぶとよいです。持ち運びやすいですし、身の回りで見られる鳥はほとんど網羅されています。鳴き声も覚えられれば、次にその鳥を探すときに役立ちます。
もちろん、スマホのアプリや電子書籍を使うのもいいでしょう。最近は、鳥の写真から種類を判別してくれるアプリなどもあります。紙の図鑑には自分でページをめくって調べる楽しさがありますし、電子図鑑やアプリは調べる時間が短縮できます。自分が使いやすいものを使ってください。
今回は紙の図鑑を使っていきます。
鳥を見つけたら、見た目の特徴からその鳥を図鑑で探します。
種類が違ってもビジュアルが似ている鳥もいるので、実物と見比べながら調べてみるのがよいでしょう。
撮影もバードウォッチングの楽しみのひとつ。ただし、鳥にはなかなか近づけないので、ズームにするとブレてしまうスマホでの撮影は難しいです。
スマホと一眼レフカメラで撮った鳥の写真を見比べてみましょう。
写真の鮮明さが全然違います。撮影をしたい方はカメラを持っていくことをおすすめします。
超望遠コンパクトデジタルカメラ | 超望遠機能があれば、遠いところにいる鳥も、近づかずに撮影可能。手軽に持ち運べて、撮影も簡単なのでカメラ初心者にも向いている。 | 3〜10万円程度 |
一眼レフカメラ | 動いている鳥も撮影可能。野鳥撮影で求められる機能はすべて備えているが、カメラの知識と技術が必要。 | レンズ+本体で、10万円〜 |
※商品によって価格は異なります。ここで紹介した価格帯のカメラでなければ撮影ができないというわけではありません。
カメラがあれば、鳥たちの姿を形に残しておけますし、バードウォッチングの楽しみ方が広がります。
おすすめは、水辺のある公園。飛んでいる鳥はもちろん、多くの水鳥を見ることができるからです。陸上で生活する鳥より、水上で生活するカモなどの水鳥の方が、木々に隠れたりしないので簡単に見つけることができます。
東京都内だと、井の頭恩賜公園や新宿御苑などが、たくさんの鳥に出会いやすいスポットです。
井の頭恩賜公園 | 大きな池と雑木林があり、多くの鳥が集まる。特に水鳥の観察スポットとして人気。 |
新宿御苑 | 林ではシジュウカラの仲間が、池では水鳥が観察できる。希少野生動植物種であるオオタカが飛んでくることも! |
水元公園 | 美しい水辺のある公園で、1年を通してカワセミを見ることができる。木々や植物も豊富なので、ムクドリやヒヨドリとも出会える。 |
明治神宮 | 豊かな森ときれいな池を有しており、多くの鳥が住んでいる。人馴れした鳥が多いのも特徴で、撮影をしたい人にはおすすめの場所。 |
井の頭公園。水辺と木々が共存する場所には多くの鳥が集まる
バードウォッチングは四季を通して楽しめるレジャーですが、特におすすめなのは冬です。冬は渡り鳥がたくさん渡ってくる季節なので、より多くの種類の鳥を観察できます。
春 | 繁殖の季節。他の季節より、求愛のさえずりがよく聞こえる。 |
夏 | 夏に「渡り」を行う夏鳥をたくさん観察できる。 |
秋 | 冬鳥が渡って来始める季節。気候もいいため、バードウォッチングに適している。 |
冬 | 初心者におすすめ。冬鳥が多く、木々の葉が落ちているため、鳥を見つけやすい。 |
朝からお昼までがおすすめです。多くの鳥は、日の出前からお昼にかけて活発に行動します。日中は休んでしまってあまり動かないので、午前中が観察に適しています。
ここまでの情報をもとに、1月に井の頭恩賜公園でバードウォッチングを行いました! ガイドとしても、プライベートとしてもバードウォッチングを嗜み、井の頭公園にも何度も訪れている一日一種さんから「少なくとも10種類の鳥は見られますよ」とお墨付きをもらっていましたが、予想以上に鳥の種類が豊富でした。今回見つけた20種の中から、興味深い鳥たちと、一日一種さんから現地で伺ったポイントをご紹介します。
一日一種さん
また、冬は防寒対策が必須です。バードウォッチングは、他の野外活動と比べてじっとしていることが多いので、余計に寒さを感じてしまいます。厚手のアウターや手袋、カイロなどを持っていきましょう。
一日一種さん
バードウォッチングでは、必ずこのマナーを守りましょう! マナーに反した行動は、鳥にストレスを与えたり、近隣住民や他のバードウォッチャーの迷惑になったりすることがあります。
一日一種さん
鳥を探すときは、まず鳴き声を聞くのがおすすめです。目視で姿を捉えるのは難しいですが、鳴き声が聞こえる周辺を探すと高確率で見つかりますよ。
今回は井の頭公園(東京)で出会った鳥たちを紹介します!
井の頭公園での遭遇しやすさもランク付けしているので、これからバードウォッチングを始めようと考えている方は、参考にしてみてください。
難易度:★
一日一種さん
街では主に2種類のカラスと出会えますが、そのほとんどが「ハシブトガラス」です。雑食なので、都会でも生きていけるようです。もう1種類は「ハシボソガラス」。田舎に多く生息していて、木の実や果実、昆虫が主食です。
編集部
見た目でも見分けられますか?
一日一種さん
名前の「ハシ」はくちばしのことで、くちばしが太いか細いかで見分けられます。また、おでこにも違いがあり、出っ張っていたら「ハシブトガラス」です。見た目や生態の違いを手軽に観察できるのが、カラスの面白いところです!
難易度:★
一日一種さん
「カワウ」は、水辺でよく見られる鵜です。
編集部
鵜飼で使われる鵜の仲間ですか?
一日一種さん
そうです。鵜飼の鵜と同じように潜水が得意で、魚を獲って食べます。たまに魚を丸呑みしている姿が見られますよ。食事のタイミングに出会えたらラッキーですね!
編集部
翼を広げて立っているときがあるのですが、何をしているんでしょう?
一日一種さん
濡れた羽を乾かしているところですね。水鳥は、水分を弾く油を分泌できるんですが、「カワウ」はその油を分泌する器官があまり発達していないんです。
編集部
なぜですか?
一日一種さん
水の抵抗を受けずに潜るためと考えられています。おかげでとても潜水が上手なんですが、代わりに羽が水を吸い込みやすい。鳥も羽が濡れると寒くて重いので、水から上がると、日光浴をして水分を飛ばしているんです。
編集部
羽を広げた姿だと、違う生物みたいに見えますね。
一日一種さん
シルエットがちょっと恐竜っぽいですよね。野鳥撮影をする人に人気の行動なんですよ!
難易度:★★
一日一種さん
水鳥では珍しく、小鳥類のさえずりのような「キリキリキリ…」という、けたたましい声を出します。つがい形成を強める意味や、テリトリー宣言の意味があるようです。つまり、カイツブリは水面に縄張りを持っているんです。
編集部
カイツブリはどうして縄張りを持つのでしょうか?
一日一種さん
子育てのためです。なので、繁殖期の春〜初夏の縄張り争いはとても激しいんですよ。
一日一種さん
カイツブリは潜水も得意なんです。潜った場所とまったく違う場所から顔を出したりもするので、少しだけ撮影が難しいかもしれません。
難易度:★★
一日一種さん
黒い体に黄色の目、頭のかんむり羽が特徴の水鳥です。水面を助走しながら飛び立ちます。水面を走るなんてすごいですよね。
編集部
くちばしを隠してジッとしていますが、あれは何をしているんですか?
一日一種さん
あれはくちばしを温めている姿ですね。
編集部
鳥のくちばしは寒さを感じるんですか?
一日一種さん
羽がないですからね。人間が外気に触れると寒さを感じるように、鳥たちも羽がない部分は冷たくなるみたいです。だから休んでいるときは、くちばしが冷えないように羽の中に突っ込んでいるんですよ。人間が冬にマフラーを巻くのと一緒ですね。
難易度:★★
一日一種さん
「コゲラ」は日本最小のキツツキで、「ギーギー」という鳴き声が特徴です。他のキツツキの仲間のサイズが20cm以上なのに対して、コゲラはスズメくらいの大きさ(13cm程度)しかありません。
一日一種さん
木の上の方に止まっていることが多いので、声は聞こえるのに姿が見えないということがよくあります。
編集部
そんなに小さくて、色も茶色ですが、キツツキなんですか?
一日一種さん
そうです。その証拠に、「コツコツ」という音が聞こえませんか?
編集部
聞こえます!
一日一種さん
それが木を突いているときの音です。よく木をつついているので、探すときは鳴き声と一緒にこの音もヒントにしてみるといいですよ。
難易度:★★★
一日一種さん
今回1番会いたかった、空飛ぶ宝石「カワセミ」です! きれいな鳥なので、見つけるとうれしくなりますね!
編集部
カワセミは見つけづらい鳥ですか?
一日一種さん
スズメ大くらいの大きさで飛ぶのも速いので、目視で見つけるのは少し難しいかもしれません。ただ、最近は個体数が増え、身近な公園などにも飛んでくるようになりました。見つけ方のポイントを押さえれば、遭遇できる可能性は高いと思います。
──カワセミを見つけるポイントとは何なのでしょうか?
一日一種さん
「キッキーッ」という、自転車のブレーキ音に似た鳴き声に耳を澄ませてみてください。姿を追うより、鳴き声のする周辺を注意深く探した方が見つけやすいです。
一日一種さん
バードウォッチングには、鳥を見つける以外にも、いろいろな楽しみ方があります。
【鳥を見つける以外の楽しみ方】
※バードウォッチングをしながら歩く自然観察会のこと。野鳥に詳しいリーダーが必ず引率してくれます。
より興味深い行動や生態のある鳥を詳しく紹介しましたが、他にもさまざまな鳥に出会えました!
うろこ模様の羽が特徴的なハト。1〜2羽で行動することが多い
真っ白な羽が美しいコサギ。指先で水を震わせて、出てきた魚を食べます
都会の公園にも巣を作り、春ごろには親子で行動する姿がよく見られます
黒い頭部に、真っ白な額板(くちばしから額にかけての部分)が映えるオオバン。水かきの発達した足は一見の価値あり
体の白色と、頭部の赤茶色が特徴のホシハジロ。潜水が得意
緑色の頭が派手なマガモは、カモの代表種。オスだけが目立つ色をしています
一日一種さんから教えていただいた内容を踏まえてバードウォッチングを行った結果、1時間で12種類の鳥を見つけることができました。
今回は冬の鳥を紹介しましたが、春にはキビタキやオオルリ、夏の渡り鳥が姿を見せ始めます。春は繁殖の季節で、鳥のさえずりがよく聞こえる時期なので、鳴き声だけでも楽しむことができるでしょう。
「初めてで楽しめるのか不安」「冬を逃すと鳥を見つけられないかもしれない」と感じて、バードウォッチングに踏み出せずにいる——そんな人は、この機会にチャレンジしてみませんか?
※ご紹介した商品は一部店舗ではお取り扱いがない場合がございます。また価格は変更される可能性があります。ご了承ください。
一日一種さん
まず気を付けておきたいのは、動きやすい服装かどうか。スカートなどは避けましょう。両手の空くかばんにすると、双眼鏡をすぐに構えたり、図鑑もすぐめくったりできて便利です。