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冬至やお正月など、さまざまな行事に古くから用いられてきたゆず。私たちにとって、とても身近な柑橘類の1つに挙げられるのではないでしょうか。中には「ゆずを自宅で育てられたらよいな」と思っている人もいるかもしれません。
このページでは、そのような人に向けてゆずの育て方を詳しく解説。ゆずを種から育てる方法はもちろんのこと、苗木から育てる方法や剪定のやり方、肥料の与え方なども紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。
ゆずは、ミカン科ミカン属に属する柑橘類です。植物学上はシトラスユノスという名前で、種やトゲの有無によりさらに細かく分けられます。ちなみに初心者には、トゲなし品種のほうが育てやすいといわれますが、トゲがまったくないゆずはありません。
しばしば見かける「トゲなしゆず」とは、トゲのない枝を人為的につなぎ、育成した品種のこと。若木のうちはトゲがありますが、成長するにつれて少なくなることから「トゲなしゆず」と称されているのです。
薬味やゆず湯などに使われるゆずの実には、完熟前に収穫される「青ゆず」と、完熟後に収穫される「黄ゆず」があります。青ゆずはキリッとした酸味と香りが特徴で、薬味や柚子胡椒などに用いられます。黄ゆずも同じく薬味として使われたり、ジャムに加工されたりします。
ところでゆずの原産地は、中国の揚子江上流だといわれています。日本には、平安時代初期に編さんされた歴史書『続日本紀』の中で、都にゆずくらいの大きさの隕石が落ちたという一文があることから、飛鳥時代・奈良時代に渡来したと考えられています。
なお現在では、日本全国37府県で栽培されていますが、出荷量がもっとも多いのは高知県です。国内に流通しているゆずの5割以上が高知県産で、果汁をしぼった柚子酢などの加工品も人気を集めています。
ゆずの基本情報がわかったところで、いよいよ育て方について見ていきましょう。ゆずは、種・苗木のどちらからでも育てられますが、それぞれに注意しなければならないポイントがあります。
ゆずを種から育てる場合は、採り蒔きにするのが一般的です。採り蒔きとは、植物の種を採取し、すぐに蒔くことを指します。
ゆずの種には、まわりにヌルヌルした成分が付着していますが、これには発芽を遅らせる物質が含まれているため、蒔く前にしっかり洗い流すのがコツです。そして、次の手順で種蒔きを行います。
ゆずには1つの種に複数の胚が含まれている性質があり、いくつも芽が出ますが、生育の悪いものは摘み取ったり、植え替えるときに分けたりするとよいでしょう。なお植え替えは、芽が10〜20cmほどに成長したタイミングで行うのがおすすめです。
ただし、ゆずは種から育てると、実がなるようになるまでに非常に時間を要します。なるべく早く収穫したいなら、やはり苗木から育てたほうが無難といえるでしょう。
ゆずを苗木から育てる場合は、まず、よい苗木を選ばなければなりません。
ゆずの苗木の多くは、前述のとおり、トゲのない枝を人為的につないだ接ぎ木苗です。このつなぎ目が目立たず、幹が太く、節がつまっていて葉が茂っているのはよい苗の証拠。反対に、つなぎ目に傷があったり隙間があったりする苗は、病気や害虫の影響を受けやすい傾向にあるので注意しましょう。
よい苗木を選べたら、植え付けを行いましょう。ゆずの植え付けに適している時期は、2月下旬〜4月で、地植え・鉢植えのどちらでも育てられます。たとえば、地植えにして庭木にしてもよいですし、鉢植えにすればベランダでも栽培できるでしょう。
ただし、ゆずは日光を好むため、地植えにする場合は、なるべく日当たりのよいところに浅く植え付けるのがポイントです。
いっぽう鉢植えにする場合は、まず、苗木より一回り大きい鉢を用意します。次に苗木の根をほぐし、新しい根が発生しやすい状態に整えてから、地植えと同じく浅く植え付けます。いずれの場合も、植え付けが終わったら水をたっぷり与えましょう。
ゆずの種蒔きの仕方、苗木の選び方などについて説明しました。続いて、ゆずを育てるにはどのような環境が適しているかを、詳しく見ていきましょう。
ゆずは、温暖な気候を好む柑橘類にはめずらしく、耐寒性が高いほうです。もちろん防寒対策は必須ですが、東北地方においても栽培が可能だといわれています。しかし、日当たりが悪いと、実つきに影響が出ることもあります。そのため、なるべく日当たりのよいところで育てるのが肝要です。
また、前述のとおり寒さに強いほうですが、成木はマイナス9℃、幼木はマイナス7℃で枯死してしまいます。さらにマイナス5℃以下では、葉が凍傷を起こし、落葉するおそれもあります。冬の間は、マイナス7℃を下回らないように対策を心がけましょう。ちなみに降水量が多いほど、果実の発育がよくなるといわれています。
ゆずは、割合に水分を好むため、こまめな水やりが必須です。とくに鉢植えの場合は、土の表面が乾いていたら、鉢の底面から水が流れるくらいたっぷり水を与えましょう。
反対に地植えの場合は、根がしっかり張ってからは、しょっちゅう水やりをする必要はありません。ただし、夏の間は乾燥しやすいため、様子を見て水やりをするとよいでしょう。
ゆずを健やかに育てるには、日当たりのよいところに植えたり、適切なタイミングで水やりをしたりする必要がありますが、土壌を整えたり肥料を施したりするのも大切です。さっそく見ていきましょう。
ゆずを育てるのに向いているのは、水はけがよく、保水力に優れている土です。たとえば地植えにする場合は、あらかじめ堆肥や腐葉土を混ぜておいたり、わらやグランドカバーを敷いたりして乾燥を防ぎましょう。
鉢植えにする場合は、小粒の赤玉土と腐葉土を混ぜたものに、軽石などを加えるのがよいでしょう。ただ、分量の調整が難しい……と感じる場合は、市販の果樹用培養土を用いてもOK。面倒な手間もなく、初心者にもぴったりです。
ゆずをはじめとする柑橘類は、花をたくさん咲かせたり葉を旺盛に茂らせたりすることから、たくさんの肥料を必要とします。肥料が不足しないように、3月・6月・9月・10月を目安に適切な肥料を与えましょう。
まず、3月には元肥として、油かすなどの有機肥料または緩効性の化成肥料を施します。次に、6月・9月・10月には追肥として、緩効性もしくは速効性の化成肥料を与えましょう。
ただし、ゆずには肥料がたっぷり必要だからとはいえ、与えすぎるのは禁物です。根が水分を吸収できなくなり、枯れてしまう「肥料やけ」を誘発しかねません。肥料過多にならないよう、適量を守りましょう。
ゆずを上手に育てるには、土を整えたり肥料を与えたりするだけでなく、適切なタイミングで剪定や植え替えを行わなければなりません。ここでは、その方法について説明します。
ゆずの剪定は、収穫を終えた3月〜4月頃に行いましょう。
ゆずは夏に実をつけはじめ、10月〜12月頃に収穫シーズンを迎えます。そして収穫後12月〜2月頃に、翌年に実をつける芽(花芽)をつけます。収穫直後に剪定を行うと、この芽を誤って切ってしまうおそれがあるので注意してくださいね。
また、真冬に剪定するのも避けたほうが無難です。なぜなら、ゆずは常緑樹なので冬の間も葉をつけ、成長し続けているからです。寒くて、日照時間が短い真冬に剪定を行うと、光合成に必要な養分が足りなくなってしまうおそれがあります。
ゆずの剪定でもっとも大切なことは、今年に実をつけた枝だけを伸びたぶんだけ切ることです。
また、ほかの枝に絡まっている枝や内側に伸びている枝をカットし、適当に間引くのもポイントです。こうすることで、日当たりや風通しがよくなります。
なお、ゆずは一般的に樹齢1〜3年ほどは実をつけません。その間は剪定する必要はありませんが、つぼみや花を摘むと成長が促進されるといわれています。わざと実がならないようにし、枝の成長にパワーを集中させるのです。
ゆずは、植木鉢いっぱいに根が伸びる「根詰まり」を起こすと、枯れてしまうことがあるため、2〜3年に1回を目安に植え替えを行いましょう。ちなみに地植えで育てる場合は、とくに植え替える必要はありません。
植え替えに適している時期は、植え付けと同じく2月下旬〜4月です。植え替えの手順はシンプル。一回り大きい鉢を用意したら、根をほぐして状態を整え、浅めに植えましょう。
ただし、ゆずの実を大きくしたくない場合は、根を引き抜いて3〜5cmくらい切り落としたあと、もとの鉢に戻します。これらの方法を用いて、ゆずを適切に管理しましょう。
ゆずにこまめに水やりをし、肥料を施し、いよいよ実がなったら収穫の時期を迎えます。具体的な収穫シーズンと収穫の方法、その用途について見ていきましょう。
冒頭で述べたとおり、ゆずには完熟前に収穫する青ゆずと、完熟後に収穫する黄ゆずがあります。青ゆずの収穫時期は7月〜10月、黄ゆずの収穫時期は10月〜12月です。
青ゆずは、早ければ4月〜6月に収穫できることもありますが、食べ頃に注意しなければなりません。具体的には、皮にハリ・ツヤがあり緑色が濃く、よい香りがするものを収穫しましょう。
いっぽう黄ゆずは、皮にハリがあり、実がブヨブヨしておらず、へたが茶色くなっていなければ食べ頃といえます。ただ、霜の影響により苦味が出ることがあるため、霜が降りる前に収穫を終えるようにしましょう。
ゆずの収穫は、次の手順で進めます。ゆずの枝にはトゲがあるので、軍手などを用いるとよいでしょう。
ゆずの実は重いので、潰れたり傷ついたりしないように保管しましょう。互い違いに箱に入れるなど、工夫するとよいでしょう。
ゆずは、皮をむいて食べる生食には不向きですが、料理やお菓子、化粧品などに使えます。たとえば、皮をすりおろして吸い口にしたり、唐辛子とあわせて柚子胡椒にしたりできますし、砂糖と一緒に煮てジャムにしたりもできます。
また、ゆずには健やかな肌をサポートするビタミンCや、保湿作用やリラックス効果が期待できるリモネンという成分が豊富に含まれています。お風呂に浮かべて肌をしっとりさせたり、爽やかな香りを楽しんだりするのもよいでしょう。
ゆずは病気に強いほうですが、カビが原因の黒星病(黒点病)になりやすいので注意が必要です。黒星病は、とくに高温多湿の環境下で発生しやすいため、風通しをよくしておくのが肝要。対策としては、枝や葉が密生しないように剪定したり、雨が当たりにくい場所で栽培したりするのがおすすめです。
しかし、対策をしても黒星病になってしまった場合は、罹患した部分を切除し、薬剤を散布しましょう。黒星病になると、葉や茎に小さくて黒い斑点が広がりはじめます。これらの兆候を見つけたら、すぐに対処してくださいね。
ゆずに寄生しやすい害虫には、アゲハチョウの幼虫・ハダニ・ミカンサビダニが挙げられます。とくにアゲハチョウの幼虫は、葉を食べ尽くしてしまう厄介者。葉をよくよくチェックし、卵や幼虫を見つけたら、すぐに駆除しましょう。
ハダニ・ミカンサビダニに対しては、葉に水を勢いよくかけて洗い流したり、殺虫剤を散布したりするのが有効です。病気・害虫の被害をなるべく受けないように、予防策をしっかり講じ、ゆずを健康に保ちましょう。
ゆずは病気にかかりづらく、園芸に慣れていない人でも十分育てられる植物です。鉢植えで育てられ、植え替えも2~3年に1度が目安となるため、手間もそれほどかかりません。
夏~秋に収穫すれば青ゆず、秋~冬に収穫すれば黄ゆずとしてそれぞれ楽しめます。青ゆずならサラダなどにも使えますし、黄ゆずは鍋物やゆず湯に欠かせません。育てた後の楽しみがいろいろあるので、ぜひ、ゆずの栽培にチャレンジしてみてくださいね。