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鉛筆の削りすぎ注意! 子どもを夢中にさせる、プラスの“変な”鉛筆削りたち

メーカー

プラス株式会社

プラス株式会社

1948年(昭和23年)創業の文具・事務用品、オフィス家具メーカー。「新しい価値で、新しい満足を。」を企業理念に掲げ、常に日本初・世界初の製品やサービスの開発を目指しています。デコレーションテープ「デコラッシュ」、個人情報保護スタンプ「ケシポン」、家庭用はさみ「フィットカットカーブ」など、家庭や個人で使用するパーソナル文具の企画・開発にも注力しています。

プラスが“変な”鉛筆削りを出したらしい、という話題

2021年初頭、文房具ファン界隈でかなり騒がれたニュースがあった。

それが「プラス、なんか変な鉛筆削り出すってよ」である。

どれくらい変かというと、かっこいい自動車に鉛筆を挿してタイヤをコロコロ転がすと鉛筆が削り上がる……という、従来になかった機構が変だ。名前が「ハシレ!エンピツケズリ!」ってのも変だし。

プラスは文房具・オフィス用品の大手総合メーカーとして知られており、基本的には“真面目なメーカー”という印象が強いんだけど、そのイメージが軽く揺らいじゃうレベルで変だろう。

それでいて、これとほぼ同時期に、便利さ・機能性に優れたスーパー全自動鉛筆削り「SASITEMI」(サシテミ)も発売しているんだから、文房具ファンからすると「プラス、どっち方向に行きたいんだ」と困惑するばかり。

面白がらせたいの? 真面目なの? どっち?

これはもう、実際にプラスの鉛筆削り担当者に話を聞かないと、分かんないやつじゃないかな。

変って言うけど、そもそもどういう鉛筆削りなの?

……とその前に、製品の解説をしておこう。

まず「ハシレ!エンピツケズリ!」は、こんな感じ。

自動車型の意味がよく分からない「ハシレ!エンピツケズリ!」。でも名前の疾走感はすごい

自動車型の意味がよく分からない「ハシレ!エンピツケズリ!」。でも名前の疾走感はすごい

未来カー風のボディ後部に鉛筆を挿したら、手で持って前後にコロコロ、コロコロと動かす。すると内部の削り器が回転して鉛筆を削る、という仕組みだ。

鉛筆が削り上がると「カチッカチッ」というクリック音でお知らせしてくれる「トンガリ検知機能」や、前進・後退のどっちでも鉛筆が削れて効率的な「1wayギア」など、ユニークな機構が詰まっている。

ジェットエンジンっぽい穴に、削りたい鉛筆をズボッと

ジェットエンジンっぽい穴に、削りたい鉛筆をズボッと

「わー、未来カーかっこいいぞー、ゴーゴー!」と遊んでいるだけで、鉛筆を削るという面倒くさい作業が完了する。明日の授業の準備をサボりがちなお子さんも、これなら喜んで削っちゃうはずだ。

つまり、楽しさに全振りしてる手動鉛筆削りというわけ。

対して、スーパー全自動鉛筆削りこと「SASITEMI」は、完全に便利さ重視系。電動鉛筆削りの最新トレンドを踏襲したタテ型ボディで、電源はUSBによる充電式だ。

スーパー全自動、というキャッチコピーに勢いを感じる「SASITEMI」

スーパー全自動、というキャッチコピーに勢いを感じる「SASITEMI

なにがどうスーパー全自動かというと、ボディ上部の穴に鉛筆をズボッと挿すと自動で引き込みつつガガガッと削って、削り終わると今度は自動でポンと鉛筆を出してくれるのである。

おおー、なるほど。これはスーパー全自動と言っても間違いないかも。

しかも1本削るのにかかる時間は約6秒(新品の鉛筆だと約12秒)と、爆速。ガガガッ、ポン、ガガガッ、ポンと次から次にテンポ良く削れるので、お子さんが寝る直前に「あっ、明日使う鉛筆削ってない!」と気付いても、あっという間に準備完了しちゃうのだ。

なんでこんな鉛筆削りを作ったの? 教えて、プラスの人

うーん。改めて見ても、手動 vs 電動、面白 vs 便利、削るのに場所が必要 vs 省スペースと、製品としての方向性が完全に真逆。

どういう経緯でこんな対極な鉛筆削りを同時リリースしたのか。もしかして社内で開発チーム同士の仲が悪かったりしないだろうか。そんな余計なことまで考えながら、プラスさんにお邪魔してみた。

お話を伺った「ハシレ!エンピツケズリ!」開発担当の北村さん(左)と安井さん(右)

お話を伺った「ハシレ!エンピツケズリ!」技術開発担当の北村さん(左)と安井さん(右)

「SASITEMI」企画担当の神藏さん

「SASITEMI」企画開発担当の神藏さん

「ハシレ!エンピツケズリ!」からは、R&D本部の北村さん(1wayギア機構技術開発)と安井さん(製品全般技術開発)の技術チーム。「SASITEMI」チームは、開発当時の企画開発担当だったVISION事業部の神藏さん。そして鉛筆削り全般に関わる企画開発担当として、製品クリエイティブ本部の長谷川さん。以上のメンバーにお話を伺おう。

きだて

きだて

まずは「ハシレ!エンピツケズリ!」なんですが……文房具ライターとして一番気になるのは、「どういう経緯でこんな不思議な鉛筆削りの開発が始まったのか」です。なんでクルマを転がして鉛筆を削ろうと思ったのかという……もしかして悪ふざけですか!?

長谷川さん

長谷川さん

当時の企画開発担当の発想なんですが、これまでの手回し式の鉛筆削りって、子どもさんが使うには腕力も要るし、削りにくいんじゃないかと考えたんです。そこで、子どもさんの手でも掴みやすく、力をかけやすい形状はないものかと模索した結果、このクルマ型にたどり着きました。

笑顔ながら「悪ふざけではないです」と語気強めな長谷川さん

笑顔ながら「悪ふざけではないです」と語気強めな長谷川さん

きだて

きだて

あっ、単に「オモチャっぽくて子どもウケしそう」とかじゃなくて、ちゃんとした理由があるんですね。失礼しました。

長谷川さん

長谷川さん

もちろん、大人としては「勉強に使うから」と買ってあげやすいし、子どももおねだりしやすいんじゃないか、という発想もありましたが……。

きだて

きだて

そりゃそうか。おじいちゃんおばあちゃんも、孫にプレゼントしたがりそうですよね。

安井さん

安井さん

実際、発売後にご自身のお孫さんやお知り合いのお子さんに差し上げたいと、何台も購入した社内のおじいちゃん世代もいたんですよ。

自動車型鉛筆削りは、おもちゃと掃除機からできていた!

きだて

きだて

従来にないタイプの鉛筆削りということで、これは開発の皆さんが大変だったろうなーと思うんですが、特に苦労されたポイントとかってありますか?

北村さん

北村さん

いやー、僕は前職で玩具の開発設計を20年くらいやってたので、こういう案件が回ってくるとうれしくて張り切っちゃって。「クルマ型で手押しして削る鉛筆削りを考える」という話がきてから10日くらいで、叩き台となるモック(原寸大の試作模型)を作っちゃいました。これがその“初号機”です。

北村さんがわずか10日で作っちゃった「ハシレ!エンピツケズリ!」初号機

北村さんがわずか10日で作っちゃった「ハシレ!エンピツケズリ!」初号機

鉛筆を挿すところが上だったりと、完成版とはやはりあれこれ違う「ハシレ!エンピツケズリ!」初号機

鉛筆を挿すところが上だったりと、完成版とはやはりあれこれ違う「ハシレ!エンピツケズリ!」初号機

きだて

きだて

おおー! これが! そして10日でできちゃう!?

北村さん

北村さん

それくらい没頭して作ったんですね(笑)。社長からは「でかすぎる!」って一喝されたので、ここからコンパクト化させていくんですが、もうこの時点で1Wayギアなどの機構はちゃんと入ってます。

きだて

きだて

えっ、1Wayギアって最初から入ってたんですか? これも10日のうちに考えたんですよね??

北村さん

北村さん

子どもさんがクルマを手に持って動かすなら(前後に動かしながら)こうだろうな、と思っていたので、じゃあ前進・後退ともに削れたほうがいいよね、と決めて。そうしたらもう、1wayギアの構造は自然とできちゃった感じですね。

きだて

きだて

自然にできちゃうの、すげぇ……!

安井さん

安井さん

ここから完成版までに試作品があと3台あるんですが、私が参加したのは3号機からですね。コンパクト化に関しては、削るユニットにハンドル手回し式鉛筆削りと同じものを使っていたので、それを小型の削り器にして、ギアなども合わせて変更しました。

初号機に搭載されている、ハンドル手回し式鉛筆削りのユニット。これが大きすぎてコンパクト化が難航していた

初号機に搭載されている、ハンドル手回し式鉛筆削りのユニット。これが大きすぎてコンパクト化が難航していた

きだて

きだて

初号機の時点で「もう完成版でいいじゃん?」と思えますけども。そこから相当にいじってるんですか?

安井さん

安井さん

例えばゴミ捨ての方式も、最初は本体下にフタをつけて排出する方式だったんですけど、それだとゴミが漏れそうで。

きだて

きだて

あー、鉛筆削りのゴミって意外と捨てるのが大変なんですよね。芯の粉ってすごく細かいから、隙間から漏れちゃったり。

安井さん

安井さん

私は前職で掃除機を作っていたので、キャニスター掃除機のダストボックス部をパコッと開いてゴミパックを捨てる、あの構造を思い出しまして、「これだ!」と。フチにゴムパッキンを挟みこんで芯の粉が漏れないようにしたのも、掃除機の経験から取り入れた機構です。

上部をパコッとはずした状態。削りカスが溜まるケースのフチはゴムパッキンで覆われている

上部をパコッとはずした状態。削りカスが溜まるケースのフチはゴムパッキンで覆われている

きだて

きだて

おもちゃと掃除機の融合ですね!

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