電動ドライバーで“水回り汚れ”が激落ち!「スカットディスク」おそうじ用に大感動
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「にんにくを口に入れてから4時間以内は、電車やバスなどの公共交通機関に乗るべからず」
アメリカ中西部のインディアナ州には、こんなユニークな法律があるそうです。
日本でも「免許を持っている人しかフグを調理してはいけません!」というふぐ条例や、食品業界のすべての事業者に関わる食品衛生法や食品安全基本法などなど、食に関する法律はたくさんあります。
でも、その始まりがビールの法律だったことをご存知ですか? 現在でも有効な食品に関する法律の中で、もっとも古いものは、実はビールについての決まりなのです。
時は1516年、場所はドイツ南部のバイエルンで定められた、その名も「ビール純粋令」。
「ビールは大麦とホップと水の、3つの原料以外を使用してはならない」という趣旨の法律で、時のバイエルン侯ヴィルヘルム4世が公布しました。一体なぜこの法律が制定されたのか。主に2つの理由があったとされています。
1つ目は、ビールに入れる植物をホップに限ることで、ビールの品質を上げるため。
今でこそビールと言えば…と言われるくらい定着しているホップですが、かつては今ほど盤石の地位を築いていたわけではありませんでした。ホップが定着する前は「グルート」と言って、そこら辺に自生しているハーブや薬草がビールに投入されていました。
当初はその他大勢のハーブのひとつでしかなかったホップですが、繰り返し使用しているうちに抗菌作用に優れていることがわかってきます。それだけでなく、新鮮な香りと心地よい苦みをもたらしてくれる。
そこで、地方ごとに異なっていたハーブや薬草の使用を禁じて、ホップだけに限定したというわけです。
2つ目は、ビールに使う穀物を大麦だけに制限することで、小麦が原料のパンを確保するため。
ドイツには小麦を使うビールがあり、人気を博していましたが、「希少な小麦をビールばかりに回しているとパンが作れなくなってしまう」、そんな危機感があったようです。
一方で、小麦を使うビール造りを民間に許さず、宮廷醸造所など一部だけに限定することで「小麦ビールから得られる収入を独占したい」という計算高い動機もあったとか。
いずれにしても、このビール純粋令のおかげで、バイエルンのビールの質は飛躍的に向上。それまでビールのレベルは、ドイツ北部のほうが上でした。それは、北部のアインベックのビールを、南部のバイエルンが大量に輸入していた事実からもわかります。
南部のバイエルンがビール純粋令を徹底したことと、その後の三十年戦争で北部が荒廃してしまったことで、ドイツビールのレベルは南北で逆転したと言われています。
時代はくだり、第一次世界大戦後の1919年。敗戦に沈むドイツは、ワイマール共和国を作って再起を図ることに。大国・バイエルンも共和国入りを打診されるわけですが、このときに条件を提示します。
それが「全ドイツでビール純粋令を採択させること」。国の存亡がかかったタイミングにもかかわらず、ビールにこだわるところに、バイエルンの底知れぬビール愛を感じます。
こうして、バイエルンだけの地方ルールだったビール純粋令は、ドイツの国法に格上げされました。以後、ドイツの職人たちは、この法律を遵守することでビールの質を上げ続けていきます。
ビール純粋令がピンチに陥るのは第二次世界大戦後、ヨーロッパ統合の動きが進んだ頃のこと。
当時のEC諸国、特にフランスから「ビール純粋令で原料を限定するのは貿易の公平を阻害する」と槍玉に挙げられ、ついに1987年に非合法化されてしまったのです。
お隣のベルギーでは、ビールにフルーツなどを入れるのは当たり前。「そういった個性派ビールを認めない法律は輸出入の邪魔になってしまう」という理屈でした。
では、ビール純粋令は死んでしまったのか?
決してそんなことはありません。ドイツ人はビール純粋令を誇りに思い、この法律を指針として、今でもビールを造り続けています。
ビール純粋令の制定年「1516」が刻まれたドイツビールのラベル
ドイツビールのラベルをよく見ると、ビール純粋令が制定された年「1516」が刻まれていることがあります。今度ドイツビールを飲むときは、ぜひ注目してみてください。