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かどのペットクリニック院長。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、特にこれらの分野は院内の診療の中でも力を入れている。
見た目の可愛さはもちろん、人懐こく知性の高いトイ・プードルは、「初心者にも飼いやすい」と人気の犬種。ついつい甘やかしてしまいそうになりますが、きちんとしつけてお互いの信頼関係を築きましょう。今回は、トイ・プードルのしつけや問題行動の対応方法などについて、かどのペットクリニック院長で獣医師の葛野莉奈先生に解説していただきます。
目次
- トイ・プードルはどんな性格?
- トイ・プードルのしつけにおすすめの時期は?
- トイ・プードルに必要なしつけとコツは?
- トイ・プードルの年齢・性別によるしつけの違いは?
- トイ・プードルのしつけのポイントは?
- トイ・プードル起こしやすい問題行動は?
- トイ・プードルのしつけに使えるグッズは?
トイ・プードルはどんな性格?
トイ・プードルは、忠誠心があり、学習能力が高い犬種です。しつけは初心者でも比較的無理なく行えますが、甘やかしすぎると無駄吠えなどの問題行動を起こすことも。自己主張も強いので、飼い主は犬の言いなりになってしまわないよう注意が必要です。
トイ・プードルのしつけにおすすめの時期は?
しつけはなるべく早い時期に始めた方がよいでしょう。ワクチンなどの病気予防を終えた社会化期(生後3〜14週間前後)に、できるだけ他の犬や家族以外の人と触れ合う社会化トレーニングを行います。社会化期のうちにさまざまな経験を積んでおくと、成犬になってからも環境の変化に柔軟に対応できるようになります。
トイ・プードルに必要なしつけとコツは?
トイ・プードルに必要なしつけは基本的なものがほとんどです。ここからは、どのようなしつけをするべきか、そのコツについても紹介します。
しつけの基本
まずは、すべての犬に共通するしつけの基本を見ていきましょう。
しつけの言葉を決める
しつけの方針や基準、しつけの合図(コマンド)などは、家族内で統一しましょう。人によって態度や言葉が違うと、犬は混乱し、しつけの内容を覚えにくくなってしまいます。
しつけの時間は短くする
犬の集中力は長くは続きません。短時間でのしつけを繰り返しましょう。また、長時間叱ると、犬は何が悪くて叱られているのかが分からなくなってしまい、飼い主に対して恐怖を感じるようになります。
褒め方・叱り方のコツ
褒めるときと叱るとき、どちらもメリハリが大切です。叱る際は飼い主の気分で基準を変えないようにしましょう。「前回は良かったのに、今回はダメ」のように基準が曖昧だと、犬が混乱してしつけの内容を学習しにくくなってしまいます。
基本のコマンド
ここからは、愛犬に覚えさせたい「おすわり」「待て」「伏せ」の基本コマンドについて紹介します。
おすわり
「おすわり(座れ)」は外出先でも有用です。他の犬や落ちているモノなどに好奇心を刺激されても、勝手に突撃せずに飼い主のそばに居られるようになります。
「おすわり」のコマンドを教える際は、まず犬の正面に立ち、手のひらに乗せたおやつを見せます。その後、犬の視線が逸れないよう、手をグーにしてゆっくりと犬の頭上まで引き上げてください。ここで「おすわり」と言い、手を鼻先にゆっくりと近づけると、犬は自然と腰を落としたおすわりの姿勢になります。上手にできたら「よし」とひとこと声をかけ、手の中のおやつを与えましょう。
待て
愛犬をおとなしく待たせる「待て」も重要なコマンドのひとつです。室内では、飼い主が食事をしているときや、玄関で来客対応をしているときに活用でき、飼い主の用事が済むのを静かに待てるようになります。外出時は、拾い食いをしそうなときや、他の犬に飛びつきそうなときに制止できるようになります。
「待て」のコマンドの教える際は、まず犬の正面におやつを置き、「待て」と言ってじっと動かないようにさせましょう。動いてしまった場合はおやつを引き下げ、再チャレンジしてください。「待て」ができたら「よし」と言い、おやつを食べさせます。最初は短い時間から、徐々に待たせる時間を長くしていきましょう。
伏せ
「伏せ」も犬が興奮している際に使えるコマンドです。「おすわり」や「待て」以上にクールダウンが必要なときは、「伏せ」で落ち着かせましょう。
「伏せ」のコマンドの教える際は、まず犬におすわりをさせ、手に持ったおやつを犬の鼻先に持っていきます。その後ひとこと「伏せ」と言い、手をゆっくりと地面に下げていきましょう。次第に犬の姿勢が「伏せ」の状態になるので、成功したら「よし」と言っておやつを与えてください。
基本のトレーニング
トイレトレーニングとクレート(ハウス)トレーニングについて紹介します。どちらも愛犬と長く暮らしていくうえで重要なトレーニングです。
トイレトレーニング
小型犬のトイ・プードルは室内飼いが基本です。衛生面はもちろん、愛犬の健康面や飼い主のストレスからも、子犬のうちに室内の決まった場所で排泄できるようにしておきましょう。
トイレトレーニングをする際は、排泄したい仕草(落ち着きがなくなる、同じところをぐるぐる回る)を見せたら抱き上げてトイレに連れて行き、きちんと排泄できたらたくさん褒めてあげてください。これを繰り返すうちに徐々にトイレを覚えていきます。
クレート(ハウス)トレーニング
愛犬がクレート内で心地良く過ごせるように、常日頃からクレートトレーニングを行いましょう。犬は慣れない環境下に置かれると強いストレスを受けてしまいます。クレートトレーニングをしておくと、愛犬と一緒に旅行をしたときの宿泊先や、万一災害が起こった際の避難所などで、精神的な負担を軽減させることができるでしょう。
クレートトレーニングをする際は、クレート内におもちゃやおやつを置き、興味を持たせて中へ誘導しましょう。最初は入り口から、徐々にクレートの奥に置くのがポイントです。また、「クレートは安心できる自分のスペースだ」と覚えさせることも大切です。病院などに出かけるときだけではなく、普段から室内にクレートを置き、愛犬が気に入っている毛布などを敷いて快適な空間をつくってあげましょう。
トイ・プードルの年齢・性別によるしつけの違いは?
見た目は可愛いトイ・プードルですが、力が強く、攻撃力のあるオスもいます。事故につながる噛み癖などを防ぐためにも、成犬になる前の子犬のうちからしっかりしつけましょう。
オス特有の問題行動がある場合は、去勢手術で改善することもあります。メスは飼い主の関心を引くための問題行動に出やすいという特徴があるため、甘やかしすぎず基本のしつけをしっかりと行いましょう。
トイ・プードルのしつけのポイントは?
ここからは、トイ・プードルをしつける際のポイントを見ていきましょう。
信頼関係を築く
まずは信頼関係をしっかり築くことが重要です。トイ・プードルは忠誠心が強く、単純に「怖いだけの人」や「甘やかすだけの人」には心を開きません。信頼関係が築けていないと、しつけが難しくなるでしょう。
褒めて伸ばす
犬全般に当てはまることですが、特にトイ・プードルは身体が小さいので、暴力を振るう人や怒鳴る人のことを「自分に害を与える怖い人」として認識します。「成功したら褒める」ことを徹底すると、飼い主を信頼し、期待に応えたいと思うようになるでしょう。
トイ・プードル起こしやすい問題行動は?
過度な興奮や不安などが問題行動の原因になります。小さいうちからきちんとしつけて問題行動を防ぎましょう。特に気をつけたい問題行動とその対処法を見ていきましょう。
飛びつき
興奮すると他の犬や人に飛びついてしまう恐れがあります。小型犬のため、大きなケガや事故にはつながりにくいですが、トラブルになるかもしれません。他者に危害を加えてしまわないよう、興奮し始めたサインをキャッチして未然に防ぐことが大切です。「おすわり」や「待て」など、基本のコマンドをしっかり覚えさせておくことも、飛びつき防止には重要です。
分離不安
愛犬がかわいいからとずっと構っていると、飼い主への依存が強くなり、一人で安心して過ごすことができない「分離不安」になってしまいます。分離不安になると、留守番のときはもちろん、少し飼い主の姿が見えないだけでも過度のストレスを感じるようになります。愛犬の心身の健康のため、一緒に過ごす時間を大切にしつつ、お互いが一人で過ごす時間もつくりましょう。
無駄吠え
飼い主と家で過ごす時間が長い小型犬は、「遊んでほしい」「おやつが欲しい」など、意思表示の手段として吠えることがあります。飼い主が甘やかして要求を受け入れると、賢いトイ・プードルは「吠えればやってくれる」と学習するため、無駄吠えが定着する恐れも。吠えたときは無視し、落ち着いてから構ってあげることを徹底しましょう。
甘噛み・噛み癖
甘噛みや噛み癖の原因は、犬にとってのスキンシップや意思表示の手段、子犬なら歯がかゆいなど、さまざまです。噛み癖が残るとケガやトラブルにつながる恐れもあるため、子犬のうちから「人やものを噛んではいけない」と教えましょう。
ただし、噛むことは犬の本能からくる欲求でもあります。噛むためのおもちゃを与えて、それだけを噛むように教えるのもおすすめです。
トイ・プードルのしつけに使えるグッズは?
最後に、トイ・プードルのしつけに活用できるグッズを紹介します。
引っ張り防止用のハーネス
散歩の際に、愛犬が興味のおもむくままに先へ進んでしまうと、突然出てきた人や車などとぶつかる可能性があり危険です。引っ張り防止用のハーネスを使用すると、飼い主の方向転換や制止の意図が犬に伝わりやすくなります。
コング
柔らかいおもちゃの中にフードやおやつを入れるコングは、知育にもストレス解消にもぴったりです。飼い主から注意を逸らし一人で集中して遊べるようになるため、分離不安対策にもなるはずです。ものによって難易度が異なるので、最初は簡単なものから始めて徐々にステップアップしていきましょう。
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。