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かどのペットクリニック院長。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、特にこれらの分野は院内の診療の中でも力を入れている。
うんちは犬の健康状態を映し出す鏡のような存在です。うんちの形状や匂いが普段と異なる場合、消化不良や病気などが疑われます。特に子犬の時期は健康管理のために、日頃からうんちの回数や形状などを記録する習慣が大切です。この記事では、子犬のうんちの適正回数や注意点、日頃から気をつけたいことなどをかどのペットクリニック院長で獣医師の葛野莉奈先生監修のもと、詳しく解説していきます。
目次
- 子犬のうんちからわかることは?
- 子犬のうんちは1日何回までが適正な回数?
- 子犬のうんちの回数が多い原因と対策
- 子犬のうんちの回数が少ない原因と対策
- 子犬のうんちの回数が急に増減した場合、病気の可能性は?
- うんちから子犬の健康状態をチェックするために普段から意識すべきことは?
子犬のうんちからわかることは?
うんちは子犬の健康状態を知る有力な情報源のひとつと言えます。うんちの形状から、胃腸の働きの良し悪しが確認できるからです。例えば、やわらかさや匂いなどの違いによって、腸内で消化吸収が正常に行われているかを判断できます。また、便検査をおこなえば、腸の炎症や寄生虫の感染などにも気がつくことができるでしょう。
特に子犬は体力がないので、飼い主がいち早く体調不良や病気を察知するのがとても大切です。早めに適切な治療をおこなえば、子犬の体にかかる負担を軽減し、体力の消耗を防ぐことができます。
子犬のうんちは1日何回までが適正な回数?
子犬のうんちの回数は1日あたり5〜6回ほどが基本です。小型犬、大型犬で腸の長さに違いはありますが、体のサイズに比例して食べる量が増えるため、回数に大きな変化はありません。ただし、消化機能の状態などによって個体差があり、なかにはもっと回数が多い子犬もいます。また、年齢が若いほどうんちの回数は多いですが、成犬に近づくにつれ、自然と減っていくでしょう。理由としては、体の成長に伴い、消化吸収能力が高まるためです。ちなみに、成犬のうんちの回数はごはんの回数に応じて1日2〜3回ほどが一般的と言われています。
子犬のうんちの回数が多い原因と対策
子犬が普段よりも多くうんちを出す場合は体調不良や病気が疑われます。子犬のうんちの回数が多くなる原因と対策について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
消化不良
子犬は消化機能が未発達のため、食べたものがとどめられず、消化吸収が不十分なまま排出されてしまうケースがあります。子犬の消化機能に適したフードを与えて、消化器への負担を減らしてあげると良いでしょう。
ストレス
ストレスがかかったり、体が緊張状態にあったりすると、腸運動の異常や機能低下が起こりやすくなります。また、疲れも消化器の状態と直結しやすいので注意しましょう。ゆっくりと子犬の体を休ませて、消化吸収しやすいフードを用意してあげてください。
アレルギー
アレルゲンの含まれるフードを食べると、腸がアレルギー反応を起こし、腸の運動が過剰になったり消化機能が低下し、うんちの回数が多くなります。食物性アレルギーは、アレルゲンを取り除いた、愛犬に適したフードを与えることで症状は治まります。犬の体質によってアレルゲンは異なるので、一度動物病院でアレルゲンを特定する検査をしてもらうと良いでしょう。
ウイルス感染・病気の可能性
ウイルスや消化器に感染する寄生虫、または腸炎などが原因の場合もあります。消化器の炎症により、腸運動の異常や機能低下が起きている状態です。治療法としては、原因を特定したうえで、腸の炎症を抑える薬を与えます。便検査が必要になるので、あらかじめうんちを採取したうえで動物病院を受診しましょう。
うんちを減らすためにフードの量を減らすのはNG
うんちの回数が多いからと言って、子犬の時期にフードの量を減らすのは絶対にやめましょう。子犬は日々の生活だけでなく、体を大きく成長させるためにも多くのエネルギーを必要とします。そのため、エネルギー不足が起きやすく、低血糖を起こしがち。低血糖は死に至る可能性もある危険な状態です。フードの量を減らせば、さらに低血糖のリスクは高まります。子犬の時期は適切な量のフードを、しっかりと与えましょう。
子犬のうんちの回数が少ない原因と対策
子犬のうんちの回数が普段より少ない場合も、体の異常が心配されます。うんちの回数が少ない原因と、その対策についてそれぞれ詳しく見ていきましょう。
食欲不振
食欲不振で食べる量が少ないことから、うんちの回数が減っている可能性が考えられます。また、食欲不振の原因自体が、腸運動の異常など、消化器の不調の場合もあり得るでしょう。食欲がない犬には、ドッグフードをふやかして与えるなどの工夫をしてみてください。それでも食欲不振が続くようであれば、原因究明のための検査や、原因に応じた治療が必要な可能性が高いです。動物病院の受診を検討しましょう。
食事の量が少ない
食事量自体が少ないと、必然的にうんちの回数も減ります。うんちとして排出されるには十分な量の食物が必要になるので、うんちの量が少ないとうんちが出るまでに時間がかかるためです。食事量があまりに少ないと栄養失調に陥る可能性もあるので注意しましょう。フードのパッケージに表記されている、体格や体重に見合った適切な量を与えるようにしてください。
便秘
腸運動の低下や、物理的な閉塞が原因となり、便秘が起こっている場合もあります。肛門までうんちがたどり着いていないせいで、回数が減ってしまっているのかもしれません。治療では、浣腸や下剤などを使って、うんちがスムーズに排出できるようにします。まずは動物病院を受診して、レントゲンやエコーなどで腸の様子を確認しましょう。
トイレ環境が変わった
トイレ環境が変わると、戸惑いや緊張からうんちを出すのを我慢してしまう性格の犬もいます。布を使って目隠しをしたり、配置を変えたりなどの対策をして、落ちついてうんちができる環境を作ってあげましょう。
子犬のうんちの回数が急に増減した場合、病気の可能性は?
うんちの回数の変化は消化不良や食事量の不足以外に、病気の可能性も考えられるので注意しましょう。急にうんちの回数が多くなった場合、腸炎や風邪(ケネルコフ)などが疑われます。体調不良によって、腸の機能が低下しているケースです。一方で、急にうんちの回数が少なくなった場合は、便秘や誤食による消化器の通過障害などの恐れも。また、うんちの回数の急な増減に併せて、食欲不振や元気のない様子、下痢やうんちの悪臭などがある場合は、病気の可能性が高くなります。その他、ソワソワして落ち着きがない、咳をするなどの変化が見られる場合も同様です。こういった症状が見られる場合は、すぐに動物病院を受診してください。
うんちから子犬の健康状態をチェックするために普段から意識すべきことは?
子犬の健康状態を把握するためにも、普段から以下の2点を意識してみてください。
うんちの記録をつける
うんちの形状の変化は子犬の健康状態に直結するので、普段から記録をつけておくことをおすすめします。うんちの回数やタイミング以外にも、硬さややわらかさ、匂いなども観察するよう習慣づけましょう。記録をつけることで、普段との違いを発見しやすくなり、体調不良や病気にいち早く気づけます。
子犬にあったフードを与える
子犬は消化器が成長途中にあるので、体に合ったフードを与えましょう。どんなに健康な子犬でも、消化器の成長に合っていないフードを摂取すると胃腸に負担がかかってしまいます。うんちの状態や回数を見ながら、愛犬に適したフードや量を見極めるようにしてください。