公開
ろろの犬猫部屋所属。麻布大学獣医学部獣医学科卒業 / 動物病院で3年間臨床医 / 現在は横浜市の福祉施設にて研究事業と臨床医として働きながら保護猫活動に従事

愛犬が黒いうんちをしたとき、病気や余命を心配する方もいるのではないでしょうか。犬の健康状態は「うんち」から読み取れることが多く、食べ物が影響している場合もありますが、健康に問題が生じている可能性もあります。特に黒いタール便は注意が必要です。
今回は、犬の黒いうんちの原因や、すぐに動物病院を受診すべき症状、対処法などを、獣医師の栗山宏美先生監修のもと解説していきます。
目次
- 黒い便が続いたら動物病院を受診して! 見逃せないサインとは?
- 犬が黒いうんちをしたらタール便? 黒や赤いうんちとの違い
- 犬のうんちが黒いとき考えられる3つの要因
- 毎日のうんちチェックで早期発見! 犬の健康観察ポイント
- ストレスなどを予防して犬の健康を守ろう!
- ストレス発散におすすめのおもちゃやグッズ
- まとめ
黒い便が続いたら動物病院を受診して! 見逃せないサインとは?
愛犬のうんちが黒くなったとき、飼い主としては心配になるものです。特に黒くてタール状の便は消化管の出血が原因の可能性があり、緊急性が高い場合もあります。しかし、食事内容によって一時的に黒くなることもあるため、まずは愛犬の体調をよく観察しましょう。
次のような症状が見られる場合は、すぐに動物病院を受診してください。
- うんちの回数や量が異常に多い、または極端に少ない
- 黒い便に加えて赤い便が混ざっている
- 黒いうんちが2日以上続いている
- 便から悪臭がする
- 軟便や下痢が続いている
- 元気がなく、食欲が減退している
- 嘔吐や体重減少がある
- 震えていたり体に触ると嫌がったりする
- 異物を飲み込んだ可能性がある
動物病院を受診する際は愛犬のうんちの状態を正しく伝えることが、適切な診断と治療につながります。そのため、可能であればペットシーツやビニール袋にくるんでできるだけ新鮮な便を持参しましょう。持参するのが難しければうんちの色や形状が分かる写真を見せるのでも構いません。
そのほか、新しいフードを与えたのかなど最近の食事内容や体調の変化をメモしておいて忘れずに伝えましょう。異物を飲み込んだ可能性があり、誤飲したものを特定できる場合は、それを持参すると診察がスムーズに進みます。
犬が黒いうんちをしたらタール便? 黒や赤いうんちとの違い
犬のうんちは健康状態を示す重要なサインです。理想的な便の色は茶色からやや濃い茶色であり、黄土色や若干緑がかった茶色も正常範囲内です。
黒いうんちが出ると「タール便では?」と心配する飼い主も多いでしょう。タール便は消化管出血の可能性があるため注意が必要ですが、黒いうんち=タール便とは限りません。
ここでは、タール便の特徴や一般的な黒いうんちとの違い、赤や緑、白いうんちの意味について解説します。
タール便の特徴
タール便とは、真っ黒で粘り気があり、まるでコールタールのような外観の便を指します。この特徴的な黒色は、消化管内で出血が起こり血液と胃酸とが混ざることで酸化し生じるものです。主に上部消化管(食道、胃、小腸の一部である十二指腸)からの出血が原因で、胃潰瘍や腫瘍、重篤な消化器疾患のサインであることが多く、注意が必要です。
タール便は通常、強い異臭を伴い、粘性が高いため、通常の黒いうんちとは明らかに異なります。また、犬の体調にも変化が表れることが多く、食欲不振、元気の低下、嘔吐、体重減少などの症状が同時に見られる場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。
黒いうんちとの違い
タール便と一般的な黒いうんちは、見た目や発生原因が異なります。黒いうんちは、必ずしも粘性が高いわけではなく、黒色または濃い茶色をしています。主な原因として、食事や薬の影響が考えられます。
例えば、肉類の多い食事や、鉄剤などの薬剤、鉄分を含むサプリメントを摂取した場合、一時的に便が黒くなることがあります。また、腸内環境の変化によって便の色が濃くなることもあります。これらは病的な黒色便とは異なり、特に体調不良が伴わなければ病気の可能性は低いといえます。
しかし、黒いうんちが2日以上続く、下痢を伴う、元気がない、食欲が落ちるなどの異常が見られる場合は、タール便の可能性も考えられるため動物病院で診てもらいましょう。
赤・緑・白いうんちの場合は?
犬のうんちは黒色以外にも、赤、緑、白といった異常な色を示すことがあります。それぞれの色が示す可能性のある原因を解説します。
・赤いうんち
赤いうんちは、食事に含まれる天然の色素(トマト、パプリカ、ビーツなど)や着色料の影響が考えられます。しかし、鮮血が混じっていたり便の表面に赤い血が付着したりする場合は、大腸や肛門周辺からの出血の可能性があり、注意が必要です。赤い色素のものを食べさせておらず、赤いうんちが続く場合は動物病院を受診したほうがいいでしょう。
・緑色のうんち
緑色の便は、犬が草や野菜を食べた際に見られることがあります。しかし、胆汁の影響や、消化器系の疾患(腸炎、胆のうの病気など)が原因の場合もあるため、緑色が続く場合は注意が必要です。嘔吐や食欲不振が伴う場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
・白いうんち
白っぽい便は、脂肪の消化不良や膵臓の機能低下のサインであることがあります。また、寄生虫感染(特に回虫)によって白い斑点や糸状のものがうんちに混ざっているのかもしれません。さらに、ティッシュペーパーやトイレットペーパーなどの誤食の可能性もあります。この場合は腸閉塞などのリスクも考えられるため、白いうんちが出た場合は食欲や元気の変化もチェックし、早めに獣医師の診察を受けてください。
犬のうんちが黒いとき考えられる3つの要因
犬のうんちが黒くなる原因はさまざまですが、大きく分けると「食事の影響」「消化器からの出血」「病気の可能性」の3つに分類されます。肉類や鉄分を含む食事が原因なら一時的であることが多いのですが、出血や病気が関係している場合は早急な対応が必要です。それぞれの要因について詳しく解説していきます。
肉や鉄分含有薬など食事の影響
犬のうんちが黒くなる原因の一つに食事の影響があります。特に肉類(レバーや牛肉など)や、鉄分を含むドッグフード・サプリメント・薬を摂取した場合、一時的に黒っぽい便が出ることがあります。これは血液が消化管内で分解されるのではなく、直接食べた食品の成分が色に影響しているためで、健康に大きな問題はないことがほとんどです。
ただし、黒いうんちが数日以上続く、下痢や嘔吐、元気の低下などの症状がある場合は、食事以外の要因が関係している可能性があります。動物病院を受診し獣医師に相談してください。
なお、受診の際は、便そのものか便の写真を持参し、いつから黒い便が続いているか、最近与えた食事やサプリメントの種類をメモして獣医師に伝えると診察の助けになります。
消化器からの出血
黒いうんちが粘り気のあるタール状である場合は、消化管出血の可能性が高く、早急な対応が必要です。胃や十二指腸などの上部消化管から出血すると、血液が胃酸と混ざって酸化し、黒く変色して排出されます。これは胃潰瘍や胃炎、消化管の腫瘍などが原因で発生します。
また、異物を飲み込んでしまった場合も注意が必要です。例えば、硬い骨やおもちゃの破片が胃や腸の壁を傷つけると、そこから出血して黒い便として現れることがあります。誤飲が疑われる場合は、すぐに動物病院へ行き、可能であれば飲み込んだ異物を持参しましょう。
感染症による出血も考えられます。特に細菌やウイルスが消化管に感染すると、出血性の胃腸炎を引き起こし、タール便が出ることがあります。この場合、下痢や嘔吐、発熱、食欲不振などの症状を伴うことが多いため、動物病院での早急な治療が必要です。
胃炎・胃潰瘍・消化管腫瘍など病気の可能性
犬の黒いうんちは、消化器系の病気が原因で出血している可能性もあります。特に胃炎、胃潰瘍、消化管腫瘍などの疾患がある場合、上部消化管からの出血が慢性的に続き、タール便として現れることがあります。これらの病気は早期発見が重要です。
〈考えられる病気〉
1.ウイルス性胃腸炎:犬パルボウイルス、犬ジステンパーウイルスなどが原因で発症します。重度の下痢や嘔吐、食欲不振などの胃腸障害を引き起こします。
2.寄生虫性胃腸炎:犬回虫、ジアルジアなどの寄生虫が腸内に感染し、炎症や出血のほか、下痢や体重減少などの胃腸障害を引き起こします。免疫が低下している子犬や老犬、他の犬とよく接触する犬などは注意が必要です。
3.細菌性胃腸炎:サルモネラ菌や大腸菌などの細菌感染による胃腸炎で、血便や嘔吐、発熱を伴うことが多いとされています。
4.急性膵炎:高脂肪食などにより膵臓に負担がかかると消化酵素が膵臓自体を消化してしまい、重症化すると消化管出血を引き起こします。強い腹痛や嘔吐を伴い、食欲不振が続きます。
5.消化管内の潰瘍や腫瘍:胃や腸にできた腫瘍やポリープが出血し、タール便の原因になります。進行すると体重減少や貧血の症状が出ることがあります。
これらの病気の早期発見には、定期的な健康診断が有効です。 黒いうんちが続く場合や、食欲低下、体重減少、嘔吐などの症状を伴う場合は、すぐに動物病院を受診し、必要に応じて血液検査や内視鏡検査を受けることをおすすめします。
毎日のうんちチェックで早期発見! 犬の健康観察ポイント
犬の健康を守るためには、毎日のうんちチェックが重要です。便や体調の変化に早く気づければ、病気の早期発見につながります。ここでは、健康観察のポイントを解説します。
定期的に便の状態をチェックし異常を早期発見
犬の便は健康状態を映す鏡です。うんちの色、形状、ニオイ、量、粘液や血液の有無など観察ポイントを押さえておきましょう。
〈便の観察ポイント〉
1.色:理想的な便の色は茶色~やや濃い茶色。黒すぎる場合は消化管出血、赤みがある場合は大腸出血の可能性も。緑や白っぽい便も異常のサインになるため注意が必要です。
2.形状と硬さ:適度に水分を含み、形が崩れない程度の硬さが理想です。柔らかすぎる便や下痢、逆にコロコロとした便は消化不良や水分不足の可能性があります。
3.排便の回数:以下の目安より回数が異常に多い、少ない場合は消化器のトラブルが考えられます。ただし、回数には個体差や食事内容、運動量なども関係するため、愛犬の排便回数を日頃から把握しておくことが重要です。
- 子犬:1日5~6回
- 成犬:1日1~3回
4.ニオイ:食事内容が変わっていないのに異常に強い悪臭がする場合は、消化不良や体調の変化、病気の可能性があります。
5.表面の状態:表面が適度にしっとりしてツヤがあるのが理想です。粘液が多く付着していたり、血が混じっていたりする場合は、大腸炎や寄生虫感染のサインかもしれません。何日も続く場合は早めに動物病院を受診しましょう。
また、老犬や持病のある犬は、健康管理のために便の記録をつけるのも有効です。異常を感じたら、便の写真を撮る癖をつけておくと獣医師の診察の助けになります。
便の状態をチェックする際は健康状態もチェック
便の状態だけでなく、犬の体調全般の観察も重要です。便の異常とともに、活動量の低下や食欲不振などがある場合は、病気の可能性が高まります。
〈健康チェックのポイント〉
1.最近の食事内容
- 新しいドッグフードに変えたばかりか?
- 鉄分を多く含む食材(レバー・赤身肉)を食べたか?
- サプリメントや薬を服用していないか?
2.元気や食欲の変化
- 食欲が落ちていないか?
- 水をあまり飲まなくなったり、逆に多飲になったりしていないか?
- 活動量が減っていないか?
- 寝ている時間が増えていないか?
便の異常は、体調不良のサインであることが多いため、うんちチェックとあわせて全身の健康状態を確認する習慣をつけましょう。 少しでも気になる症状がある場合は、早めに獣医師に相談し、病気の早期発見・予防に努めることが大切です。
ストレスなどを予防して犬の健康を守ろう!
犬が健康に過ごすためには、日々のストレス管理や生活環境の整備が欠かせません。ストレスが原因で胃腸の調子を崩し、黒いうんちの原因となることもあります。
ストレスが消化器系の不調を引き起こすリスクも
犬は環境の変化や孤独などのストレスに敏感な動物です。強いストレスを受けると自律神経のバランスが乱れ、消化器系の不調や、胃炎や胃潰瘍を引き起こすことがあります。これが消化管の出血を招き、結果として黒いうんち(タール便)が出ることもあるのです。
ストレスの要因として、引っ越しや家族構成の変化、騒音、運動不足、長時間の留守番などが挙げられます。これらのストレスを軽減するためには、散歩や遊びの時間を増やし、適度な運動を取り入れることが大切です。
また、住環境を整え、犬が安心できるスペースを確保することも有効です。特に長時間の留守番が続く場合は、知育玩具を活用したり、ペットカメラで様子を見守ったりするのもよいでしょう。飼い主とのスキンシップやマッサージもリラックス効果があり、ストレス軽減につながります。
他の犬との関わり方が寄生虫感染のリスクにも
公園やドッグランなどで他の犬と交流することは犬にとって楽しい時間ですが、感染症や寄生虫のリスクも考慮しなければなりません。特に、愛犬が他の犬の便に触れる行為には注意が必要です。その犬が寄生虫に感染していたら愛犬も感染の恐れが生じます。
寄生虫感染を防ぐためには、散歩中やドッグランで愛犬が他の犬の便に近づかないように注意し、適切な距離を保つことが重要です。また、外で遊んだ後は、足や体をしっかり拭き、清潔を保つよう心がけましょう。寄生虫感染を未然に防ぐために、定期的に動物病院で便の検査を受け、必要に応じて駆虫薬を使用するのも有効です。
また、寄生虫以外にも、他の犬との接触によって細菌やウイルスに感染するリスクもあります。特に子犬や高齢犬、免疫力が低下している犬は感染症にかかりやすいため、健康管理を徹底しましょう。
食事内容や生活環境のチェックも忘れずに
犬の健康を守るためには、食事の管理や生活環境の整備も欠かせません。誤飲や消化不良が原因で黒いうんちが出ることもあるため、日常的に注意を払うことが大切です。
まず、家の中で犬が誤飲しそうなものは、犬が触れられない場所に置くようにしましょう。特に、小さなおもちゃやプラスチック片、石、ボタンなどを飲み込むと、消化器官を傷つける原因になりかねません。
また、食事内容も消化器の健康に大きく関わります。脂肪分の多い食事は膵炎のリスクを高め、消化不良や下痢の原因になることがあります。ドッグフードの成分をよく確認し、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。
ストレス発散におすすめのおもちゃやグッズ
犬の健康を守るためには、適度な運動とストレス発散が欠かせません。毎日の散歩に役立つリードやハーネス、室内でも楽しめる知育玩具や噛むおもちゃを活用することで、愛犬のストレスを軽減できます。
また、快適なトイレ環境を整えるためのペットシーツも重要なアイテムです。これらの犬用品が豊富にそろうカインズオンラインショップでは、機能性の高いグッズを多数用意しています。愛犬の健康と快適な生活のために、ぜひチェックしてみてください!
※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります
※上記商品は獣医師の監修外です。
まとめ
犬の黒いうんちは、食事や薬の影響で一時的に変化することもあれば、消化器官の出血や病気のサインである可能性もあります。特に、黒いうんちが粘り気のあるタール状である場合は注意が必要です。黒いうんちが2日以上続く、嘔吐や下痢を伴う、食欲や元気がないといった症状が見られる場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
また、愛犬の健康を守るためには、日々の健康観察が重要です。便の色や形状だけでなく、排便の回数やニオイ、元気や食欲の変化にも気を配ることで、異変を早期に発見できます。

shared-detail.post-related
愛犬を理解するヒントに。 アニマルコミュニケーターのセッションに密着

shared-detail.post-related
犬の健康診断は何歳から受ければいい?検査内容や費用感、必要な理由などについて解説【獣医師監修】

shared-detail.post-related
愛犬に最適なトイレトレーとは?トイレトレーを選ぶポイントを解説

shared-detail.post-related
犬の糖尿病の症状とは?原因や治療法、予防のポイントなどについて解説【獣医師監修】

shared-detail.post-related
犬の目が白いのは白内障?見極めるポイントと病院に連れて行くべき症状について解説【獣医師監修】