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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
落ち着きがなく部屋の中をウロウロ歩き回ったり、そわそわしているように見えたり、地面を掘る仕草を見せたり、ブルブル震えたりするなど、愛犬の様子がいつもと違うと、どうしても心配になりますよね。犬が落ち着きのない行動をする理由はさまざまですが、何らかの病気のサインである場合も考えられます。この記事では、chicoどうぶつ診療所所長で獣医師の林美彩先生に教えていただいた、落ち着きなくウロウロしているなど、愛犬の様子がおかしいときに考えられる原因や病気、対処法ついて解説していきます。
目次
- 犬が落ち着きなく、ウロウロする原因は?
- 犬の落ち着きがなく、ウロウロしている原因として考えられる病気は?
- 犬の落ち着きがなく、ウロウロしている時の対処法は?
- 犬の落ち着きがなく、ウロウロしている時に病院に連れて行くタイミングは?
- 飼い主が知っておくべき犬がストレスを感じることとは?
- その他にも注意すべき犬のおかしな行動とは?
犬が落ち着きなく、ウロウロする原因は?
犬が落ち着きなく、ウロウロしていると飼い主は不安を感じてしまうこともあるでしょう。そこで、なぜ落ち着きがなくなるのか、原因を解説していきます。
不安やストレス
犬も人間と同じように不安やストレスを感じると、それが行動として現れることがあります。ウロウロと落ち着きをなくすのも、そうした行動のひとつと考えられます。不安やストレスの要因はさまざまですが、引っ越しなどによる環境の変化に適応できていない、食事が足りていない、散歩の回数や運動量に満足していない、飼い主とのスキンシップが不足している、などが考えられるでしょう。
興奮している
犬が興奮状態にあるときに、気持ちの高ぶりによってウロウロと歩き回ることがあります。ご飯の時間や散歩に出かける前など、何かを期待したり喜んだりしているときや、チャイムなどの大きな音に驚いて警戒しているときに、犬は興奮しやすくなります。
怪我をしている
犬が怪我をして痛みを感じていると、落ち着かなくなり、傷口をしきりに舐めたり、眠れなくなったりすることもあります。
病気
犬に落ち着きのない行動が見られたとき、一番心配なのは何らかの病気にかかっている可能性です。体調の悪化によってリラックスできなかったり、うまく寝つけなかったりして、そわそわと動き回ってしまうことがあります。また、認知症による徘徊やてんかんの発作が起きる前兆とも考えられます。
犬の落ち着きがなく、ウロウロしている原因として考えられる病気は?
落ち着きがない状態が続いていると、何らかの病気を患っているかもしれません。主に考えられる病気について紹介していきます。
認知症
犬も高齢になるにつれて認知症の発症数が増加します。認知症になった犬には、部屋の中をウロウロと徘徊したり、同じ方向に何度も旋回したりする行動が見られます。そのほか、夜鳴きや生活の昼夜逆転などの症状が現れることもあります。
副甲状腺機能低下症
副甲状腺機能低下症を発症すると、落ち着きを失ったり、興奮状態に陥ったりすることがあります。これは、副甲状腺(上皮小体)から分泌されるパラソルモンというホルモンの分泌が何らかのきっかけで減少することによって、低カルシウム血症が起こり、震えや運動失調などの症状が見られる病気です。
てんかん
てんかんは、脳神経系の伝達異常によって起こる発作です。その程度はさまざまで、落ち着きのない動きをすることもあれば、倒れて痙攣を起こしてしまうこともあります。すでに痙攣を起こしたあとにウロウロと動き回ることもあるので、発作が起きたかどうかわからないときは、よだれを垂らしていないかがひとつの判断材料になります。
気象による気圧の変化の影響を受けることも
犬も人間と同じように、気圧の変化によって落ち着きがなくなったり、怠さや頭痛、関節痛などが生じたりする気象病による体の不調が見られることがあります。
犬の落ち着きがなく、ウロウロしている時の対処法は?
犬が落ち着きない時の原因や疑われる病気が分かったところで、どのように対処すれば良いでしょうか。認知症とそれ以外に分けてご紹介します。
認知症が疑われる場合
認知症になると、徘徊によって壁にぶつかったり、狭い場所や隙間に入り込んでしまったりします。こうした危険な行動を避けるためにも、サークルを設置して、行動範囲をある程度限定してあげるとよいでしょう。同じ方向に何度も旋回する行動をとることもあるので、同じ方向に動き続けることができるよう、円状のサークルを設置するのがおすすめです。また、疲れて倒れてしまったときに骨が折れないよう、底面にはクッション性のあるマットを敷いておくと安心です。
認知症以外の場合
病気でなければ、犬を安心させてあげるのが一番です。優しく声をかけたり、撫でてあげるなど、犬がリラックスできることをしてあげましょう。
犬の落ち着きがなく、ウロウロしている時に病院に連れて行くタイミングは?
落ち着きがない時、ウロウロしている場合にどのタイミングで病院へ連れて行けばいいか悩んでしまう方も多いかと思います。以下のポイントを押さえて、しっかりと必要なタイミングで受診する様にしましょう。
様子を見て良い場合
環境の変化による不安、ご飯や散歩を期待しての興奮状態など、明らかに精神的なストレスが原因とわかる場合であれば様子を見て問題ありません。犬が不安に感じていることを取り除いてあげたり、求めていることに応えてあげたりすることで行動が落ち着くかどうかを確認してみましょう。
すぐに動物病院に行く必要がある場合
落ち着きがないだけでなく、震えや痙攣が起きてしまったり、神経過敏、認知症の症状(夜鳴きや同方向の旋回運動、昼夜逆転など)、性格の変化、よだれ、失禁などが見られる場合には動物病院を受診してください。
飼い主が知っておくべき犬がストレスを感じることとは?
犬がストレスに感じることをしないようにすることで、犬の落ち着きのない状態や興奮を避けられるかもしれません。犬がストレスに感じることをまとめましたのでしっかりと押さえておきましょう。
犬がストレスを感じること
ひとりきりでの留守番や、ペットホテルなどいつもの環境と違う場所での長時間の滞在は犬がストレスを感じやすいシチュエーションです。また、暑さ、寒さ、明かりの強さといった生活環境が体に合っていないことによってストレスを感じることもあります。
犬にストレスを与える飼い主の行動
飼い主さんがイライラしていたり、慌ただしく動いていたりしていると、犬もその様子を感じ取ってストレスを感じやすくなります。芳香剤や柔軟剤、香水などの匂いを嫌う犬もいるほか、急な物音や真正面から近づく行為などもストレスを与えてしまうことがあります。
その他にも注意すべき犬のおかしな行動とは?
上記で紹介した行動の他にも、注意すべきサインや行動がいくつかあります。対処法についても紹介するので、愛犬の状態を細かくチェックしてあげるようにしましょう。
いつまでも同じ場所をグルグル回る
心配しなければいけないのは、認知症の可能性です。認知症と診断された場合は治療を進めていく必要があります。また、病気ではなく、気持ちが落ち着かずに起こる常同行動(同じ行動を何度も繰り返すこと)とも考えられます。気持ちの面からくる行動の場合は、声をかけてあげたり撫でたりして犬を落ち着かせてあげることが大切です。
自分の体をしつこく舐める
ストレスが原因の場合もあれば、アレルギーや皮膚炎などのかゆみや痛みで体を舐めていることもあります。同じ場所を繰り返し舐めているようであれば、炎症などが起きていないか確認してみましょう。
人や他の犬に激しく飛びつく
威嚇や飼い主さんを守るための行動とも考えられます。一時的なものでなく、人や他の犬に会うたびにそうした行動をとる場合は、しつけ教室などに通って、興奮しないようトレーニングすることも有効です。
お尻を床にこすりつける
肛門腺に分泌物が溜まっていたり、肛門付近に違和感がある場合に見られる行動です。病院で肛門腺の溜まり具合や他の異常がないかを診てもらうとよいでしょう。
頻繁に地面を掘るしぐさをする
ストレスが原因の場合や、喜びの感情から掘るしぐさをする場合もあります。掘るということが犬にとってのご褒美になっている場合もありますので、やめさせるかどうかは見極めが重要です。ストレスが原因であれば、一緒に遊んであげたり、気持ちを落ち着けるようなハーブなどを使ってみるのもおすすめです。
家具などを噛み続ける
ストレスや栄養バランスが崩れていることによる異食の可能性も考えられます。ストレス緩和対策や、食事の見直しを行い、行動が改善されるかを確認してみましょう。
狭いところに入り込んだまま出てこない
認知症による徘徊が考えられます。同じ行動を繰り返すようであれば、狭いところに入らないように対策をしたり、円状のサークルを使って行動範囲を限定してあげるとよいでしょう。
夜鳴きがひどい
夜鳴きも認知症の代表的な症状です。犬の行動が昼夜逆転しているようであれば、日中になるべく起きていてもらえるように犬とコミュニケーションをとったり、適度に運動をさせたりして、生活リズムを調整してみてください。どうしても難しい時は獣医師に相談し、サプリメントや薬を使って体の状態を整えてあげるとよいでしょう。
第2稿:2021年4月19日更新
初稿:2020年2月28日公開