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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
穏やかな大型犬として人気の高いバーニーズ・マウンテン・ドッグ。その魅力は、たっぷりとした大きな体と、穏やかで愛情深い性格でしょう。番犬としても優秀で、家族に寄り添い、忠実に守ろうとします。一緒に生活し、その優しさに触れるうちに、いつしか家族にとってなくてはならない存在となるでしょう。飼いやすい犬種ではありますが、短命な傾向があります。そこで、今回は獣医師の林美彩先生に教えていただいた、バーニーズ・マウンテン・ドッグの性格の特徴や飼い方の注意点、体調管理のコツについて解説していきます。
目次
- バーニーズ・マウンテン・ドッグの歴史やルーツは?
- バーニーズ・マウンテン・ドッグの体高・体重・平均寿命は?
- バーニーズ・マウンテン・ドッグの毛色の種類や被毛の特徴は?
- バーニーズ・マウンテン・ドッグはどんな性格?オスとメスで違いはあるの?
- バーニーズ・マウンテン・ドッグを飼うのに向いている人は?
- バーニーズ・マウンテン・ドッグの飼い方や生活上で注意すべきことは?
- バーニーズ・マウンテン・ドッグのしつけを始める時期や心がけておくべきことは?
- バーニーズ・マウンテン・ドッグを散歩させる際に気を付けたいことは?
- バーニーズ・マウンテン・ドッグにおすすめの遊びは?
- バーニーズ・マウンテン・ドッグの食事の注意点は?
- バーニーズ・マウンテン・ドッグがかかりやすい病気とその予防法は?
- バーニーズ・マウンテン・ドッグの日常のお手入れで気を付けることは?
バーニーズ・マウンテン・ドッグの歴史やルーツは?
バーニング・マウンテン・ドッグの歴史は大変古く、2,000年以上前にさかのぼります。ローマ帝国のスイスへの侵攻、統治の際に、ローマ軍と共に入ってきたマスチフ系の犬と、スイス山岳部の土着犬の交雑といわれています。ファーム・ドッグ(農場で飼われている犬)で番犬として飼われたり、荷馬車を引く犬として用いられたりしており、スイス山岳地方では牛追い犬として活躍していたと言われています。
ベルン州のリギ山の近くの村落とデュールバッハの旅館の名前を由来とし、当初は、「デュールベッヘラー」と呼ばれていました。1907年に、ブルクドルフ地方のブリーダーが集まり、「スイシ・デュールバッハ・クラブ」を設立し、この犬種の純血繁殖を推進しました。そして、1910年ごろに現在のバーニーズ・マウンテン・ドッグという犬種名に変更になり、スイス国内のみならずドイツでも高い評価を得るようになりました。
バーニーズ・マウンテン・ドッグの体高・体重・平均寿命は?
バーニーズ・マウンテン・ドッグは家庭で飼われている代表的な大型犬です。平均的な体高はオスが64~70㎝、メスでは59~66㎝。平均体重はオスが41~59kg、メスが32~45㎏です。
平均寿命は7~11歳で、比較的寿命が短いと言われている大型犬の中でも、短いほうです。バーニーズ・マウンテン・ドッグについて、スイスのことわざに、 “生後3年で若犬、3年経ったら良犬、その後の3年で老犬になり、それから先は神からの贈り物”というものがあるそうです。とは言っても、20年以上生きる個体もいますので、環境を整え、体調管理に気を配ることで長生きしてくれることもあります。
バーニーズ・マウンテン・ドッグの毛色の種類や被毛の特徴は?
バーニーズ・マウンテン・ドッグは毛がアンダーコート(下毛)とオーバーコート(上毛)の二重構造(ダブルコート)になっています。毛色は黒・白・赤褐色の3色を併せ持ったトライカラーのみです。
「リッチ・タン」と呼ばれる赤褐色のマーキングが、頬・目の上・胸・足にそれぞれあります。マーキングが左右対称なのも大きな特色です。目の上のマーキングが眉毛のように見え、愛嬌のある表情を作っています。足先が白く、まるで靴下を履いているかのように見えるのも可愛いですね。スイス原産らしく、スイス十字の形をしている胸のホワイトマーキングが好まれることがあるようです。
バーニーズ・マウンテン・ドッグはどんな性格?オスとメスで違いはあるの?
バーニーズ・マウンテン・ドッグは、家族に対する愛情が深く従順な犬種です。注意深く、穏やかな性格なので、お子さんがいる家庭でもうまく暮らしていけるでしょう。子犬の頃はやんちゃな子もいますが、成長するにつれて落ち着いてきます。成犬になると、散歩中にほかの犬に吠えられても落ち着いた態度で無視するようになるので安心です。番犬がルーツということもあり、不審な人が近づくと、低く大きな声で危険を知らせ、飼い主や家族を守ろうとしてくれます。ちなみに、オスとメスで性格の違いについては特にないと考えられています。
バーニーズ・マウンテン・ドッグを飼うのに向いている人は?
先に述べたように、バーニーズ・マウンテン・ドッグは豊富な運動量を必要としますので、体力のある元気な人に向いています。1回1時間程度のお散歩に毎日連れていけることがマストです。また、散歩時などは、しつけをするとは言え、バーニーズ・マウンテン・ドッグがひっぱる力をコントロールができるくらいの力持ちの人のほうが安心です。
また、バーニーズ・マウンテン・ドッグはもともと寒さが厳しいスイスの山で育った犬なので、寒さには強い一方で暑さにはとても弱いです。そのため、日本の夏の環境を考えると、室内飼育ができる人のほうが望ましいです。孤独を嫌うという点でも、できれば生涯を通して家族とともに屋内で暮らせることが理想です。また、抜け毛が多いのでアレルギーを持っていない人や毛が気にならない人がいいでしょう。
バーニーズ・マウンテン・ドッグの飼い方や生活上で注意すべきことは?
温厚で扱いやすいと言っても大型犬なので、万一人間にとびかかったり噛んだりすれば、事故につながってしまいます。しつけに関しては後述しますが、どうしてもしつけが難しい場合は犬の幼稚園やしつけ教室などを積極的に利用して訓練するといいでしょう。
室内で飼う場合は特に、きちんとしつけができている必要があります。バーニーズ・マウンテン・ドッグは家族と一緒に過ごしたがる子が多いので、室内で飼うことで孤独やストレスを感じさせないで済みます。一方で、豊富な運動量を必要とするので、散歩を欠かさないようにしてあげてください。とはいえ、高温多湿の日本の夏を苦手としていますので、夏の散歩での熱中症には注意してあげましょう。
バーニーズ・マウンテン・ドッグのしつけを始める時期や心がけておくべきことは?
他の犬種にも言えることですが、しつけの開始が早ければ早いほど順応しやすいので、迎え入れて環境に慣れたら、すぐにしつけを始めます。子犬のころはやんちゃな一面もありますが、大声をあげたり、叱ったりということはせず、いい行動をしたときに褒めるようにしてあげるといいでしょう。
また、大型犬ともなると声も大きいので、子犬のうちにムダ吠えをしないようなしつけをしておきたいところです。散歩の時にはリードを強く引っ張りすぎないように、子犬の時からしつけておくといいでしょう。訓練はしやすいほうですが、やや頑固な面があるので、犬の様子を見ながら気長にしつけることが大切です。穏やかな犬種だからと油断して、しつけに手を抜いてしまうことのないようにしましょう。
バーニーズ・マウンテン・ドッグを散歩させる際に気を付けたいことは?
バーニーズ・マウンテン・ドッグは、もともと山岳地方の生まれということもあり、元気で運動量が豊富です。そのため、散歩は、最低でも1日2回、それぞれ30分~1時間程度するようにしましょう。力が強いバーニーズ・マウンテン・ドッグの散歩に慣れるまで、サポートの方も含めて散歩をするのがおすすめです。できれば庭のある環境で育て、散歩以外にも運動できるようにしてあげるのが理想です。それが難しい場合は、広いスペースで遊ばせる、アップダウン、あるいは階段の多い道を散歩コースに選ぶなど、とにかく運動量を確保することを心がけましょう。
バーニーズ・マウンテン・ドッグにおすすめの遊びは?
生後60日頃まではまだ関節の状態が不安定なので、走り回ったりジャンプさせたりする激しい遊びは避けたほうがいいでしょう。成犬になったら、のびのびと走らせることができるドッグランに連れて行ってあげてください。また、おもちゃで遊ぶのも喜びます。その場合、おもちゃは飲み込まないサイズのものを選ぶようにしましょう。賢い犬種なので、室内で飼い主さんとスキンシップをはかりながら、ノーズワークなどを行うのもおすすめです。
バーニーズ・マウンテン・ドッグの食事の注意点は?
バーニーズ・マウンテン・ドッグは食欲旺盛なので、肥満になりやすい傾向にあります。前述しましたが、関節に負荷がかからないよう、体重管理は必須です。体も大きいし、運動もしているのだから、とつい欲しがるだけ与えてしまうと、気づいたら適正体重を大きく超えてしまっていたということにもなりかねません。成長が早いので、適正な量のフードを与えるのが難しい時期がありますが、基本的にパッケージに書かれた目安を守って、与え過ぎないようにしましょう。市販のものでも手作り食でも、体重変動を見ながら量を調節してあげることが大切です。また、量を控えめにして、何度かに分けて与えるようにすると、食べ過ぎを防ぐことができます。
バーニーズ・マウンテン・ドッグがかかりやすい病気とその予防法は?
バーニーズ・マウンテン・ドッグは大型犬としては寿命がやや短い犬種になります。かかりやすい病気やその予防法、気をつけるべきことを押さえて、少しでも長く一緒に暮らせるようにしましょう。
関節系疾患
前十字靭帯断裂や股関節形成不全など関節系疾患を患いやすい傾向になります。治療としては、外科的処置が必要な場合や、内服で様子を見るケースなどがあります。肥満や急な体重の増加が引き金にもなりますので、日常的に体重管理をすることが重要です。
悪性腫瘍
当初、近親間での交配を繰り返せざるをえなかったせいか、遺伝疾患による悪性腫瘍ができやすいと言われています。外科的摘出や抗がん剤、放射線などで積極的治療を行うこともあれば、対症療法を行うことがあります。
胃捻転
胃捻転はなんらかの原因で胃が時計回りにねじれてしまい血液循環が悪くなる病気で、外科的処置が必要となります。バーニーズ・マウンテン・ドッグは胃捻転になりやすいと言われているので、注意してあげましょう。落ち着きがなくなる、呼吸が荒い、腹部が大きく膨らむなどの症状が見られたら、すぐに獣医さんの診察を受けましょう。食後3時間程度あけて散歩に行くことが予防につながります。