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初めて犬を飼う方は、これから一緒に暮らしていくための費用がどれくらいかかるか、気になるかと思います。犬を飼うことは命を預かることなので、大きな責任が伴うもの。迎え入れる前に、生涯幸せに育てられるだけの費用を確保できるのか、現実的に見つめて検討しましょう。この記事では、犬を飼う際にかかる費用について、家庭動物診療施設 獣徳会の獣医師・吉田尚子先生の監修のもと解説します。
目次
- 犬を飼う際の初期費用は?
- 犬を飼う際にかかる1か月あたりの支出は?
- 犬を飼う際にかかる生涯費用は?
犬を飼う際の初期費用は?
犬を迎え入れるときにかかる初期費用は、犬の購入費以外にもいろいろあります。まずは、どんな費用がかかるのか見ていきましょう。
犬の購入費:約30,000〜1,000,000円(犬種により異なる)
犬をペットショップやブリーダーから購入する場合、一般的には30,000〜300,000円程度、犬種によっては500,000〜1,000,000円程度かかります。里親として保護団体などから譲り受ける場合は、基本的に費用はかかりませんが、経費として20,000〜40,000円程度を負担するケースもあります。経費の項目は主に犬の健康に関するもので、ワクチン接種や、ダニ・寄生虫などの検査・駆虫をする場合が多いです。
畜犬登録費:約3,000円
犬を飼う際は、自治体に届け出をする必要があり、登録料として3,000円程度かかります。
狂犬病予防接種費:約3,500円
狂犬病は人と動物共通の感染症で、治療法が確立されていないことから感染後の致死率がほぼ100%の恐ろしい病です。現在の日本は狂犬病の発生がない清浄国ですが、アジア諸国を含む世界150か国では狂犬病の発生が確認されていて、年間60,000人弱が亡くなっています。
飼い犬に狂犬病の予防接種を受けさせることは、日本国内で犬を飼育するすべての人に、法律で義務づけられています。万が一、狂犬病が日本国内に持ち込まれた際に愛犬や自分の身を守るため、また国内で流行らせないため、狂犬病ワクチンは毎年必ず接種しましょう。費用は注射済票の交付料とあわせて3,500円程度です。
混合ワクチン接種費:約5,000〜10,000円
犬がかかりやすいさまざまな病気を防ぐために接種するワクチンで、命にかかわる感染症や人と動物に共通する感染症の予防につながります。初年度は、子犬が生まれた時期によって2〜4回、翌年からは年1回の接種が一般的。5種、7種、11種など予防できる病気の数を選ぶことができ、一般的な8種混合ワクチンの費用は8,000円程度です。トリミングサロンやドッグランによっては、利用時にワクチン接種証明書の提出を求められることがあるので、きちんと接種し証明書を保管しておきましょう。
グッズ代(最初にそろえた方がよいもの):約15,000~50,000円
ここからは、最初に準備すべきグッズとかかる費用について紹介します。犬の大きさによって金額に幅があり、小型犬であれば全部で15,000円前後、大型犬であれば50,000円前後が目安です。
サークル:約4,000円
サークルは、犬が安心して休息する場所、留守番時に過ごす場所、排泄する場所などとして活躍します。素材や大きさによって費用は異なりますが、平均で4,000円程度。100円均一やホームセンターで材料を購入し、手作りする方法もあります。
ケージ:約6,000〜30,000円
ケージ(クレート)は、犬のしつけのためだけでなく、居場所づくりとしても必要です。家族内で、犬が「ケージに入っているときは触れない」などのルールを決め、落ち着いて過ごせる環境をつくってあげましょう。価格はサイズによって異なり、小型犬用で6,000円程度、大型犬用で30,000円程度が目安です。
旅行などに行く場合は、折り畳み式のものが便利でしょう。日頃から犬がケージを使うことに慣れていると、万が一災害に遭ったときの避難先などでも安心です。
トイレ:約2,000円
トイレのフレームとシートは、犬を自宅に迎える際に必ず用意しましょう。シートはサイズや消臭性能によっていくつか種類がありますが、おすすめなのは吸水力の高いタイプです。トイレが汚れにくくなり、清潔な状態を保てます。価格はフレームとシートあわせて2,000円程度ででしょう。
食器:約1,000〜8,000円
食器はフード用と水用の2つを用意しましょう。ステンレスや陶器製だと、プラスチックよりも汚れや小さな傷がつきにくいので衛生的。価格は素材や大きさ、デザインによってさまざまです。
大型犬や胸の深い犬(グレート・デン、ボクサー、ドーベルマンなど)は、胃拡張や胃捻転を予防するため、高い位置で食事をすることが理想的です。無理なく食べられるよう、食器ホルダーや台もあわせて用意してあげましょう。また、早食い防止用の専用食器もチェックしてみてください。
おもちゃ:約1,000円~4,000円
犬の健やかな成長を助けるため、おもちゃを用意しましょう。引っ張りっこするタイプのおもちゃは、飼い主さんと一緒に楽しめるのでストレス解消に向いています。おやつを中に詰めるタイプの知育おもちゃは、集中力のトレーニングや留守番に最適です。価格は種類や数によりますが、1,000〜4,000円程度と考えておくとよいでしょう。
グッズ代(後から用意しても大丈夫なもの):約5,000〜13,000円
次に、犬の成長に合わせて順次用意するといいグッズとかかる費用を紹介します。里親として成犬を迎える場合は、最初から用意しておいてくださいね。
首輪・リード:約1,500円
散歩やしつけのため、首輪とリードを用意しましょう。一般的な首輪タイプは、飼い主の意思を犬に伝えやすいので、子犬のトレーニングに向いています。大型犬の子犬期や引っ張りが強い犬の場合は、前胸部にリードをつなぐハーネスタイプが有効かもしれません。とげつきの首輪や引っ張ると首が閉まるタイプのチョークカラーは、犬にダメージを与え、信頼関係を損なう恐れがあるため使用しないようにしましょう。価格は首輪とリードあわせて1,500円程度です。
キャリーバッグ:約3,000円
キャリーバッグは、動物病院に行く際などに使用します。ほかにも、小型犬や中型犬が公共交通機関を利用する際には必須で、ペット同伴OKの商業施設でも「キャリーバッグに入れること」が条件になっていることが多いです。ハードタイプなら大型犬の場合や車中で使いやすく、移動先ではクレートとして利用できるでしょう。価格は一般的に3,000円程度です。
毛布・マット:約1,000〜8,000円
自宅にあるものでも十分ですが、寝床やキャリーバッグ内に使用する犬用の毛布・マットを用意してもよいでしょう。たくさん種類がありますが、丈夫で爪に引っかかりにくく、洗濯可能なタイプがおすすめ。なかには、夏場にぴったりなヒンヤリ感が続くクールタイプ、寝心地のよいクッションタイプなどもあります。価格は大きさや素材、機能によってさまざまです。
犬を飼う際にかかる1か月あたりの支出は?
犬種や犬のサイズ、イレギュラーな出費によって多少変動はありますが、1か月あたり約14,000円程度かかります。それぞれの内訳を見ていきましょう。
食費:約3,000〜6,000円
一口に犬と行っても、体重2kg以下〜70kg前後までと、犬種によって体格が大きく異なるため、必要なえさの量も変わってきます。また、フードの素材や、処方食(アレルギー、尿路結石、慢性疾患などを抱えている場合のえさ)かどうかによっても価格に差があります。一般的に、小型犬は1か月3,000円前後、大型犬は6,000円前後を目安として考えておきましょう。
トリミング代:約4,000〜10,000円
月に1回、トリミングサロンに通って被毛をカットしてもらいます。価格は超小型犬や小型犬の場合は4,000円前後〜、大型犬は10,000円以上かかることもあります。サロンごとに、犬種やコート(被毛)の長さ、カットスタイルで料金を定めているので、近所のトリミングサロンを確認してみてください。また、極端に毛玉や被毛の絡みが見られる場合や、皮膚疾患用の薬浴をする場合は、追加料金が必要になることもあります。
爪切り代:約500〜1,000円
爪が伸びすぎると、引っかかって折れたり、肉球に食い込んでケガをしてしまったりするほか、フローリングで滑って足腰を痛めてしまう恐れもあります。定期的にカットし、短く清潔な爪をキープしましょう。動物病院やトリミングサロンで爪切りを行う場合は、500〜1,000円程度かかります。
日用品代:約1,500円~3,000円
トイレシートやトイレクリーナー、ブラッシング用のスプレー、歯ブラシや歯みがきシート、ボディシートやグルーミングスプレー、犬用シャンプーなどの日用品が必要になります。年間で、小型犬の場合は22,000円程度、大型犬の場合は34,000円程度かかるので、月々では1,500〜3,000円程度必要になると考えておきましょう。
ペット保険代:約2,000円~
犬は人間のような健康保険制度がないため医療費が高額になりがちです。ケースによってはペット保険を検討しましょう。金額は、補償内容や、犬の大きさ・加入時の年齢などによってさまざまですが、月々2,000円前後のプランから用意されています。
1か月の生活費のうち犬にかける費用は何割程度が理想?
収入や家族構成、家族の年齢などによって異なりますが、生活費のうちのペット費用は5〜10%が目安です。子犬で迎え入れた場合は約15年、犬が健やかに暮らしていけるか事前に考えましょう。
犬を飼う際にかかる生涯費用は?
犬種や飼い方にもよりますが、1か月約14,000円×12か月×約15年=約2,500,000円が目安になります。そのほかの特別出費として、以下の費用などもかかるでしょう。
医療費:健康状態・体の大きさ・病院などにより異なる
ケガや病気、誤飲・誤食などの事故があった場合に随時治療を行います。病気によっては継続的な通院や投薬の費用もかかるでしょう。
健康診断:約8,000~30,000円
病気の早期発見のため、健康診断を必ず受けましょう。犬は人間に比べて成長が早いため、若いうちは年1回、シニアになったら年数回程度のペースで受けることをおすすめします。金額は診断内容によって変わりますが、簡単なもので8,000円程度、より詳細に調べるものだと30,000円程度かかります。
避妊・去勢手術:メス約25,000~50,000円 オス約15,000~35,000円
発情期のストレスや病気のリスクを軽減させるため、避妊または去勢手術をすることがあります。手術を受けるかどうかは飼い主の判断次第ですが、不妊治療をしていない場合、ドッグランやドッグカフェ、ペットホテルなどで他犬に迷惑がかかることもあります。メスの避妊手術の場合は25,000〜50,000円程度、オスの去勢手術の場合は15,000〜30,000円程度かかるでしょう。
ノミ・マダニ予防:約1,000〜2,000円
ノミやマダニの感染に対して予防措置を講じます。犬の体重や薬剤によって費用は異なりますが、1,000〜2,000円程度が平均的です。
フィラリア予防:約8,000~20,000円/年
年1回の血液検査でフィラリアに感染していないかを調べ、数か月にわたり予防薬を投与します。ノミ・マダニ予防薬とセットになっている薬が便利でしょう。価格は犬の体重や薬剤の種類によって変動するので、8,000〜20,000円と幅があります。
レジャー代:約7,000円/年
愛犬と一緒に楽しめるレジャースポットを訪れる場合、施設の入館料や利用料などがかかります。どれだけ行くか、どこに行くかでかかる費用は大きく変わりますが、年間7,000円程度が一般的です。
ペットホテル代:約4,000〜6,000円/日
出張や旅行など、愛犬を同伴することができない場合はペットホテルを利用することがあるかもしれません。費用は犬の大きさや施設によって異なりますが、1日あたり4,000〜6,000円程度かかります。
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