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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
外での散歩が必須な犬たちは思っている以上にノミ・マダニに寄生されるリスクがあります。特にマダニは吸血するだけでなく、病気の原因になることもある怖い存在なんです。今回は、獣医師の林美彩先生にノミ・マダニ対策について伺いました。正しい知識をつけて、しっかりと予防しましょう。
目次
- 犬の皮膚炎や脱毛はノミ・マダニが原因かも!?
- 暗くてジメジメとした場所はノミに注意!
- 春から秋にかけての草むらではマダニの寄生に注意!
- ノミ・マダニの予防は予防薬の投与がもっとも確実
犬の皮膚炎や脱毛はノミ・マダニが原因かも!?
犬が皮膚をかゆがったり、皮膚が赤くなっているなど皮膚炎の症状が見られたり、脱毛などの症状がある場合。それはノミやマダニが原因かもしれません。
マダニに刺された場合は、貧血やダニ麻痺症(筋肉の麻痺)が起こることもあります。その他、元気消失や発熱、食欲不振、倦怠感、黄疸といった症状が見られることも。最悪の場合は死につながるケースもあるため、予防が必須です。
犬の皮膚や生活している場所に黒いツブのようなものが見られるときは、ノミ糞の可能性を疑ってください。
暗くてジメジメとした場所はノミに注意!
ノミの大きさは約1~3mm程度。褐色で6本足の節足動物(昆虫)です。日の当たらないジメジメとした草むらや室内に生息し、幼虫時は基本的に人や動物のフケや食べカスなどを餌にしています。
気温や室温が13度以上になると繁殖を始め、20~30度で繁殖サイクルがピークになります。1~6日程度で卵から孵化し、孵化から2度の脱皮を経て成虫になるまでの期間は約2週間程度だといわれているため、繁殖スピードは相当なものです。成虫が動物に寄生してからのスピードも非常に速く、吸血するのは8分以内、産卵するのは36~48時間以内、一度の産卵で平均30個の卵を生むとされています。
もし、愛犬にノミがついているのを見つけたときは、駆除薬・予防薬を使ってノミを落とすようにしましょう。爪で潰すと卵が飛び散ってしまうためNGです。また、犬が生活している場所を清潔に保っておく必要があります。ベッドなどは、特にしっかりと清掃してあげてください。
春から秋にかけての草むらではマダニの寄生に注意!
マダニは約3~4mmの大きさで、8本足の節足動物です。草むらに生息し、動物の血液を餌にしており、春から秋(3月〜11月)にかけて気温が15度を超えると活発に活動します。
マダニは幼ダニ期、若ダニ期、成ダニ期、ライフサイクルのどの段階でも吸血するため注意が必要です。約20~30日程度で卵から孵化した幼ダニは、動物に寄生し、3~7日程度吸血します。その後、地上に落ちて脱皮し、若ダニに。若ダニも幼ダニと同様に動物に寄生して吸血し、地上へ落下、脱皮ののち成ダニへと近づきます。
成ダニは動物に寄生し約1~2週間程度をかけて吸血します。メスの場合には飽血(吸血し最大に膨らんだ状態)した後に地上で産卵。産卵時は2~3週間で2,000~3,000もの卵を産みます。
もし、愛犬にマダニがついているのを見つけたときは、動物病院で処置してもらってください。無理やり取り除こうとすると、マダニの口にあたる部分が皮膚に残ってしまい、炎症を引き起こす可能性があるためNGです。やむを得ずオーナーが取る場合は、必ず専用の除去器具を使ってください。
ノミ・マダニの予防は予防薬の投与がもっとも確実
ノミ・マダニを予防するためには、ノミ・ダニが多く潜む草むらや茂みなどにはあまり近づかない他、薬を上手に使いましょう。基本的に1つの薬で、ノミ・ダニの両方を予防してくれることが多いです。薬には、塗布するタイプ、経口薬、ノミ取り首輪などがありますが、予防薬を使うのが、もっとも確実な方法です。
予防薬の中で手軽なのは、背中に垂らすだけのスポットタイプです。血を吸われる前から駆除ができるため、経口薬が苦手な子におすすめです。しかし、塗布部分がベタつく、塗布後数日はシャンプーができない、皮膚炎を引き起こす可能性があるといったデメリットもあります。また、予防薬と言っても薬であることに変わりはありません。予防接種をした日や体調がすぐれない日は投与を控えるべきでしょう。
経口薬はおやつタイプなので投与が簡単です。服用後すぐにシャンプーなどもできるのがうれしいポイントですが、すでに血を吸われている(ノミ・マダニがいる)状態でないと駆除ができません。他の予防法として、虫除けスプレーを使ったりノミ・マダニに対して効果のあるアロマなどを使ったりするのもオススメです。
実はマダニが媒介する病気の中には人間にもうつる感染症が多数あります。中には「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」など、重篤な症状につながることも。犬のためにはもちろんですが、人間にとっても危険なので、予防は怠らないようにしましょう。
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