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日・米・英にて行動診療やパピークラスを実施する動物行動コンサルティングはっぴぃているず代表。日本でまだ数十名しかいない獣医行動診療科認定医として幅広く活躍。
飼い主がくつろいでいるときや就寝するとき、犬が足元で寝ているのを見るとほっこりしますよね。実は、何気ないこの行動からも犬の気持ちを探ることができます。この記事では、犬が飼い主の足元で寝る理由、メリットや注意点などについて動物行動コンサルティングはっぴぃているず所属の獣医師、フリッツ吉川綾先生に詳しく解説していただきます。
目次
- 寝る場所で犬の心理と飼い主との関係性がわかる?
- 犬が飼い主の足元で寝る理由とは?
- 犬が飼い主の足元で寝ないのは信頼関係がないから?
- 犬が飼い主の足元で寝るメリット
- 犬が飼い主の足元で寝るデメリット
- 犬が飼い主の足元で寝ている際の注意点
- 犬が足元で寝るのをやめさせる方法は?
寝る場所で犬の心理と飼い主との関係性がわかる?
犬が飼い主のそばで寝るのには、犬の性格やベッド・布団の大きさなど、さまざまな要因があります。そのため、犬の寝場所で飼い主との関係性をはっきりと予想することは難しいでしょう。しかし多くの場合、飼い主のそばで寝る犬には甘えたい、不安を感じているといった以下のようなケースが考えられることもあります。
飼い主の足元で寝ている場合
足元は、顔やからだの周りよりもスペースがあるので、飼い主も犬も安心して寝られることが多いです。ただし、飼い主が足を動かすことで攻撃したり唸ったりする犬もいます。足元で寝ているから正しい絆ができている、飼い主への忠誠心が強いとは限らないでしょう。
飼い主の頭の近く、胸元で寝ている場合
甘えん坊な性質の犬や、犬がちょっと不安を感じているときに見られます。いずれも飼い主の注目を得て安心したいためでしょう。飼い主自身も、就寝時に愛犬が近くにいることで安心するかもしれません。しかし、自分の快適さより犬の快適さを優先して我慢していませんか? その場合は、ちょっとした出来事がきっかけで不安・不満・不快といったネガティブな感情が生じたり悪化したりし、その後の犬との信頼関係がこじれてしまうことも考えられます。常に犬が頭の近くや胸元で寝ることを許す飼い主は注意しましょう。
犬が飼い主の足元で寝る理由とは?
犬が飼い主の足元で寝る理由には、下記が考えられます。
人用のベッドや布団が快適
単純に人が使うベッドや毛布などの寝具が快適なため、飼い主の寝場所でくつろいでいるだけかもしれません。
安心できる
飼い主がソファでゆっくりしているときに足元で犬が寝ているのは、飼い主の近くにいると安心できるからだと考えられます。犬の視界には飼い主の足元が入っていて、近くに存在を感じることで落ち着くのでしょう。その際に撫でてあげたりスキンシップをとったりすると、犬は学習してその後も足元で寝ることが増えるかもしれません。
甘えている
犬が飼い主の足元で寝ている間、飼い主が声をかけてくれたり撫でてくれたりすると、犬はそれを学習します。そのため、甘えたいときにはますます飼い主の足元に寄り添うようになっていきます。
食べ物が欲しい
キッチンで料理をしているときや、飼い主の食事中に足元で寝ているのは、落ちてくる食べ物を楽しみに待っているからかもしれません。
不安・不満・不快のサイン
特に臆病な性格の犬は、怖いことがあったり不安になったりすると飼い主の近くにいたがるでしょう。その場合、無理に離す必要はありません。ただし、不安そうな行動、怖がっている行動をなだめたり、声をかけたりしないようにしましょう。
いつもに以上に近くにいたがる場合は、不安・不快・不満の感情のサインかもしれません。恐怖や不安のきっかけとなるような出来事はないか? 痛みや不調はないか? 遊んであげられていない、運動が足りていないなど犬の欲求を満たせていないことはないか? 下記の「5つの自由」を確認してみましょう。
アニマルウェルフェアの 「5つの自由」
「アニマルウェルフェア」とは、動物の立場に立ち、人間が動物に対して与える痛みや苦痛を最小限に抑えることで動物の生活の質を高めようという考え方のこと。その基準として「5つの自由」というものがあります。
1. 飢えと渇きからの自由
2. 不快からの自由
3. 痛み・傷害・病気からの自由
4. 恐怖や抑圧からの自由
5. 自然に行動できる自由
犬が飼い主の足元で寝ないのは信頼関係がないから?
犬が飼い主の足元で寝ないのは信頼関係がないから、というわけではありません。また、犬の寝場所と飼い主との関係を示した研究データもないため、それほど心配にならなくても良いでしょう。では、なぜ犬が飼い主の足元で寝ないのか、主な理由を見てみましょう。
他に快適で安心できる場所がある
夏はクーラーや扇風機に近いフローリングの床、冬は暖かい場所やふかふかのドッグベッドなど、単純に飼い主の近くよりも快適な場所があるのかもしれません。
犬の性格
おおらかな性格、または自立した性格の犬の場合は、飼い主の近くで寝る必要がないのでしょう。飼い主と一緒にいられる快適な生活空間で十分満足していて、不安を感じていないためです。いつも飼い主の近くにいる犬よりも安心できる心理状態を与えられているとも言えます。
人との交流に慣れていない
一部の保護犬のように、飼い主のすぐ近くにいるよりも離れて過ごす方が落ち着く犬もいます。犬が自ら選んだ場所で安心して快適に過ごし、他の場面で愛情のあるコミュニケーションがとれていれば何ら問題はありません。
飼い始めてから日が経っていない
家に迎えたばかりの犬は、飼い主との信頼関係を築いている途中の段階です。飼い主と一緒にいると落ち着くことを、まだ知らないだけかもしれません。
犬が飼い主の足元で寝るメリット
犬が飼い主の足元で寝ることには、飼い主にとって以下のようなメリットが考えられます。
リラックスできる
飼い主にとって、なんといってもこのパワーは大きいでしょう。ベッドに横になって愛犬とゆったりくつろぐ時間に癒され、一日の疲れが飛んでいくと感じる人も多いのではないでしょうか。
普段よりもよく眠れる
ある調査では、「愛犬と一緒に寝るとよく眠れる」と答えた人が多かったそう。しかし、飼い主と犬それぞれの性格や気分、体調、寝方、寝る環境などあらゆる要因によって影響を受けるため、すべての人に当てはまるわけではありません。犬と一緒に寝ることが、飼い主にとって良いか悪いかは一概には言えないでしょう。
犬が飼い主の足元で寝るデメリット
では、飼い主にとって犬が足元で寝ることのデメリットも見ていきましょう。
飼い主に健康の問題が生じる可能性
犬の毛や足裏についたハウスダストにより、アレルギー反応が起こる場合があります。 過去にアレルギー反応が原因となる病気を経験したことがある人は、一緒に寝ない方が良いでしょう。また、一緒に寝ることで寝返りをうちにくくなると、背中や足腰の痛みにつながる可能性も。背中や足腰が弱い人、体調が悪いときは犬と別々に寝るようにしてください。
衛生面の問題
犬の毛、足裏、またはベッドからさまざまな細菌などの病原体が検出されることは珍しくありません。それらは犬のみによって移されるわけではありませんが、リスクのひとつとして理解しておく必要があります。
犬がケガをする危険性も
睡眠中、意図せず飼い主が犬をつぶしてしまったりベッドから落としてしまったりすることで、犬がケガする可能性があります。また、睡眠中の飼い主の動きで、犬が驚いて恐怖性攻撃行動を示すことで、飼い主が怪我することも考えられるでしょう。このような事故が起こると、飼い主と犬の信頼関係に問題が生じてしまいます。
犬が飼い主の足元で寝ている際の注意点
犬と一緒に寝る場合は、特に以下の点に注意しましょう。
・飼い主と犬がお互い快適に寝られるスペースが十分にあること
・必要に応じて、犬がより快適な場所へ移動できるようしておくこと
・犬を清潔に保つこと
・頻繁に布団を干したりシーツを洗濯したりし、寝具を清潔に保つこと
犬と一緒に寝るなら、お互いが安全で快適に眠れる環境を整えることが何より大切です。愛犬の快適さを優先し過ぎてしまうと、ちょっとしたきっかけで犬との信頼関係がこじれてしまう可能性もあります。前章で挙げたデメリットをできるだけ避け、愛犬だけでなく自分の快適さも忘れないようにしてください。
犬が足元で寝るのをやめさせる方法は?
犬が足元で寝るのをやめさせたい場合は、以下の方法を試してみてください。
他の寝床を用意する
飼い主のベッドとは別に、犬が快適、安心だと感じるような寝床を用意してください。はじめのうちは人が寝る部屋の、飼い主が見える場所に用意するのがおすすめです。
寝床で良い経験をさせる
おやつを使って犬を寝床へ誘導し、そこで知育玩具やガムを与えてみましょう。犬が寝床にポジティブなイメージを持てるよう工夫してあげることが大切です。
人のベッドや布団で寝ることを一貫して許可しない
飼い主の都合で、あるときは許したり、あるときは許さなかったりすることがないようにしましょう。その度に犬は混乱し、ストレスに感じる可能性があります。
第2稿:2021年10月18日更新
初稿:2021年9月7日公開
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