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Animal Life Partner代表。ペット栄養管理士など様々な資格を生かし、診療や往診のほかに、セミナー講師やカウンセリング、製品開発など幅広く活動。
在宅ワークが増えていることで、愛犬と触れ合う時間がしっかりと取れるのは飼い主にとっては喜ばしいですよね。しかし、ずっと飼い主と一緒にいることで、愛犬が過度に甘えん坊になっていませんか? 他にも「もしかして、うちの子って分離不安症なのでは?」と少し不安になっている人もいるかと思います。今回は、獣医師でAnimal Life Partner代表で獣医師の丸田香緒里先生に、犬が甘える理由と対処法、また甘えと混同しがちな分離不安症について解説していただきます。
目次
- 甘えん坊な犬の心理とは?
- 犬が甘えている時のしぐさと心理
- 甘えん坊すぎる犬への対処法とは?
- 甘えと混同しがちな分離不安症とは?
- 「愛犬の分離不安症診断リスト」をチェック!
甘えん坊な犬の心理とは?
犬が飼い主に甘えてくる時、いったいどのような心理なのでしょうか。
犬が甘えてくるタイミング
犬は飼い主や家族といるのが大好きで、基本的にとても甘えん坊です。犬が甘えてくるときは何かして欲しいことがある場合が多いです。たとえば遊んで欲しい、おやつが欲しいなど自分の要求を伝えたくて甘えてくることが多いので、わがままにならない程度に応えてあげましょう。
犬は病気の時に甘えてくる?
体調が悪かったりするときに急に甘えがちになることもありますので、そんなときは病気のひとつのサインとして、注意してあげるといいでしょう。
犬がおもちゃを持ってくるのも甘えからくる行動?
犬がおもちゃを飼い主のところに持ってくるとき、大抵は一緒に遊んで欲しい、かまって欲しいというアピールです。ただ、犬がおもちゃをもってきて、ほめたりして遊び始めると、その遊びは犬主導のものになってしまいます。しつけの観点からは本来おもちゃは飼い主の管理下にあるもので、犬が勝手に持ってこられないようにしたいものです。もし、犬がおもちゃを持ってくる場合は、いったん無視をして犬のアピールがある程度落ち着いたのち、飼い主主導のタイミングで遊びに誘ってあげてください。
オスとメスで違いはある?
基本的にオスとメスでどちらが甘えん坊になりやすいということはありません。それぞれの性格によるところが大きいのでその子に合った対応を心がけましょう。
犬が甘えている時のしぐさと心理
犬が甘えたい時のポーズはご存じでしょうか。甘えたい時のしぐさはいろいろですが、可愛らしいしぐさにも意味があります。それぞれのしぐさをしているときに犬がどのような感情を持っていることが多いのかを解説します。
あごをのせてくるしぐさ
心から安心しているときに見せるしぐさです。在宅ワークをしている飼い主さんのじゃまにならないように、足にあごを乗せてリラックスしている犬は多いかもしれません。ある程度、応じた後に満足して自分のスペースの戻るようなら、甘えさせてあげてもかまいません。
スリスリとそばに寄り添ってくるしぐさ
子犬が母犬に寄り添うように、安心と落ち着きを求めています。飼い主さんへの信頼の現れですね。
お腹をみせるしぐさ
急所であるお腹を見せる行為も、飼い主を信頼して安心しきっている証拠です。甘えてお腹を撫でて欲しい時にもそのようなしぐさをします。
飼い主の跡を追ってくるしぐさ
何かをして欲しい要求があるときに、それを満たされるまでついてくることがあります。様々な理由が考えられるので、察してあげられると良いでしょう。
じっと見つめてくるしぐさ
何かを伝えたいことがあってわかって欲しいときや、不安を感じているときのしぐさです。言葉で伝えられない分、目で訴えています。また、飼い主の気持ちや考えていることを読み取ろうとしているときにもじっと見つめてきます。
鳴いたり、しっぽを振ったりするしぐさ
かまって欲しい、嬉しくてしかたないときの気持ちを表現するしぐさです。鳴き方やしっぽの振り方には様々な種類があり、細かい感情を表現しています。状況と照らし合わせながら、どのような感情を表現しているのか解読していくと、繊細なコミュニケーションを取ることができるようになります。
前足をのせてくるしぐさ
自分にかまって欲しい、注目して欲しい時にするしぐさです。
飼い主の顔を舐めるしぐさ
口の周りをペロペロと舐められることが多いかと思いますが、実は子犬が母犬に食べ物をねだる時のしぐさの名残です。ただし、顔を舐めることは公衆衛生上よくありませんので舐めさせないようにしましょう。
犬が甘噛みをしてくるしぐさ
子犬の時期に多い甘噛みは愛情表現からの行動です。ただし、そのままにしておくと噛み癖がついてしまうので、人間を噛んだときはやめさせたり、噛んでも大丈夫なおもちゃを与えたりしましょう。
甘えん坊すぎる犬への対処法とは?
愛犬が甘えてきてくれるのは飼い主さんにとって嬉しいことですが、飼い主への依存心が強すぎると生活に支障をきたすことがあります。飼い主はメリハリのある対応を心がけて犬との距離感をキープするようにしてください。やらなければならないことがあって、要求に対応できないときは、無理して合わせず無視してかまいません。たとえば、遊んで欲しいなどの要求の場合、取るものもとりあえずといった感じですぐに応えるのではなく、一旦お座りなどのコマンドを出しそれに従わせてから、飼い主に時間ができたときに遊びに誘うようにしましょう。
甘えと混同しがちな分離不安症とは?
飼い主を困らせるような問題行動が続くと「分離不安症」という病名が付いてしまうことがあります。ただ、分離不安症は、分離不安症は甘えとはまったくの別物で、犬が執着している何か(飼い主である場合が多いです)と離れることに対する極度の不安が引き起こす心の病です。
分離不安症の症状
犬によって分離不安症の症状は異なります。不安そうに飼い主の後を追い回すだけでなく、無駄吠え、パニックを起こす、破壊行為をする、わざと粗相をするなど度を超えた問題行動を起こします。中には自分の尻尾や手足を噛んで傷つけたり、嘔吐や下痢を繰り返すこともあります。
「愛犬の分離不安症診断リスト」をチェック!
愛犬が甘えん坊なのか、分離不安症なのか判断に悩んでいるという飼い主は、こちらのリストの当てはまる項目をチェックしてみてください。
1.常に家族が集まっているところにいたがる
2.どこかに預けられることを嫌がる
3.家の中で笑い声を出すとすぐにやってくる
4.かまおうとしても逃げるそぶりを見せたことがない
5.家の中では誰かの後ろをひっついている
6.いつも飼い主や家族のことを目で追っている
7.友達の犬と遊んでいる時、飼い主が帰るそぶりを見せるとすぐに遊ぶのをやめて帰る
8.ひとりになると体の一部を舐めだす
上記の項目の1つでも当てはまる場合は分離不安症の可能性があるので、かかりつけの獣医師に相談してみることをおすすめします。ただし、1〜4の行動に関しては飼い主との好奇心や信頼関係が築けている上での行動とも考えられるので、通常の犬でも見受けられることがあります。
犬の分離不安症の原因
生まれた性格にもよるのですが、生い立ちや環境、しつけなどが引き起こしているケースもあります。可愛いあまり、四六時中べったりくっついているような生活が分離不安症を導いてしまうこともあります。犬が高齢になって発症することも珍しくありません。老犬がまるで赤ちゃん返りのように感じられた場合は、分離不安症を疑ってみるといいかもしれません。
犬の分離不安症の対処法
執着する対象(飼い主)だけが犬の心を占めないように、適度な距離感を保つといいでしょう。犬の心が安定している様子の時をみはからって、飼い主と離れる練習を始めましょう。少しずつ時間を長くしていって慣らし、犬が落ち着ける場所で過ごす練習をしていくといいでしょう。外出から戻ってきた際にすぐに相手をするのもよくありません。お留守番させたい時は、さりげなく当たり前のような態度で接するといいでしょう。また、散歩は体の健康にいいのはもちろん、愛犬と飼い主にとって、大きな気晴らしになりますので積極的に連れて行ってあげましょう。
手に負えなければ獣医師、ドッグトレーナーへの相談を
分離不安症の症状がひどくなってどうしていいかわからなくなってしまう飼い主もいらっしゃるかもしれません。そんな時は、獣医師を頼ってみましょう。心を落ち着かせる精神安定剤のようなお薬を処方してくれることがありますし、行動療法のプログラムを作ってもらうようにお願いすることもできるでしょう。また、ドッグトレーナーの方に相談をするのも非常に有効です。クレートを使ったトレーニングや、コマンドを覚えさせるような行動療法で改善に向かうこともあるでしょう。