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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
来客時や散歩の時に愛犬が突然唸り始めて困ったという経験をしたことはありませんか。犬が唸ることには嫌悪感の現れ、威嚇、警戒など、いくつかの理由があります。今回は、chicoどうぶつ診療所の所長である林美彩先生に犬が唸る理由ややめさせる方法などについて、解説していただきます。
目次
- 犬が唸る理由とは?
- 犬が突然唸り始めた時の注意点は?
- 犬の唸り癖を放っておくと危険?
- 犬が唸るのをやめない時の対処法は?
- 犬が突然唸るのを防ぐための予防策は?
- 犬の唸り癖を直すしつけのコツは?
- 犬が唸りながら震えたり、噛み付いたりする時は病院に連れて行った方がいい?
犬が唸る理由とは?
犬が唸ると「怒っているのかな?」と思う飼い主も多いでしょう。ですが、犬が唸る理由はひとつではありません。犬は唸ると同時にさまざまな動作をすることで、その時の感情を表しています。
・嫌悪感、不快感がある
尻尾が垂れ下がったり、内側に巻き込んでいたりする。
・警戒、恐怖している
毛が逆立ち、歯茎をむき出しにする。警戒時は尻尾がピンと立ち、何を怖がっている時は尻尾が垂れ下がる。
・優位性を示している、威嚇している
尻尾をピンと立て、左右に振ることもある。
・甘えている、喜んでいる
表情が柔らかく、尻尾を立てて激しく振る。
犬が唸る時は、嫌悪や警戒など負の感情を抱いている場合が多いのですが、意外なことに甘えている時もあります。どれも唸りながら尻尾や表情で感情を表現しているので、犬の様子をよく観察してその気持ちを汲み取ってあげましょう。
犬が突然唸り始めた時の注意点は?
犬が突然唸り始めた時の多くは、興奮していたり警戒したりしていつもとは違う精神状態にあります。そのため、触ったり撫でたりして落ち着かせようとすると、たとえ飼い主でも突然噛みつかれることも。犬が唸っている時は、うかつに手を出さずに、まずは犬の様子を観察し、何に対して唸っているのかを理解しましょう。
犬の唸り癖を放っておくと危険?
犬の唸り癖を放っておくと、犬の中で社会性が育ちません。家族の中での優位性、犬との主従関係が崩れてしまいます。要求鳴きや物事が思うようにいかない時のイライラ、縄張りを荒らされたことに対するストレスなどによって、よりひどく唸るようになってしまいます。犬の社会性が育たないため、散歩時のトラブルに発展する可能性も考えられます。
犬が唸るのをやめない時の対処法は?
愛犬に唸る癖がついてしまっている場合、子犬と成犬とでは対処法が異なります。
子犬の場合
まだ社会性が身に着いていないため、家族以外の人間や他の犬に対して警戒して唸ることがあります。子犬の社会性を養うために、家族以外の人間や他の犬に接する機会を積極的に設けてあげることで、徐々に慣れていくことができます。
成犬の場合
唸り癖がついている場合、すぐに矯正することは難しいです。散歩時には、他の犬に会わないコースや時間帯を選びましょう。他の犬や人間がいるコースに少しずつ移すことで、慣れさせることができるかもしれません。
犬が突然唸るのを防ぐための予防策は?
犬が唸るのを防ぐには、まず飼い主が「なぜ犬が唸っているのか」を知る必要があります。愛犬がどんなシーンで唸っているのかを、日頃からよく観察してみましょう。犬が唸る主なシーンと、その対策についてご紹介します。
来客時に唸る犬の場合(テリトリーを侵されて警戒している)
来客や宅配業者など、家族以外の人間に向かって犬が唸る場合は、テリトリーを侵されて警戒していると考えられます。これは、犬にとって非常に不快なことなので、来客時のルールをしつけておきましょう。例えば、インターホンが鳴ったらハウスに入る、愛犬のくつろぎスペースに移動するなどです。このしつけをしておくと、来客が来ても慌てなくなります。
人間の手に対して唸る犬の場合(恐怖心を抱いている)
撫でられることが好きな犬もいますが、過去の経験や性格によって恐怖心を抱いている犬もいます。無理に触れると噛みつく可能性もあるので、犬のペースに合わせて徐々に慣らしていきましょう。まずは、人間の手でおやつを食べさせることからスタートし、触れられそうなら触れてみるくらいが望ましいです。あくまでもゆっくりと、犬のペースを尊重することが大切です。
ブラッシングや爪切り、シャンプーなどを嫌がって唸る犬の場合(嫌悪感を抱いている)
ブラッシングや爪切り、シャンプーなど必要なお手入れを嫌がって唸る犬もいます。こういった「嫌なこと」に対して唸る犬には、手入れが終わったらおやつをあげるなどして、「嫌なことが終わったらご褒美がある」と教えましょう。
また、子犬の場合は、爪切りなどの見慣れない道具を警戒している場合もあります。いきなり爪切りを始めるのではなく、爪切りの横におやつを置くなどして道具に慣れさせましょう。「怖いものではない」ということが分かれば、道具に対する警戒を解けるかもしれません。
犬の唸り癖を直すしつけのコツは?
犬のしつけをする際のポイントは、「理想の行動をイメージすること」と「できたら褒めること」です。唸り癖を直したい時には、「犬が唸らない」状態が理想の行動となります。いつもなら唸っていたシーンで犬が唸らなかったら、すかさず褒めましょう。そうすることで、犬は「唸らないといいことがある」と学習できます。
できなかったことを叱るのはNG
逆にやってはいけないのは、「できなかったことを叱る、責める、怒鳴る」ことです。犬はなんらかの不安や不満があって唸るのに、それを改善しないまま怒られても犬の中に理不尽さだけが残ってしまいます。噛みつく、吠えるなど、より強く不満を訴えるようになるので逆効果になりかねません。
犬が指示通りの行動をしたら、すぐに褒めることで「いいことがあった」「嬉しい」「楽しい」といったプラスの感情を覚えさせることができます。また、犬が唸る原因を取り除いたり、逃げ場所を作ったりして、犬が唸るきっかけ自体を減らしてあげることも大切です。
子犬の場合は、社会性を養う時期なので他の犬や人間に触れる機会を作ってあげましょう。しつけ教室に行くのもひとつの手かもしれません。
犬が唸りながら震えたり、噛み付いたりする時は病院に連れて行った方がいい?
体調面の理由から犬が唸る場合もあります。身体のどこかが痛い、具合が悪いという時に、体に触られたくなくて唸るのです。下記のような症状が見られるなら、かかりつけの動物病院に相談してみましょう。
・震えている
・ぐったりしていて動かない
・背中を曲げてうずくまる
・歩き方がいつもと違う
また、シニア犬の場合、認知症になると理由なく唸る場面が増えます。「なぜ唸っているのか」を察してあげられるよう、日頃のコミュニケーションが大切です。
第2稿:2021年3月11日更新
初稿:2021年1月19日公開
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